ラブライブ! ~one side memory~   作:燕尾

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ども、燕尾です。
97話目ですね。






ユニット作戦

 

 

 

 

「ふう、こんなものか」

 

俺は出来上がったテントを眺めながら、額を拭う。

 

「おーい、できたぞー」

 

「ごめんなさいね、手伝ってもらっちゃって」

 

「いいよ別に。このくらいは」

 

謝る絵里に、俺は手をプラプラと横に振った。

 

「普段キャンプしないと、テントをしっかり立てるのは難しいもんな」

 

「そういうあんたは、手慣れていたわね」

 

「昔、転々としながら身を隠して生活してた時に捨てられたテントを立てて住処(すみか)にしてたからな」

 

「「……」」

 

どう言葉を返そうか悩んだ様子を見せる絵里とにこ。

 

「懐かしいな。よく住処の近くにあった他校の小学生共に石を投げられて穴を開けられて、その度に捨て布で修復して。次の日にはまた穴を開けられて」

 

「思い出話の中身が重いわよ、遊弥」

 

呆れたように突っ込む真姫。

 

「とまあ、俺のどうでもいい話は置いておいて。三人はこれからどうするんだ?」

 

「とりあえず食事作りの準備かしら?」

 

「ていうか、どうして別荘があるのにテント張らなきゃいけないのよ?」

 

「少しは距離を取らないと、班を分けた意味がないでしょう? それにちょうどテントもあったしいいじゃない」

 

「まさか別荘の目の前で野営するなんて思いもしなかったわ――こんなんで作曲できるの?」

 

「私はどうせ後でピアノのヘアのところに戻るから」

 

そっけない真姫の返しににこは本当に意味なんてあるのか、と疑問に思っているような表情をしている。

 

「普段とは違った状況に身を置くと何かに気が付くこともあるからな。それに――誰かが傍に居てくれるだけでも、気分も変わるだろ。な、真姫?」

 

「――べ、別に、いつもと変わらないわよっ」

 

恥ずかしそうにしているも目からは嬉しそうな感情が読み取れる。

そんな真姫に絵里もにこも、小さく笑う。

 

「じゃあ、私たちは食事の準備でもしましょうか。遊弥くんはほかの子たちのところに行くのかしら?」

 

「そうだな――」

 

次はどこの様子を見に行こうか、と考え始めたとき、スマホが震えた。

確認するとことりからの信号だった。

 

「ちょうどいいや。ことりのGPSから呼び出しがあったからそっちのほうに行ってくる」

 

「ええ。行ってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ことり」

 

「ふえええん……ゆ~く~ん……」

 

ことり、穂乃果、花陽が立てたテントに声をかけて中に入ると、ことりが涙目で俺を見つめてきた。

 

「進捗のほうは…言うまでもなく芳しくないみたいだな」

 

「うん……」

 

「そこで寝ている穂乃果は置いておいて、花陽は?」

 

「花陽ちゃんはなにかアイデアが出るようなものを探してくるって言って、散歩に行ってるよ」

 

「ふむ……ことり、とりあえず外に出ようか」

 

「えっ?」

 

「ほら」

 

差し伸べた俺の手にことりは手を重ねる。

そのまま彼女の手を引き、俺たちは靴を履いて外に出る。

 

「ゆーくん、何をするの?」

 

「ん? 何もしない」

 

「??」

 

俺の意図が読めないことりは首をかしげる。

 

「まだ時間はあるんだ。せっかく都会にはない自然があるんだから、ゆっくりしてもいいんじゃないか?」

 

すぅ、と俺は深く息を吸う。

 

「……すぅ」

 

ことりも同じように、深く息を吸う。

 

「気持ちいいだろ?」

 

「うん。なんか、空気が違うね」

 

そりゃ、車や工場が少ない山の中だからそう感じるのは当然だろう。

 

「流れる水の音や風で揺らぐ草木の音も、落ち着くぞ」

 

「――本当だね。なんかさっきまでの焦りとかがなくなっていく気がする」

 

二人して目を閉じて自然を感じているところに、足音が近づいてきた。

 

「ゆうやくん、来てたんだ」

 

「お帰り花陽。お邪魔してる」

 

「お邪魔だなんて、そんなことないよ。来てくれて嬉しいよ」

 

