戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と鬼   作:MHCP0000

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久しぶりの投稿です。

よろしくお願いします。


プロローグ

 

古来から、日本において『怪異』と呼ばれてきたものは二つあった

 

一つは『ノイズ』。異相から現れ、人に触れるだけで炭にしてしまう能力を持っている

 

そしてもう一つは『魔化魍』。闇に隠れ人を襲う、古来から妖怪として人々に恐れられてきた。

 

 

これは、二つの『怪異』に立ち向かう、奏者と鬼の物語である

 

 

 

プロローグ

 

 

 

 

 

甘味どころたちばな

 

和風な街並みの中にたたずむ、老舗の茶屋であるのと同時に、魔化魍退治を使命とする『猛士』の関東における拠点である。普段はお客で賑わうこの店だが、今この日は休日なのか、暖簾は下げられ、客の姿はなかった

 

「これで今月三匹目か……」

「種類も季節もバラバラですね」

 

その店内には、五人の男女がいた。その中の一人が言うと、もう一人の、五人の中で最も若い男が言った

 

「今回はサバキさんに行ってもらいましたが、ここまで続くと、僕らが感知していないところでも魔化魍が出てるかも……。ヒビキさん、どう思います?」

 

名前を呼ばれた男は、腕組をして少し考えた後、答える

 

「……そうだな。イブキの言う通りだと思う。こうなると、一人常駐させたほうがいいのかもな……って、なんだよみんなそんな顔して。俺の顔に何か付いてるわけ?」

 

ヒビキの言う通り、他の四人は何故か笑顔でヒビキを見ていた

 

「別に。ただ、響鬼さんもそういうのが大分板に付いてきたなって」

 

二人いる女性のうち一人、立花香須実がそう言うと、

 

「そうそう。父上ほどではありませんが、頼りがいがでてきましたよ!」

 

香須実の妹である日菜佳もそう言った

 

 

「そう? まあ、鍛えてますから」

 

シュッとハンドサインを出しながらヒビキが言う。彼女たちの父である勢知郎が猛士の本部でもある吉野に行って以来、ヒビキが彼の後を継いで関東事務局長となっている。最も、鬼が一時的に不足すれば、自ら飛び出すほどに鬼の力は健在であるが

 

「でも、実際どうするっすか? まさかヒビキさんが出向く訳にもいかないし。それにあそこは、魔化魍だけでなくノイズもよく出るって聞いてますけど」

 

この場にいる最後の一人、トドロキがずれかけた話を戻す。彼の言う通り、今回は一時的な不足ではなく、その場にしばらく留まることになる。そうなると、事務局長としての立場である響鬼は行くことができない。五人とも、それぞれに考える

 

「あ、じゃあ彼に行ってもらうのはどうです? もう鬼の仕事にも慣れてきただろうし、次のステップに進むのもいいんじゃないでしょうか?」

 

ぽん、と手を叩きながら日菜佳が言う。他の人間も、日菜佳の言う『彼』が誰なのか見当がついたようだ。ただ一人、トドロキだけがまだなのか、周りを見回している

 

「そうね。報告書やヘルプに来てもらった人たちから聞いた話だと、もう一人で行動させてもいいんじゃないかって言う人も多いし。イブキ君はどう?」

「僕も問題なくと思います。あきらからもいい話を聞くことが多いですから」

 

香須実とイブキは、日菜佳の意見に同意する。だが、轟鬼は一人声を荒げた

 

「ちょっと待つっすよ! 彼ってまさか快翔のことっすか?」

 

ようやくトドロキも思い当たったようで、大きな声で場を制する

 

「俺は反対っす! 確かに快翔は実力的には問題はないかもしれないっすけど、あいつはまだ正式な鬼じゃないんすよ?!」

「と、トドロキくん、ちょっと落ち着いてください」

 

隣に座る日菜佳が、なんとか宥める。

 

「でも、トドロキくんの言うことも分かるわ。まだ修行中の子を単独で行動させるのって、昔はあったみたいだけど今ではほとんど無いし……」

 

香須実がトドロキの意見を肯定する

 

「そうっすよ! それにあの辺……リディアン音楽女学院前の辺りはノイズも大量に出るって」

 

ノイズ

猛士が専門とする魔化魍とは違い、一般的にも広く認知されているもう一つの『怪異』だ。専門でば無いものの、鬼の力を使うことで対処は出来るが、魔化魍のようには行かない

 

「実際の所どうなんですかヒビキさん。師匠として、弟子である快翔くんは?」

 

威吹鬼の問に、響鬼は考える。全員が見守るなか、響鬼はゆっくりと告げた

 

「……肉体的には問題はないよ。俺の贔屓目かも知んないけど、当時のキョウキと比べたら、多分快翔のほうがいい。トドロキの言うノイズも、戦闘経験はあったはずだ」

 

かつて育てた弟子と、今の弟子を比べる。キョウキには悪いと思ったが、実際彼本人からも、同じような報告が届いている。

 

「じゃあ……」

「けど!」

 

イブキとトドロキが同時に声を上げた。その後に続く言葉は、全員が分かっている

 

「(けど、あいつにはまだ一番肝心な部分がな……)」

 

ヒビキ自身、かなり迷っていた。もう送り出しても問題はない所まで来ている。だが、一つだけ、どうしても教え残したことがある。そしてそれは、ヒビキでは教えることができない。彼自身で見つけなければならないのだ、

 

 

 

