トリスタニア人、転生日記   作:かたなあさはまな

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いつものように俺は、寝た後ボケ~っと授業を聞いていた。

オールド・オスマンの協力により、シェリルさんの設定は上手くいったらしい。

ネージュ領や、後見人等のことはオールド・オスマンに頼り、丸投げして本当に良かった。

俺やキュルケさんではどうしようもないからな。

 

そしてシェリルさんの転入は、無事?に終わった。

シェリルさんと俺は同じクラスになった。

あのじじい、な~にが「こっちのほうが、フォローなりなんなりしやすいじゃろ?」だ。

 

まあ、唯一おこった騒動と言えば、ミスタ・グラモンが早速と口説きに行って、ミス・モンモランシにぶんなぐられていたけど・・・

俺が席に座るとまず、エルザとラコイ、それにシェリルさんによる俺の隣の席の奪い合いが行われていた。

それを見ていた何人かが「なぜ、ミス・ネージュが君の隣に座ろうとするんだ」と、言ってきた。

どう言おうかと困っていると、キュルケさんが「シェリルとクリスは知り合いなのよ。ちなみに、私とシェリルは親友だけどね」とフォロー?をいれてくれた・・・その後キュルケさんと俺が何故か、親しくなったことで一悶着あったが。

まあ、その程度ですんだ。

ちなみに、俺の隣の席はローテーションで座ると言う事で、落ち着いたようだ。

 

しばらくするとコルベール先生が「あやや~失礼しますぞ」とか言って教室に入ってきた。奇抜な格好をして。

金髪のカツラを頭に乗せ、派手な刺繍の入ったローブを身にまとって・・・てか「あやや~」ってどこかで聞いたことがあるような、まあいいか。

等と考えているとコルベール先生の頭からカツラが落ちた。

すると誰かが「あ、すべった」と言い、教室は爆笑の渦が巻き起こった。

俺も「プッ」と、笑ってしまった。

エルザは言うまでもなく、ラコイまで笑っている。珍しいことにいつも無表情のシェリルさんまで。

 

コルベール先生の言う事には、なんでも今からアンリエッタ姫殿下が学院にくるそうだ、来なくていいのに。

 

学院の門の前で生徒が全員並んで杖を掲げている。

 

「へえ…あれがアンリエッタ姫様か。凄い人気だな」

と、平賀君の声が聞こえる。

今、立ち位置は俺の右にエルザ・ラコイ、左にシェリルさん・キュルケさん・ミス・ヴァリエール・平賀君となっている。

アンリエッタ姫殿下は馬車に乗り、笑顔で手を振っている。

なんか、笑顔が張り付いてるって感じだな。

まあ、あそこまでの地位となると色々あるんだろうなぁ。

 

次の日の早朝、いつものように早朝訓練をしようとしていたら、珍しいことに平賀君に出会った。

「あれ?平賀君?何してるんだいこんなに早く」

「あ!!クリスさん」

「ちょっと、サイト何してるの・・・って、あんた」

「どうしたんだい?サイト・・・って君は」

平賀君にミス・ヴァリエールにミスタ・グラモン?

「えっと、なにしているんだい?こんなに朝早く」

「あ・あんたには関係ないでしょ」

「そうだね、君には関係ない」

と、ミス・ヴァリエールとミスタ・グラモン。

「ちょっ、お前らそんな言い方ないだろ。えっとすいませんクリスさん」

「いや、まあいいけど、どうしたの?こんな早くから」

「いや、それが、ちょっと野暮用でアルビオンまで」

と、平賀君がとんでもないことを言い出した。

「ア・アルビオン?何でそんな所に、あそこは今内戦真っただ中だぞ!!」

思わず声が大きくなる。

「ちょっとあんた、声が大きいわよ」

「そうだよ、ミスタ・プルトン?それに君には関係ないじゃないか」

「あほか、そう言う問題じゃない、もしどうしても行くというならオールド・オスマンに報告させてもらうからな」

「「なっ」」

「学生があんなところに行くなんて自殺行為もいい所だ、絶対に止めさせてもらうからな」

と、言ったところで

「エア・ハンマー」

ドンッ

「がっ」

俺の体が吹き飛ばされる。

意識が朦朧とする中で、声が聞こえる。

「やれやれ、危なかったね。僕のかわいいルイズ」

くっ、もう意識が、刀よこい・・・

 

 

そして、意識が無くなる。

 

 

 

「う・ん」

目が覚める。

「ここは?」

「あ、クリスさん。目を覚ましたんですね?」

「え?この声は」

まだ、朦朧とする中で前を見ると、後頭部が見える。

頭?

パカラッパカラッパカラッ

馬の上?

 

意識が完全に戻るとそこは馬上だった。

しかも、体が縛られている・・・?

「ああ、すいませんクリスさん。今解きます」

どうやら、前にいるのは平賀君で、平賀君と俺を馬から落ちないようひもで縛っていたみたいだ。

「で?平賀君?説明してくれるかな?今の状況を」

「あ、はい。すいません」

平賀君ん説明を黙って聞く。

平賀君の説明だと、なんでも今向かっているのはアルビオン。ただ今内戦真っただ中の国で、そこに野暮用があっていくらしい。野暮用の内容はしゃべれないと。

それと、俺を吹っ飛ばした奴はミス・ヴァリエールと共にグリフォンに乗って前方を飛んでいる、ワルドとか言う魔法衛士隊隊長だとか、なんだか平賀君の機嫌が悪いな。

俺を吹っ飛ばした理由は、結構な声で騒いだから。わざわざレビテーションをかけてまで馬から落ちないよう縛ったのは、オールド・オスマンに報告されると面倒だから、だそうだ。

ふっ、しかしぬかったな。

部屋には遍石がある。そこから遍在を出して、オールド・オスマンに知らせれば、と意識を遍在に向けると・・・後ろから高度をとり一定の間隔でついてきている。

 

しまったあああああああ

朦朧としてたから呼んでいたーーー

基本命令で「不用意に人に姿を出すな」と、コマンドしたため、新たに出てきたワルドとか言うのに反応して、俺の命令が出るまで待機していた。しかもご丁寧に遍石が入った袋までひっさげて。

もうちょっと他にその要領を使ってほしかった。

とりあえず、そのまま後からこさせよう。

 

起きて早々に詰んだ。

 

平賀君は「ワルドが言うにはもう帰っていいらしいですよ?」とか言っていたが、そりゃそうだろう。

太陽が上に来ている。

今まで馬で走ってただろうから、今からたとえフライで帰ったとしても、竜を使おうが絶対に追いつけないだろうさ。

「いいよ、一緒に行くよ」

途中で止めるにしてもなんにせよ、一回止まってもらわないとどうしようもない。

まさか、平賀君だけ連れて帰るわけにもいかないし。

 

数時間後、途中で馬を変えて走り続ける。

その際に、いつまでも平賀君の後ろにへばりついているわけにもいかないので、俺一人で馬に乗る。

馬を変えるときに皆を無理にでも止めたかったのだが、グリフォンが、つまりミス・ヴァリエールが降りてこなくて、無理だった。

 

休みなく延々走り続け、平賀君とミスタ・グラモンがへばってきた。

「君たち大丈夫かい?」

「はあはあ、き、君に、心配されるほど、ぼかぁやわじゃ、ないよ」

とてもそうは見えないけど。

「はあはあ、クリスさん、つ、疲れないんですか」

まあ、常日頃から鍛えているからねぇ、スタミナが違う。

「いや、平気だけど」

途中で、レビテーションを使うことを提案しようかとも思ったが、疲れていた方が止めるのが楽だろうし、やめておくか。

 

 

日が傾きかけた頃に突如道に松明が投げ込まれる。

 

「敵襲か!!」

 

前方のワルドが叫ぶ。

おいおい、山賊かよ。

崖の上から矢がとんでくr「エアハンマー」知り合いの声がして、飛んできた矢が吹き飛ばされる。

「エア・ハンマー」

次に山賊どもが吹き飛ばされる。

「エア・ハンマー」

さらに山賊(ry

「エア・(ry

さ(ry

「エ(ry

「って、シェリルさん、山賊共死んじゃううううううぅぅぅぅぅぅぅ」

風竜・・・じゃなくて鱗が赤いからこの場合は火竜かな?

まあ、鱗が赤い竜にのったシェリルさんとキュルケさんに・・・明らかに怒っている表情の、エルザとラコイが降りてくる。

 

もしかして、俺、違う意味でピンチ?

 

 

 

30

 

 

 

・・・このあいだに引き続き、俺はまた正座している。

 

 

 

「なんで、エルザも一緒に連れてってくれなかったの?お兄ちゃん!!?」

「そうですそうです、なんで連れて行ってくださらなかったんですか?クリス様!!?」

「私は貴方にどこまでも憑いて行く」

「いや、あの、その今回は『シェリルさん』関連じゃないし」

「今回はアルビオンに行くんでしょ?私だって今とっても危ない状態だって知ってるよ!!?」

「そうですそうです、そんな危ない所に行くのになんで教えても下さらなかったんですか!!?」

「私は貴方を護る」

「きゅ、急だったし、それにほら、エルザが言ったようにとっても危ないし」

「なんで、そんな危ないところに私たちに何も言わずに行こうとするの?今まで以上に危ないんでしょ!!?」

「そうですそうです、もしクリス様になにかあったらどうするんですか!!?」

「私は貴方を危険から護る」

「い、いや、それは本当に急だったし、ね」

「なにがどう急だったの!!?」

「そうですそうです、何がそんなに急だったんですか!!?」

「どうして、そんなに急いでいたの?」

ヤ・バ・イ

俺もそんなに詳しく知らないし、もしも無理やり連れてこられたなんt「ああ、それはね?僕が無理やり連れてきてしまったんだよ」

「「「無理やり??」」」

「ちょっ」

「君にもまだ謝罪もしてなかったしね、詳しくは言えないがそれも含めて説明しよう」

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

冷や汗を滝のように流し、うろたえる俺をよそに、ワルドは俺にとって下手をすると、首輪になりえる話を進めていく。

「ちょっとした特殊な任務でね、アルビオンに行くことになったんだが、僕らの出発の時に彼に知られてしまってね。アルビオンは危険だからと止めようとしていたしこのままだと行けなくなる恐れがあったからね、ちょっと気絶してもらってここまで付いてきてもらったんだ」

「「「ちょっと『気絶』して?」」」

3人の目が怖い

俺は思わず目を逸らし、それに気づくかず、ワルドがしゃべる。

「ああ、とっさでね。どうやら説得は無理そうだったからね、こっちの姿が見られると避けられる可能性があったし、強行手段に至ったというわけだよ」

「「「『強行手段』に」」」

3人の声が怖い

「ああ、だから彼は君たちには説明できなかったんだよ。いや、いくら緊急手段だったとは言えすまなかったね?怪我は負わないように加減はしたんだが、それでも悪かったね」

「あ、いえ、その・・・」

「そうそう、まだ自己紹介がまだだったね」

俺がどうしようと完全に混乱していると、ワルド(馬鹿)は何を勘違いしたのか、自己紹介を始めた。

「僕は、魔法衛士隊の1つ「グリフォン隊」の隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ。気軽にワルドと呼んでくれたまえ」

「「「よろしく(お願いします)『ワルド』(さん)(様)」」」

「ああ、よろしくレディ達」

挨拶をするや否や、首根っこを引っ掴まれ

「「「ちょっとお兄ちゃん(クリス(様)あっちで話があるんだけど(あるんですけど)(ある)」」」

そして、ずるずると引きずらて行く。

「助けて」

思わず声を絞り出すが、平賀君、ミス・ヴァリエール、ミスタ・グラモン、馬鹿 (ワルド)は、キョトンとし。

キュルケさんは小さく「ご愁傷様」と、つぶやいた。

 

