トリスタニア人、転生日記   作:かたなあさはまな

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14~28話

14

 

 

タバサとの話し合いをした次の日。

 

 

タバサを助けると言うことは下手を打つと1国を相手にしなければいけない。

 

体を鍛えなおすことにする。

 

いつもは今の筋肉量を維持する為の、ちょっとした運動をしているのだが。

 

今日は、遍在2体との『待った無し』のマジ組み手をする。

 

とりあえずリミッターを、約50%まで解除し、組み手を始める。

 

 

 

約10分後、酸欠で体が鈍り、遍在にぼこぼこにされる。

 

遍在の体は風系統の魔力で構成されているため、酸素を必要としない。

 

 

・・・この程度で疲れてはいけない気がする。

 

・・・久しぶりに体の改造でもやるか。

 

 

 

まずは酸欠対策だ。

 

遍在を3体補助につけ、横隔膜の真ん中に一本の丈夫な筋をはり、神経を通す。

 

横隔膜を左右別々に動かせるようにする。

 

これで横隔膜を左右別々に動かすと、左右別々に吸ったり吐いたりすることが出来る・・・はずだ。

 

肺からのどに繋がる気管を二つにわけ、少し太くし弁をつけ、空気を鼻から吸い口から吐くように作る。

 

遍在に水系統の魔法を応用して、横隔膜を別々に動かさせ、効果を試す。

 

後はしばらく遍在に協力してもらい、横隔膜の操作を覚えるだけだ。

 

 

肺に関してもう1つ。

 

 

通常肺は十分に使われていない。

 

空気を肺の上側から吸い、上側から出している。これだと、下のほうの空気を完全に出す前に吸っているため、100%肺胞だったっけ? を使っていないのだ。

 

つまりは下から空気を出すようにすればいい。

 

空気を吸収する肺胞に新たな細い気管をつなげ、弁をつけ、喉仏の下の空気を吐き出す気管につなげ逆流しないよう弁を取り付ける。

 

 

これで空気を吸いながら吐き出し、100%肺胞を使い効率よく、酸素をとりい・ら・・れ・・・ 

 

バターン

 

 

 

 

目が覚める。

 

 

遍在が俺の口に袋を当てて、同じ空気を吸わせてる。

 

・・・どうやら過剰に酸素を吸収しすぎで死ぬ所だったようだ。

 

やりすぎたか。

 

 

とりあえず、肺胞から伸びている気管の弁を使い閉じ、空気を取り入れる所にも逆流しないようしておく。

 

 

まあ今は横隔膜を操作することに慣れよう。

 

 

 

あと目もいじっておく。

 

目の瞳の部分の、薄皮1枚下の部分にレンズを形成する。

 

たしかこんな手術があったはずだ。名前は忘れたけど。

 

レンズを調整し視力を高める。

 

いくら現代日本よりも、目に良い暮らしをしているとは言え、文明生活をしていると目は悪くなる。

 

とりあえず1000メイルぐらい先の、人物の顔が判別出来れば十分だろう。

 

 

 

ちなみにこの時点で、全力疾走を1時間ぐらいしていても息切れを起こさなくなった。

 

まあ、激しく疲れたが。

 

 

まあ、あと他にも色々いじっておこう。

 

頭を高速回転させると、血液が頭に集まる。

 

これは酸素と栄養分を脳に送っているからだ。

 

血液の循環を少しいじり、脳に酸素がいきやすくする。

 

あと首の下に栄等分を溜めておく袋を作る。

 

脳を活発化させたときに、栄養分を送りさらに動く様にしてみた。

 

 

3日後にまた、同じ条件で組み手をやる。

 

 

横隔膜の操作も出来るようになっていたので、50分以上軽がると続けられる。

 

 

・・・まだ、肺胞から伸びている気管を一気に使用すると死ぬ恐れがあるため、少しずつ開けていき量調整などを覚えていく。

 

 

 

 

 

 

15

 

 

 

 

あれからちょいと月日が経ち、タバサの秘密任務にも何度か立ち会った。

 

梟便が来て、竜が迎えに来る。

 

 

 

さすがに堂々一緒に行くのは危険なので、遍石で作ったアクセサリーを渡すことにした。

 

2つのイヤリングと指輪だ。

 

 

1つ目のイヤリングは『見ること』が出来る。遍在の欠片が辺りの光景を送ってくれる。

 

2つ目のイヤリングは『伝えること』が出来る。遍在の欠片が俺の言葉を伝えてくれる。

 

3つ目の指輪は『音を拾うこと』が出来る。遍在の欠片が周囲の音を伝えてくれる。

 

俺が風のスクエアと言うことは教えてないので、特殊なマジックアイテムだと言って渡した。

 

ちなみにこのアイテム、小型化したので容量が少なすぎて、考える事とか他の事が一切出来ない。

 

その分持続期間を延ばせるだけ延ばした結果、ちょいちょい節約して、1週間持つ。

 

 

何度か任務の内容を見て思ったんだが。タバサがもし父親似だとすると、ガリアの前王は当然の選択をしたといえよう。

 

 

・・・イザベラの気持ちに気づいてやれ、タバサ。

 

つーかありえんだろう、ガリアほどの大国が2月に裏の仕事が2・3回あるかないかって。

 

1回目はニートの貴族の息子の復帰だった。

 

そんな裏仕事があってたまるか!!イザベラの苦労が目に浮かぶ。まず間違いなく必死こいて回したんだろうなあ。

 

2回目は、裏切り者の始末。

 

・・・とは言ってもタバサよりも格下だったけど。極力傷ついてほしくないんだろうなあ。

 

3回目は、自身の護衛。

 

まあ、茶番だったが。最終的に裸踊りまでさせられて、お咎めナシって、イザベラ・・・不憫な。

 

ちなみにこのとき出会ったカステルモールに、仲間になってもらった。

 

すんなり信用するのは危ないので、遍石で作ったアイテムを連絡用マジックアイテムと偽り?渡させ、大丈夫かどうかを見たけど。

 

 

最初予想したとおり、トリスティン魔法学院に留学させたのは、トリスタニアに亡命か逃げさせるためだろう。まあ、タバサが逃げなかったのは予想外だったんだろうけど。

 

 

カステルモールが仲間になりまずやったことは、ジョセフ王の情報収集だった。

 

集まった情報を整理すると、ジョセフ王もかなり心情的につらかったことが伺える。

 

何で周りは気づかないのかなぁ?

 

ちなみに、カステルモール曰く「東薔薇騎士団一同従います。」見たいな事を言ってきたので、「隠密行動だこの馬鹿!!」と言ってやりたかったが、タバサに言ってやんわりと断ってもらった。

 

 

 

 

それから更に月日は進み、今は2年生に進級するための進級試験が、目前に迫っていた。

 

 

別に試験そのものは問題なかった、適当に呪文を唱えるだけなんだから。

 

ただあのハゲやろうがいった言葉が問題だった。

 

「呪文により出てくるものを若干ではありますが、選ぶことが可能です。」

 

等と言ったことがエルザとラコイの耳に入っちまった。

 

 

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、使い魔召還で私達を呼び出して。」

 

「そんなむちゃくちゃな。」

 

「でもクリス様、コルベール先生が選べるって。」

 

「若干が抜けてるぞ、ラコイ。俺も少しだけど文献見てみたが、呪文の最後に唱えるキーワードで、出てくるものを操作出来るらしい。たとえば、我の望む『強きものよ』って、言えば強いものが出てくる、みたいな?」

 

「ふーん、じゃあ私達で、私達が呼び出されるキーワードを考えればいいんだね!!」

 

「・・・いや、出来るとは限らないぞ?」

 

「やります。私、クリス様の使い魔になりたいです。」

 

思わず頭を抱える。何を考えてるんだこいつらは、使い魔になるってことは自分の人生を捧げるも同然なんだぞ?

 

そのことを説明したら「「むしろ喜んで。」」なんて言ってきやがった。

 

いや、俺お前らよりも早く死ぬし、特にエルザは何時までも成長しない事で絶対怪しまれるし。

 

まあ、いいか。普通に考えて成功するはずが無い。

 

 

成功するはずが無い!!

 

 

 

 

 

16

 

 

 

 

 

今日は召喚の儀式の日だ・・・

 

さあこれから召喚だ・・・

 

召喚だろう?これから・・・

 

今から呪文を唱えるからどいてくれ・・・

 

お願いどいて?・・・

 

ね、目の前で目をつむって顔上げて『キス待ち』している二人とも・・・

 

 

 

あはは~、なんでこうなった。

 

 

昨日、エルザとラコイが考えたって言ってきた、召喚の呪文は大当たりだった。

 

だって目の前に二人がいるんだもん。

 

 

「ミスタ?さあ、はやくコントラクト・サーヴァントをしなさい。」

 

 

どこぞのハゲ頭が意味不明な言葉を発しているぞ?

 

 

 

 

出来るわけねえだろ。

 

 

っは。

 

そうか。今見ているのはやはり、夢なんだ。

 

だってそうだろう?

 

 

召喚、要はワープ。

 

ワープは光の速さに達すると可能だとか。

 

だが召還の儀式を見ている限り、魔法により無理やり空間に穴を開けている。

 

空間に穴を、この星のこの大気も宇宙の一部。

 

つまり、宇宙破壊し穴を開けているのと同じことだ。

 

そんな膨大なエネルギーをたった一人の人間が?

 

ないない。

 

 

そうさ、これは夢なんだ。

 

 

長~い長~い夢なんだ。

 

 

あははっ、涙が出ちゃう。だって男の子だもんっ。

 

 

「?何をぶつぶつ言っているのですか?さあ早く、コントラクト・サーヴァントを。」

 

 

 

あははは

 

 

 

 

 

 

 

今俺は地面に座っている。

 

気のせいだろうか、両隣に見知った女の子がいるような気がする。

 

やけに嬉しそうに腕を組んでいるが、幻覚だろう。

 

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

 

 

 

なんだぁ?

 

さっきからうるせえなぁ。

 

人がさっきから現実逃避しているのに。

 

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

 

 

そおいやあ、今日は合同授業だったな。

 

てーとあれは、隣のクラスの、桃髪の、あーたしか、ルイ・・・ズ?だっけか。

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、

 

五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし・・・使い魔を召喚せよっ!!」

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

うんルイズだな。おもいっきし名前言ってるし。

 

 

周囲からヒソヒソと「いつまで失敗していれば気が済むんだよ。」とか「さすがはゼロのルイズ。」など陰口が聞こえる。

 

 

・・・凄い威力だな、あの魔法、地面がえぐれてる。

 

 

 

どおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

「ミス・ヴァリエール。もうそろそろ時間ですし、続きは明日ということで。」

 

「そんなっ、あと一回、あと一回だけお願いします。」

 

 

「何回やっても結果は同じだよ、なんせ『ゼロ』なんだからな。」

 

 

ははははははははははははははははははははは

 

 

 

・・・凄いな。あの威力の爆発を起こしまくるやつをからかうなんて。

 

一発喰らっただけで下手すりゃ死ぬぞ。

 

 

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、

 

五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし・・・使い魔を召喚せよっ!!」

 

 

 

 

どおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんん

 

 

 

 

うわぁ、すげぇ。

 

 

でも成功したようだな、砂ぼこりの中に影が見える。

 

 

ん?人か?