時は来たと捉えるか、時期尚早と判断すべきか

ゆっくり考えたい所だが、事態はそうは行かない。それでも最大限熟考し、響鬼は答えを出す

 

「……卒業試験だな」

 

自分の弟子は、そんなにやわじゃない。

弟子を信じる。それが、師匠の出した答えだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後 たちばな

 

 

「よし、準備オッケーだ。あきらさん、どうですか?」

 

開店前の店内で、荷物を前に少年が頷く。常駐任務は初めてで、出来るだけ荷物は減らしたつもりだったが、それでも目の前には少ないとは言えない量があった

 

「はい、バッチリだと思います」

「うん、それだけあれば十分だし、多すぎないね。なかなかいいラインをついてるんじゃないかな」

 

一緒に準備していたイブキと、隣にいたあきらと呼ばれた女性が頷くもオッケーを出す。

 

「じゃあ、荷物はオッケーですね。私は車に積んできます」

「お願いします……。イブキさん、手伝ってもらってありがとうございました」

 

少年、加々井快翔が頭を下げる

 

「気にすることはないよ。それより快翔くん、前にあったときより背、伸びたんじゃない?」

 

イブキは改めて快翔を見る。もう身長は175以上ぐらいはあるだろう。体つきも、3年間の鍛練の結果、かなりがっしりしている

 

「そうですかね? まあ、成長期なんで」

 

そう快翔は返す。実際、久しぶりに会う鬼たちはみなそう言う。17歳という快翔の年齢を考えると当然だろう

 

「そうだね……。っと、快翔くん、荷物のことだけど、車に載せてもまだ余裕はあるのかい?」

 

イブキが思い出したように言う

 

「え? はい、一応少し余裕はありますけど……。でも、もう持っていくものないですよね?」

「まあ見てなって」

「?」

 

快翔が不思議そうにしていると、ガラガラ!と音を立てて扉が開いた

 

「ま、間に合ったっす……!」

「と、トドロキさん? どうしたんですかそんなに慌てて」

 

驚いた快翔が言うと、轟鬼乱れた息を整えて言った

 

「何って、後輩の初陣だぞ? 激励に来たに決まってるじゃないか!」

 

そう言って、

 

「はいこれ、田舎のばあちゃんに頼んで送ってもらったんだ」

「あ、ありがとうございます……」

 

美味しそうな煮物だ。移動中に汁がこぼれてこないか心配だが、突き返すのも悪いので貰っておく

 

「んでこっちが、俺が昔着てた服。もう着れないけど、寝間着変わりにはなる。鬼は服がすぐ無くなるから多めに持っとけよ」

「は、はあ……」

 

知っているし、準備もしているのだが、断り切れないので受けとる

 

「んでこっちがお守り。この辺りの神社や寺から一つずつ買ってきた」

「えと、どうも……」

 

『交通安全』とか『商売繁盛』とか書いてあるが、気にせず手に取る。『安産祈願』もあった

 

「それからこっちが……」

「と、轟鬼さん! お気持ちは嬉しいんですが、さすがにこれ以上は車に載らないんでちょっと……」

 

懐から取り出した木箱を見て、遂に耐えきれなくなった快翔が止める

 

「ん、そうか……」

 

残念そうなトドロキを、イブキは笑顔で見ていた。どうやら、彼は予想がついていたようだ。先ほど言っていた荷物の話はこの事だろう

 

「快翔、もし何かあったら、いつでも呼ぶんだぞ。必ず助けに行くからな」

 

真正面から快翔を見据えトドロキが力強くそう言うと、威吹鬼も頷く

 

「無理だと思ったら直ぐに退くこと。まずは自分が最優先。あんまり無茶して、あきらに迷惑かけないようにね」

 

「はい。トドロキさん、イブキさん、ありがとうございます」

 

二人から激励を受けたところで店の奥から香須実、日菜佳、あきら、そして快翔の師匠であるヒビキが出てきた。

 

「快翔くん、積み込み終わりましたよ」

「いつでも行けますよ!」

 

あきらと日菜佳にありがとうございます、と挨拶して、快翔はヒビキの前に立つ

 

「ヒビキさん、最終試験必ず合格します」

 

二日前、快翔はヒビキから今回の任務を言い渡されていた。そしてこれが、鬼になる最終試験であるということも

 

「おう。カッコいい名前考えとくからな。無駄にするなよ。あと、勉強もちゃんとな」

 

ヒビキもそれに答え、いつものように返事をする

 

「~~~! 快翔~~!」

 

とうとう我慢できなくなったのか、トドロキが泣きながら快翔に抱きつく

 

「ちょっとトドロキくん! せっかく師匠と弟子の感動シーンだったのに~」

「全く、自分より後輩が一人立ちするときはいつもこうなんだから」

 

日菜佳が引き剥がし、香須実が呆れてため息をつく。一瞬、場が和やかになったところで快翔とあきらが出口に向かい、手前で振り替える

 

ヒビキ、イブキ、トドロキ、香須実、日菜佳が並んで見送る

 

カッカッと香須実が火打ち石を二度打ち鳴らす。出撃の合図だ

 

「行ってきます!」

「皆さんもお気をつけて」

 

快翔とあきらがそう言って店を出て、止めてあった車に乗り込む。あきらが運転席、快翔が助手席だ

 

「じゃあ、行きますよ」

「はい!」

 

車が走り出す。

 

一人の鬼と、まだ見ぬ奏者たちが奏でる物語は、こうして幕を開けた

 





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