「ちょっとお兄ちゃん、あれに気絶させられたってどういうこと」

「いや、アルビオンに行くのを止めようとしてたら急にね」

「あれに攻撃されたんですか?あれに」

「いや、まあ、そうなるんだけどね?」

「貴方は少しの攻撃なら大丈夫じゃないの?」

「いや、さすがに意識してないところから急に攻撃されたらね?」

「つまり、話しているところに急に気絶させられて、あれにさらわれたってことなんだね」

「いや、つまる所そうなんだけどね?」

「大丈夫なんですか?あれに怪我させられたんじゃ」

「いや、まあ、どちらかと言うと脳震盪に近いのかな?怪我はしてないよ」

「つまり貴方は私よりも強いのにあれの不意打ちに対応できなかったと?」

「えっと、いや、あのね、それはね?」

「エルザ、これからは絶対お兄ちゃんから離れないからね?」

「え?」

「そうです、絶対に一人にはさせませんよ?」

「ええ?」

「24時間どこまでも憑いて行く」

「ええええええええええええ!!?」

「「「異論は認めないからね(ませんよ)(ない)」」」

「ハイ」

 

 

首輪が

 

出来てしまった

 

 

真っ白になっている俺をよそに、話は進んでいく。

ミス・ヴァリエールがキュルケさんに詰め寄る。

「なんで、あんたたちが来ているのよ」と。

なんでも、窓から俺たちの姿が見えたため(俺が気絶しているとは思わなかった)急いで出発したと。

シェリルさんは俺の部屋に行こうとしていてすぐに俺の部屋に行き、いないことを確認し、そのままエルザとラコイも引き連れてきたと言う事らしい・・・余計なことを。

キュルケさんを見ると『さっ』と、目を逸らした。

キュルケさん恨むよ・・・

 

そのまま話は続き

馬鹿は、ミス・ヴァリエールの婚約者だとかなんだとか言っているときに、ミスタ・グラモンが「ワルド子爵、奴らはただの物取りだと言っておりますが」と、言ってきた。

おいおい、まさか貴族3人に、しかも1人はグリフォンに乗っているのに、弓矢や剣で襲ってきた奴らがただの物取りなわけ「そうか、では捨て置こう」・・・はい?

「え?放置して行ってしまうんですか?馬・・・あ、いや」

「ば?」

「いえいえ、ワルドさん?」

「ふむ、奴らはただの物取りだと言っているんだ、捨て置いても問題ないだろう」

「あそこにいたら道を通る者に気が付くだろうし、そうしたら、あれを役人に引き渡せば恩賞が出るから役人に報告が入るだろう」

「もしそのままだったとしても、それは自業自得さ」

「まあ、それはまずないだろうけどね」と、言っているワルドを俺は見る。

軍人が、しかも仮にも、隊長を任せられている者にしては、あまりにもお粗末な対応だ。

それに、ミス・ヴァリエールは『婚約者』だと言っていた。

もし、俺がアルビオンに行くことに賛同したとしても、絶対にエルザ・ラコイ・シェリルさんは連れて行かないだろう。

何故なら今アルビオンは内戦中だからだ。

どこの世界に、内戦中の国に婚約者を連れて行くやつがいるだろうか。

しかも、ミス・ヴァリエールは『公爵家』の子供。

いくら俺でも、こちらの世界の基本知識として地位の差も教えられている。

公爵家は王位継承権を持っている。

まあ、簡単に言えば公爵家三女つまり『低くても王位継承権を持つ娘』を『内戦中の国』へ、連れて行くわけだ。

もし、ミス・ヴァリエールが死んでしまったらどうなるか、予想すらできない。いや、したくない。

 

そのまま、馬に乗っていたものはシルフィードに乗り込み、グリフォンに引き続きついていく。

ある程度離れたら、念のため、後ろから付いてきている刀から1つ遍石を物取り?共の近くに落としておく。

 

今まで延々馬で駆けてきたが、道中誰もいなかった。

なのに放置していこうと言うんだ。

もしかすると繋がりがあるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

31

 

 

 

 

 

「諸君、もうそろそろラ・ロシェールだ」

 

前を、グリフォンに乗っていた『馬鹿』が高度を落としこちらに伝えてくる。

 

 

 

馬鹿ことジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドは、予想道り『敵』だった。

まあ、今の所それしかわかっていないが。

 

遍石で見ていたが。偽装した物取り共の下に来たのは、白い仮面を着け服装を変え、『ワルド』の声で物取り共に話しかけていた。

 

わざわざ、学院生の素人、ミスタ・グラモンに取調べさせたのはその為なのだろう。

この世界では『音』について何も研究がされていない、声がどう出ているかも知られていない、声を変えるのに布越し等と言った程度しか方法が考えられていないのだ。

当然、物取り共にしゃべった声で取調べを行えば正体がばれる。

運が良かった、全体が見える位置に遍石が落下したものだ物取り達、いや傭兵達に「依頼した場所で待つ」と言い、ワルドは木の陰に消え『消滅』した。

遍在、ワルドは風のスクウェアか。

今、遍石から遍在を出し、傭兵共を上から追っている。

しばらくは、様子見だな。

 

 

船の発着場であるロ・シェールに着くなり、早速とワルドはアルビオンに行くための交渉をしていたのだが、アルビオンの浮遊航路?の関係上船が出るのは翌々日とのことだ。

まあ、軍人の、しかも一般人には知られてはいけない特殊任務に出るのに、下調べを何もせずに行く軍人がいるかどうかは疑問だが。

 

結局アルビオンに出る船は無く今夜はこのままここら辺で1番上等な宿である『女神の杵』亭に行くことになった。

 

着くなりワルドは店主の所に行った。

テーブルに着くと俺は、平賀君たちの方に向き直り話しかける。

「さて、これからどうするつもりなんだ?」

「え?どうするつもりってどういうことです?」

「学園を出る前に言ったはずだが、アルビオンは内戦中だ。」

「ふん、それがどうしたって言うのよ」

この桃空頭が、何を考えているんだ。

「だから、一介の学生ごときが何の当てもなく、今のアルビオンに行くのは自殺行為だと言っているんだ」

「ふん、ようは君はアルビオンに行くのが怖いのだろう?」

「?、ミスタ・グラモン?今はそんなことを言っているのではないんだが」

「ふっ、君は『魔法』も『学』も貴族としての『誇り』も、持っていない『底辺』のクリスだからね。隠さなくても別にいいよ」

俺が、この金空頭に口を開こうとしたとき、横からシェリルさんが会話に参加してきた。

「クリスへの侮辱は許さない」

・・・違った、正確には俺に売られた?喧嘩をシェリルさんが買ってしまった。

「ミス・ネージュ、君には関係ないだろう?」

「私には関係ある。彼への侮辱は私が許さない。すぐに取り消して」

と言い、杖を握りしめるシェリルさん・・・

「待った待った待った、シェリルさん杖を下して!!」

「でも、お兄ちゃん?私もシェリルお姉ちゃんに賛成だな」

「そうですクリス様。やはりここはお怒りになるべきだと思いますが?」

「前々から言っているだろう、俺の2つ名なんてどうでもいいって。それに今はそんなどうでも良いことを話しているんじゃない」

「でも」「だってぇ」「ですが」と3人。

「でももだってもですがも無い」

「だけど、そんなに危険なんですか?クリスさん」と平賀君・・・さすがゆとり世代。

「君ねえ、君たちが行こうとしているのは戦争中の国だよ?」

「それはそうですけど」

「君の国で戦争中の国へわざわざ一介の学生が行くようなことがあるのかい?」

「それはそうですけど・・・」俺の世界ほどの事じゃあないだろうなあ

・・・聞こえたぞ。

なるほど、どうして平賀君がそれほど強く反対しないのかが分かった。

まあ、こっちの世界ではメディアも発達してないし、実際この世界の戦争がどれほどひどいのかも俺も知らない。

どうやって止めようかと考えていたところ、

「諸君、部屋をとってきたぞ」

ワルドがやってきた。

 

俺たちは今、夕食を食べている。

そういやあ、朝から何も食べてなかったな。

ワルドは何か目的があって平賀君達を連れて行こうとしている、だからこいつがいるときに止めようとしても無駄だろう。

いくらなんでも今、この時間から帰れなんて言い出すことはないだろう。

少なくともあと1日、1日はチャンスがあるはずだ。

なんて考えていると「さて、諸君。泊まる部屋割りを言うぞ」等と言い出した。

 

「部屋割りは、サイト君とギーシュ君、ミス・ネージュとキュルケ嬢、エルザ嬢とラコイ嬢、そして、ミスタ・プルトンには一1人で泊まってもらって僕とルイズが同室だ」

「なっなんでルイズとあんたが」

「僕は彼女の婚約者だ。一緒の部屋でももんだい「なんでエルザとお兄ちゃんが一緒じゃないの?」ない?・・・へ?」

「だ?か?ら?、なんでお兄ちゃんとエルザが一緒じゃないの?」

「いや、若い男女が一緒の部屋は問題かと」

いや、お前が言える立場じゃないだろう。

と、心の中で突っ込みを入れる俺。

「私もクリス様と一緒がいいです」

「い・いや、だから」

「私も一緒がいい」

ワルドがどもっている間に、エルザ・ラコイ・シェリルさんが俺との相部屋を希望してきた・・・やばい。

まあ、無駄な可能性も高いがとりあえず、

「ちょっとまった、俺にも意見を言わせてくれ」

「今日言ったよね?今後1人にはさせないって」

「クリス様の意見は反対です」

「私は貴方にどこまでも憑いていく」

・・・無駄だった。てかラコイ、俺まだ何も言ってない。

「いや、しかしだねぇ、しかも4人一緒はちょっと」

ワルド頑張れ。

「あら、いいじゃない?それに4人一緒なら逆にやましいこともできないんじゃなくて?」

黙れキュルケ!!

「けしからん、けしからんよ。そんなうらやmゲフンゲフン。と、とにかく!そんなことぼかぁ反対だね」

本音が漏れてるぞ、ミスタ・グラモン。

しかし、頑張れ。

「そ、そうよ。うら若い女の子がなんてことを言うの!!」

その前にワルドとの相部屋を反対した方がいいと思うぞミス・ヴァリエール。

だが、頑張れ。

「うらやましい」

平賀君、そういうことはもっと小声で。

「や・だ、お兄ちゃんと一緒の部屋がい?い?」

何と言おうとダメなものはダメだ!!エルザ。

「いやしかし」

がんばれ超頑張れワルド。

「ヤダ!!エルザお兄ちゃんとの一緒の部屋がいい。それに私はお兄ちゃんの使い魔だもん問題ないもん」

「いやだからねえぇ・・・何?使い魔?君が?」

「そうだよ?エルザとラコイはお兄ちゃんの使い魔だよ?」

「そんな、馬鹿な人が使い魔だと」

ん?ワルドの様子が変だな。

「ええ、まあ、エルザとラコイは俺の使い魔ですけど?」

人じゃないけど。吸血鬼と翼人だけど。言えるわけないけど。

急に黙り込むワルド。

何かぶつぶつと始祖とか何とか言っている。??

「どうしたんですか?ワルド様?」

「いや、ちょっとねルイズ・・・」

「ちょっと君たちの使い魔のルーンを見せてくれないか?」

「えっ何で?」

「ん?そういえば俺もルーン見たことなかったな」

「え?そうだっけ?」

あの時はあまりの衝撃で、ルーンなんて完全に忘れてたからなぁ。

「それで、君のルーンはどこにあるんだい」

なんかやけに食いつくなあワルド。

「えっと、フトモモだけど」

「フトモモ?手や頭じゃなくフトモモ」

と、ワルドがまたブツブツ言ったと思うと・・・

「とにかく見せてくれ」

といい、いきなりエルザのスカート『ばっ』とをめくり上げた・・・え?