 

 

 

 

・・・うそだろ

 

ありゃあ日本人だ。

 

 

 

 

 

 

17

 

 

 

 

昨日の召喚は驚きの連続だった。

 

はしゃぎまくるエルザとは、まともな話が出来なかったため、一夜明けて落ち着いたラコイに話を聞く。

 

二人で並んで俺を見ていたから正確ではないが、なんでも、恐らくエルザ側にゲートが出来たらしい。

 

エルザがラコイの腕をつかんで、二人で無理やり入ったみたいだから、たぶんらしいが。

 

 

エルザとラコイが亜人だってばれなきゃ良いが、もう考えてもしょうがない、諦めて現実を受け止めよう。

 

 

それにしても一番驚いたのは、日本人が出てきたことだ。

 

 

 

恐らく彼が答えを出してくれるだろう。この世界が夢かどうか。

 

 

 

 

初日に一見平民のように見える彼に、そのまま話しかけるのは後々彼にとっても問題が起こるだろうと思い、話しかけるタイミングを計ろうと、今日朝食を食べながら考えていたら、来たよ・・・こっちに。

 

 

シエスタに案内されて厨房の裏へ朝食を食べに来たとの事だ。

 

名前は平賀才人、17歳、高校生。

 

話を聞いていると、まあ、想像どうりと言えばそうなんだが。

 

ミス・ルイズからの、扱いが酷い。床で食わせるって。

 

 

 

 

「へ~、つまり君は『異世界人』だというんだね?平賀君。」

 

とりあえず、最初は口ごもっていたけど、色々聞いて一番聞きたかった言葉を聞き出す。

 

「まあ、信じてもらえないでしょうけどそうです。」

 

「いや、信じないほうがおかしいと思うけど?」まあ同じ星の出身?だからね。

 

「へ?どうしてです?」

 

と、何故か周りで一緒に朝食を食べている厨房の皆さんも不思議顔。

 

思わずため息が出る。

 

「どうして?お兄ちゃん。」

 

お前もか、エルザ。しかもラコイも隣で、不思議そうな顔をしているし。

 

「まずは口の動きだ。みんな平賀君の口の発音と口の動きをよく見てごらん。」

 

「え?どういうことですか?」

 

「あ、違う。」と周りの皆さん。

 

「平賀君、よく口の動きを見ててごらん。」

 

「あいうえお」

 

「え?口の動きが、あれ?」

 

やっと気がついたか。

 

「それと、平賀君の足を見てごらん。」

 

と皆で足を見る。

 

 

「で?」

 

 

「・・・今度は自分の足を見てごらん?」

 

 

「で?」

 

ちょっとは考えろ、オマエ等。

 

「彼の履いているのはなんだい?」

 

「靴?」

 

「そうだね、俺達が履いているものとは比べ物にならないほど、精密に作られている靴だ。」

 

ばっ

 

皆まじまじと平賀の靴を見ている。靴の横に白いスラッシュ?見たいなのが入っているから恐らくナイキだろう。

 

 

「本当だ。」

 

それ以外にも「うお、すげえ。」とか「こんなの見たこと無い。」とか「貴族様でもこんなの履いている人見たこと無い。」等など。

 

 

いや、遅ぇよ。

 

 

「服なんかも一見しただけじゃあわからないけど、平民がまず着ているようなものじゃない。」

 

 

服、特に縫い目を皆でまじまじと見ている。

 

 

「細かく作られてる。」

 

 

「つまりは、別の所から来てるって事を、信じないほうがおかしいって事だ。」

 

「「「「なるほど。」」」」

 

 

わかってもらえて何よりだ。まあ何人かは『本当か?』見たいな顔をしていたけど。

 

 

朝食が食べ終わるころ、皆に平賀君が『異世界人』だと言う事を言いふらさないよういい含めておく。

 

「平賀君?君も周りにやたらと言わないようにね?」

 

「えっと何でです?クリスさん。」

 

「たとえばだよ、君のクラスの友人がいきなり自分は『異世界人だ!!』なんて事言い出したら君は信じるかい?」

 

「信じませんね。」

 

ちょっと落ち込んで答える平賀君。

 

「だろう?頭おかしいんじゃないかなんて、思われてもおかしくない。」

 

「でもお兄ちゃん、証拠があるじゃない。」

 

「それも言わないほうがいいな。」

 

「なんで?」

 

「まあ、一度平民が身につけたものを着たがる貴族がいるとは思えないけど、下手すると奪われかねない。」

 

「え、なんでですか?クリスさん。」

 

「価値が高いからだ。物好きな貴族だったら金をだすだろう。たぶんな。」

 

「そんなの抵抗すれば「平民は基本貴族には抵抗できない。」 え?なんでです?」

 

 

「まあ、簡単に言うと俺達貴族は地位が高いんだ。平民は殺されても基本、文句は言えない。」

 

「そんな、」

 

「この世界は基本そうなんだよ、馬鹿みたいだけどな。」

 

「クリス様、そんなことを言っては駄目です。他の貴族様に聞かれでもしたら。」

 

「とまあ、こんな感じだ。」

 

「まあ何か言われたら東方の出身だとでも答えなさい。」ミス・ルイズにも同じ事を言われたらしいが。

 

カラ~ンカラ~ン

 

 

学院の呼び鈴がなる。

 

 

「授業が始まるな。」寝ているだけの。

 

「とりあえず一緒にいこうか、教室は同じだからな。今日の夕食の時にまたここで話そう。」

 

 

そのあとシュヴルーズ?とかいう教師の授業があり、むりやり起こされた後、使い魔の話でルイズは失笑、何故か俺は殺気をあてられ、教室が爆発した。

 

 

爆発は凄い威力だった。

 

 

 

2日経った。

 

その間平賀君の世界、要は地球について詳しく聞いた。

 

特に俺の知らない部門や興味の無い知識を。

 

この世界はやはり現実なのだろう。

 

まだ不思議なこともあるが考えてもしょうがない。うん、しょうがない。

 

この世界で生きていこう。

 

まあそんなことはさておき。

 

 

とりあえず平賀君には、貴族には逆らわない事を重点的に教え、この世界の仕組みを教えた。

 

教えた。

 

教えたはずだった。

 

 

そして何故か、シエスタから平賀君が貴族と決闘をすることになったと聞かされた。

 

 

 

なんで~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

18

 

 

 

 

 

お昼時に、何故か決闘することになった平賀君。

 

下手したら殺されるって事を、もう一度しっかり教えようとしたのだが、何故か聞く耳を持たない。

 

そして最悪なことに俺を振り切って、他の学生に広場の場所を聞き走っていってしまう。

 

 

ミス・ヴァリエールが走って平賀君を追いかけていく。

 

 

どうしよう。

 

 

仮に力ずく止めたとしても、絶対後々文句言われるぞ、あれじゃあ。

 

同じ世界出身だって事を、言っときゃあ、まだ何とかなったかも。

 

 

周りの学生の話からすると相手はギーシュって奴でドットだとか。

 

『青銅』って2つ名からすると土か。

 

 

しっかし教え方が足りなかったかなぁ?

 

武器が無い状態で勝てる見込みがあるなんて、何で思ったんだろう。

 

とりあえずエルザとラコイには平賀君の所に行くよう伝え、自室に急いでいき、日本刀を取り出す。

 

しかし、これを渡してしまうと回収時に、厄介なことになりそうだ。どうするか。

 

部屋にある、常備しておいた遍石を数個取り出し、窓から裏へと降りる。

 

遍石から遍在を出して錬金で剣を作り、全員で固定化をかける。剣を作る際に遍石を1つ埋め込む。

 

エルザとラコイから、決闘の光景を送ってもらう。使い魔、便利だな~。

 

まあ思っていた通り、ゴーレムをみてびっくりしてるな。あ、1発殴られてふっとんでる。

 

やれやれ、このままじゃあ殺されるな。

 

現代日本人、殺し合いすら見たことの無いだろう彼に、かけてみますか。

 

うまくいったら殺し合いの恐怖ってやつを、周りの馬鹿どもに植えつけられるし。

 

最悪決闘だから大怪我してもしょうがない。

 

決闘をやっている広場へと、剣をぶん投げる。

 

遍石でフライを操作し広場に向かい上空から、平賀君の前に落とす。

 

そして広場へと走る。

 

遍石から状況がわかる。

 

「なんで剣が上から?」

 

「サイト、もうよしなさい、勝ち目なんか無いわ。」うんぬんのやり取りの後、

 

「下げたくない頭は下げられー。」と言って剣を引き抜く。

 

「下げろよ、馬鹿かお前は。」と、言いたくなるのを押さえ、観衆の中に混じる。

 

さて遍石を使ってフォローしますか。と、思っていたら。

 

 

なんだこれは、これならいける。   ザンザンザン

 

 

まあ固定化かけまくったからなぁ。

 

ただ、平賀君の動きがありえなかった。

 

普通に鍛えたとしてもあんな動きは出来ないはずだ。どういうことだ?

 

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~」」」」

 

 

あ、勝った。

 

ま、当然だな。

 

さて、剣を遍石を使い崩壊させ、コレにて一件落着。

 

夕食時、厨房裏に平賀君が来る。

 

しっかしまあ、周りから『我等の剣』だとかなんとか、持ち上げられちゃってまあ。

 

これなら心配ないかな?むりやり現代日本から、へたすりゃ原住民族の所へ送り込まれたものだからなあ。

 

しかも、人としての価値も低く見られるし、ここには娯楽も無い。向こうと比べて旨い物も無い。唯一の希望は人とのつながりだけ、最初は正体をばらそうかと思ったけど、ヴァリエールが関わってるしなあ。

 

とりあえず様子を見ておくか、精神がやばくなる兆候が見られたら、正体を明かそう。

 

 

色々話を、嬉しそうにしている平賀君を見て、「まあ今はいいか」と、思い黙っておくことにする。

 

 

 

一応、帰れるよう、サモンサーヴァントについての研究でもするか。

 

ただ不思議なのは彼のあの動きだ。

 

彼は剣に付与されている魔法だと、思ってたらしいがそんなものつけた覚えがない。

 

あの時、ルーンが光っていたから、恐らく使い魔としての彼の能力だろう。

 

 

考えなくちゃいけないことが今後増えそうだなあ。

 

 

はぁ。

 

 

 

 

 

 

19

 

 

 

 

 

 

「今日は体の改造でもやるか~」と、思い立ち体をいじることにする。

 

今回注目したのは『皮膚』だ。

 

ミノタウロスと対峙したしたことが何回かあったが、あの皮膚はすばらしい。

 

 

まず厨房から、料理に使わない骨や筋を貰う。

 

なぜ骨や筋かというと、大量にコラーゲンが含まれているからだ。ぶっちゃけ皮膚なんておまけだ。

 

 

まず、遍在を出し、一緒に魔法で、骨・筋を水に溶かす。

 

そこから余分な物を取り除いていき、コラーゲン等の必要な栄養分の塊にする。

 

これを皮膚に接する血管から流していく。

 

 

皮膚へ構築する際に通常の人とは違い厚く、丈夫になるように、繊維状にし、編みこんでいく。

 

 

各関節などを動かし、邪魔にならないよう、厚くしていく、ひたすら厚くしていく。

 

大量に余ったので、厚くした皮膚の下に、骨をうろこ状にした様な物を埋め込んでいく。

 

うろこに骨の内部からとった骨を少しだけ混ぜる。

 

こうすることにより、傷ついても治る・・・かも。

 

各関節にもプロテクター状に生成していく。もちろん指にいたるまで。

 

 

ちなみに皮膚もコラーゲンが含まれているが細かく分けると違うものになっていくので、養分を違うものに加工していく。こうしないと皮膚全部、骨になってしまうからね。

 

ついでに各所の筋も強化しておく「全力出したらアキレス腱切れた~」じゃシャレにならないからね。

 

 

思った以上に量があり全身に行き渡ってもまだ余った。

 

 

次は・・・骨にするか。

 

骨の内部には所々隙間がある。

 

だが骨の内部は雑に並んでいる、これを変えていく。

 

簡単に言えば、中が詰まった鉄よりも、パイプ状にしたほうが丈夫になるのだ。

 

骨の内部を、凄く細かいハニカム構造にし精密に仕上げていく、たぶんミリよりちっさい。

 

さらにそれを、規則正しい何重にもしたアーチ状につなげていく。アルミからジェラルミンになったって感じだ。 

 

体重もさらに増えたぜ。

 

目指せ!!超々ジェラルミン。 

 

 

 

 

 

・・・ちょっとやりすぎたかな?

 

 

 

皮膚はすでに、青銅の剣だと切れやしない。

 

このとき、思いっきりたたき付けたはずなのに、骨にはひびすら入らない。てか、厚い皮膚とうろこがクッションになり、骨に衝撃が伝わらない。

 

 

ためしに裏庭に行き、リミッターを解除して思いっきり学院の固定化がかかっている壁を殴ってみた。

 

 

 

ひびがはいったよ・・・壁に。

 

ちょいちょいちょい、人間は、鍛えてない成人男性でも、リミッター解除(火事場の馬鹿力)をすると、1tまで持ち上げられることが出来るそうだ。

 

その点俺は、各所の強化によりその倍は出せるようになった。まあ感覚でだけど。

 

要は通常の人は両手で1tだが、俺は片手で1t出せるのだ。

 

 

「・・・まだ俺は人間だ、まだ俺は人間だ、まだ俺は人間だ、まだ俺は人間だ」

 

 

 

おもわずつぶやく。

 

 

ちなみに、各所のチェックをやってみたら、いつの間にか心臓の筋肉の質が変わっていた。

いっじってもいじらなくても変わらなかったなあ。

 

 

体をいじる前に出した遍在と、組み手をしてみる。

 

肺の操作はもはや完璧だ。

 

 

リミッター解除を長時間やると、普通体を痛めるのだが楽々最後まで持ち、脳内処理の高速化と同時に駆使した結果。

 

 

 

5対1で楽々勝っちゃったよ。

 

だって遍在の打撃、効かないんだもん。

 

関節技かけられても、殆ど効かないし。

 

ぶん殴ると吹っ飛んでいくし。

 

 

そのうち、バイクに乗って仮面でもかぶろっかな?

 

ははは、しゃれにならん。

 

 

 

 

 

 

 

20

 

 

 

決闘から騒ぎから幾日かして、いつものように夜、訓練をしようと外を歩いていたら。

 

ドーン  ドーン

 

と、爆発音が聞こえる・・・なんとなく聞いたことのある悲鳴も。

 

こっそり覗いてみると・・・なにやってんだぁ?ありゃあ。

 

平賀君が吊るされて、ツエルプストーさんとヴァリエールさんに、攻撃されている?

 

タバサさんは傍観中?

