戦姫絶唱シンフォギア 戦姫と鬼   作:MHCP0000

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第八話 惑わす想い

「……」

 

翼と響、そして快翔とあきらを見送ったあと、弦十郎は無言でモニターを見つめていた

 

「どうしました司令? なにか気がかりなことでも?」

 

後方にいた緒川が訊ねる。気がかりなことなら、ある

 

「…緒川、ここは任せた。俺はちょっと行ってくる」

 

そう言うと、弦十郎は司令室を後にした。後ろからは一言、「お気をつけて」という声が聞こえただけだった

 

「翼…」

 

戦場にいる姪の名を、弦十郎は静かに呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話 惑わす言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐに終わらせる。翼はそう考えていた。相手は大型とはいえ、たかが一体だけ。自分の力をもってすれば、苦戦することもないはずだ

 

脚部のブレードを展開し、本体から分離した部分を次々に切り裂いていく。第一号聖遺物『天羽々斬』をまとった翼は、その力を存分に発揮してノイズを駆逐していた

 

幼いころにその歌で聖遺物を起動させて以来、防人としての使命を果たすためにその身を剣として研鑽を重ねてきた彼女にとって、その程度はどうということはないものだった。翼はその力に誇りを持っていたし、同じように戦ったかけがえのない存在の思い出を大切にしていた

 

だからこそ、翼は『彼女』のことを受け入れるわけにはいかなかった

 

「~~~~~~~~~~!」

 

声にならない声を上げ、背後の大型ノイズが翼に襲い掛かる。だが、翼にとってその程度は予想済みである。手に持った長刀の装備(アームドギア)を大太刀へと変え、迎え撃とうとする

 

「でやあああああああ!」

 

だがその翼の行動は、気合のこもった声によって中断された。上空から、第三号聖遺物ガングニールを見にまとった響が飛び蹴りをノイズに決めていた。ノイズは体勢をくずし、翼に攻撃するどころではなくなる

 

「翼さん!」

「っ!」

 

地上へ落ちる響と、上空へ飛び上がる翼

 

状態をの対象さを表すように、二人の表情も対照的だった。響は役にったった!というような表情なのに対し、翼はどこか苦虫をかみつぶしたような表情だった

 

「はああああ!」

 

―蒼ノ一閃―

 

アームドギアから青い雷状の斬撃を飛ばし、大型のノイズを真っ二つにする。ノイズはその姿を炭へと変えた。これで、ノイズの殲滅は完了だ

 

「す、すげー……」

 

ようやく到着した快翔が、間の抜けた声を上げる。それほどまでに今の戦闘は圧倒的だった

 

「つーかなんだよあれ。なんで刀がいきなり大太刀になるんだよ非常識だろ。いやまあ俺たちの力もなかなかだけど」

「翼さん!」

 

ぶつくさ文句を言う快翔をしり目に、響は翼にかけよる

 

「私、今は足手まといかもしれませんけど、精一杯頑張ります! だから私と一緒に戦いましょう! あ、もちろん快翔さんも!」

「俺はついでかよ…」

 

響は力強く言う。ついで扱いにされた快翔は苦笑いだが、拒否はしない。だが、翼の反応は全く違っていた

 

「そうね」

 

響の言葉を受け入れるような言葉に、表情が明るくなる。が、その表情はすぐに困惑へと変わった

 

「あなたと私、戦いましょうか」

 

響の目には、自分へと切っ先を向けられた刀が映っていた

 

「へ?」

 

思わず間の抜けた声が上がる

 

「私そういう意味で言ったんじゃ…」

「わかっているわ。私があなたと戦いたいの。さあ、あなたもアームドギアを構えなさい」

 

響が説明するが、翼は聞く耳を持たない。一触即発の雰囲気だったが、そこに待ったをかけたのは快翔だった

 

「待った翼さん。あなたにも思うところはあるだろうけどさ、こんなとこで仲間割れすんのはやめようぜ」

 

スッと間に割り込み、突き付けられていた刀に上から手を添える。言葉は柔らかいものだったが、刀を抑える手には力が込められていた

 

「仲間、だと…?」

 