「ふむ、ルーンは・・・」と、まじまじフトモモを見ているワルド。

皆が完全に固まっていると、

「きっきゃあああああああああああああああああああああああ!!!!何すんのこの変態!!!!!」

エルザが叫び声を上げ、変態の頬をはたく。

吸血鬼の腕力で、しかもフルスイングで。

結果『ずばああああああああああんんんんんんんん』と、言う音と共に吹っ飛ぶ変態。

キリキリキリと回転し、ちょい遠めにあるテーブルへ『ががああああああああんんんん』墜落する。

 

「きゃあああああああワルド様!!?」

と、言い動かなくなった変態に駆け寄っていくミス・ヴァリエール。

変態に駆け寄るなり

「あんた、なんてことすんのよ!!」

ちょっと怒り気味のミス・ヴァリエールにキュルケさんが言う。

「ちょっと、ルイズ。じゃあ貴方はいきなり初対面の男性に、スカートをめくられてもいいって言うの?」

「うっ、それは」

まあ、そうだろうな。

「だけどすごい力ねぇエルザちゃん」

うっ

「いや、その、そう、使い魔、使い魔のルーンが刻まれてからだからルーンの効果だと思うよ!!?」

「へぇ、使い魔のねぇ、それにしてもすごい力ねぇ。ワルド様の頬、凄いことになってるわよ?」

言われ変態を見る。

・・・うわぁ

赤い手形がと思ってよく見たら違った、手形の血豆が出来てる。うわぁ

「あーどっかそこらへんに治療薬売ってる店でもあるんじゃない?」

いや、俺ここでばらすつもりないし。

「私探してくる。」

と言って、あわてて店の外に駆けだすミス・ヴァリエール。

「まあ、ここで寝かしてても店の邪魔になるだろうし、部屋に放り込んでおこう」

「そうね、そうしましょうか」

変態を部屋に放り込み食事を再開し、再び部屋の話題へと戻る。

「じゃあ、エルザ達とお兄ちゃんが同室ね」

「いや、だから俺はね?」

「私はクリス様の意見には反対です」

「いや、あのねまだ何も」

「私は貴方を護る」

「・・・」

どうしよう。

このままでは4人との同室が決定してしまう。

何かいいアイディアは。

「そうだ、平賀君俺と相部屋にならないか」

「えっ、俺ですか?」

「ほら、最低でも2人部屋ならぐっと安全になるし、ね?」

と、むしろエルザ達に言う。

「だけど」

「お前たちは俺が今朝みたいに誰かに突如襲われるかもしれないとおもってるんだろう?平賀君なら腕もあるし大丈夫だって」

「ですが」

「それにもともとは2人部屋なんだから4人一緒は無理だって無理無理」

「なら私が」

「ほら誰か一人だけとなるとお前ら絶対喧嘩するだろ?だから誰でもないし腕もたつ平賀君ならみんな納得だろ?な?な?」

一気にまくしたて、3人がしばらく考え込みうんうんうなった後、

「まあ、結構強いヒラガおにいちゃんなら」

よっしゃあああああああ、勝った。

何に?と言われると困るけど勝った。

 

「はぁ、なんか疲れた。風呂でも入るか」

心底疲れた、風呂にでも入って一休みしよう。・・・と思ったのだが。

「じゃあ、エルザも一緒に入る」

「い、いいですね、私もご一緒します」

「私は貴方に憑いていく」

 

・・・は?

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや」

「え?あれもダメこれもダメって、じゃあ、何ならいいの?お兄ちゃん」

「だめだめだめだめだめだめだめだめだめだめ」

「ぜ、絶対1人にはさせません」

「むりむりむりむりむりむりむりむりむりむり」

「私は貴方にどこまでも憑いていく」

やばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよやばいよ

同室だ相部屋だとかの比じゃないよ、このまま風呂に入ったら絶対風呂に押しかけてくるよ、どうする、俺どうするよ。

 

そうだ

 

俺は「うらやましい」と、思いっきし声に出している平賀君に話しかける。

「平賀君、一緒に風呂に入ろう」

「へ?」

「いいじゃないかたまには男同士裸の付き合いしようじゃないかな?てかしてくれ俺を助けると思ってお願いだ平賀君」

むしろ、すがりつくレベルで頼む俺。

「へ?あ、いや、その」

平賀君が俺の後ろをみてどもる。

俺も思わず後ろを見るとそこには・・・

3人の鬼が・・・

がきっと平賀君の頭を掴みこっちに無理やり顔を向けさせ、

「頼むっ、頼むから一緒に入ってくれええええええええええええええええええ」

「お願いだ平賀君お願いだああああああああああああああああああ」

 

結果

 

4人で風呂に入ることは何とか免れ部屋に着くなり寝てしまった。

 

あまりにも疲れたからせっかくの説得のチャンスも忘れて・・・

 

 

 

ちなみに、ラコイの使い魔のルーンは胸元にあるそうな。

 

 

 

 

 

 

32

 

 

 

 

 

コンコンコンコン

 

う、ノック?

 

朝ノックの音で目を覚ます。

 

「ふあ~~」

なんだ?朝っぱらから。

「あ、ワルド・・・さん」

俺がベットからもそもそと出ようとしているところに、平賀君が対応した。てかワルド?

やべ昨日の事かな?

 

「やあサイト君おはよう。ああ、クリス君もおはよう」

あれ?俺じゃない?

「あの、昨日は・・・」

「ああ、昨日はどうも飲み過ぎてしまったようだね。はっはっはっは、エルザちゃんのルーンを見たことは覚えてはいるんだが、その前とその後からの記憶がないんだよ。何故か覚えていないことが無性に悔しいがね」

え、昨日の事を覚えてない?

「え?ちょ、あの、昨日の事は覚えてなくて、エルザちゃんのルーンを見たことは覚えてるんですか?」

平賀君が俺のききたいことを代弁してくれる。

「ああ、だがそれ以外は全く覚えてないんだ。どうやってベットに入ったとか」

そりゃそうだ、気絶しているワルドをベットに運んだんだから。

むしろ覚えていたらすごい。

強い衝撃を受けると記憶障害が起こると聞いたことがある。まさしくそれだろう。

「あ~それでどうしたんですか?ワルドさん?」

平賀君が余計なことを言う前に、俺がワルドに話しかける。

「いや、サイト君と少々勝負がしたくてね」

「え?俺と?」

「何でまた平賀君と?」

「いや、あの土くれのフーケを撃退したという、サイト君の腕を見たくてね」

「え?俺がですが?」

ん?何を言っているんだこいつ?

「いえ、俺は何もしてないですけど」

「へ?」

そこで俺は口を出す。

「そもそも、なんで『平賀君』が、そこにいたことを知っていて、何故『平賀君』が撃退したと思ってるんですか?」

「え?いや、その、風の噂で聞いてね」

「へぇ、ただの『平民』である平賀君が、貴族に混じって活躍したと言う事を風の噂で聞いたと?」

あまりにもおかしすぎる。トリスティンのプライドの高い貴族が、『平民の活躍』を噂するなど。

活躍を無かったことにするなら話は別だが。

「いや、あとはほら、ギーシュ・ド・グラモン。そう、かの陸軍元帥を父に持つ名門・グラモン伯爵家。四男とはいえ彼に決闘で打ち勝つとは大したもんだ!!そ、その話を聞いて是非にと手合せをね」

ますます怪しいぞ。てか怪しく無い所が見つからないんだが。

そんな話が流れる可能性は、土くれのフーケを撃退したと言う話が流れるよりも低い。

これは、学院に密偵を放ってたと見るべきか?

いや、しかし利点はなんだ?

学院にガリア王族がいるからその関係上とかならまだわかるが。

いや、そうなのか?やばい、そっちのがまだ信憑性がある。

下手するとエルザを始め、俺が関わった人たちが危ない。

「と、とにかく、朝食を食べたらちょっと付き合ってくれないか?」

考えていたら、ワルドが話を進めてきた。

ワルドは少なくとも、この任務において今現在、裏切り者に位置づけられてもおかしくない立場にある。

このまま放っておいたら平賀君が巻き込まれる可能性がある。

しかし、だからと言って俺が無理やり止めたら変だ。

「わかりました、いいですよ?」

しかも平賀君が受けてしまった、どうする・・・

「えっと、その」

「何だい?クリス君?」

「いや・・・そう、魔法衛士隊隊長である貴方が相手とは、その、平賀君が少し気の毒で・・・」

「え?」

「いや、まあ、平賀君?相手はあの魔法衛士隊『隊長』だ。流石にミスタ・グラモンとは比べ物にならないほど強いだろう」

特に隊長を強調して言う

「え?そこまでですか?クリスさん」

よし、少し平賀君がビビったぞ。

「いや、彼は言い過ぎ「そうだとも!!魔法学院の生徒とは比べ物にならないだろう!!まあ、いくらなんでもワルドさんも本気にはならないだろうから胸を借りるつもりでかかりなさい!!ねえ?ワルドさん?」ああ、いや、まあ、そうだね。ハッハッハッハ、その、流石に手加減はするよ?うん、するとも」

よしっ、後はこれと同じことをみんなの前で、特にミス・ヴァリエールの前でもう一度言えば、平賀君が大けがを負わされることはないだろう。

「はっはい、よ、よろしくお願いします。ワ、ワルドさん」

少し平賀君の顔が引きつっていたが、どうやら断らずそのままやるようだ。

朝から疲れた。

 

朝食をとりながら、俺は遍在からの報告を受ける。

ワルド遍在と別れた傭兵共は2つに別れた。

と、言っても頭と呼ばれていた奴と、その他に別れたため傭兵団の頭を追ったそうだ。

その後ラ・ロシェールの、俺たちが泊まった女神の杵亭とは真逆の、ぼろい酒場に入っていく。

しばらく間を開けて酒場に入り、適当に飲み物を注文し、傭兵団の頭に接触するであろう人物を待つ。

 

しばらくすると・・・白い仮面をつけたメチャクチャ怪しい人物が入ってきた。

いや、わかりやすすぎるだろう。

もうちょっと隠せよ。

「よう、旦那ァ、待ってたぜ?」

傭兵団の頭がワルドの遍在に話しかける。

遍在がくる時間から見て女神の杵亭の店主に話をしに行った時だろう。

その時の話の内容は、

「出来るだけ人を集めろ、そして自分の合図により女神の杵亭に襲撃をかけろ、ある程度経ったら撤退していい」

とのことだった。

傭兵団の頭に「前金だ」と、言い袋に入った状態で金を渡したようだ。

全部が金貨なら大体500エキューと言ったところか。

傭兵団の頭はその依頼を受けたようだ。

ワルド遍在が酒場を出る前に先に出る。

しばらくし、ワルド遍在が出てきたが、何か様子が変だ。

「本体?返事をしろ本体」

と、言っていたが・・・

ああ、エルザに吹っ飛ばされた時か。

しばらく悩んだ後、遍在は消滅を選んだようで姿を消した。

恐らく、ここまではエルザに吹っ飛ばされること以外は予定道りなのだろう。

ふうむ、傭兵共の件と言い、ワルドの目的がますますわからん。

自分を攻撃させる?

いや、ターゲットが俺たちの中にいるのか?