 

 

いくらなんでも放置したら『平賀君が死んでしまう』と、思い、ため息混じりに顔を出す。

 

そしたら、

 

「あっ、クリスさん。助けてーーー」

 

と、言う言葉に、3人の目線がこちらに向けられる。

 

「で?何をしているんですか?お三方。」

 

「ふんっ。貴方なんかに関係ないでしょう。」と、ヴァリエールさん。

 

「ふふ、女の事情に顔を突っ込む打なんて、野暮な人。」と、ツエルプストーさん。

 

「2人から剣を送られ、どちらを受け取るか今争っている最中。」タバサさんありがとう。

 

 

なるほど!!首を突っ込むのは危険だな。

 

「平賀君、死なないようにガンバレー。」

 

「そっそんな~。」

 

今日は訓練やめておくか、見つかったら最悪だ。

 

帰ろうかと思いきびすを返s「あっ、惜しい。」ヴァリエールさんの言葉に振り返り固まる。

 

あそこはたしか宝物庫のはずだ、ひびが入っている。

 

すごいな、さすがだ。

 

そのときのことだった。

 

 

 ドオオオオオオオオオオオ

 

 ドオオオオオオオオオオオ

 

 

でかいゴーレムがこちらに迫ってきている。

 

タバサさんが咄嗟に平賀君を吊っている紐を切る。

 

あれは、たしか、フーケか?

 

朝飯食っている時に話題に出たな。

 

宝物庫をでかいゴーレムが殴り壊す。

 

ゴーレムの肩に乗っかっているのが、フーケか。

 

 

ひとまず退散だなこりゃ。あっちのほうも逃げてるし。

 

 

 

 

次の日の早朝学院長室に呼び出される。

 

 

どうでもいいが眠い。

 

 

教師達が口々に罪を擦り付け合っているのを、オールドースマンが諌め本題に入る。

 

「それで、昨日の事を詳しく教えてくれんかの?」

 

ヴァリエールさんが一歩前へ出て説明しだす。

 