「なんて無垢な瞳……目の前にいるのは天使か……?」

 

大天使ハナヨエルのお言葉と笑顔に、俺は浄化されそうだ。

 

「ど、どうしちゃったの? ゆうやくん?」

 

「気にしなくていいよ、花陽ちゃん。きっとロクでもないことだと思うから」

 

「ことりさん? 言葉が悪いよ?」

 

「ふんだ。分かってないゆーくんにはこのくらいが丁度いいの!」

 

不満げな表情でそっぽを向くことり。

 

「ま、まあまあ! ことりちゃん、進みのほうはどう?」

 

「さっきよりは進んでるかな? それでもまだまだだけど」

 

「ちなみに花陽、その籠に入っているのはなんだ?」

 

「あ、これ綺麗だったからちょっと摘んできたの。同じ花なのに形や色が少し違ったりして個性があって、そういうので少しでもアイデアになればなって思ったの」

 

純粋でええ子やなぁ、花陽はん。その白い花と一緒で心まで白いよ。

 

「そういえば穂乃果ちゃんは?」

 

「テントの中で寝てるよ。気持ちよさそうにな」

 

「でも穂乃果ちゃんの気持ちもわかるかな。こう、自然に囲まれてるとなんだか…眠くなってきちゃう……」

 

「確かに、気温も丁度良くて…わたしも……眠くなってきちゃった」

 

「……まあ寝てリラックスするのもいいだろ、寝すぎないようにな?」

 

「ゆーくんも一緒に寝る?」

 

「いや、一緒に寝られるわけないだろう。それに――」

 

俺はさっきから振動しているスマホを取り出す。

 

「なんか、凛からものすごい信号送られてきてるから、そっちに行ってくる」

 

「凛ちゃんから? 大丈夫かな……」

 

心配する花陽に対し、凛の位置を確認した俺は苦笑いする。

 

「まあ、希がいるから大丈夫だろ」

 

「ゆーくん、皆のこと、よろしくね?」

 

「ああ、じゃあまたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を呼び出した凛が今いるところは、山の中だった。

絶えず送られてくる連絡により、凛たちがいる場所へはすぐに行くことが出来た。しかし、

 

 

 

「いやぁー!!」

 

 

 

「凛っ、この手を放してはいけません! 死にますよっ!!」

 

「今日はこんなのばっかりにゃー!」

 

「ファイトが足りんよ! 凛ちゃん!!」

 

「遊くん、早く来てぇ~!!」

 

うん、まさか希までノリノリで海未の登山に付き合っているとは思わなかった。

これ以上は凛が限界そうだから、俺は岩を登って彼女たちの元へ行く。

 

「何をしてるんだ、お前らは」

 

「遊弥!?」

 

「遊くん!!」

 

「お、遊弥くん」

 

安全地帯で休んでいた三人に声を掛けるとそれぞれの反応を見せてくる。

 

「どうしてここに?」

 

「凛のGPSからずっと信号が送られてたから来たんだよ」

 

「ここまででも結構な道のりなのに、よく追い付きましたね……」

 

「まあ、このくらいの道は走れるから」

 

「山道を走ったら危ないよ?」

 

「まあそこは特殊な訓練を行ってるということにしておけばOKでしょ」

 

それよりも、と俺は一拍置いて上を指す。

 

「ここは風も強くなるし危ないから、とりあえず上に登るぞ。凛は凛が大丈夫なら俺が背負っていくが、どうする?」

 

「お、お願いするにゃ。凛もう限界だよ……」

 

プルプルと震えながらそういう凛はまるで怯える子猫のようだった。

 

「了解。おいで」

 

「ありがと、遊くん」

 

「……」

 

「どうした、海未?」

 

「な、何でもありません!!」

 

凛を背負った俺をどこか不満そうに見ていた海未は、息を吐いて俺に背を向けて進み始める。

 

「それじゃあ俺たちも行こうか。振り落とされないように(・・・・・・・・・・・)、しっかり捕まってろよ? 凛」

 

「え、それってどういう――にゃ、にゃあああああ!?」

 

岩に飛び乗りながら登っていく俺の耳に猫の大きな鳴き声(凛の叫び)が入ってくる。

 