しかし、俺やエルザ達は予定外のはずだ。

だとすると、平賀君・ミス・ヴァリエール・ミスタ・グラモンにターゲットが限られるが・・・

この3人を狙う理由がわからない。

やはり、この任務の内容を知らなければわからないな。

 

朝食の時にワルドが先ほどの手合せの話をし、俺が先ほどのワルドの手加減の話をする。

しばらくし、この宿の裏にあるという広場に皆で行く。

 

ちなみに、エルザは終始ワルドを睨んでおり。ワルドの方は、何故睨まれているのかわからないみたいな対応をし、話を聞く限り皆が『ああ、あの物凄い張り手のせいで記憶が・・・』と、理解したようで、昨日の事は誰1人としてしゃべらなかった。

 

 

 

 

 

33

 

 

 

 

朝食を食べている最中に遍在からワルド遍在の動向を聞き、裏の広場への移動中、エルザ・ラコイ・シェリルさん・キュルケさんには話たほうがいいと、決定づける。

ワルド遍在は言っていた、『自分の合図により女神の杵亭に襲撃をかけろ』と。

今日はアルビオンへの船が出ないため、今日も『女神の杵亭』に泊まる事になるだろう。

今、俺たちは裏の広場へと向かっている。

女神の杵亭に戻るのは最低でも、平賀君の腕試しとやらが終わってからだろう。

つまり、女神の杵亭に戻ってから明日の出発までに襲撃があると、言う事だ。

まあ、とりあえず・・・もう広場についてしまったので、話すのは終わってからだな。

 

平賀君がデルフリンガーを、ワルドが軍杖剣を構える。

 

「きゃ~、ダーリンがんばって~」

「サイトー無茶しちゃだめよー」

「君はボクを倒したんだー、情けない戦いは許さないぞー」

「相棒、気張らずに行こうや」

等と人の気も知らずにのんきに応援している4人と1本「ヒラガお兄ちゃん、がんばってー」

「ヒラガさんがんばってー」

「・・・がんばれ」

7人が応援していた。

「・・・・まあ、平賀君。怪我をしないよう気を付けて」はぁ

 

「ふふ・・・サイト君、来たまえ」

「はい、おおおおおおおおおおおおおお」

平賀君が駆け、ワルドに切りかかり、真っ直ぐデルフリンガーを振り上げ、振り下ろす。

ワルドはそれを何の苦も無く受け・流し・避ける。

完全にワルドのペースだな、無理もないけど。

場数が違いすぎる。

「ふむ、早く力もある。だが、それだけでは、ある程度戦闘経験があるものには勝てないぞ?サイト君」

「くっそおおおお」

また少し、平賀君のスピードが上がる。だがそれでもワルドに届かない。

「さて、僕はメイジだ。そろそろ魔法を使わせてもらうよ?」

「いけねえ、相棒離れろ」

ワルドは素早く呪文を紡ぎ、平賀君へ魔法を放つ。

「エアハンマー」

ドンッ

「うわあああああああ」

エアハンマーが平賀君に当たり、積み重ねてあった樽へと突っ込む。

『どこおおおおおおおおん』

『がらがらがらがら』

「ふう、まあ、こんなものかな?一応加減はしておいたから、怪我はしてないと思うが」

「サイトっ」

平賀君に駆け寄る、ミス・ヴァリエール。

「まあ、しょうがないわね」

やれやれ、とでも言いそうなキュルケさん。

「まあ、流石は魔法衛士隊隊長殿・・・か」

どこか悔しそうに言うミスタ・グラモン。

「大丈夫かな?ヒラガお兄ちゃん」

「ああ、あの程度じゃ怪我はしないだろうな・・・樽に突っ込みされしなければ」

確かに『魔法』では、怪我はしないよう手加減はしてあったみたいだが。

「負けちゃいましたね、ヒラガさん」

「まあ、実力差がありすぎるからな。どうしようもない」

少し前まで、戦闘のせの字も知らなかったわけだからなあ。

「負けてあたりまえ」

「ま、そうだな」

等と話している最中、平賀君がミス・ヴァリエールにひっぱり起こされる。

「いてててて」

「怪我はない?サイト」

「ああ、大丈夫だよルイズ」

「ふむ、サイト君、きみは『使い魔』だ」

唐突にワルドが話し出す。

「あ、はいそうですけど」

「速さ、力はなかなかのものだが、それだけだ」

「・・・」

「素人が少し早く動けるのと変わらん」

そりゃそうだ、なにせ平賀君は文字道り素人なんだから。

「使い魔の使命は主人を守ること・・・だが、君ではルイズは守れない」

「だって、だってあなたはあの魔法衛士隊の隊長じゃない!強くて当たり前じゃないの!」

うん、それは今朝言ったはずですけど?と口を出そうとしたら

「そうだよ。でも、アルビオンに行っても敵を選ぶつもりかい?強力な敵に囲まれたとき、きみはこう言うつもりかい?私たちは弱いです。だから、杖を収めてくださいって」

だから、行くなって言ってるんだよ。

ミス・ヴァリエールは黙り平賀君を見つめる。

平賀君も悔しそうに唇をかむ。

「いこう、ルイズ」

ワルドがミス・ヴァリエールを連れて行こうとしたとき

「待ってワルドさん」

エルザが待ったをかけた。そのまま行ってくれればワルドの事が話せたのに。

ワルドが振り向きエルザを見る。

「何だいエルザちゃん」

「要は今のはヒラガお兄ちゃんの使い魔としての実力を見たんでしょ?」

「ん?いやまあ、そうだよ?」

いや、さっきのワルドの言ったことから見て、平賀君とミス・ヴァリエールを離す為だろうな。

「じゃあ、私も見て」

「「え?」」

思わず俺とワルドの声が重なる。

「いやいや、それは」

と、言ってちらっと俺を見てくるワルド。

「エルザ?なんでまた」

「いいじゃんお兄ちゃん、私も使い魔なんだよ?お兄ちゃんを守りたいもん」昨日、お兄ちゃんに攻撃してくれたお礼もしてないし

エルザは真の目的をつぶやいた。

「そうですね、私もクリス様を守れるかどうか見てもらいましょう」

・・・ラコイも聞こえたようだ。

「わたしも」

シェリルさんまで。

「ふう。まあ、いいだろう」

ワルドが了承する・・・死んだな。

「わーい、じゃあヒラガお兄ちゃん、デルフリンガー借りるね?」

と言い先ほど平賀君がエアハンマーで手放したデルフリンガーを「んしょんしょ」と言って引きずる。

お、恐ろしい。俺は、いやここにいるワルドを除いたすべての者が、エルザのたくらみに気づいたことだろう。

「じゃあ、んしょんしょ、いくよぉ」

相変わらず、カラカラとデルフリンガーを引きずる演技中のエルザ。

「頑張りましょうね、みなさん」

と、弱そうに握りこぶしを作るラコイ。

「がんばる」

と、自分の杖をグッと握るシェリルさん。

「ふう、やれやれ、じゃあ来たまえ」

と、完全に油断したワルド。

「だ、駄目よワルド油断しないで」

ミス・ヴァリエールが声をかけ、

「はっはっは、大丈夫だよルイズ」

と、ミス・ヴァリエールの方を向いたワルド。

その瞬間、エルザがデルフリンガーを『ヒョイ』と、肩に担ぎ平賀君と同等レベルの速さでワルドへ突っ込む。

視界の端で見えたのだろう「なっ」と、言いあわて軍杖剣を構えるワルド。

エルザは「ふっ」とデルフリンガーを横に薙ぐ。

自分の前に軍杖剣を盾にするように立てるが、エルザはそれを見るなり少しデルフリンガーをずらし、デルフリンガーの先端を軍杖剣の根元に当てる。

すると、かなりの勢いで振るわれたデルフリンガーは、その勢いを受け流すことが出来なかった軍杖剣を

『キンッ』

斬り飛ばす。

「なっ」

驚愕するワルド

エルザは勢いそのまま、下からデルフリンガーの腹でワルドを打ち上げる。

「ちょっまっぐふああああ」

ワルドが『ズガアアアァァァンン』空中へと回転しながら『キリキリキリ』打ち上げられ、そこへシェリルさんの「エアッハンマアアァァ」明らかに全力のエアハンマーがワルドを『ドコオオオォォォンンン』襲う。もはやワルドは声を発しない。

回転中に別方向から力を加えられたため『ギャリギャリギャリ』と回転する。

回転しながら落下するワルドの落下地点にラコイがいるが、いくら亜人とは言え翼人は、人よりも少し力が強い程度、いったいなにを・・・口が動いている。

この距離では聞こえないが、まず間違いなく精霊魔法だ。

落下しラコイに近づいたワルドの頬にラコイの張り手が『ズバアアアァァァァンンン』炸裂する。

回転中に別方向から力を加えられたため『ギャリャギャリャギャリャ』と複雑な回転しながら空を逝くワルド・・・人ってあんなふうに回転できるんだ。

先ほど平賀君が突っ込んだ樽の山へ、平賀君の比ではない勢いで突っ込む『ズガガガガガガガガアアアアァァァァァァンンンンン』樽の山が吹き飛んだ。

「うわぁ、もしかして死んじゃったんじゃ」

俺もそう思うよキュルケさん

「・・・ミスタ・プルトン!!今までの非礼を詫びる!!どうか許してくれええええ」

と、五体投地する、ミスタ・グラモン。気にしてないよ

「ワルド、ざまあww」

平賀君根に持ってるなあ

「・・・」

ひたすら呆然とするミス・ヴァリエール

『とことこ』とエルザがワルドに近づきデルフリンガーの先端で『つんつん』とつつく。

いやまあ、デルフリンガーは剣なので正確には『プスプス』なんだが。

すると「がっぐっ」と、うめくワルド。

「うんっ生きてる」

『キャハッ』と音が出そうな笑顔で言うエルザ。

「きゃあああああああ、ワルド様あああああああ」

ミス・ヴァリエールがワルドへ駆け寄る。

「あっあんたなんてことすんのよ」

ミス・ヴァリエールがエルザに怒鳴る。

「えー?でもさっきワルドさんが『アルビオンに行っても敵を選ぶつもりかい?強力な敵に囲まれたとき、きみはこう言うつもりかい?私たちは弱いです。だから、杖を収めてくださいって』って言ってたよね?」

にこやかに言うエルザ。

「そっそれは」

「そうですねえ、相手がこちらの油断を誘ってくるかもしれませんよ?」

同じく、にこやかに言うラコイ。

「でっでもワルドは杖を」

「敵はこちらが杖を持っていなくとも攻撃してくる。先ほどのワルドの言葉を借りるなら、油断したワルドが悪い」

同じく、無表情で言うシェリルさん。

「・・・」

ついには黙り込む、ミス・ヴァリエール。

「まっまあそんなことよりも早く宿にワルドを連れて行って治療した方がいいんじゃない?ルイズ」

キュルケさんが、こちらをちらちらと見ながら言ってくる・・・治療するべきか否か。

俺はとりあえず、五体投地中のミスタ・グラモンへ呼びかける。

「あーミスタ・グラモン?」

「はっはいいいいいいいい!!なんでしょうかプルトン様!!」

様とな!!

「いっいや気にしてないから!!その五体投地をやめて!!」

「ありがとうございますうううう!!ありがとうございますうううう!!」

よほど今の光景が怖かったのだろう涙を流しながら感謝された・・・エルザのつぶやき聞こえてたのかな?