 

~~~~~~~~~~~~~説明中~~~~~~~~~~~~~

 

 

「なるほどのぅ。しかしそれでは手がかりは無しか。」

 

その時扉が開きロングビルさんが部屋に入ってくる。

 

「ミス・ロングビル!!どこへ行ってたんですか!!」

 

「そうです!!この一大事に!!」

 

「一大事だからこそです。」

 

 

ロングビルさんは何でも調査に行っていたとのことだ。

 

 

調査の内容は、「徒歩で半日、馬で4時間いった先の森にある廃屋に、入っていった黒ずくめのローブの男を見た人がいる。」

 

それを聞いた1人の先生が「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」等と寝言を言う。

 

するとオールド・オスマンさんは首を振ると目をむいて怒鳴った。年を重ねた者だけが出せる凄まじい迫力と共に。

 

 

「馬鹿者! 王室なんぞに知らせている間に逃げられてしまうわ! その上・・・身にかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた時点で、これは魔法学院の問題じゃ! 当然我らで解決する!」

 

うんうんそうそう、王室にってあほか。ここの教師はあほばっかりか。

 

そんなことを考えながら『早く誰か突っ込まないかなぁ』と、ぼーっとしながら待ち続ける俺。

 

 

そうしているうちに。

 

 

「では、捜索隊を編成する。我と思う者は杖を掲げよ」

 

はやく誰か突っ込め~。

 

 

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う勇敢な貴族はおらんのか!?」

 

 

「なっさけないのぉ! いつからこの学院は腑抜けの集まりになってしもうたのか!」

 

 

そうそう、行く必要なんt「ミ、ミス・ヴァリエール!?」へ?

 

 

シュヴルーズ先生が驚きの声をあげる。ヴァリエールさんが杖を掲げている。

 

「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて・・・」

 

「ですが・・・誰も・・・誰も掲げないじゃないですか!」

 

 

ぽかんと、していると話が進んでいく。

 

 

「なら、私も」

 

「ミス・ツェルプストー!? キミまで・・・」

 

おいおい、まじか。

 

 

「ヴァリエールには負けられませんから。」

 

すると、タバサさんまで杖を掲げた。まあ、期待はしてなかったが。

 

 

「タバサ・・・あなたはいいのよ。関係無いんだから」

 

「心配」

 

 

そして皆で杖を挙げてない俺を見る。

 

・・・えーと、なんで行く必要があるの?

 

 

うわぁ、めんどくっさ。この流れで行くと、必要の無い捜索を俺もしなきゃなんないの?

 

とりあえず、目立つことと、これから間違いなくフーケのゴーレムに襲われることを天秤にかける。

 

まあ、別に行かなくても良いんだけれど平賀君がなぁ。

 

 

「オールド・オスマン。」

 

「なんじゃ?ミスタ・プルトン。」

 

「ちょっと貴方と、ミス・ロングビルと3人だけでお話が。」

 

「はあ?何言ってるのよあんた。」

 

お前は黙れ、この桃空頭。

 

 

「『フーケ』のことでぜひ、お話が。」特にフーケを強調し言う。

 

 

「ふむ。いいじゃろう。皆は少しの間部屋から出ていなさい。」

 

よかった。

 

「そんな、こんな『底辺』なんかと。」

 

 

なんだかぶつぶつ言いながら、部屋を出て行くヴァリエールと皆さん。

 

 

 

「さて。話とはなんじゃ?」

 

「その前に。」

 

誰が聞いているかわからないので、部屋にサイレントをかける。

 

 

「さて。ミス・ロングビル?質問があります。」

 

「何でしょうか。」やや睨みながらこちらに話しかけてくる。

 

「まず、貴方はどうやってフーケの居所を調べたんですか?」

 

「え?それは人に聞いて。」

 

「そうですか。その村に行くまでにどのぐらい時間がかかります?」

 

「大体2時間ぐらいですわ。」ひっかかった。

 

「そこから小屋まで4時間?」

 

「そうです。」

 

よし。後はダメ押しかな?

 

 

「村人には何人ぐらいに聞きました?」

 

「大体20人ぐらいにですけど。」

 

ちらっと、きょとんとしているオールド・オスマンを見る。

 

まだか。

 

「そこへはどうやって行ったのですか?」

 

「もちろん馬ですけど。」若干イライラしてきたなぁ。

 

そして、ちらっと、きょとんとしているオールド・オスマンを見る。

 

「なんじゃ?さっきからちらちらと。」

 

「いえ。なんでも。」ああ、顔が引く付いているのが自分でもよくわかる。

 

「ミス・ロングビル?今、何時ですか?」と聞く。

 

「今ですか?今は大体5時ですわね。」

 

「そうですか。昨日フーケが出たのは何時頃?」

 

「7時ですけど。」

 

「その20人に聞いたのはどのぐらい時間がかかりました?」

 

「だいたい、1時間ぐらいd」

 

やっと気が付いたか。

 

「どうしたのじゃな?ミス・ロングビル。」

 

「いえ。なんでも。」と、青い顔のロングビルさん。

 

 

「え~と、オールド・オスマン?行く必要がありますか?」

 

「無いの。」

 

おっせえよ。気づくのが。

 

 

「どうしてわかったんだい?坊や。」

 

「いや、どっちに逃げたのかもわからない、フーケの居所が次の日にわかった時点で、怪しさ爆発じゃないですか?それにフーケが出たのが7時、その後移動で4時間、見かけたのが11時。村に帰ってくるので午前3時、そんな時間に出かける村人がいるとでも?ま、盗賊にでも聞いたってなら話は別なんですけどねぇ。」

 

「たしかに無理があったねえ。」

 

「わかったよ、私の負けさ。さっさと王宮へ突き出しな。」

 

「残念じゃよ、ミス・ロングb「はい、まった。」へ?」

 

 

「話している最中に考えたんですけど。」

 

「なんじゃ?」

 

「ミス・ロングビル?何で貴方はそんなに金が必要なんですか?」

 

「なんだい?いきなり。」

 

「だって、そうでしょう?見栄っ張りで知られるトリステイン貴族のことだ、報告に出ている数以上の被害があったておかしくない。」

 

「それはもちろん遊ぶ金がほしいからさ。それ以外に何があるって言うんだい?」

 

「はぁ。良いですか?王宮に捕まったら間違いなく死刑ですけど?」

 

「ふん、承知の上さ。」

 

「そうですか、それでは貴方が助けようとしているいるだろう『誰か』は、死んでしまいますねぇ。」

 

「は?何言ってるんだい。」

 

やれやれ、俺もお人よしだなあ。

 

 

「貴方は遊ぶ金欲しさと言ったけど、貴方の身なりを見る限り宝石1つすら着けていない。」

 

「それは、」

 

「遊びが趣味なら、宝石の1つや2つ着けていてもおかしくは無い。」

 

 

「それと、オールド・オスマン?学院長の秘書って言うのはそんなに暇なんですか?」

 

「そんなことは無いのぅ。」

 

「でしょう?あとは、何かに縛られているかだ。」

 

「借金か、人質か、養っているか。」

 

「なっ。」

 

「借金だとしても、貴方ほどの腕前なら借金取りから逃げ出せてもおかしくないので、この線はボツ。」ちょい抜けているけど。

 

「残ったのは。」

 

「なるほどのぅ。」

 

 

「くっ、」

 

「だからなんだって言うんだい、あんたが助けてくれるって言うのかい?」

 

「ま、内容によっては。ねぇ、オールド・オスマン?」俺は、この国の貴族は基本嫌いだし。

 

「しかしのう。」

 

「私が聞いた話では、貴方はミス・ロングビルに随分とセクハラをしていたようじゃないですか。」

 

現代日本では大問題なのに。

 

「そっそれは。」

 

「触るだけ触っといて、後はポイですか、そうですか。嗚呼可哀相なロングビル、女の人がお尻とか触られたり覗かれたりするのはさぞ苦痛だったでしょうn「わかった、わかった聞くだけじゃぞ。」

 

 

「さて、聞かせていただけますか?」

 

「・・・私が養っているのは一人だけじゃないんだよ。」

 

「でしょうねぇ、それも働けないほどの子供では?」病気持ちだったら別だけど。

 

「なっなんで。」

 

「じゃなきゃあ、その子たちにも働かせるでしょ。しかも訳ありかな?」

 

「そうだよ。私がかくまっている中の一人は・・・エ、エルフだよ。それでもいいのかい?」

 

 

うわぁお、よりにもよってエルフかぁ。

 

オールド・オスマンも顔が強張っているよ。

 

 

ん?エルフ?

 

 

「え~とその人は貴方の恋人かなんかで?」

 

「私の妹分さ。」

 

「先住の魔法が使えるのでは?」

 

「ハーフエルフでね、先住は使えないんだよ。」

 

 

「何が言いたいのじゃな?」

 

「何で、サハラ砂漠の向こうにある、エルフの里に返さないのかな~と。」

 

「その子の母親がその里から追い出されてね。」

 

なるほど。

 

 

「う~ん、案が無いこともないけど。」

 

「オールド・オスマン?」

 

「なんじゃ?」

 

「あとの決定は貴方に任せます。それに私は従います。」

 

 

 

 

「はぇ?・・・なっ、なんじゃそれは。ここまできてワシに丸投げか?」

 

「っま、簡単に言えばその通りです。」

 

「そ、そんな、「私は貴方に従いますよ?」くぅ~~。」

 

 

 

「し、しかしのう。」

 

 

 

「お主さっき案があると言ってたな?」

 

「ええありますよ?」

 

 

「それはどういう案じゃ?」

 

ふふっ、予想通り。

 

「つまり助けるので?」

 

「ふんっ。ここまで聞いて助けないなど言ったら悪者じゃないか。」

 

 

 

「あ、ありがとう。ありがとう。」

 

あ、泣き崩れた。

 

まあ、さっきまで今にも泣き出しそうな顔をしていたんだ、見捨てたら悪者だぁな。

 

「じゃあその前に、外の人たちを中に入れますか。さっきのロングビルの話の中の矛盾点を見つけられると厄介ですし。」

 

「とりあえず、その小屋に行くだけ行って、破壊の杖を取ってきましょう。」

 

「そうじゃの、ほれ、ミス・ロングビル泣き止みなさい、目の周りが赤いのはワシがフェイスチェンジでごまかそう。」

 

「はい、ありがとうございます。」

 

 

サイレントを解き、皆を中にいれる。

 

そして、立候補した4人 (平賀君は強制)と俺と、ロングビルさんで捜索隊が結成される。

 

 

 

 

 

21

 

 

 

「それにしても、3人だけの話ってなんだったの?」

 

「ああ、ま個人的な話だよ。」

 

「ふ~んそお。」

 

桃色頭よ、それほど興味が無いなら聞くな。

 

 

オールド・オスマン、ロングビルさんとの秘密の会合のあと、土くれのフーケ討伐隊が出発した。

 

本当は付いていく必要は無かったんだが、ロングビルさんにぼろを出されると困るので、フォロー役として付いていく。

 

 

簡単な話をしながら目的の小屋へ付く。なんかいがみ合っていたが、ツエルプストーさんも友人思いだねえ。

 

 

「で、偵察権囮は誰が行くんだ?」

 

「んじゃ、俺が。」さっさと終わらせよう。

 

「すばしっこいのがいい。」と、俺を止めるタバサさん。

 

みんなの視線が平賀君に集まる。

 

「へ、俺?」

 

「そうね、あんたすばしっこいもんね。」

 

 

 

「誰もいないよ~。」

 

そりゃそうだ。

 

見張りと言って、ロングビルさんと共に小屋の前に立つ。だっていくらなんでも埃まみれはいやだ。

 

 

「あった、あったわ。」

 

そりゃそうだろう、隠した本人から聞いたんだから。

 

「なっんでこんなのがここに?」

 

ん?平賀君の様子がおかしい。

 

皆が出てきて、ヴァリエールさんが抱えてきたものを見ると、思わず絶句する。

 

ロケットランチャーかよ。

 

 

その後、学園に戻り破壊の杖をオールド・オスマンに渡す。

 

オールド・オスマンから、よくやってくれた云々のあと、平賀君が話があると言い出す。

 

ヴァリエールさん達3人と共に出て行こうとしたら。

 

「クリスさん、貴方にも聞いてほしい。」

 

と、呼び止められた。

 

 

「破壊の杖、これは俺の世界の武器だ。」

 

「なんと。」

 

「どこでこれを手に入れたんですか。」

 

「ふむ、これはの、命の恩人の持ち物なのじゃよ。」

 

 

オールド・オスマンの話によると、昔ワイバーンに襲われたときに、これのもう1本の方を使い助けてくれたとのこと、そしてその人は死に1本は墓に、1本は宝としてここに残したと。

 

思わず顔が強張り、背筋に悪寒が走る。

 

話に聞く背格好からして、戦争中の軍の兵士だろう。

 

 

はっと、平賀君とオールド・オスマンを見るが、俺の表情に気づいてないみたいでほっとした。

 

 

話が終わり、出て行こうとする平賀君を呼び止める。

 

「え?何ですか?クリスさん。」

 

「この武器は戦争に使う武器だと言ったね。平賀君。」

 

「はいそうです。」

 

「しかも、恐るべき威力だと。」

 

「ええ、この学院の塔の1つぐらいなら壊せます。」

 

「どうしたのじゃな?ミスタ・プルトン。」

 

さて、どう言うべきか。

 

 

「君の世界の兵士は、この武器しか持たないのかい?」

 

「いえ、そんなことは無いですけど。」

 

「君の言うことが本当なら、ここまでコンパクトで強力な武器を使う兵士が、これ1つだけの装備とは考えられない。そうだね。」

 

「はいそうですけど。」

 

オールド・オスマンも俺の言いたいことが分かったのか、顔をこわばらせる。

 

「オールド・オスマン、その兵士の持っていたものはこれだけで?」

 

「いや、まだ他にもある。」

 

「今すぐ、それを平賀君に見てもらった方がいいと思いますが?」

 

「同意見じゃな。」

 

 

応急処置で、壁の穴がふさがっている宝物庫に入る。

 

 

結果は、俺の思った通りだった。

 

 

やっぱりあったよ、手榴弾。適当な保存の仕方をしてよく、爆発しなかったなあ。

 

平賀君に、「君の世界の物を並べてみてくれ。」と頼み、全て並べてもらう。

 

結果は、兵士が持ち込んだものだけじゃあ無かった、出るわ出るわ。

 

 

平賀君がオールド・オスマンに武器の説明をしていて、オールド・オスマンの顔を強張らせている。

 

 

俺は、地球から来たものを見ている。

 

 

何で、魔法のステッキ?他にも「こんなもんとっておいてどうするんだ?」見たいな物も多数合った。

 

 

銃が撃たれなかったのは、安全装置のおかげなんだろうなぁ。お、説明が終わったな。

 

 

「所でオールド・オスマン。」

 

「なんじゃ?」

 

「これらの武器の管理を平賀君に一任した方がいいのでは?」

 