快翔の言葉に、翼が厳しく反応する

 

「ああ。俺も立花さんも、もちろんあなたもだ。目的は人間を守ること。まあ、俺は方法はちょっと違うけど…うわ?!」

 

快翔が言い終わる前に、抑えていた刀が横なぎに振られる。間違いなく快翔をめがけてのものだった

 

「ちょっと待て「あなたが!」」

 

文句を言おうとする快翔だが、その言葉は翼の叫びにかき消された

 

「戦う覚悟も持たずに戦場にたつあなたが、奏の何を受け継いでいるというの?! そんなあなたと私が、どうやって仲間になれというの?!」

 

言いながら響を睨み付ける。もはやその眼には快翔は映っていなかった。明確な敵対心を響に向けている。それだけ言うと、翼は高く飛び上がる

 

「くそっ立花さん! 俺の後ろに!」

 

翼が本気だと判断した快翔は、響の前に出て、音撃棒を構え、力を籠める。いくら敵対しているとはいえ、相手は人間、しかも素人だ。先ほどのような大技は来ないだろう。それなら、鬼の力を使えば受け止められるはずだ。最悪自分がダメージを負っても、その間に一呼吸置くことができれば翼も落ち着くはずだ

 

だが、その予想は外れていた

 

「はああ!」

 

アームドギアを投げると、その姿を再び大太刀へと変えた。だが、その姿は先ほどまでの手に持てるものとは比べ物にならない。先ほどの大型ノイズよりもさらに巨大なその刀身は、初めて快翔が見たときのものと同じだった。柄のないその刀身に、翼は全力で蹴りを入れる。剣と一体となった姿を遠目に見れば、それは一振りの巨大な剣のようだった

 

―天ノ逆鱗―

 

「ちょ、ええ! マジかよ!」

 

予想の外れた快翔が、素っ頓狂な声を上げる。だが、こうなってしまってはしょうがない。快翔はさらに力を籠め、音撃棒に『氣』を籠める。最悪でも、後ろの響だけでも守らないといけない

 

「はああああ……」

 

両足を開いて腰を落とし、衝撃に備えると同時に、音撃棒をクロスに構える。快翔にとることができる、最大の防御姿勢だ

 

「はあああ!」

 

裂帛の気合とともに脚部のブレードからの推進エネルギーで突進してくる翼と、覚悟を構えた快翔。だが、その間に割って入る影があった

 

「おりゃあ!」

 

防御姿勢をとる快翔のさらに前、拳を突き出し巨大剣を迎撃する

 

「お、叔父様?!」

「どらあああ!」

 

驚愕している翼をしり目に、さらに力を籠める弦十郎。すると、踏みしめていた地面が衝撃に耐えきれずにめくれ上がった。さらに衝撃が近くの水道管を破壊したのか、吹き出た水がまるで雨のように降りかかってきた

 

「きゃああ!」

 

バランスを失った翼が、地面に叩きつけられる

 

「全く、こんなにしちまって。何やっとるんだお前らは」

「えええ……」

 

こんなにしちまったのは主にあんただ、と突っ込みたい快翔だが、目の前の光景に言葉を失っていた

 

「この靴、高かったんだぞ」

「ご、ごめんなさい」

 

おどろいて謝る響。違う、そうじゃない。そう突っ込みたかった快翔だが、やはり言葉が出てこない

 

「全く、何本の映画が借りられると思ってやがる」

「レンタルかよ。買えよ」

 

ようやく出てきた突込みはそれだけだった。何とか言語機能が回復した快翔は、いろいろな感情を一言の皮肉に込めた

 

「もうあんたが出れば全部解決すんじゃねえか。ノイズも魔化魍も」

 

いつになく口調が荒っぽいのはご愛敬だ。だが、そんな皮肉も、大人の余裕をもった一言で返される

 

「そうはいかん。俺がいくら強くても、ノイズには触れないし魔化魍に有効な清めの音を出すこともできない。結局、お前らのような子供に手を貸してもらわなけりゃならんのさ」

 

どこか自嘲めいた言葉を残して、弦十郎は翼に歩み寄る

 