「とりあえずワルドさんを部屋に運ぼう手伝ってくれ」

「はっはいいいいい、喜んで手伝わせていただきますぅぅぅ」

どうやってミスタ・グラモンを落ち着かせようか。

 

 

 

 

 

34

 

 

 

 

何とか昨日と同じくワルドを部屋に運ぶ。

終始ミスタ・グラモンが「ごめんなさいごめんなさい」と言い、エルザが「なにをあやまっているのかな~?」と、ラコイも「さあ?わかりませんね~」と言っていた。

お、恐ろしい。

もうすでにミス・ヴァリエールは昨日と同じく水の秘薬を買いに行っている。

 

部屋にワルドを運び、廊下に出るなり。

「プルトン様!!どうか私めをお許しくださいいいいいい」

「いや、だから俺は気にしてないって!!」

「ほんと、いったい何を謝ってるのかな~。ねえ、ラコイ?」

「ほんとうですね~、いったい何を謝っているのやらシェリルさん?」

「意味不明」

エルザ・ラコイ・シェリルさんが、ミスタ・グラモンを脅す。

「そっそれは~それは~」

カチカチカチと奥歯がかみ合わなくなるほど脅えるミスタ・グラモン。

「てっ底辺と言っていたことを」

「ふ~ん。誰が~?誰に~?」

冷たい目で、ミスタ・グラモンを見るエルザ。

「はっきり言ってくださらないと、わかりませんね~」

同じく冷たい目をするラコイ。

「意味不明」

これまた冷たい目をするシェリルさん。

ちなみに、キュルケさんはこの場を、もうすでに逃げている。

「そっそれは・・・ミスタ・プルトンに」

「「「プルトン?」」」

「いっいえ、プルトン様に」

思わずため息が出る。

「はあ、こらこらこら、やめやめやめ」

「お兄ちゃんはこういってるけど・・・グラモンお兄ちゃん?腕試しでもする~?」

「いいですね~」

「素晴らしいアイディア」

「ひっひいいいいいいい」

「はあ、だからやめろって」

それに、ほかの客の視線が痛い。

 

しばらくしミス・ヴァリエールが戻ってきて、部屋に篭りワルドの看病を始める。

俺たちは下の階でのんびりしている。

「ちぇっ、なんだよルイズのやつ」

秘薬をワルドに与えた後、何もすることがないはずなのに、部屋から出てこないミス・ヴァリエールにむくれている平賀君。

「まあ、しょうがないわよダーリン」

それを慰めるキュルケさん。

「まったくあれっぽっちで情けない男ねぇ。ねえ?グラモンお兄ちゃん?」

エルザが再びミスタ・グラモンをいじり始める。

「はっはい、エルザさん」

「クスクスクス、何をそんなに脅えているんですか?グラモンさん?」

それに乗っかるラコイ。

「いっいえ、脅えてなんて」

「理解不能」

心なしかシェリルさんも楽しそうに言っている。

「ひっひいいいいいい」

「はあ~、いい加減そのわけのわからん悪乗りをやめろ」

思わずため息が出る。

しかし、ワルドが敵だとエルザに言わなくてよかった。

じゃなかったら斬れたのは軍杖剣ではなく・・・ワルドの首だったかもしれん。

いくら敵だとは言え、人の首が宙を舞うところなんぞ見たくない。

「しっかしエルザ、お前があれほど強かったなんて知らなかったぞ?」

「あ~うん、お兄ちゃんに合う前に色々あったから」

ああ、まだ食事は人間の血だった頃か。

そういやあ、その手の話はほとんど聞かなかったな。

とりあえず、どうやって平賀君とミスタ・グラモンと離れて、ワルドの話をしようかと思っていたら、突如、遍在から連絡が入る。

『傭兵共に遍在が接触した』と。

 

恐らくワルドが平賀君の腕試し前に遍在を作っていたのだろう。

・・・エルザ達に吹っ飛ばされるのは、完全に予想外だったようだ。そりゃそうか。

俺たちがワルドを部屋に放り込み、ミス・ヴァリエールが宿に戻ってきてしばらく後、白い仮面をかぶった怪しすぎる遍在ワルドが、傭兵共が止まっている宿屋に飛び込んできて、

「女神の杵亭へ、今すぐ襲撃をかけろ」

そのとき、ローブに身を包みワインを嗜んでいた俺の遍在は、ワインを吹き出しそうになったとか。

いや、何してるんだ?俺(遍在)

 

報告を聞きすぐさま立ち上がり、どう言おうと数瞬迷ったがすでに遅かったらしく、外からかなりの数の人の声が聞こえる。

「あらやだ、お祭りか何か?」

と言って、窓から外を覗こうとしたキュルケさんを、引っ張り窓から離す。

「ちょっとなにを」

その瞬間『パリン』と言う音と共に、数本の矢が飛び込んでくる。

「「「「「えっ!?」」」」」

「くっ、敵襲だ奥へ行け!!」

今まで囲っていた円卓を起こし、宿のドアが開いた瞬間「エアハンマーッ」ドアめがけて円卓を吹き飛ばす。

これで、入った瞬間物が飛んでくるとわかり、しばらくは警戒してくれるはずだ。

「平賀君、ミスタ・グラモン、今すぐミス・ヴァリエールとワルドさんを連れてくるんだ」

「「はっはい」」

平賀君達が戻ってくるまで時間を稼がなくては。

「なになに??どうして襲われてるの??」

キュルケさんが、錯乱状態で訪ねてくる。

「わからんが、ワルドが1枚かんでいることは確かだ」

「ワルドが?」

「昨日の物取り共もワルドに雇われた者たちだ」

襲われて初めて説明できる状況になるとは。

「どういうこと?」

「恐らく、いや、まず間違いなく、平賀君達がアルビオンに行くことに関係しているはずだ」

「そもそも、何であなたがワルドが何をしていたか知っているの?」

「それは」

そんなことを説明している暇は、

「私はお兄ちゃんの言うことを信じてるよ?」

「ヒラガさん達には、まだ言えないんですよね?」

「私は貴方を信じる」

「お前ら・・・」

いや、信じてもらえるって嬉しいねぇ。

「シェリルまで・・・ふう、わかったわよ。私も信じるけど後で話してね?」

「わかった。しっかしまさか、真昼間から襲撃されるとは」

夜まで時間があるかと思ってたんだが。

「それで、これからどうするの?」

「とりあえず、平賀君達を待ってここから脱出する」

「ワルドを連れて行ってもいいの?お兄ちゃん」

本当は置いていきたいが

「置いていくとなると、平賀君・・・は簡単だろうが、他の2人を説得に時間がかかるかもしれない。今は時間がほしい」

「なるほどね。あちらの事情が分からない以上、下手をするとこっちが敵になる可能性があると」

「そういうことだ、キュルケさん。呑み込みが早くて助かる」

とりあえず、外から入ってこようとする奴らを中に入れないよう、吹っ飛ばしつつ平賀君達を待つ。

「クリスさん、連れてきました」

平賀君達がワルドを引きずってやってきた。

 

「ちょっとなんなのよ、この騒ぎは」

「ルイズ、この前の連中は、ただの物取りじゃなかったってことよ」

「今はまだ、入ってはこないが時間の問題だ」

エアハンマーを撃ちつつ、現状を言う。

「ぼくのゴーレムで防いでやる」

ミスタ・グラモンが青ざめながら言った。

「ギーシュ、あんたの『ワルキューレ』じゃあ、無理よ。相手の実力は解らないけど、数が多すぎるわ」

「とりあえずここから逃げ出すぞ、ラ・ロシェールから離れればあいつらも追ってはこないだろう」

俺はさりげなく、アルビオン行きをやめるように言うが、

「だめよそんなの!!私たちはアルビオンへ行かなくちゃいけないんだから」

駄目か。

「だからルイズ、その目的を言いなさい」

「い、言えるわけないじゃない。密命よ」

言ってるやないか。

つまり、最低でも反対しそうなオスマン以上の、地位の者からの命令か。

「目的地に行かなければならないような任務では、たとえ半数でもたどりつけば成功とされる」

唐突にシェリルさんが口を開く。

「シェリル?」

「私が囮になる、行って」

「は?」

いったい何を、

「それにどっちみち、ここから脱出するのに囮が必要」

「おいおい、そんなこと」

「しょうがないわねえ、私も付き合うわよシェリル」

「ちょっと、キュルケさんまで」

「じゃあ、私も残るラコイ、お兄ちゃんちゃんと守ってね?」

「はい、エルザちゃん」

「こらこら、はいじゃないはいじゃない」

「っふ、女性ばかり残すわけにはいかないな、ぼくも残ろう」

「・・・」

「なんでぼくの時には何も言わないんだい?君は」

「そんなこと、させるわけにはいかないだろ」

「じゃあどうするの?お兄ちゃん」

先ほどまで「わしの店が何をした!!」と、訴えていた店主を見る。

「おい、店主」

「なんでございましょう」

「裏口はどこだ」

「あそこでございますが」

「他の客は泊まっているか」

「ははは、他のお客はみんな外でわめいてますよ」

いや、その、すまん。

ワルドの服をまさぐり、財布を取り出す。

「ちょっと、あんた何をしているのよ!!」

「いや、店主、少ないかもしれないがこれ弁償代だ」

言って財布を店主に放る。

「何を勝手なことを」

「密命とやらの任務の責任者が、弁償するのが筋じゃないのか」

「責任者はワルドじゃ」

「金、持ってる?」

「うっ」

ミス・ヴァリエールを黙らした後、厨房へ行き油を持ってくる。

「それ、どうするの?お兄ちゃん」

「ん?追ってくるなら、追えないようにするだけだ」

と言って、油を入り口にぶちまける。

「キュルケさん、火を頼む」

「えっでも」

「裏口に奴らが来ているのなら、とっくに入ってきているだろう」

キュルケさんが「確かに」とつぶやくと、ファイヤーボールを放った。

その間に、ワルドにレビテーションを掛けておく。

「念のため、ミスタ・グラモン。ゴーレムを2体先行させてくれ」

「わかった」

「さあ、囮なんぞ要らない。皆で脱出するぞ」

テーブルクロスをゴーレムに巻き付け、一見して人だと思えるようにしておく。

こうしておけば、もし待ち伏せがあってもまず、ゴーレムを攻撃するはずだ。

 

襲撃が真昼間でよかった、もし夜間だったら桟橋の方角がわからなかったな。

燃え盛る、女神の杵亭を遠目に走る。

「とりあえず追っては来ないようだな」

遍在からは、こっちの姿がワルド遍在に確認されたことが報告されたが、何もしかけてこない。

やはり、本体が気絶していることで、迷っているのか?

 

 

 

 

 

 

35

 

 

 

 

ワルド遍在は焦っている。

前を走りながら「本体、早く起きろ、本体!!」と、時折口から洩れている。

「くそっ、数が多すぎる。せめて、『ガンダールブ』だけでも」

『ガンダールブ』?いったい何のことだ。

そう思うや否や、本体一向の方へワルド遍在が走る。

くそっ、ケチケチしないで遍在3体ぐらい動員して、倒しておけばよかったか。

「止まれワルド!!」

自分で言うのもなんだが、止まれと言われて止まる馬鹿はいないわな。

ワルド遍在はこちらを一瞥すると、走る速度を上げた。

本体!!そっちにワルド遍在が行ったぞ!!

 

「前方に敵だ!!止まれ!!」

 

遍在から報告が入り、ワル遍が前方に現れる。

ワルドの目的がわからないからと、泳がせたのが間違いだった。

遍在に倒すよう命令を出し、皆に止まるよう言う。

「くるぞ!!気をつけろ!!」

ワル遍がこちらに戸惑うことなく突っ込んでくる。

「各自魔法を」

言ってすぐ、レビテーションを解き『ゴキャッ』簡単に出せるウォーター・ウィップ(水鞭)を唱える。

なんでもいい、とにかく他の者が唱える時間稼ぎを。

だが、ワル遍はすでに呪文を唱えていたらしく、「ライトニン『ちゅどおおおおおおんんんんん』

爆発が起こり、ワル遍が粉々に吹き飛んだ。

「・・・・ヘ?」

ワル遍より先にいた俺の遍在もぽかんとしている。

「まだいるのね、ウル・カーノ!!」

『ちゅどおおおおおおおんんんん』

遍在の前方で爆発が起こり遍在が吹き飛ぶ。

「外れた!!もう一発ウル・カー「まて、私は味方だ!!」へ?」

念のため、遍在にもう一度言わせる。

「私は味方だ、攻撃するなよ!!」

ミス・ヴァリエールの魔法か、あいかわずなんという威力だ。

遍在がワル遍がいたところに落ちていた、白い仮面と皮袋を拾う。

そのまま、仮面をかぶり杖と皮袋をしまい両手を上げこちらに来る。

ミス・ヴァリエールが胡散臭そうに、

「味方?本当に?」

と、言ってくる。

怪しさ爆発なのはわかっている、だが、納得してくれ。

「本当だ。顔は見せることが出来ないが、これは『密命』なのでな。密かに護衛を仰せつかったのだ」

先ほどミス・ヴァリエールが言った『密命』を強調して言う。

「顔を見せてくれなきゃ、信用できないわ」

くっ、桃空頭のくせに至極当然なことを、しかし顔を見せるわけにはいかん。

声は無理やり出し方を変えて違うように聞こえるが、顔は変わらん。

「残念だが、顔を見せるわけにはいかない、だが、行動で信用してもらうしかない」

「どういうこと?」

「追っては私が食い止めよう」

まあ、追ってはこないだろうが、遍在なのでここで放置しても問題ないしな。

「そう言って、後ろから襲ってくるとかするんじゃないでしょうね」

桃空頭め、余計なことを。

ミス・ヴァリエールの一言で、一気に警戒ムードになる。

「ふう、このままではどうあっても、信用してもらえないようだな。わかった、では私が先頭を行こう」

俺はこっそり一番後ろに立つ。

「1番後方の君,殿を頼む。ただし敵が来たらすぐさま、私が相対する」

「わかりました」

これでよし!!と思ってたら待ったが入る。

「殿は私に任せて」

シェリルさんから。

「えっ、そんなことをさせるわけには」

「大丈夫」

そう言い口笛を吹く。いったい何を、と思っていたら『バッサバッサ』と何かがはばたく音が・・・ああ、すっかり忘れていた。

「私の使い魔。空から監視させる」

なるほど、確かにそれなら安全だ。

「わかった。あと、その、ワルドを君の使い魔の背中に乗せてやってはくれまいか」

遍在に言われ、地面に倒れ伏しているワルドを見る。

・・・少し痙攣している。しかも、他のみんなからは角度的に見えないかもしれないが、あれは、耳血?もしかして、やばい落ち方でもしたか?