「ふむ、そうじゃな。他の者が下手に扱って爆発でもされたら困る。」

 

「提案としては、置く為の専用の部屋を用意して、扉の鍵を二つで施錠し、1つは平賀君が保管するのが1番かと。」

 

「他の物が興味本位でいじくって爆発しましたじゃあ、シャレにならない。」

 

「うむ、明日にでも手配しよう。これらの運搬時にはサイトくん、手伝ってくれるかの。」

 

「はい、わかりました。」

 

 

本当によく今まで爆発しなかったよな、学院。サブ・マシンガンまであるよ、恐ろし~。

 

 

その後平賀君と別れ、オールド・オスマンとロングビルさんとで、今後の話を進める。

 

今日行われる舞踏会は出なくてもいいか。

 

 

話し合いは間単に終わった。

 

とどのつまり、フェイスチェンジ、使えば早いんじゃね?と。

 

後、ハーフエルフのティファニアは、孤児たちと共に、家の領地で生活してもらう。

 

それと、出来る限り目の届く所にいた方がいいだろうと思い、準備が整い次第ロングビルさんもそこで生活してもらう。オールド・オスマン泣き叫んだが無視。

 

フェイスチェンジそのものは激しい衝撃を受けると解けてしまうため、毎度おなじみの遍石入りのネックレスと腕輪の2個とイヤリングを2個をロングビルさんに渡し、アルビオンへティファニアに渡しに行ってもらう。

 

ネックレスと腕輪は両方とも遍在が丸ごと入っているため、いざと言うときは護衛に早代わり。

 

はっきり言って並大抵のことでは効果は取れないし、まずばれる心配は皆無だ。

 

 

 

こうして家は、、土くれのフーケと言う優秀なメイジを引き入れることに成功した。

 

 

ラッキ?

 

 

 

 

 

 

 

22

 

 

 

 

 

ロングビルさんが無事に家の領地に入ったと言う一報を受け、久しぶりに領地に帰ることにする。

 

 

早朝のうちにエルザとラコイを引きつれ、バイクにまたがり出発する。

 

 

「いやーしかし久しぶりだな、実家に帰るのも。」

 

「そうですよ、クリスさま、全然帰らないんですもの。」

 

「はっはっは、んじゃ領地までかっとばすぞ~。」

 

「ちょっちょっと、お兄ちゃん?きゃあああああああ~。」

 

 

飛ばしまくったおかげで一日でついた。

 

 

 

領地に着き両親に顔を見せ、各所を見て回ることにする。

 

なんか以前よりも領地、でかくなってないか?

 

 

領民から話を聞くと、超貧しい地域を嫌がらせのごとく押し付けられ、その上色々と技術が他の領地に持ってかれているとのことだ。

 

まあ、狙いどうりだわな。

 

技術そのものは別に持ってかれていても実の所あまり関係がない。

 

何故ならここの領地だけが新技術などを持っていると他の貴族に目をつけられないからだ。

 

その為に品質の良いものの作り方は漏らさないようにしている。

 

まあ、時間がかかるから漏れてもマネされないだろうけど。

 

更にはこちら側の物が売れなくなった時用に領地内で農業もやっているのだ。

 

 

夜、両親との夕食時に提案をする。

 

簡単な工房を思いついたと。

 

 

今はまだ誰にもいえないが、とあるルートから手に入れた純度の高いガラスの作成方法、瀬戸物の作成方法、と学院に入る前から考えていた案である、海の方の産業に手を出す。

 

 

まあ、今回も例に漏れず簡単に作れるものをチョイスしておいた。と言っても、最初は苦労するが。

 

ちなみに海の方は、乾物関係。簡単に言えば増えるワカメかな?あと干物。

 

 

ちなみにマチルダさん (ロングビルさんの本名)の所へ行くと歓迎された。

 

さて、今回のメインだ。

 

「始めましてミス・ティファニア。」

 

「あっ、はい始めまして。」

 

すっげえ胸・・・下着も手を出すか?

 

 

「さて、ここでは俺は何て言われているか知っているかな?」

 

「ああ、驚いたさね、まさか全ての病を治せるなんてね。」

 

「ふふふ、学院では表立ってやったことは、一度も無いからね。」

 

「さてそれで本題だ。」

 

「なんだい?」

 

「実は俺、病気を治す関係上、体の造形もいじれるんだけど。」

 

「なっ、それってつまり。」

 

「そっ、そちらさえ問題なければ、耳を短くしようか?」

 

「ほっ本当ですか?耳を短く。」

 

「まあ、無理にとは言わないから、よく考えt「やります、やってください。」

 

「えっと、自分で言っといて何なんだけれど本当にいいの?その、エルフの血に対する誇りとか。」

 

「いいえ。長年この耳のせいで、マチルダ姉さんには迷惑をかけていたんです。」

 

「ティファ、そんな迷惑だなんて思っては無いよ、私はあんたを本当の妹のように思ってたんだからね。」

 

「マチルダ姉さん。」

 

厚く見詰め合う二人そして、半泣きできつい抱擁。

 

・・・そして、俺置いてけぼり。

 

 

まあ、そんなことがありちゃっちゃと耳を普通の人とわからなくした。

 

本当は、短くすることに対しての葛藤があると、思ったんだけれどなぁ。

 

 

 

孤児院を後にして、他にも色々と見て周る。

 

 

家に戻り、最後に驚きの報告を受ける。

 

 

学院に行く際に、外へ出て経験をつめと言って外に出した我が助手の一人が結婚することになり、俺に式に出てほしいと言うのだ。

 

はぁ~~

 

 

まあ、殆ど弟子のようなものだったので行かなきゃ行けないかなぁ。

 

何故こんなにも嫌かと言うと、婿に行く先が問題なのだ。

 

一応、手紙には配慮をしてくれるとのことだが・・・相手の結婚式で気を使われる俺って。

 

ここまで言われたら、出ないわけにはいかないだろう。

 

結婚式はラグドリアン湖で1年後に、結婚のお相手はヴァリエール家の次女で、カトレアと言うらしい。

 

馴れ初めは、いつものごとく各所で人々を治していた所、その噂がヴァリエール家の耳に入り、不治の病であるカトレアさんを治し (ちょっと苦労したらしいが)その結果、ぜひ婿にとのことで婿入りしたとのことだ。

 

義母親にはなんか色々大変らしいが、本人はまんざらじゃあない様子。

 

まあ、これからも色々していきたいし、ヴァリエールとの繋がりが出来たと思えばいいかな。ははは

 

 

その後学院に戻ると、異様に上機嫌なヴァリエールさんがいた事は言うまでもない。

 

やれやれ。

 

 

 

 

 

 

23

 

 

 

 

 

オールド・オスマンに事後報告をした時だった。

 

オールド・オスマンが泣きついてきた。

 

「潤いが。年寄りのたった1つの楽しみが。」と。

 

正直言ってうぜぇ。

 

だから俺はこう進言したんだ、まあ無理だろうとも思っていた。

 

「待遇上げるから、戻ってきてくれとでも手紙書けばいいじゃないですか。」と・・・

 

 

しばらくして、マチルダ・じゃなかった、ロングビルさんが戻ってきた。

 

戻ってくるとは思わなかったけど。

 

さらに俺は、驚愕の事実を聞く。

 

なんでもオールド・オスマンと交渉してティファにいままで窮屈な生活をしていたのだから、学院生活をしてやりたいと、入学の許可を取り付けたと、1ヶ月後に1年生として入学すると。

 

まあ、耳は丸くなったわけだし、ばれることも無い。

 

まあいいか。

 

 

 

 

タバサさんにガリアから任務が来た。

 

何時ものように遍石からの情報で、ミノタウロス退治だとわかる。

 

 

チャンスだ。

 

 

タバサさんに村で先に情報収集するよう伝え、日本刀とスキルニルを元に作り上げたマジックアイテムを持ち、オリジナルの飛行魔術で追いかける。

 

ちなみにこの飛行魔術、重力の向きを変え・進行方向へ飛び・体の回りに風な繭を作り抵抗を無くす。

 

はっきり言って恐るべき速さで飛ぶことが可能だ。

 

 

遍石からの情報で、なんでも10年前にもミノタウロスが居たらしく、そのときは偶々立ち寄ったメイジに助けてもらったと。

 

今回は広場の掲示板に名指しで生贄を指名されたとのことだ。

 

 

村に着きタバサさんと合流する。

 

 

ミノタウロスが文字なんて書くか?と思い、ちゃっちゃと洞窟に向かう。

 

タバサさんはシルフィードを囮に使おうと言い出したが、必要はなさそうだ。

 

ていうか、洞窟内にあきらかに人間の足跡いっぱい。

 

引っかかる奴がいるんだろうか?

 

 

取り合えず俺1人で入ろうとしたらタバサさんに止められた。

 

「1人で行くのは危険。」

 

まあいいか。

 

とりあえず、あほな人身売買業者どもをぶちのめす。

 

まああれだ、適当にのんきに固まっている所をエアストームとかぶっ放したら、みんな吹っ飛んだ。

 

横でタバサさんが驚いてる。もうそろそろ計画を実行するのだから実力を見せておいたほうがいいだろう。

 

「貴方は、水の使い手ではなかったの?」

 

「ん?言ってなかったっけ。」

 

「聞いてない。」

 

まあ、言う必要なかったしな。

 

 

 

後ろから女がこっそり近づいてきた。

 

杖にしている日本刀にある遍石で、見えているんだけどね。

 

ウインディ・アイシクルを飛ばそうとしていた所を、居合い抜きの要領で抜き放ち、風の刃で女の杖を切る。

 

「なっ。」

 

「はいはい、じっとしていな。次は当てるよ?」

 

これまたタバサさんが驚いている。

 

「それはただの剣じゃなかったの?」

 

「ん?俺特製マジックアイテム。」

 

 

そのとき。

 

「ほう、中々の腕前だな。これは手助けする必要なかったようだね。」

 

「なっ、ミノタウロス?会話が出来るのか。」

 

ミノタウロスが声をかけてきたときに思わず驚く。

 

会話ができるほど知性が発達したミノタウロス・・・

 

 

そのミノタウロスの名前は、ラスカスと言うらしく何でも10年前にミノタウロスを倒した貴族だとか。

 

簡単な話をして馬鹿共を村に引き渡すため分かれる。

 

 

村に着き馬鹿共を引き渡す。まあその際袋叩きに遭っていたが自業自得だろう。

 

 

「おい、向こうの村や街の近くで、子供がいなくなっているが、それも全部おめえの仕業だろ?」

 

1人が首を振って答える。

 

「知らない、俺じゃない。俺はつい、1週間ほど前にこの辺りに流れてきたんだ。」

 

「嘘をつけ!まあいい、お上にきっちり取り調べてもらえばいいだけの話だ。」

 

「ほんとだ!10年前のミノタウロスの話を聞いて、それで今回の計画を立てたんだ、嘘じゃない!」

 

 

・・・

 

 

次の日、タバサさんとシルフィとの3人?とで洞窟に再び入る。

 

「やあ、どうしたんだい。まだ何か用かな?」

 

「ああ、ちょっとね。」

 

「ほう。ちょっととは?」

 

「ああ、前に入った時から思ってたんだが、ラスカルさん。貴方は何を食べているのかな?」

 

その瞬間空気が変わる。

 

「ふごふごふご、何時気がついた?」

 

「まあ、最初からかな?ミノタウロスを含め強力な亜人は、体の維持の為にかなりの量を食べなければいけない。そして貴方は10年前からここに住み着いていると聞く。」

 

まあ、つまりは。

 

「最初は周辺の獣で事が足りるだろうが、ミノタウロスが同じ場所にい続ければ結果は。」

 

「なるほど。君の推測は正しいよ。だがどうするね。土地勘のない洞窟だ、どう考えたって私のほうが有利だ。」

 

「なるほど、確かに。」

 

「この洞窟では、こんな近くで威力の高い魔法は出しにくい。それにこう狭くちゃ俺の剣も本領発揮は出来ないな。」

 

ま、日本刀を振るだけでミノタウロスごとき倒せるんだけど、今回はそれが目的じゃあないしね。

 

「ふごふごふご。よくわかってるじゃないか。では、どうするのかね?」

 

「こうする。」

 

と言って日本刀を捨て、ラスカスに歩み寄る。

 

「なっ、危ない。」

 

「彼女の言う通りだ、それは自殺行為だな。」

 

「へぇ、じゃあ、やってみれば?」リミッター解除。

 

 

「なっ、なめるなーーー。」

 

と言い、左手に持った斧を振り上げ  振り下ろす。

 

  

 ズン

 

 

「なっ。」

 

今のは、ラスカスさんかな?タバサさんかな?いや両方か。

 

驚くのも無理はない、ミノタウロスの強靭な腕力で振り下ろされた斧を、人間である俺が右手1つで受け止めているのだから。

 

まあ、叩き切る程度の切れ味しかない刃物を、受け止めるなんて、この体なら朝飯前だ。

 

「ふっ」

 

 

 バキャッ

 

 

左手の手刀で、斧の柄を叩き折る。これでもう杖としても使えない。

 

 

「そんな馬鹿な!!只の人間がそれほどの力を持っているわけがない。」

 

「あれ?目が見えないのかな?今やって見せたでしょ。」

 

ラスカスが息を呑む。

 

「うっ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 

左手で殴りかかってくる。

 

「はああああああああああああああああああああああ」

 

こちらも左手で殴りかかる。

 

 

互いの左の拳がぶつかる。

 

 

 ミシッ

 

骨のきしむ音がする。

 

 ベキベキ

 

骨の折れる音がする。

 

 

俺の顔を見ているラスカスが笑う。

 

 

  

そして・・・

 

 

 ブチブチブチブチ

 

 

ラスカスの左手が砕け、腕が折れ、肩から千切れ飛ぶ。

 

 

「がああああああああああああああ、そんな馬鹿なあああああああああああ。」

 

まあ、いくらミノタウロスが頑丈だからとは言え、1tには耐えられんわな。あっちもリミッター解除が出来れば、話は別だが。

 

 

タバサさんが尋ねてくる。

 

「貴方は人間なの?」

 

もしかしてやりすぎたかな?

 

「ん?俺の得意な事はなに?」

 

「それは、病の治療。」

 

「ああ。只その中には、体の構造をいじらなきゃ治らない物もあってね。」

 

「それってつまり。」

 

「ん、ちょっとだけ自分の体をいじった。」

 

その時。

 

「ははははははは、まさか人間でありながらミノタウロスを超える者がいるとはな。」

 

左腕が肩から千切れたのだ、しばらくしたら出血多量で死ぬだろう。

 

 

そして、ラスカスさんは自分の過去を言い始める。

 

昔、体を病に冒され放浪のたびをしていた時、この村にたどり着きミノタウロスを倒したと。

 

そのときに、ミノタウロスの体の生命力の強さを知り、脳移植をしたとのことだ。

 

 

・・・すごいな、いくら俺でも偏在を使わず単独での脳移植は無理だ。

 

「そして、3年ほど前だ。子供を襲う夢を見た、獣のように、私は子供に食らいつていた。」

 

「それから何度もそんな夢を見るようになった。私は初めは、夢だと思っていたよ。目が覚めてそばに転がった子供の骨を見て、ようやくそれが現実のことだと理解した。」

 

 

 

「だんだんと、自分の精神がミノタウロスに近づいていくのが分かった。とても空腹のときなど特に衝動が抑えきれなくなった。」

 