「遊くん! ストップ、ストップ!! お願いだから止まってえぇぇー!?」

 

「今止まったら二人とも落ちるぞー?」

 

「うにゃあああああ――――!? やっぱり今日はこういう日なのぉ――――!?」

 

凛の叫びは平地につくまで続いた。

 

「また一人、大地のありがたさを知る人が出来ちゃったね」

 

1人悠々と進む希はそう言ったらしいが、当然俺らには聞こえないのであった。

 

 

 

 

 

「し、死ぬかと思った…怖かったよぉ……」

 

へたり込み、息絶え絶えに呟く凛。

そんな凛に俺はごめんと謝りながら頭を撫でてあやしていた。

 

「雲が掛かってきた。これ以上は無理やね」

 

「そんなっ…」

 

海未と希は山頂の方を見ながら、天候の予測を経てていた。

気がつけば日も傾いて、空はオレンジ色に染まり掛けている。

海未たちが目指す山頂は希の言う通り雲が掛かり始めていて、これ以上進むのは危険だ。

 

「ここまで来たのに……!」

 

山頂を目前にして、断念という結果に歯噛みする海未。

だが、そんな海未より大きな不満を持っていた凛が声をあげる。

 

「酷いにゃ! 凛はこんなところ来たくなかったのに!!」

 

「仕方ありません。ここで天候回復を待って明日仕掛けましょう――山頂アタックです!」

 

「まだ行くの!?」

 

抗議をものともせず山頂を目指す海未に驚愕する凛。

 

「当然です! 何しにここに来てると――」

 

 

 

 

 

「作詞に来たはずにゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

凛のド正論が木霊した。

 

「――っは!?」

 

「まさか忘れてたのっ!?」

 

噛みつく凛に海未は慌てたように、そんなことありません、と返す。

 

「山を登りきったという充実感が創作意欲を掻き立てると、私は思うのです!」

 

うん、もっともらしいこと言ってるけど瞳からは焦りの感情が見てとれる。完璧に忘れていたのだろう。

まあ苦し紛れにしても、海未の言うことも分からんでもない。でも、

 

「海未、そこまでにしておけ」

 

「遊弥……」

 

俺は海未の肩に手を置いて引き留める。

 

「遊弥くんの言う通りやで、海未ちゃん」

 

「希まで……」

 

「山登りで一番重要なことってなにか知ってる? 挑戦する勇気でも、諦めない心でもない。諦める勇気(・・・・・)なんよ」

 

「引き際はしっかり見極めないと、取り返しの付かないことになる。まだ、まだ、と欲張るほど、失うものもだんだんと大きくなるぞ」

 

だから希が言った通り、諦める勇気が必要なのだ。

 

「だから今日はここまでだ」

 

「凛ちゃん、下山の準備。今日の夜ごはんはラーメンにしよっか」

 

「ほんとっ!?」

 

「俺も怖い思いさせたお詫びに、今度おすすめのラーメン屋連れてってやるよ」

 

やったー、とはしゃぐ凛に俺と希は小さく笑う。

 

「ほら、海未も」

 

「は、はい……」

 

「……納得いかないか?」

 

歯切れの悪い海未にそう問いかける。

 

「いえ、そうではありません――遊弥はともかく、希がこういうことを知ってるなんて、思ってなかったので」

 

「まあ、新たな一面を知れて良かったじゃないか。海未の山好きも凛や希も知らなかったんだし。そうやってみんなのことを理解していけばいいんじゃないかって、俺は思う」

 

「それもそうかもしれませんね。それが知れたということで山頂アタックはまた今度にします」

 

「なんなら今度付き合うよ。山登り」

 

「いいんですか?」

 

「海未が良ければ。今度一緒に行こう」

 

「――はい! 約束ですよ!」

 

こうして、俺たちは日が完全に落ちる前に下山するのだった。

 

 

 

 

 

 






いかがでしたでしょうか?
えー、次回からそれぞれのルートに入ります。
絶対、入ります!

アンケートの結果をもとに、まずは絵里からやりやす!!
(まあ、プロットとか作っていないので、基本的には全員並行して書いていくと思います。思いついたら書くというスタンスなので。ただ、更新話数的には絵里→穂乃果→ことり→海未となるように作っていきます)

では、次回もよろしくお願いします!!


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