遍在から声には出さず「前から見ていたが、頭から落ちていたぞ」と、言われる。

「シェリルさん、俺からも頼む」

「わかった」

まず、目が覚めることはないだろう。頭に『永遠に』が付かない事を祈る・・・必要があるかな?

まあ、死なれても目覚めが悪いし、とりあえず祈っていよう。

そのまま、遍在を先頭に桟橋まで走る。

 

「凄げぇ」

巨大な樹にぶら下がった船を、階段を駆け上りながら見て、平賀君が驚きの声を上げる。

「あれが『桟橋』?そしてあれが『船』?」

平賀君が驚いた声で言うと、ミス・ヴァリエールが怪訝な顔で聞き返した。

「そうよ。サイトの国じゃ違うの?」

まあ、違う所の騒ぎじゃないが。

「桟橋も船も、海にある」

「海に浮かぶ船もあれば、空に浮かぶ船もあるわ」

いや、ねえよ!!って言ってやりたい。

今まで、話には聞いたことがあったが、見たことがなかった。

『航空力学に真っ向から喧嘩を売ってやる』と言われても、納得できそうだ。

ホントに船だよ、飛びにくそう。

遍在が看板を見て俺たちを連れ、木の根元にあるトンネルを通過する。

どうやら、枯れた大樹の幹をうがって造ったもののようだ。

生物には固定化は効かないからな。この部分が生きていたらとっくに崩れて無くなっているだろう。

各枝に通じる階段には、鉄でできた看板が貼ってあった。

そのまま、アルビオン行きの階段を見つけると、その階段を上る。

木で出来た階段は、1段ごとにしなり若干怖い。

手すりはついているが『固定化』が『かかっているであろう』と言う予測なので更に怖い。まあ、落ちてもレビテーションかフライで助かるが、怖いものは怖い。

そのまま、階段を上りきる。

上り切った先には、1本の枝が伸びていた。その枝には1艘の船が停泊していた。

帆船?船の横から翼が生えている。色々突っ込みたいが、まあ、空飛ぶ船の構造も知らないし、でも・・・そう言う問題じゃあないような。

色々思う所はあるが、今はとりあえず置いておこう。

このグループの中では俺の遍在が一応はリーダー格なので、船の上にいる船員に話しかける。

「ちょっといいか!!」

「な!なんでえお前は!!」

いきなり警戒心MAXに!!見た目完全不審者なのを忘れていた。

「すまん、誰か説明を頼む。私は後ろを見張る」

仮面を取るわけにはいかないので、説明を早々に諦め、他の者にパスをする。

「じゃあ、私が説明するわ」

頼んだぞ(失敗しろ)ミス・ヴァリエール。

そのまま遍在は、交渉する一団を後目に俺の下へ来る。

隣で思いっきり警戒しているシェリルさん。

「大丈夫だよ、シェリルお姉ちゃん」

エルザがシェリルさんに言う。

「この人たぶん、お兄ちゃんの遍在だよ?」

「「おお、良くわかったな」」

元々、この任務を命じられた平賀君達と離れている為、堂々と話せる。

「言ってよかったんですか?」

「「ラコイもか」」

「貴方、さっきからずっと思ってたけど、水の使い手じゃあなかったの?」

「貴方が風も使えるのは知ってたけど、まさかスクエアだったの?」

キュルケさんとシェリルさんが驚く。

「「ああ、学院では水のドットと名乗っていたからな。俺のメインは風だ」」

等と話していると、向こうからミス・ヴァリエールがやってくる。

「ちょっときて!!」

呼ばれ、船の所に行くと、船長が胡散臭そうな目で見てくる。怪しいのは十二分に分かっている。

「あー、あなた方がアルビオンへ何しに行くのかは存じ上げませんが、明日にならないと出発できませんよ?」

「そこを何とかならないの!?」

「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは明日の朝です!その前に出航したんでは、風石が足りませんや!」

「風石って?」

平賀君が尋ねる。船長は『風石』も知らんのか?と言った顔つきになる。

「あー、サイト君と言ったね、風石とは『風』の魔法力を蓄えたものでね、フライ等に似た効果を発揮して、それで船を浮かせるんだ」

遍在が平賀君にわかりやすく説明する。

説明が終わると同時に船長が言ってくる。

「貴族様、当船はアルビオンへの最短距離文しか風石を積んでいません。それ以上積もうものなら足が出ちまいますゆえ。したがって今は出航できやせん。途中で落っこちまいまさあ」

「ふうむ、困ったな」

よっし、アルビオン行きは断念だ。

「つまり、風石があればいいんでしょ」

「ヴァリエール嬢、その風石がないんだが」

まったく何を言っているんだか、この桃空頭は。

「だったら、よそから買ってくればいいじゃない」

・・・へ?

「いや、貴族様?その、あっしらは金が」

「ちょっと、ギーシュ」

「いや、持ち合わせは残念ながら」

「サイト」

「あるわけねーじゃん」

「えっと、ミスタ・プルトン」

「気絶させられて無理やりだったからなぁ」

「キュルケ」

「私も、出かけたのを見て飛び出してきたからねぇ」

「ミス・ネージュ」

「キュルケに寝巻きのまま連れ出された」

「そうだ、護衛のえっと」

「ああ、すまんね、名前も出せないんだ。それと、なにぶん急だったのでね、私も持ち合わせが」

悔しそうに、爪をかむミス・ヴァリエール。

そのまま、諦めろ。

「そうだ」

グラモンが声をあげ注目が集まる。

「先ほど敵が残した仮面の他に、皮袋を拾ってましたよね。あれは」

や・ば・い

先ほど拾った皮袋、用兵がごねた時用なのか、後払いなのかは知らないが間違いなく金だった。

どうごまかすか迷ったが、ちょっと無理だった。

「ああ、これか」

渋々懐から、皮袋取り出す。

「これだけありゃあ、他の船から風石が十分買えますぜ」

「じゃあすぐにお願い」

止められなかった。

 

 

 

 

 

36

 

 

 

ミス・ヴァリエール等は今船の中にいる。

とめることは出来なかった。

内戦中のアルビオンへ向けて、今、『俺たち』は船に乗って飛んでいる。

 

 

金を渡した後の船長の行動は早かった。何せ、

「これだけありゃぁ、アルビオンと往復してもおつりが来る」

「いいわ、余ったら全部上げるから早くして」

「うおっしゃああ、おい野郎共!!臨時ボーナスだ、さっさと働けえ」

「「「「「了解だ船長」」」」」

 

早かった。

いや、何が早かったって、ともかく早かった。

船員の動きがまるで3倍速を見ているようだった。

 

引き止めることは不可能。

アルビオンは今、安全は保障されない場所。

だが、シェリルさんの母親の件もあり、俺は死ぬ事は出来ない、参加は無理だ。

平賀君、ひいてはクラスメイトである彼らを、死なせたくはない。

悩む。

遍在を総動員するか。

しかし、滞在期間が延びれば今の遍在では3日で消える。ただ突っ立っていれば1週間、戦闘を行えば1日と持たない。

一体ずつ遍石からだしたとしても・・・

「行く」

「シェリルさん?」

「アルビオンへ行く」

「私は元々ルイズが心配だから行くつもりだったけれど、あなた達が来てくれれば心強いわ」

「キュルケさんまで」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん私達もいるんだし」

「そうですクリス様、私達もいるんです。そこら辺のメイジなんか敵じゃありませんよ」

「わかった、ありがとう」

 

そして冒頭に戻る。

ちなみに遍在は置いてきた。

「追っ手が来るかもしれない、私は残ろう」

と言わせて。

 

「さて、今ルイズ達は船の中にいるわ、貴方が一体どのくらいのメイジなのか教えて」

キュルケさんが、周りに人がいないことを確認しつつ、聞いてくる。

「私も知りたい」

シェリルさんまで。

「ふっふっふっふっ、私達は知ってるもんねー、ね、ラコイ」

「ふふ、ええそうですねエルザちゃん」

何がそんなに嬉しいんだかわからないが、嬉しそうに話すエルザとラコイ。

「・・・」

シェリルさんは何故かムッとしている。

「今は、風のスクエア・水のトライアングル・土のライン・火のラインだ」

「「・・・」」

2人は絶句している。

「もう少し強くなりたいんだけど、ここ最近伸び悩んでてね」

「「・・・」」

2人は絶句している。

「そういやあ、キュルケさんは火のトライアングルだったね、火で成長させるのにいい方法って知ってるかい?」

「「・・・」」

2人は絶句している。

「おーい」

2人の前で手を振ってみる。

「貴方・・・天才?」

キュルケさんが唐突に言い出す。

「は?」

「貴方は天才」

シェリルさんも言い出す。

「天才?俺が?」

思わず耳を疑う。

魔法に必要なのは想像力と構造を正しく理解すること。この世界では科学が殆ど発達していない為、風が如何に発生するかも知られていない。

正直この世に生まれた時点で26歳、ある程度知識もありなおかつ、妄想力豊かな俺にとっては。

・・・天才と言われてもなぁ。

今は15歳、ああ、もう精神年齢(?)41歳かぁ。

「ちょっと、なにぼうっとしてるのよ」

「あ・ああ」

キュルケさんの言葉に我に戻る。

「それにしても凄いわねえ、その歳でスクエアだけでも驚きなのに、さらにありとあらゆる病を治せるだなんて。なんで有名じゃないの?貴方」

キュルケさんの言葉に同意するように、無言で頷くシェリルさん。

「有名になるとか注目されるのとか、好きじゃないんだ」

いや、本当に。

「そ・そういう問題?」

他人にとってはくだらなくても俺にとっては重大な問題だ。

いやだ、注目されて目立つなんて、絶対いやだ。

 

その後、下らない話をしつつ空の旅を楽しむ。

 

しばらく、空をボーっと眺めていると、隣から話し声が聞こえてくる。

「ふーん、エルザちゃんとラコイって、怪我が元でクリスと知り合ったんだ」

「うん、そうなの。お兄ちゃんにメイジに襲われてボロボロ担ってたときに助けてもらったんだー」

「はい、私もです。ワイバーンに襲われて動けなくなった私を、助けていただきました」

「あら、それじゃあクリスは貴方達の命の恩人って訳ね?」

「うん(はい)そうだよ(です)」

「ふふふ、これは強敵ね、シェリル?ってなんで青くなってるの?」

「別に」

って、青くもならあな。襲った張本人だもんねぇ。

つか、俺も若干青くなってると思う。

たぶん言っても大丈夫だろうとは思うけど、流石に2人が『亜人』だなんて言えないぞ。

しかも片方は、エルフに次ぐ脅威を持つとまで言われてる『吸血鬼』だし。

キュルケさんは信用しているけど、知らせない方が良いと・・・う~ん悩む。

そう言えば、マチルダ(ロングビル)さんにも言ってないなあ。

あっちはあっちで、精霊魔法が使えないとは言え、エルフだもんなぁ。

その上、エルザとラコイには言ってないし。

あ、ちょっと胃が痛い。

その時

「アルビオンが見えたぞーーー」

マストの上の見張り台にいる船員が、大声を上げる。

その声を聞いたのだろう、平賀君たちが船内から出てくる。

って、アルビオンどこだ?