話からすると、移植による拒否反応というよりも、異物を取り込もうとしているのか。すごいな。

 

 

「ふごふごふご、もはや笑い方すら忘れてしまったよ。わたs「あんたは、まだ生きたいのか?」

 

「何をいきなり。」

 

「いいから、答えな。その答えによっちゃあ助けてやるよ。条件付でな。」

 

「出来るのか!!そんなことが。」

 

「ああ、簡単に言うと、あんたはミノタウロスに侵食されているのが、原因だ。だったら逆にあんたの脳からミノタウロスの体を侵食してやればいい。」

 

「そんなことが。」

 

「彼なら可能。彼の2つ名は『全治』。彼はありとあらゆる病を治すことが出来る。」

 

フォローありがとうタバサさん。

 

「ぜひ頼む、私を助けてくれ。」

 

と言って膝を着ける。

 

 

とりあえず、肩の出血を止める。

 

さて、久しぶりの大仕事といきますか。

 

 

 

 

 

24

 

 

 

 

 

 

 

「一つ聞いていいか。」

 

「なんです?」

 

「何故私を助けることにしたのだ。私はミノタウロスに侵されたとはいえ・・・子供を喰らったのだ」

 

「そうですね、原因が何であろうとも、人として決して許されない行為です」

 

「では何故!!」

 

「・・・ラスカスさん貴方は罪を償為に死ぬのと、生き続けるのではどちらがより重いとお思いですか?」

 

「それは・・・」

 

「私も死の苦しみを味わったことがあります。死の恐怖あれはなかなかにきつい」

 

「けれど、死は誰しもが1回しか経験しない 死は一瞬で終わる。」

 

「しかし罪を背負って生きる事は違う その者が生きつづける限り、続いて行く。決して消えることのない罪と共に生きていく。罪を償う為に死にたいなんて言うのは、罪から逃げる口実だ。その罪を心から悔んでいる者には特にね。」

 

まあ、俺が被害者の側に立ったらどうなるか解らないのは確かだが、それでも償うのであれば・・・

 

「それに、貴方は死にたがっていたのでしょう?ばればれですよ、あれじゃあね。」

 

まず間違いなく避けると思っていたのだろう、唯振り上げ降ろすだけの攻撃ではね。

 

「貴方は生き続けるべきだ 償う為に。」

 

ミノタウロスの体であるラスカスさんなら、特にきついだろう。

 

 

「・・・ありがとう。」

 

 

まあ理由はこんな物で良いかな?外見がいかにミノタウロスと言えども、人や生き物は殺したくない。

 

以前にミノタウロスと対峙したとき、ミノタウロスを倒すと同時に倒れたため気付かなかったが、

2回目はしっかりと倒した所を見たため罪悪感が半端なかった。

 

 

てか2・3日は肉が食えなかなった、その時の救いは余り酷い状態にしなかったことと、患者で怪我とかで血を見てある程度慣れていたことだ。

 

まあ今後大きな動物を殺したくはない、とは思ったが、「まあ、この世界で生きる以上このままじゃいけないかな?」と、思い慣れようとした。・・・したんだ。

 

手始めにまず厨房の裏へ行き鶏を絞める光景を見た。

 

そして、強制ダイエットコースとなった。

 

 

鶏を生きたまま首をまな板に押さえつけ、

 

ダンッ

 

と、首を斬りとばす。

 

何故か首の無いはずの鶏が歩き羽ばたく。

 

この光景に固まっていると、そのまま羽を毟り取り、腹を割き内臓を・・・ウプッ

 

そう言った事をする、農家の出だったら問題無かったのだろうが、一般家庭出身の俺には慣れる事は無理だと感じた瞬間だった。

 

 

 

 

 

「さて、これでもう衝動が襲いかかることは無いでしょう。」

 

「おお、本当か。」

 

「そうですね、試しにしばらく何も、口にしないでいてください。」

 

ちなみに、遍石は首から下げたままである。

 

万が一暴走したときの為の予防線だ。

 

 

 

「さて、私は何をすればいいんだ?」

 

「まずは、現状を説明します。」

 

タバサさんの今の状況を説明する。

 

「何と、この10年でそんな事が」「しかし、私になにができるのだ?」

 

「それはですね・・・」

 

 

 

2日後

 

 

 

「ミノタウロスだーーーー」

 

村人の1人が叫びを上げる。

 

 

 

ぶおぉぉぉぉぉぉ

 

 

 

 

ミノタウロスが村に走り、入り込んでくる。

 

「待て」

 

少しボロボロになった、タバサが現れる。

 

タバサが、ウインディアイシクルをミノタウロスに向けて放つ。

 

ドドドドッ

 

ミノタウロスの体に氷で出来た槍が刺さる。

 

 

その瞬間、ミノタウロスが持っていた斧を投げ

 

 

ドッ

 

 

タバサに斧が突き刺さる。

 

 

ミノタウロスはヨロヨロとこの場を逃げ出す。

 

 

 

そして村人が1人また1人と姿を表す。

 

 

 

「騎士様、騎士様ーー」

 

「駄目だ、死んでおられる」

 

「そ、そんな」

 

シルフィードがタバサの亡骸に追いすがる。

 

「キュイキュイキュイ」

 

 

「いくらミノタウロスでも、あの傷じゃあ生きてはられねぇべ」

 

「これからどうするべ」

 

「やはり王宮に報告するしか」

 

「皆さん、私が王宮へと行きましょう」

 

「そんな、あなたは無関係の旅人で」

 

 

「一応事情も知っていますし、事の次第を全て見ていましたからね、それに王宮の方角に用がありますので」

 

「それじゃあお願いするか?」

 

村人達が村長を交え話し合う

 

「しかし足が」

 

「それなら、ガーゴイルさん。私を王宮まで連れて行って下さいますか?」

 

「キュイキュイ」

 

シルフィードが首を縦に振る

 

 

「それじゃあお願いします」

 

 

 

 

シルフィードの背にタバサの亡骸を乗せ森深くへと入る

 

そこでミノタウロスと、ミノタウロスの近くにいるタバサさんが待っていた。

 

「クリス殿どうだった?」

 

「大丈夫だ、村人の人達はみんな、ラスカスさんとタバサさんが死んだと思い込んでいる。」

 

 

 

「じゃあこれから王宮へと向かうの?」

 

「ああ」

 

計画はこうだ 。

 

タバサさんが気になることがあると言い村に残る。

 

その間に俺は旅人に扮し、タバサさんとは無関係を装う。

 

暫くしてラスカスさんが、村を襲うふりをする。

 

タバサさんがミノタウロスと、死闘をしているふりをする。

 

村人全員避難したのを確認し、ミノタウロスにダメージを与えるとき、俺がスキルニルを元に作り上げた死を演じる人形と、タバサさんとすり替え斧によって殺されたふりをする。

 

結果、村人は全員タバサさんが死んだと思い込んでいる為、上の連中がいくら調べても嘘の情報しか上がってこない。

 

これで少なくとも、タバサさんの身に危険が及ぶことが無くなる。

 

 

まあ、真の目的はここからだが。

 

 

「さあ、王宮に向かいますか」

 

ラスカスさんはこのままだと目立つ為、首から下げた遍石総出でフェイスチェンジをかけ、普通の男のように見えるようにする。

 

まあ、かなりゴツい大男になってしまうが。

 

そしてみんなで王宮へ向かう。

 

ちなみに、シルフィード、ラスカスさんを乗せるのをめっちゃ嫌がっていたが完全スルー・・・

 

 

 

 

そして王宮へ

 

 

ラスカスさんとシルフィードには、途中の林で待ってもらい、スキルニルのタバサさんの死体と、変装した俺・タバサさんとで今回の命令を出したイザベラの元へと案内される。

 

「あ、あんたたちだね、エ、エレーヌの死を見届けたってのは」

 

イザベラがタバサさんを、エレーヌと言っていたので、驚いているのを慌てて背中に隠す。

 

ちゃんと、どんな事があっても動揺するなと言っておいたのに。

 

「はい、騎士様の、最後のお言葉を、お伝えしても宜しいでしょうか」

 

「あ、ああ言いな」

 

「『イザベラお姉ちゃん、助けて』、と」

 

「っ」

 

「も、もういいよ、出て行きな」

 

兵が俺達を連れ出す。

 

外に出て行き、すぐに二人組の兵が現れる。

 

「そこの君、ちょっと手伝ってくれたまえ」

 

「はっ、しかし」

 

と、言ってこちらをちらりと見てくる。

 

「そこの彼等は、私が連れて行こう」

 

と、カステルモール。

 

「は、はぁ」

 

この兵士二人は、2日前にざっと作戦を伝えて呼んだ、カステルモールとそのお仲間さんだ。

 

因みに、お仲間さんの方には詳しい説明は一切していない。どこからばれるかわからないし。

 

 

さてと

 

 

回りに誰もいないことを確認し、イザベラの部屋に聞き耳を立てる。

 

すると

 

「エレーヌ、エレーヌ?ごめんよ」

 

「何も出来なかった、何も出来なかったあ」

 

と、泣き叫んでいる声を聞き「そんな」とか「まさか」とか言いながら、驚いているタバ&カステルモール。

 

やれやれ

 

まず、カステルモールが扉を開けて中に入る。

 

「お話があります」

 

ディテクトマジックとサイレントをかけたのを確認し中に入る。

 

イザベラの目の回り真っ赤っか。

 

タバサさんが被っていたフードを取る。

 

「なっ」

 

「イザベラお姉ちゃん、騙してごめんなさい」

 

「エ、エレーヌ、エレーヌ?よかった、よかったぁ」

 

イザベラさんが、タバサさんに泣きながら抱き着く。

 

しばらくして

 

 

「あんたたち、どういう訳か全部話してもらうからね」

 

 

完全に混乱していたイザベラが冷静になり、

 

 

 

イザベラは激怒した。

 

 

 

まあ当然だな、計画を立てた俺が言うセリフではないが。

 

 

「簡略に言いますと、シャルロット様の母君の病を、直す方法が見つかりました」

 

「なっ、本当かい」

 

「はい、本当です」

 

「ふん、成る程ね」

 

「えっ、解ったの」

 

驚愕の表情のタバサさん。

 

「・・・ シャルロット様、イザベラ様と今後の事を話しますので、暫く引っ込んでて下さい」

 

「なっ、貴様。シャルロット様に対して、何という「あー、カステルモール?」

 

「はっ。何でしょうイザベラ様」

 

「暫く黙ってな」

 

 

「えっ?し、しかし」

 

「黙ってな」

 

 

「・・・はっ。畏まりました」

 

イザベラさんに睨まれて、沈黙するカステルモール。

 

 

「で、あんたは何者だい?」

 

「シャルロット様の協力者で御座います」

 

 

「ふん。 名前は」

 

「そうですね、フジサキとお呼び下さい」

 

「偽名って訳かい」

 

「まあ、そんな所です」

 

 

 

「さて、まずシャルロット様ですが」

 

「あんた、口調戻しな」

 

「宜しいので?」

 

「ふん、全治だろ」

 

「・・・何があってもばらさないでくれよ?」

 

「ああ、ばらさないよ」

 

苦い顔の俺と、したり顔のイザベラさん。

 

「じゃあ、まずシャルロットさんの事だけど。このまま死んだことにしよう」

 

「ああ、てか死んだことにするしかないねぇ。一体何人に見られたと思ってんだい?」

 

「まあ、そうだな。それはスキルニルを元に作ったもんで、特殊な魔法がかかっているから、ディテクトマジックでも引っ掛からない上に、3週間は持つ代物だ」

 

ちなみにこの世界、土葬が一般的な為まず、ばれない。

 

「ほぅ」

 

スキルニルの内側に遍石を入れ、内側から遍在が外と遮断する魔法をかけているから、魔法を緩めて節約すれば1月以上保つんだが・・・中から外が見えないから、節約のしようがないのが欠点だな。

 

「それと同じ物を5個作る」

 

「わかったよ、いつ頃にする?」

 

「関係性が無いように思わしたいから、最低でも2月以上あとだな」

 

「ああ、そうそう警備の方を」

 

「ああ、それなら前々から秘密裏にやらせているよ」

 

「それと、このままじゃあイザベラさんが危険だろうから、カステルモールさんにでもやって貰えば大丈夫だろう」

 

「ふん、気遣いは無用だよ」

 

「そうゆう訳にもいかないだろう?」

 

「ふん」

 

「それで、学院長には?」

 

「全部話しているけど、大丈夫かい?」

 

「髪と目の色を変えて、眼鏡を取れば大丈夫だろ」

 

「其処まですれば、大丈夫さね」

 

 

「あとこれを」

 

遍石を渡す。

 

「何だい?これ」

 

「俺と話が出来る石だ」

 

「起動合図は、何か固いもので3回叩け。詳しい日時が決まったら教えてくれ」

 

「へぇそんな物を。あんた中々やるねぇ、わかったよ。エレーヌの事をくれぐれも頼んだよ?」

 

「ああ、確かに頼まれた」

 

 

「さて、学院に戻りますか」

 

「えっ、話は終わったの?」

 

これまた困惑顔のシャルロットさん。

 

「ああ、シャルロットさん? なるべく早く、ここから離れたいから道中で話すよ」

 

「わかった」

 

しかしまあ、ほんとよくこれまで死ななかったよな?シャルロットさん。

 

よほど上手くイザベラさんが動いたんだろうが。

 

 

「カステルモールさん?イザベラさんの事を宜しく頼んだよ」

 

「確かに承った。シャルロット様の事を、宜しく頼む」

 

 

そして、城を出て行きラスカスさん達と合流する。

 

 

 

「話は終わったのか?」

 

「ああ、終わった」

 

「学院に戻る最中に話す」

 

 

「タバサさん?ラスカルさんに話すのと、同時に説明するからまたシルフィードに乗って」

 

「わかった」

 

 

 

25

 

 

 

 

「さて、まずは今後の事を「さっきの会話の意味を教えて」

 

えっと

 

「さっきの会話とは何だ?」

 

ラスカスさんに、先ほどのイザベラさんとの会話を話す。

 

「なるほどな。確かに、その会話では内容がわからないな・・・当事者以外は」

 

だよね?、普通タバサさんも、少しは解っていいもんだよね?

 

「タバサさんはイザベラさんが君のことを、どう思っていると思う?」

 

「私の事を、嫌ってはいなかった」

 

その通り。そしてそれこそが1番重要なことだ。

 

「なんでわざわざ、ガリアから遠いトリスタニア魔法学院に行かせたんだと思う?」

 

「なんらかの利点があった?」

 

「そうだね、利点は2つかな?」

 

「2つ?」

 

そう、恐らくは。

 

「1つはタバサさんに対し、危害を加えにくくするため」

 

「危害とは、どういうこと?」

 

「君は自分が『ガリア国王』にとってどれだけ危険な存在か、わかっているのかい?」

 

タバサさんは何も言わない、ただ目が先を促している。

 

「『ガリア国王ジョセフ』本人は、あまり気にはしてないみたいだけど。恐らく君を殺そうとしている奴らがたくさんいるはずだ」

 

オルレアン公シャルルが殺された後、ジョセフ派閥の者にシャルル派閥の者たちが粛清されたと聞く。

 