「らしくないな翼。ロクに狙いもつけずにぶっ放したのか、それとも…」

 

そこまで言って、弦十郎は翼の異変に気付く

 

「お前泣いて「泣いてなんかいません!」」

 

弦十郎の言葉を最後まで聞くことなく、翼は否定した

 

「涙なんて流していません。風鳴翼は、その身を剣と鍛えた戦士です。だから…」

 

まるで慟哭。翼の独白を、快翔はそう受け取った。口調は静かだったものの、ここ数日の翼の感情が見え隠れするような言葉だった

 

弦十郎を支えに立ち上がる翼に、これまで口を挟めずにいた響が告げる

 

「わたし、自分がダメダメなのはわかっています。だからこれから一生懸命頑張って…」

 

「奏さんの代わりになってみせます!」

 

人によっては、響の言葉は素晴らしい決意の言葉に聞こえるただろう。自分が未熟なのを理解して、そこから成長しようという決意。だが、響の言葉をそう受け取った人間は、この場にはいなかった

 

「っ!!」

 

パシン、と乾いた音がした。降りしきる水のなかでも、ことさら耳につく音。翼が響の頬を叩いた音だった

 

横流れする視界の中で、響は確かに、翼が泣いていたのを見た

 

 

 

 

 

 

「じゃあ快翔、済まないが響君を」

「ええ。寮まで送り届けます。それよりも、いいんですか? 勝手に帰っちゃって」

 

あのあと、翼を何とかなだめた弦十郎は、快翔と響に今日はもう帰るように指示した。そこで、快翔が響を送っていくと申し出たのだった。もっとも、送っていくのはあきらだが

 

「司令の俺がいいって言ってんだ。いいに決まってんだろ。それに」

 

自分の乗ってきた車に目をやる。ようやく落ち着いた翼の姿が、後部座席にあった

 

「今の状態で二人を一緒にしておくわけにもいかんだろう。明日改めて迎えをよこすから、話はその時に聞かせてくれ」

「そうですね。じゃあ、また明日」

「ああ」

 

車で去っていく弦十郎を見送った快翔は後ろにいた響を見やる。やはりというべきか、先ほどのショックが抜けきっていないようだ

 

「立花さん、お疲れ様。送っていくから帰ろう」

「はい…」

 

制服姿の響をつれ、快翔はあきらの車に乗り込む。鬼の格好では車の座席には座れないため、後部座席を倒してドアにもたれかかるようにし、足を伸ばして座る。響は道案内のために助手席に座った

 

「響さん、お疲れ様です」

「あ、はい。えっと…」

 

話しかけられた響だが、なんと答えていいかわからない。そもそも、この人は誰だっただろうか

 

「私は快翔くんのサポート担当の天美あきらです。あきらとよんでくださって構いません」

「あ、はい。立花響です。ありがとうございますあきらさん」

 

挨拶を済ませて、快翔が車に乗り込んだのを確認してあきらが車を出す。響は、あきらに道を説明していた

 

「あ、ここでいいです」

 

しばらく車を走らせたところで、響が言う。寮まですぐのところだった

 

「立花さん、今日はお疲れ様。今日はゆっくり寝るといいよ」

「はい…」

 

車から降りて、快翔が見送る

 

「じゃあまたね」

「あの、快翔さん!」

 

帰ろうとした快翔を、響を呼び止める

 

「どうかした?」

「あの、えっと…」

 

少し迷って、響は告げた

 

「あの、私が今日翼さんに言ったこと、間違ってたんでしょうか?」

「……」

 

響の言ったのがどの部分か、ということは、聞かなくても分かっていた。答えるまで少し考えて快翔は言った

 

「……誤魔化したってしょうがないから、本当のことを言うよ」

「はい…」

 

少し間をおいて快翔が言う

 

「立花さんがどう思ってるかはよくわかった。強くなろう、そのために努力しようっていうのは間違ってない」

 

それでも、と快翔は続ける

 

「それでも、誰かの代わりに、なんて言葉は簡単に使っちゃダメなんだよ」

 

ハッキリと、快翔は響に告げた

 

 

 

 

 

 




話が進まない…

今年はもう一回投稿できると思います。
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