平賀君もそう思ったのだろう。

「どこにも陸地なんてないじゃないかよ」

すると、ミス・ヴァリエールが、

「どこ見てんのよ、あっちよ」

と言って、上を指差した。

平賀君と同じく、空を見る。

「おお、ラピュ・・・」

あっぶね、もう少しでラピュタと言う所だった。

平賀君にばれる。

「すげ、ラピュタだ」

どうやら平賀君は、俺と同じ気持ちだったようだ。

「驚いた?」

ミス・ヴァリエールが平賀君に尋ねる。

「ああ、こんなの、見たことねえや」

まったくだ。

あれが、浮遊大陸アルビオン通称『白の国』か。

高山病対策なんて知らんぞ。

大丈夫かな。

 

若干アルビオンに向けて不安になっていると。

「右舷上方の雲中より、船が接近してきます」

黒い船?確かにこっちに接近してく・・・おいおい、ありゃあ、

隣りで平賀君が「へえ、大砲なんかあるんか」と、何をのんきな。

すると、ミゥ・ヴァリエールが「いやだわ、反乱勢・・・貴族派の軍艦かしら」と、

「ちょっと貴方達、何を暢気なこと言っているのよ」

「「何が?」」

平賀君とミス・ヴァリエールが・・・他の面々まで似たような顔を。

「あの船、旗を掲げてないじゃない」

「「だから?」」

俺とキュルケさん以外がキョトンとしている。

「つまりあれは『空賊』よ」

「「「「く・空賊!?」」」」

気づくの遅え。

後ろでは船員が「逃げろ、取り舵いっぱい」「最近活発になってきているってのは、本当だったのか」「にげろにげろにげろにげろ」等と騒いでいる。

シェリルさんが近づいて「どうする」と、聞いてくる。

「俺達は貴族、身代金の為に捕虜にされるか、最悪は・・・」

最悪は、死、か。

「みんな、端に固まっておけ。最悪、この船から飛び降り、フライかレビテーションで逃げるぞ」

「そんな、私達はアルビオンへ」

俺の指示に対し、ミス・ヴァリエールが状況も考えず今だアルビオンと言ってくるに対し

「もう、ルイズ!!そんな状況じゃないでしょ。アルビオンに行くにしても死んでから行きたいの?」

「そっ、それは」

キュルケさんがミス・ヴァリエールを説得?する。

「シェリルさん、今、船に乗っている使い魔に静かにしているように、後、合図したら船外へ飛び出すよう言っといてくれ」

「わかった」

船外に行った後の要だからな。

俺1人だったら無茶できるんだが、相手の戦力もわからないし下手に動けない。

 

船は、空賊から遠ざかろうとしたがもうすでに遅く、空賊の黒船は併走していた。

黒船は1発、俺達が乗った船の前方に大砲を撃った。

ぼごん!と鈍い音がして、砲弾は雲の彼方へ飛んでいった。

こちらの船は徐々に速度を落とし、止まった。

 

さあ、どうするか。

 

 

 

 

あ、ワルド忘れてた・・・ま、いっか。

 

 

 

 

 

37

 

 

 

完全に止まったこちらの船に、黒船の連中が乗り移ってくる。

「ミス・ヴァリエール」

「な・何?」

「どうしても、アルビオンに行かなければ、いけないのか?」

「え、ええ、どうしてもよ」

「内容を、聞いてもいいか?」

「えっと」

ちらちらと、キュルケさんを見ている。

そんな状況じゃあないだろうが。

「じゃあ、聞き方を変える」

まあ、ないだろうけど、

「トリステイン王国の、危機か?」

「っ・・・そ、そうよ 」

「えっマジ?」

これは無いだろうと思ってたんだけど。

思わず頭を抱える。

「・・・内容はいまだ不明だけど、何でも国家の危機らしい。こう言うのもなんだが、何でも俺たちの国の問題で、君たちには関係ない。シェリルさ「いや」・・・じゃあキュルケさ「ふふ、いやよ」・・・せめてエル「いや、お兄ちゃんと一緒にいる」えーと「当然、私もです」

思わず頭を抱える。

ぶっちゃけ、任務を受けてない俺も関係ないと言えば関係ないんだが、ここまで聞いて抜けるのは、さすがにねぇ。

等と考えていると見るからに『私達は賊です』と、精一杯アピールしている連中がこちらの船に移ってくる。

ん?

いくらなんでも、そのまますぎるような・・・いや、理由がないな。

幾分冷静になってきたところに、空賊連中の頭と思わしき者が船長と交渉をしている。

「船の名前と、積荷は?」

空賊の頭に「これで破産だ」と先ほどまでうなだれていた船長が答える。

「トリステインのマリーガラント号。積荷は硫黄だ」

空賊たちの間から、ため息が漏れた。

頭の男はにやっと笑うと、船長の帽子を取り上げ、かぶった。

「船事全部買った。料金はてめえらの命だ」

船長が震えている。恐がっている顔に見えないことから、屈辱で震えているのか?

それよりも、

「キュルケさん、あの空賊の頭、どう思う?」

「そうねぇ、遊んでいるって感じかしら」

「俺には、なんかうそ臭い様な演技をしている様な」

「そう?」

何だろう、確かに演技をしている様に見えるんだけど・・・しかし、そんな事をして一体何の得に。

「あっ、俺もそう思います」

「平賀君もか」

どうやら、平賀君にも演技をしているように見えるらしい。

そこにミス・ヴァリエールが

「そんな事をしてなんになるって言うのよ」

と、的確なことを言ってくる。

「そうなんだよなー、得なんてないし」

シェリルさんが「貴族派がやっている」と意見を出してくれてるが、宿や船員に聞いた話では、

「貴族派は今、アルビオンを好きにできる立場にあるんだ。わざわざ化ける必要がない」

「プルトン、では君は王族派がやっていると?」

「篭城真っ只中で、敵に四方を囲まれている状況で、危険を冒してまで?」

「それは、そうだが」

頭を悩ましていると、空賊の頭が「おや、貴族の客まで乗せているのか」と言いながら近づいてくる。

そこへ、平賀君が

「なあ、あんた。何で演技なんかしているんだ?」

いや、やっぱり俺の気のせいなんじゃ・・・

「なっ!?なんでそれを」

・・・馬鹿正直なやつだな。

めちゃくちゃ驚いている空賊の頭。

「それで?杖を持っていて、演技をしているあんたらは、貴族派のメイジか?」

そう、こいつらは杖を持っている。

しかも、こちらの船に来ているやつらの半数が持っていると言う状態だ。

くそ、とっとと飛び降りておけばよかったか。

「あっああ、き、貴族派だとしたら、な、何だってんだ!?お、お前らの方こそ貴族派なのか?」

んん?

目が泳いでいて、若干挙動不審で手が少し動いている。

あ・今唇をなめた。

たしか、嘘をついている時にでる行動だったような・・・

「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか!!バカ言っちゃいけないわ。わたしは王党派への使いよ。まだ、あんたたちが勝ったわけじゃないんだから、アルビオンは王国だし、正当なる政府は、アルビオン王室よ。わたしはトリスティンを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまり大使よ、大使としての扱いをあんたたちに要求するわ」

ミス・ヴァリエールが言った、全部、本来この状況下で『言っってはいけないこと』も含めて。

「お前・・・バカか?」

平賀君がここにいるみんなを代表して、

「ど、どこがバカだい。ルイズはここにいるみんなを代表して言ったんじゃないか」

「ギーシュ、お前もか」

平賀君が(ry

「あなた達ねぇ、真っ正直なのはいいけど、時と状況を選びなさい!!」

キュルケさんが呆れ半分、焦り半分で言う。

てか、勝手に代表にするな。

「あー君達、正直なのは確かに美徳だが、ただじゃあすまないよ」

焦って呆れて冷静になったせいか素が出たのだろう、空賊の頭の口調がさっきと違う。

「あー、空賊のお頭さん?素に戻ってますよ?それと王党派ですか?あなた」

なんか、ばかばかしくなってきた。

「へ!?」

「さっきは『お前ら』って言ってたのに今は『君達』に戻ってるよ」

若干投げやりに説明してやる。

「あー、あっはっはっはっはっはっ」

空賊の頭が笑い出す。

「「「「「「「頭???」」」」」」」

空賊たちがそろって言う。

「いや、ばれてしまったね。そうだ、私は王党派だ」

あんたも簡単に言うなよ。

「「「「「「へ???」」」」」」

俺以外の面々が唖然としている。

「では、大使殿。話は私の部屋でしよう」

そういうや否や、他の空賊?に指示を出し自分の船に戻る頭。

俺達もほかの空賊?に案内されて後をついて行く。

 

「先ほどは失礼した。私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……本国艦隊と言っても、すでに本艦イーグル号しかない無力な艦隊だがね。まあその肩書きよりこっちの肩書きのほうがしっくりくるだろう

・・・アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

今度は、俺も含めた全員が唖然とした。

皇太子殿下は、にっこりと笑みを浮かべると、俺達に席を勧めた。

「アルビオン王国へようこそ、大使殿。さて、御用の向きをうかがおうか」

あまりのことに俺達は口がきけなかった。

ぼけっと、ほうけたように立ち尽くす。

「その顔は、どうして空賊風情に身をやつしているのだ?といった顔だね。」

いやいやいや違う違う違う、何でいるの?こんな所に、皇太子殿下?

今皇太子殿下はカツラを取り、眼帯を取り外し、ひげをとっていた。

「ふむ、金持ちの反乱軍には続々と補給物資が送り込まれる。敵の補給路を断つのは戦の基本。しかしながら、ま堂々と王軍の軍艦旗を掲げたのでは、あっという間に反乱軍の船に囲まれてしまう。まあ、空賊を装うのも、いたしかたない」

いやいやいや、違う違う違う、だから何であんたこんな所にいるの?

「いや、しかし外国に我々の味方の貴族がいるなどとは、夢にも思わなかった。それで、大使殿は我がアルビオンにいかようかな?」

その言葉に我に戻り、ミス・ヴァリエールを見る。

「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」

なっ、

「「え?アンリエッタ姫殿下?」」

俺と、キュルケさんの言葉が重なる。

「おや?君達は知らなかったのかい?」

皇太子殿下が不思議そうにきいてくる。

「あ、いえ、半分巻き込まれた形になりまして、何度か尋ねたのですが、機密だと言われまして」

色々と、オーバーヒートしそうだ。

「さて、大使殿の名前を聞いていなかったな」

ああ、忘れてた。

「はい、私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと申します。こちらにいるのが私の使い魔、サイト・ヒラガでございます」