「何故なら君が、『故弟王シャルルの忘れ形見』だからだ」

 

当然、シャルル派閥を率いる可能性が高い『シャルロット・エレーヌ・オルレアン』を狙う輩はいるはずだ。

 

「カステルモールみたいに粛清を逃れ、機会をうかがい、タバサさんの王権を取り戻そうとしている者もたくさんいるはずだ」

 

カステルモールはタバサさんに出会ったとき『我ら東薔薇騎士団一同あなたに従う』と、言った。

 

恐らくガリア国内に、簡単に言えば『反逆者』が他にもいるはずだ。

 

「それを手っ取り早く鎮めるには」

 

タバサさんがやっと気が付いたみたいだ。

 

「私がいなくなればいい」

 

「そうだ。だけど、君がトリステインに、しかも学院という閉鎖的な空間にいればそうそう君を狙いにくくなる」

 

いかなる理由があろうとも、国外である『トリスタニア王国』の学院に暗殺者を送ったなんてばれたら国際問題だ。

 

国外であるため、もみ消すこともできない。

 

「それに、周りにはイザベラさんが国外に追い出した様にも見えなくはない。見方を変えればタバサさんには人質がいる為逃亡もできない」

 

「でも、定期的に私は呼ばれてる」

 

「そうだね、でもそれはそれで不自然だと思わないかい?」

 

「不自然?」

 

・・・思わないのか??

 

「定期的に呼び出すのだったらわざわざ遠いトリスタニアじゃなく、近くのガリア国内に居た方が、早いじゃないか」

 

ガリアとトリスタニアは遠い。普通の竜を使って早くて2日で着くといったところだろう。

 

「そしてもう1つは、タバサさんが亡命しやすいようにかな?」

 

「でも私には」

 

「そうだね、人質がいる」

 

それが今まで足枷になってたんだなあ

 

「だからこそ、任務をやらせてるんだろう」

 

「どういうこと?」

 

「話を聞く限り、1番最初のキメラの件から色々苦労してたんだろう」

 

「苦労?」

 

「周りには手を出させないよう、殺そうとしているように見せなきゃいけない。だけど助けたい」

 

「もしかしたらだけど、最初から複数の任務の候補があったんじゃないかな?」

 

「だけど、キメラを選んだ。それは地元の協力者がいたからだ」

 

「普通、凶悪な獣退治に要請すらしてないのに、『メイジですらない協力者』がつくなんてそうそうないと思うよ」

 

平民は、先住魔法の使えないコボルトですらそうそう勝てない。たまたま最初の任務に、協力者がいるなんて出来過ぎている。

 

「・・・」

 

「その後は訓練も含めてかな?」

 

「訓練?」

 

「そうだ、なるべく生き残る可能性が高い任務を選んで、タバサさんに経験を積ませたんだろう」

 

誰かに、命を狙われても生き残れるように。

 

「タバサさんをわざわざ怒らせるような、任務が結構あっただろう?魔法の威力を、手っ取り早く上げるにはどうすればいい?」

 

タバサさんが、しばらく考え込んで答える。

 

「感情を爆発させる」

 

魔法の威力はその時の感情によって上下する。そして人の感情で一番簡単に高められるのは怒りだ。

 

「タバサさんが何らかのいままでイザベラさんに仕返しをしたとき、何か報復があったかい?」

 

「無かった」

 

「任務中に何回か味方になってくれる者にもあっただろう?」

 

カステルモールは偶々だったとしても、他はちょっと調べればわかるものばかりだった。

 

何か有ったときに、フォローしてくれる味方がいると言う事を、教えたかったのだろう。

 

まあ、どこをどう考えても相当危ない綱渡りだが、それだけの『覚悟』が有ったと言う事かな?

 

しばらく、タバサさんが茫然としたかと思うと「そんな、イザベラお姉ちゃん」と、言ったと思ったら

 

「ちょいまちーーー、どこに行く気だーーー」

 

シルフィードの背中から飛び降りようとしたのを腕を掴んで止める。

 

「イザベラお姉ちゃんに謝りに行く」

 

おいおいおいおい

 

「今、そのイザベラさんは『偽物』のタバサさんの葬儀の準備真っ最中だってば、本物が行ってどうする」

 

あっぶねー、何つー事を言い出すんだ。

 

その後タバサさんは話をじっと聞いていた

 

 

何故イザベラさんが俺を知っていたのか

 

トリスタニア国内のしかも学院などにスパイを簡単には送れない・・・はず。

 

一応学院長はトリスタニアの賢者?とも、呼ばれてるし?

 

 

イザベラさんは学院長から聞いたのだろう、俺とタバサさんがコソコソやっていると。

 

何故、イザベラさんと学院長が繋がっていると言い切れるかというと、

 

『タバサさんは国外からの留学生』

 

『もしタバサさんの身に何かあれば、本来は国家間問題』

 

『タバサさんはちょくちょく無断でいなくなる』

 

『例えあの学院長でも、いくら何でも国家間の争いの元となるのを放置は有り得ない』・・・はず。

 

そして、いくらタバサさんでも地位のある人だろうと、そうそう話せる状況では無いとわかるはずだ。・・・たぶん

 

学院長に理由を聞かれても答えないだろう。

 

つまり、恐らく学院長がタバサさんを何故放置出来るのかと言うと『いなくなる理由を知っている』としか説明が付かない。

 

イザベラさんから学院長に、接触があったとしか考えられないと言うわけだ。

 

イザベラさんが全部話したと言っていたので、何から何まで全てをタバサさんに協力してもらう用にってとこかな?

 

まあここら辺は、学院長に直接話を聞けばわかるだろう。

 

護衛はカステルモールさんみたいな、『タバサさん側の人間』がイザベラさんが、タバサさんを殺した風に見えるだろうから、イザベラさんに護衛が必要だった。

 

それとジョセフ派閥の人間にとって、タバサさんとタバサさんのお母さんが邪魔だろうから、イザベラさんが秘密裏にタバサさんのお母さんを守っていたんじゃないかな?

 

後最後に、タバサさんの実家に居る人は全部で何人?と聞くと。

 

「5人」

 

「俺が作ると言った死を演じる人形は何体?」

 

「5体」

 

「そう言うことだ。タバサさんが死んだ後直ぐに、助け出すと関連性を疑われるから、暫くは動けないけど時期が来たら必ず助け出すから、それまで待っててくれるかい?」

 

「わかった・・・ありがとう」

 

うつむき、泣きそうな声で言ってくるタバサさん。

 

「それはまだ早い、泣くのは全部が終わってからだ」

 

道中に、タバサさんの視力の回復と、目の色と髪の色を変える事にした。

 

「何色がいい?」と聞くと、「赤」と、答えたのでタバサさんの目と髪は今燃えるような赤になっている。

 

あと声帯を少しいじる。

 

その為に、ディテクトマジックで入念に声帯・喉などの構造をスケッチし再現出来るようにする。

 

「よし、声を変えるぞ」

 

「やって」

 

よし

 

それと

 

「あとはタバサさんの新しい偽名を考えるのと、口調やしゃべり方を変えるだけだ」

 

「わかった」

 

「・・・わかってるだろうけどバレないようにしてくれよ」

 

「努力する」

 

 

だいじょうぶか?

 

本当に

 

 

 

 

 

ちなみに風韻竜のシルフィードには。

 

 

「キュイキュイ、嫌なのねーシルフィのウロコの色を変えるなんて」

 

「いや、タバサさんはいないのに、シルフィードだけいるのは変だから」

 

説得を試みるも果敢に抵抗?するシルフィード。

 

「嫌なのねー嫌なのねーお姉さまも何か言ってなのねー」

 

すると、今まで閉じていた口を、タバサさんが開いた。

 

「クリス」

 

「お姉さまーーー(喜)」

 

「なに?タバサさん」

 

「色は赤で」

 

「お姉さまーーー?!(泣)」

 

「・・・わかった」(問答無用か)

 

 

「そんなーーーーきゅいきゅい」

 

 

 

 

「きゅいーーーーーーー」

 

 

 

 

その後、嫌に切ない悲鳴?が森全体に響き渡ったとことから、その森は嘆きの森と・・・呼ばれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ラスカスさんには学院の途中の森で、待っていてもらうことにした。

 

「後で、小屋を建てるの手伝いますよ」

 

「すまないな、クリス殿」

 

ラスカスさんを置いて学院の近くまで行く。

 

学院に入る前に、

 

「さて、じゃあまずは学院長に話をしにいく訳だけど」

 

「タバサさん、その杖はちょっと特徴有りすぎだから、布か何かに巻いて持つか、隠して」

 

「解った」

 

言うや早々と、マントを外し杖に巻きつけるタバサさん。

 

 

さてと

 

「じあ俺も、剣しまってくるから先に、学院長室に行ってて」

 

「解った」

 

 

 

俺は部屋に戻り、日本刀を置き学院長室に向かい始めた・・・向かい始めた。

 

 

何故か、すぐにタバサさんに呼び止められたけど。

 

ちなみに、タバサさんの背後にはミス・ツエルプストーがいたが。

 

 

 

マジで?

 

 

 

26

 

 

 

 

今、目の前に、タバサさんがいる。

 

今日俺は、いや俺達はガリア王国から帰ってきた。

 

ラスカスさんと言う、なかなか強力な協力者を仲間に入れ、イザベラさんと『シャルロット』親子を助け出す為の準備について実りある話ができたと思う。

 

そう全ては秘密裏にタバサさんを死んだことにし、全てから解放する為に・・・

 

 

 

まるで絞り出したような声が出てくる。

 

「えっと、君の後ろにいる人は・・・」

 

「あら、これは失礼、ミスタ・プルトン。初めまして、私は、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー、以後お見知りおきを」

 

そういうことを聞きたいんじゃない。

 

 

「いや、えっと、その、ミス・ツエルプストー?そういうことを聞きたいんじゃなくてね?なんていうかね?君の前にいる子のなんだけど・・・」

 

「ああ、『まだ』詳しい話は聞いてないですけど、名前すら知らないですわよ?ミスタ」

 

へ?なんか睨まれた・・・いやそれよりとりあえず、この子がタバサだってことは黙っててくれるみたいだな。

 

「えっと、君はミス・ツェルプストーとどこまで話をしたんだい?」

 

「してない」

 

「へ?」

 

「私はまだ『ミス・ツェルプストー』に、一言たりとも話しかけてはいない」

 

へ?

 

どゆこと????

 

「ああ、ミスタ・プルトン?この子話しかけても何も答えてくれないから、この子に『今の現状を説明してくれる人の所に連れて行って』って言ったの。だってこの子がここにいるってことは協力者もここにいるってことじゃなくて?」

 

ハハハ

 

「えっと・・・どうやって?」

 

辺りを見渡し、人が近くにいないことを確かめ、小声でミス・ツェルプストーが言う。

 

「あら、私とこの子は親友ですのよ?たとえ『彼』だろうと見分けて見せますわ?」

 

す・すげぇ・・・

 

「す・すごいっすね」

 

「ふふ、この子特徴的な癖があるから」

 

「まあ、最初は信じられなかったけど」と言って、タバサさんの頭をなでだすミス・ツエルプストー。

 

思わずタバサさんを見るが、タバサさんもその癖は解らないようでただ首を振るだけ。

 

前途多難なのか、それともミス・ツェルプストーが特殊なのか。

 

 

ここでは話せないので、当初の目的だった学院長室に行く。

 

まあ、部屋の前まで3人そろって、完全無言だった。

 

せっかくタバサから『この子』になったのに、ばれるわけにはいかない。

 

 

学院長室につき、ノックをする。

 

コンコ「こんの、クソジジイィィィィィィ!!!!いい加減にしろおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

え?ロングビルことマチルダさん!?

 

怒鳴り声が聞こえた瞬間『ドゴオォォ』や『バキイィィ』等と言った明らかにヤヴァイレベルの、音が聞こえる。

 

「わっわしは、君のひいてはティファニア嬢の恩人「私たちの恩人はクリスだけだあぁぁぁぁ。よくよく考えてみたら、てめぇはなにもしてねえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

いや、まあ、そういえばそうかもしれないけれど、声が大きいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!

 

隣にいる2人にがこちらを見てくる。

 

視線が語ってる『あなた、この撲殺事件の関係者?』と。

 

ドアにノックをした状態で固まっている俺をよそに、いまだ『ドガアアァァァァ」』『バキイイィィィ』と音が聞こえ『顔だけはやめてくれ、顔だけはやめてくれえぇぇぇ』『知るかああああああぁぁぁぁ』『ズゴオオォォォン』る。

 

本当に冗談抜きでマジデヤヴァイ気がするので、「うおっほん、ごおっほん」と咳払いをし、『ドコン、ドコン』と、ノック?をする。

 

すると、『ハッ』と声が聞こえ、『ドタバタガシャバタンバタン』と物を移動する音が聞こえる。

 

「え、えっとクリス・ド・プルトンです。入っても『もう』よろしいでしょうか。」

 

やや大きめ声で、言う。

 

「ま・待ちたまえ!!もうちょっと、もうちょっとだから『ガタガタ』

 

もしかすると、頼らないでこっちで勝手にやった方が安全かな?と考え直「もう、大丈夫じゃ。もう、大丈夫じゃよ。入ってきなさい!!」

 

・・・部屋に戻ろうかな?

 

 

 

 

28

 

 

ミス・ロングビルの怒声と撲殺行為が無事に?収まり、学院長室に入る。

・・・あの赤いシミ、ソファーで隠れてるけど血痕だよな。

思わずそれを見ていると

 

「おっほん、それで何の用だね、ミスタ・プルトン?」

「ああ、はい今日の用事・・・は・・・」

 

学院長が・・・なるほどこれが『フルボッコ』か。

学院長はボコボコだった、文字道りボコボコだった俺の隣にいる2人も唖然としている。

2つある鼻には赤く染まった布が押し込まれ、目の周りは青くなっていた。

服はよれよれ所か、所々破れていて、ちょっとフラフラしているようにも見える。

骨にひびぐらい軽くいってんじゃないか?

 

「あの・・・学院長?」

「なんじゃ?ミスタ」(ヒューヒュー)

オールド・オスマンの呼吸音がおかしい。

「あの、その傷?治しましょうか?」

「おお、本当かミスタ・プルトン。実はさっきから立っているのがやっt「あら、そんなことは必要ありませんわ、ミスタ」ミ、ミス・ロングビル?」

「この話が終わったら、弱みに付け込み、女性の体を無断で撫でまわしてくるオールド・オスマンには、『土』に還っていただく予定ですのよ?」

 

え?

 

ずいぶんと良い笑顔で言ってくるロングビルさんが怖い。

 

なんて言うか、黒いオーラが立ち昇っているような幻覚が見える。

 

「あら、そうなんですか?それは素晴らしいですわね」

「でしょう?」

「素晴らしい考え」

 

今まで気が付かなかったが、俺の隣にいるロングビルさんと親しそうに『ウフフ』と笑いあっている赤毛の女性2人からも、黒いオーラが見える。