ミス・ヴァリエールと平賀君がそろって頭を下げる。

「私は、ギーシュ・ド・グラモンでございます。皇太子殿下」

グラモンが頭を下げ自己紹介をする。

なんとなく『俺の番かなー』と思ったので続く。

「私は、クリス・ド・プルトン、と申します。そしてこちらが我が使い魔である、エルザとラコイ、と、申します」

俺と、エルザ、ラコイがそろって頭を下げる。

「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーと申します、殿下」

何か、色っぽい目つきで頭を下げるキュルケさん。

「シェリル・イヴェール・ド・ネージュ」

ものすっごい簡潔に、名前だけ言って頭を下げるシェリルさん・・・時と状況を考えて欲しいなぁ。

「ふむ、君達のように立派な貴族が、私の親衛隊にあと10人ばかりいたら、このような惨めな今日を迎えるようなこともなかったろうに。して、密書とやらは?」

ミス・ヴァリエールが慌ててポケットから手紙を取り出し、1歩前へ出るが、ちょっとためらうように口を開いた。

「あの・・・」

「なんだね?」

「その、失礼ですが本当に皇太子様で・・・」

・・・失礼だなあ。

皇太子殿下は笑い、

「まあ、さっきまでの顔を見れば無理もない。僕はウエールズだよ。正真正銘の皇太子さ。何なら証拠をお見せしよう」

皇太子殿下は、ミス・ヴァリエールの指に光る、指輪を見つめていった。

「この指輪はアルビオン王家に伝わるものだ」

皇太子殿下は、薬指に輝く指輪を外しながら言った。

「これは、風のルビー、君がはめているのは、アンリエッタがはめていた水のルビー、そうだね?」

ミス・ヴァリエールは頷く。

ミス・ヴァリエールのてをとり、指輪と指輪を近づけた。

二つの宝石は共鳴しあい、虹色の光を振りまいた。

「水と風は、虹を作る。王家の間にかかるさ」

「大変、失礼をばいたしました」

ミス・ヴァリエールは一礼して、手紙を皇太子殿下に渡す。

皇太子殿下は、愛しそうにその手紙を見つめると、花押に口づけをした。それから、慎重に封を開き、中の便箋を取り出し、読み始めた。

真剣な顔で、手紙を読んでいたが、そのうちに顔を上げた。

「姫は結婚するのか?あの、愛らしいアンリエッタが。私の可愛い・・・従妹は」

ミス・ヴァリエールは無言で頭を下げ、肯定の意を表した。

再び、皇太子殿下は手紙に視線を落とし、最後の1行まで読むと、微笑んだ。

「了解した。姫は、あの手紙を返して欲しいとこの私に告げている。何より大切な、姫から貰った手紙だが、姫の望みは私の望みだ。そのようにしよう」

ミス・ヴァリエールの顔が輝いた。

「しかしながら、今、手元にはない。ニューカッスルの城にあるんだ。姫の手紙を、空賊船に連れてくるわけにはいかぬのでね」

皇太子殿下は笑っていった。

「多少面倒だが、ニューカッスルまで足労願いたい」

 

話が終わり部屋から出ると、キュルケさんが俺も聞きたかったことを、ミス・ヴァリエールに聞いた。

「ねえ、国家の危機って、手紙?」

「あっ」

いや、『あっ』て。

「お願い、聞かなかったことにして」

「まあ、いいけど、ひとつ貸しね?」

キュルケさんが悪戯っぽく言った。

 

てか、国家の危機が手紙って。

どんな内容の手紙だ?

 

 

 

 

 

38

 

 

 

俺達を乗せた艦『イーグル』号は、浮遊大陸アルビオンのジグザグした海岸線を、雲に隠れるようにして航海した。

3時間ばかり進むと、大陸から突き出した岬が見える。

岬の突端には、高い城がそびえている。

皇太子殿下は後甲板に立っている俺達に、あれがニューカッスル城だと説明した。

しかし、『イーグル』号は城にまっすぐ進まず、大陸の下側に潜り込んでいった。

「なぜ、下に潜るのですか?」

皇太子殿下は、城の遥か上空を指差した。

その指の先には大きな艦があった。

「叛徒どもの、艦だ」

この船『イーグル』号の約2倍はある。

しばらく見ていると、ニューカッスル城めがけ、どこどこどっこーん、と砲撃を撃ちはじめた。

斉射の振動がイーグル号にまで伝わってくる。

砲弾は城に着弾し、城壁を砕き、小さな火災を起こす。

「かつての本国艦隊旗艦『ロイヤル・ソヴリン号』だ。叛徒どもが手中に収めてからは、『レキシトン』と名前を変えている。やつらが初めて我々からから勝利をもぎ取った戦地の名だ。よほど名誉に感じてるらしいな」

皇太子殿下は微笑を浮かべて言った。

「あの忌々しい艦は、空からニューカッスルを封鎖しているのだ。あのように、たまに嫌がらせのように城に大砲をぶっ放している」

雲の切れ目に遠く覗く、巨大戦艦を見つめた。

無数の大砲が舷側から突き出て、艦上には竜が舞っている。

「備砲は両舷合わせ、108門。おまけに竜騎兵まで積んでいる。あの艦の反乱から、すべてが始まった。因縁の艦さ。今、我々の戦力では相手にできない。だから雲中を通り、大陸の下からニューカッスルへ行く。そこに我々しか知らない港があるんだ」

 

雲中を通り、大陸の下へ出ると、辺りは暗くなった。

大陸の影の中、更には雲の中なので視界はゼロに近い。

操作を誤ると頭上の大陸に座礁する危険がある。

だが、故に反乱軍の軍艦は大陸の下には決して近づかない、と皇太子殿下は語った。

 

本来、巻き込まれたに近いとは言え、完全には信用出来ない俺達に喋るのは、絶対の自信があるからか。

 

「地形図を頼りに、測量と魔法の明かりだけで航海することは、

王立空軍の航海士にとっては、なに、造作もないことなのだが。

貴族派、あいつらは所詮、空を知らぬ無粋者さ」

皇太子殿下はそう言って笑った。

 

しばらく航行すると、頭上に黒々と穴が開いている部分に出た。

マストにともした魔法の明かりの中、直径300メイルほどの穴が開いているのが見える。

「一時停止」

「一時停止、アイ・サー」

皇太子殿下が指示を出す。

暗闇の中、何の躊躇いもなく、動き続ける水平たちは帆をたたみ、穴の真下で止まった。

「微速上昇」

「微速上昇、アイ・サー」

ゆっくりとイーグル号は上昇していく、

イーグル号から航海士が乗り込んだマリー・ガラント号を後につけ。

「すごいな」

すごい、風がとまることのない空中で完全に止まり、揺れることなく昇る。

「ほう、わかるのかね?」

「こっ皇太子殿下!?」

俺の呟きが届いたらしく、皇太子殿下が話しかけてくる。

「ウェールズでいいよ」

「では、失礼ながら、ウェールズ様、と」

いや、まさか話しかけられるなんて。

「先ほどの答えですが、正直に申しますと・・・わかりません。ただ」

「ただ?」

「ただ、風も止まぬこの場にて留まり、少しでもぶれれば墜落の可能性もある。

私には空船と言うものはわかりかねますが、ふう。

確実な信用もできぬ我々に、この場をさらすのです、よほどの自信かと」

「ふふふ」

『自信満々』ってな感じの笑みを浮かべちゃってまあ。

 

穴に沿って上昇すると、頭上に明かりが見えた。

そこに吸い込まれるようにイーグル号が上がっていく。

艦はニューカッスルの秘密の港に到着していき、巨大な鍾乳洞の中に出たた。

恐らく、発光性のコケなのだろう、本来暗いはずの鍾乳洞が明るく光る。

さらに上昇すると、岸壁に出る。

岸壁の上には大勢の人が待ち構えていた。

イーグル号が近づくと一斉に縄が飛んでくる。

水兵たちは、その縄をイーグル号に結びつける。

艦は岸壁に引き寄せられ、車輪のついた木のタラップ音を立てて近づいてきて、

艦に取り付けられる。

ウェールズ様に促され、俺達はタラップを降りた。

すると、年をとったメイジが近づいてくる。

「ほほ、これはまた、たいした戦果ですなですな。殿下」

背の高い、年をとったメイジが近づいてきた。

「喜べ、パリー。硫黄だ硫黄!」

ウェールズ様がそう叫ぶと、集まった兵士が、完成をあげた。

「おお!硫黄ですと!火の秘薬ではござらぬか!

これで我々の名誉も、守られるというものですな!」

パリーと呼ばれた人は、どこか大げさに喜び、どこか大げさに、おいおいと泣き始めた。

「先の陛下よりおつかえして60年、こんなうれしい日はありませぬぞ、殿下。

反乱がおこってからは、苦渋を舐めっぱなしでありましたが、なに、

これだけの硫黄があれば・・・」

ウェールズ様は笑い、

「王家の誇りと名誉を、叛徒どもにしめしつつ、敗北することができるだろう」

「栄光ある、敗北ですな!この老骨、武者震いがいたしますぞ。

して、ご報告なのですが・・・叛徒どもは明後日の正午に、攻城を開始するとの旨、

伝えてまいりました・・・まったく、殿下が、間に合って、よかったですわい」

「してみると間一髪とはまさにこのこと!

何しろ予定では、後1週間は空にいる予定だったからな。

戦に間に合わぬは、これ武人の恥だからな!」

ウェールズ様は、心底楽しそうに笑っていた。

敗北という言葉に、最初は戦い降伏するのかと思ってはいたが、

中世は負ければ死ぬ時代だったはずだ。

そう思い、周りを見渡す。心底笑っているのはウェールズ様だけで、

周囲は無理をして笑っているように見えた。

パリーと言われたメイジはこちらを見て、ウェールズ様に尋ねる。

「トリスティンからの大使殿だ。重要な用件で、王国に参られたのだ」

ミスタ・パリーは一瞬、怪訝な表情を浮かべたが、すぐに表情を改めて微笑んだ。

「これはこれは大使殿。殿下の従者を仰せつかっておりまする、パリーでございます。

遠路はるばるようこそこのアルビオン王国へいらっしゃった。

たいしたもてなしはできませんぬが、殿下が大きな戦果をお持ち帰りしましたので、

祝宴が催されます。是非とも出席くださいませ」

 

 

 

 

番外編?

 

マリー・ガラント号に航海士が乗り込んだとき、とある主人の使い魔であるシルフィードは、寝ていた。

そう、完全に寝ていた、主人の呼びかけにも答えないほどに。

 

航海士が、眠りこけている赤い竜を見つける。

「おーい、こんな所に竜がいるぞーー」

航海士は大声お挙げ仲間を呼ぶ。

すると他の航海士もやってくる。

「なんだ?こんな所に竜?」

「ああ、さっきイーグル号に行った奴の竜じゃないか?」

「だれかー、起こして動かしてもらえるように言って来い!ここに居たんじゃ邪魔だ」

航海士が、忌々しそうに竜を見る。

「っち、じゃまだなー」

航海士が、竜を軽くこずく。

すると、竜が目を覚ます。

「おっ、目覚ましたぞ、こいつ!!」

「おい、わかるか?邪魔だここから移動しろ」

竜は、若干フラフラしながら鳴き出した。

「きゅえーーー『おねえさまーーー』」

「うわっ暴れだしたぞこいつ」

「うおっ何だ何だ!?」

「きゅいーーー『どこなのねーーー』」

どこーーんばこーーん

 

一方そのころ

「・・・と、言うわけなんだ竜をどかしてくれないか?」

航海士がイーグル号にいる、竜の主人に頼む。

「わかった、あれは使い魔、呼びかけてどかす」

竜の主人は表情を変えず、たたずむ・・・たたずむ・・・たたずむ

「あれ?」

 

「うわーーー、誰かどうにかしろーーー」

「きゅいあーーー『おにくよこすのねーーー』」

 

しばらくして、航海士が竜の主人を連れてやってくる。

竜の主人は一言『エア・ハンマー』と言い、寝ぼけていた竜をなだめた。

 

なだめた!!、その後騒ぎの収拾だとか片付けだとか、特になかった。

特になかっっった!!!くそっ!!!  

 

『エア・ハンマー』「きゅいーーー『ごめんなのねーーー』」

 

 

さらに番外編?

 

ラ・ロシェールの馬小屋にて「クエーーー」と一匹のグリフォンが鳴いていた。

「おい、このグリフォン、どうするよ」

「そうさなぁ、こいつの主人はどっかいっちまったしなあ」

「だからと言って、ずいぶんと立派なやつだ、逃がしたりよそへ売っぱらっちまたりしてこいつの主人の『貴族』が戻ってきた日にゃあ・・・」

「ああ、そんなことになったら」

「せめて、どこの貴族かだけでもわかりゃあなぁ」

「ああ」

「「はあ」」

ラ・ロシェールの馬小屋では、今日もグリフォンが鳴いていた。

 

「クエエエエーーーーーー『ワルドーーー、どこいったーーー』」

 

 

 

 

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