オールド・オスマンがこちらを見てくる。

目が語っている「わし、消される?埋められる?助けて」と。

恐らく、ティファニアさんの件で調子に乗りまくったんだろう。

もしオールド・オスマンがいなくなったとき、この学院にいる人のほとんどはこう答えるだろう。

『いずれこうなるだろうと・・・』と、

弱みに付け込んで、セクハラした結果なので自業自得すぎるし、3人の女性が怖すぎるので思わず目を逸らす。

瞬間、オールド・オスマンの表情が絶望に染まる。

 

・・・って、いやいやいやいや、頼りにしようと今後の事を相談しようとしている人が、いきなり死亡決定って。

正直怖いが、勇気を持って話しかける。

 

「あのぉ」

「ああ、そういえば『肥料』に用事があったんでしたわね?どうぞ存分に『最後』の会話をしていらして?」

 

もう土に還るの確定済みですか、そうですか。

 

「いや、あの、オールド・オスマンを頼りに来たんですけど・・・」

「え?そうなんですの?・・・」っち、運のいい爺だねぇ

 

あれ?なんか今度は幻聴が。

ちなみにオールド・オスマンは涙を流しながらまるで『自分は助かった』『まだ、生きられるんだ』と、言い出すような表情をしている。

・・・頼りになるんだろうか、激しく不安だ。

 

 

「さて、それでミスタ・プルトン?わしを頼りに来たとのことだが」

オールド・オスマンを治療して(骨の各所にひびが入り何故折れていなかったのかわからなかったが)なんとか話を、進めることが出来る様になった。

「その前に失礼して」

ディティクトマジックと、サイレントを厳重にかける。

「ほう、そこまでのことかの」

「はい、下手に行動すると命に係わるかと」

部屋に緊張感が漂う。

「ミス・タバサのことで進展が」

と言って、タバサさんを見る。

「なんと、もしや彼女が」

「はい、そうです。それと申し訳ありませんが、ミス・ロングビルには外していただきたいのですが」

「あら、ご冗談を。確かにこの中で私が事情を一番把握していないのでしょうが、ミスタ・プルトンには、返しても返しきれない恩がありますわ。ぜひお力にならせてください」

何かあった場合、教師側に口裏を合わせてくれる人が一人でも多い方がいいだろう。だが

「そうですか、ありがとうございます。ですが、ミス・ツェルプストー」

「あら、なにかしら?ミスタ」

「君はやめといたほうがいい、いくらなんでも危険すぎr「フフフ、私は、この子の親友ですわ、たとえ何があろうと、ここを動かないわよ」

「下手をすると、お家取り壊しの可能性も否定はできないんだ。危険だ」

「フフフ、私の実家は大貴族ヴァリエール侯爵家と張り合えるんですのよ?むしろ危険なのは貴方の方ではなくて?」

 

まあ、その通りすぎるので言葉に詰まる。

しかも引く気は絶対になさそうだ。

一応オールド・オスマンに目線を配るが

 

「ふむ、これは大変危険なことじゃぞ?下手をすると家など関係なく暗殺されるかもしれん」

すると、おもむろにミス・ツェルプストーは杖を取り出し掲げる。

「・・・私、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーの名と、杖にかけて、ミス・タバサを守り抜くことを誓いますわ」

「ふむ、たとえミス・タバサに命の危機が迫っても軽率な行動をせぬことを誓えるかの?」

「杖にかけて」

「いいじゃろう。ミスタ・プルトン、どうやら彼女は何があってもここを動く気はないようじゃ」

「わかりました。ただわかってはいると思うが絶対に他言無用だ。いいね」

「わかったわ」

「じゃあ、まずは何故『タバサ』と名乗っているか。そして、どうして俺と行動をしていて『今の姿』になっているかを説明する」

 

オールド・オスマンと共に全てを説明し始める。

シャルロット・エレーヌ・オルレアンの本来の地位からジョセフⅠ世が仕向けた弟の暗殺、そして弟の妻に飲ませた薬の効果。

実質人質も同然の母親を庇う為の日々。

 

ミス・ツェルプストーは怒りに震える。

 

そして、エルザやラコイと俺の実力は伏せさせてもらったが、俺の『全治』の2つ名の説明。

シャルロット・エレーヌ・オルレアンの母親を治すことが出来ること。

イザベラさんと学院長の繋がり。

シャルロット・エレーヌ・オルレアンが正式に死んだこと。

学院の裏山にいる信頼できる仲間。

そして今に至る。

 

「タバサ、いえ・・・シャルロット今までつらかったでしょうね」

ミス・ツェルプストーがタバサ、いや、シャルロットさんを抱きしめる。

「そんなことはない。希望はあった、今は大切な信頼できる親友に仲間もいる」

「そう・・・それと」

ミス・ツェルプストーがこちらを向く。

いきなり片膝を付き頭を下げる。

「え?」

「今までの数々の無礼をお許しください『全治』クリス・ド・プルトン殿。そして貴方様の偉大なる杖をどうか、シャルロット・エレーヌ・オルレアンの平穏の為に、お貸しいただけるよう、お願い申し上げます」

「え?あ?ああ、いやまあ、大丈夫ですよ、ミス・ツェルプストー。もとよりそのつもりですので」

「ありがとうございます。それと」

ミス・ツェルプストーは立ち上がり言う。

「キュルケ、キュルケで結構ですわ、ミスタ・プルトン」

「ああ、じゃあ俺もクリスでいいよ?キュルケさん」

「ふふっ、『さん』はいらないわよ?」

「え?あ」

困惑している俺にロングビルさんが言い出す。

「ああ、なんでかクリスは『さん』は要らないって言っているのにどうしても取らないんだよ。苦手だとか言って」

「いや、まあ、女性を呼び捨てにするのはちょっと・・・」

正直、抵抗ありまくりだ。

「あら、貴方の使い魔である彼女らは呼び捨てなのに?」

「まあ、どっちかっていうと、妹みたいに思っているからねぇ」

 

「さてそれじゃあまずは、シャルロットさんの今後の新しい設定と名前だ」

皆で一斉に首をひねり考えだす。

 

「ある程度真実性が高い立場がいいのう」

「そうだねえ、できればどこかの有力貴族の保護下がいいんじゃないかい?」

「でも、こう言うのはなんだけど、保護下と言ってもプラス要因がないしなあ。だからといってガリアの貴族は論外だし」

「いざとなったら私の腹違いの妹とかどう?お父様あちこちに手を出してるし」

・・・それはそれでどうなんだ?

「簡単に嘘だとわかるようじゃだめだぞ?」

「まあ、わしが後見人と言うことにして、わしの伝手を使って口裏だけ合わせてもらうとするかの」

「それが、確実でしょうね、そこの所は如何に貴族とはいえ、ほとんど何も権限を持ち合わせてもいない俺たちじゃあ、どうしようもないですし」

「じゃあ、あとは名前ね。私がシャルロットの新しい名前を考えるわ」

まあいいか。名前を考えるセンスなんて持ち合わせてないし、キュルケさんに任せよう。

 

しばらく、ウンウンとうなって考えていたキュルケさんが顔を上げ

「シェリル・イヴェール・ド・ネージュなんてどうかしら?たしかかなり前にネージュって名前の貴族が没落したってどこかで聞いたわ」

「うーん、シャルロットさんはどう?」

「それでいい」

ちょっとは悩もうよ、新しい名前なんだからさ。

「うむ、ミス・ロングビルではシェリル・イヴェール・ド・ネージュが先週にこの学院に編入した書類を早めにつくってもらっていいかのう?」

「わかりましたわ、オールド・オスマン」

「へ?なんで先週なんですの?」

ふむ、

「調べられたときに『シャルロット・エレーヌ・オルレアン』の死去の時期と逸らしたいからじゃあないか?」

「その通りじゃ、なるべく時期ははなれていたほうがいいんじゃが、あまりに遠すぎるとほかの生徒や教師、従業員が覚えとらんと言うのも。怪しまれるしのう。幸か不幸かミス・タバサはミス・ツェルプストー以外とはそれほど交流をもっとらんからのう。まあミスタ・プルトンが容姿や声色まで変えてしもうたから、まず気づかれんとは思うが。念のための」

まあ、毛根に至るまで完全に染め上げる技術どころか、髪の色を変えるなんて発想事態無いらしく髪の色が変わっているなんて予想だにしないだろうし、目の色や声色なんて論外だ。

また、コンタクトレンズの発想もなく、分厚いレンズの眼鏡をつけなくてはいけないほどの近眼の持ち主が急に眼鏡を必要としなくなるなどと思うものは、まずいないだろう。

「ふむ、ではわしのつてを伝って口裏を合わせてくれる者を探すとするかのう、そのさいに領地名が変わるかもしれんがいいかの?ミス・ツェルプストー」

「はい、意義はありませんわ、オールド・オスマン」

 

さて、これで6日後に『シェリル』さんはクラスへ入ることになった。

それまでに今まで使っていた杖ではなく、新しい杖を用意するのと新しい服とマントを新調する。

 

これでとりあえずはひと段落だ、後はイザベラさんから、シャルロットさんの母親を助け出す日程が来るのを待つだけだ。

まあそっちもかなり苦労すると思うが。

 

 

 

 

28

 

 

オールド・オスマンとの相談を終え、部屋に戻りにいく。実に6日ぶりに帰ってきた。

 

扉を開けると、

「お兄ちゃん!!」

とエルザが部屋の中から走ってきてええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ

 

バコッ

 

「ふぐっ」

 

この痛み久しぶり・・・

 

「大丈夫ですか?クリス様」

そう思うんだったら止めてくれ、ラコイ。

「お兄ちゃん、6日間もどこ行ってたの?今までこんなに長く、何処かに行くことなんてなかったから、心配したんだよ」

「そうですよクリス様。エルザちゃんなんて毎日毎日、クリス様の部屋と正門を行ったり来たr「そっそれは、ラコイもでしょー」わっ私はエルザちゃんについて行っただけで・・・」

と、エルザとラコイの口げんかが始まるかと思いきや、二人とも俺の後ろを見て固まる。

 

「何を見ているんだ・・・え?」

と後ろを見て固まる。

「なっ何故ここにタ・・・じゃなかったミス・ネージュ?」

「シェリルでいい、それと貴方に何かあっては困る、貴方を守る」

「「お兄ちゃん(クリス様)誰?この人」」

「え?いやえっと・・・とりあえず部屋に入れ」

 

エルザにタックルされて、部屋から飛び出したままだったので、とりあえず部屋に入る。

 

「で?このひと誰?お兄ちゃん」

「え、いやえっと」

どう説明する『誤魔化す』かと考えていると、突然エルザが、

「この、匂いどこかで?」

へ?

「に、匂いって?」

「言ってなかったっけ?私たちの一族は鼻がすごくいいの」

聞いてないオ

「それにこの無表情どこかで・・・」

ヤ・バ・イ

冷や汗をだらだら流しながら考える。

タバサさんに協力していると言う事は、ずっとエルザとラコイには黙ってきた。

ばれたら何を言われるか・・・

「ん?」

「へ?」

唐突に、エルザがこっちを向き怪訝な表情をする。

「なんで、お兄ちゃんからこの女の人の匂いがするの?」

へ?

そう言えば帰りは、シルフィードに一緒に乗って帰ってきたっけ『寄り添って』・・・

「な・ん・で?お兄ちゃん、ま、まさかこの6日間ずっとこの人と一緒にいたんじゃ」

「そ、そうなんですか?クリス様」

いや、まあ確かにそうだけど、そうじゃなくって・・・

今度は、違う冷や汗が背中を流れ出す。

思わず、タバサさんを見るとシェリルさんはうなずいた。

っほ、フォローをしてくれるようd「この6日間、私はクリスとずっと一緒にいた」・・・

「「「ええええええええええええええええええ!!?」」」

「どういうこと?どういうこと?お兄ちゃん」

「まさか!そんな!お二人はそういう仲なんですか!?」

「そこはフォローしてくれるんじゃないの?タバ・・・シェリルさん」

「フォローってどういうこと?まさかラコイの言っていることがあってるんじゃ」

「そうなんですか?そうなんですね?クリス様」

「違う違う『そんな仲』じゃないそうだよねタバs・・・シェリルさん」

「そう、私と、クリスは『特殊』な仲」

「「「ええええええええええええええええええ!!?」」」

「やっぱりそうなの?やっぱりそうなの?お兄ちゃん」

「そんな!言ってくだされば私はよかったのに」

「そうだけどそうじゃなくってフォローしてえええぇぇぇタバサさん」

「私だってこの子とあんまり体型変わらないのになんで・・・タバサ?」

「そうならそうと言ってくだされば・・・タバサ?」

「やっば・・・」

「サイレントならもうかけてある『フォロー』はした」

 

ばれた・・・

 

今俺は正座をしている。

目の前にはエルザとラコイが黒いオーラを背負って・・・幻覚だな幻覚、間違いない。

「で?どういうこと?全部説明してねお兄ちゃん?」

「ええ、全てを正確に、教えてくださいね?クリス様?」

「ハイ、ワカリマシタ」

さきほど、学院長室でした説明全てを話す・・・正座したまま。足痛い

 

「まったく、やっぱりタバサお姉ちゃんと、関わってたんだねお兄ちゃん」

「そんな危険なことを黙ってやっていたなんて、私たちはクリス様の使い魔ですよ?なんでおっしゃってくださらなかったんですか?」

「ああ、まあそれはね?よっこいしy「「ああ、お兄ちゃん(クリス様)はそのままで」」・・・」さいですか、正座のままですか、そうですか。

 

「危険な目に合わせたくはなかった」と、言っても無駄に終わった。

これからは、シェリルさん関連で動くときは必ず言うようにと念を押され、この話は終わった。

 

 

「えっと、話は終わったよ?シェリルさん」

「そう」

「えっと、『話は終わったからもういいよ』って意味だと思うよ?シェリルお姉ちゃん?」

「そう」

「シェリル様?その、どうするおつもりですか?」

「ずっとここにいる」

「「「へ?」」」

「どういうこと?」

「クリスは私が守る、ずっとそばについている」

・・・思わず頭を抱える。

エルザとラコイも茫然としている。

「よし、キュルケさんの所へいこう」説得してもらう。

 

エルザとラコイにキュルケさんを呼び出してもらい、広場で話すことにした。

 

 

キュルケさんに説明した後の第一声は「ふ~ん、無理ね」だった。

「へ?」

「だってこの子、とっても頑固よ?一度こうと決めたら、てこでも動かないと思うけど」

「そんな」

「ふふ、説得がんばってね?シェリル私は応援してるわよ」

 

こうして、俺とエルザとラコイでの説得が始まった。

「男女一緒の部屋はまずい」と、言えば

「エルザとラコイは一緒にいる」と、言われ

「俺の方がシェリルさんよりも強いんだけど」と、言えば

「それでも、不意打ちには対応できない」と、言われ

「それはシェリルさんも同じじゃあ」と、言えば

「私はこれから常に周囲に注意を払う」と、言われ

「それだと不審者・・・」と、言えば

「私は気にしない」と、言われ

「そもそも男子寮にシェリルさんが入ると周囲の目が」と、言えば

「私は気にしない」と・・・

「俺が気にするうううううううううう」

「でもエルザとラコイは」

「使い魔!!ぎりぎりセーフなの!お願いします!勘弁してください!!」

と、土下座をしてなんとか。

「わかった」と、しぶしぶ引き下がってくれた。

 

・・・疲れた

 

 

 

 

 

 

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