トリスタニア人、転生日記   作:かたなあさはまな

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俺達はウェールズ様に従い、城内のウェールズ様の部屋へと向かった。

部屋の扉をペリーさんに開けてもらい、ウェールズ様の護衛の方と一緒に入る。

城の1番高い所にある部屋は、王子の部屋とは思えない、質素な・・・

言い換えれば木の大きなベットと木の大きめのテーブルと椅子が1組。

壁一面にはタペストリーが飾られている。

ウェールズ様は椅子に腰掛けると、机の引き出しを開いた。

そこには宝石がちりばめられた小箱が入っていた。

首にかけられたネックレスに鍵がついており、ウェールズ様は小箱の鍵を開けた。

「宝箱でね」

ウェールズ様は、一言、そう言うと一通の手紙を取り出し、愛おしそうに口付けした。

何度も読み返したのだろう。

手紙はボロボロだった。

「これが姫からいただいた手紙だ。この通り確かに返却したぞ」

「ありがとうございます」

ウェールズ様は手紙を読み返した後、ミスヴァリエールに手紙を渡した。

「明日の夜に非戦闘員を乗せたマリーガラント号がここを出港する。

それに乗って、トリスティンに帰りなさい」

ミス・ヴァリエールは受け取った手紙を見つめ、しばらくし決心した顔つきで口を開いた。

「あの、殿下。栄光ある敗北とおっしゃってましたが、王軍に勝ち目はないのですか」

ミス・ヴァリエールがためらうように聞く。

ウェールズ様は、その問いに、まるで考えるまでもないように答えた。

「ないよ。我が軍は300.敵軍は5万。万に一つの可能性はありえない。

我々に出来ることは、勇敢に戦い死に様を連中に見せることだけだ」

ミス・ヴァリエールは俯き、

「殿下の、討ち死になさる様も、その中には含まれるのですか?」

「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだよ」

横で、やり取りを見ていたが・・・

王としての宿命、しかし・・・

ミス・ヴァリエールは深々と頭を下げ、ウェールズ様に言った。

「殿下・・・失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」

「なんなりと、申してみよ」

「この、ただいまお預かりした手紙の内容、これは」

「ルイズ、君は!」

グラモンが声を上げた。

だが、グラモンの声に耳を貸さず、ミス・ヴァリエールはウエールズ様に尋ねた。

「この任務をわたくしめに仰せ付けられた際の姫様のご様子、

尋常ではございませんでした。まるで、恋人を案じるような。

それに、先ほどの小箱の内蓋には、姫様の肖像が描かれておりました。

手紙に接吻なさった際の殿下の物憂げなお顔といい、姫様とウェールズ皇太子殿下は」

ウェールズ様は微笑んだ。

ミス・ヴァリエールが言いたいことを察したのだろう。

「君は、従妹のアンリエッタと、私が恋仲であったと言いたいのかね?」

ミス・ヴァリエールが頷く。

「そう想像いたしました。とんだご無礼を、お許しください。

してみると、この手紙の内容とやらは」

ウェールズ様は、額に手を当て、少し悩んだ後、言った。

「恋文だよ。君が想像している通りのものさ。確かにアンリエッタが手紙で知らせたように、

この恋文がゲルマニア皇帝に渡っては、まずいことになりかねない。

なにせ、彼女は始祖ブリミルの名において、永久の愛を私に誓っているからね。

知っての通り、始祖に誓う愛は、婚姻の際の誓いでなければならぬ。

この手紙が白日の下にさらされたとあれば、彼女は重婚の罪を犯すことになってしまう、

ゲルマニアの皇帝は、重婚を犯した、姫との婚約を取り消すに違いない。そうなれば、

同盟相成らず。トリスティンは1国にて、あの恐るべき貴族派に立ち向かわねばなるまい」

「とにかく、姫様は、殿下と恋仲であらせられるのですね?」

「昔の話だ」

ミス・ヴァリエールは熱っぽい口調で、ウェールズさまに言った。

「殿下、亡命なされませ!トリスティンに亡命なされませ!」

キュルケサンが、すっとミス・ヴァリエールの肩に手を置いた。

しかし、ミスヴァリエールの剣幕はおさまらな・・・うん、忘れてた。

キュルケさんはゲルマニア出身。

まあ、大丈夫だろうけど、もしかして気がついたの俺だけ?

等と考えている横で、話は進む。

「お願いでございます!私達と共に、トリスティンにいらしてくださいませ!」

「それはできんよ」

ウェールズ様は笑いながら言った。

「殿下、これは私の願いでございませぬ!

姫様の手紙には、そう書かれておりませんでしたか?わたくしは幼きころ、

恐れ多くも姫様のお遊び相手を勤めさせていただきました!

姫様のきしょうは大変よく存じて降ります!

あの姫様が五字分の愛した人を見捨てるわけがございません!

おっしゃってくださいな、殿下!

姫様はたぶん手紙の末尾であなたに亡命をお勧めになっているはずですですわ!」

ウェールズ様は首を振った。

「そのようなことは、一行も書かれていない」

「殿下!」

ミス・ヴァリエールはウェールズ様に詰め寄る。

「私は王族だ、嘘はつかぬよ。姫と、私の名誉に誓って言うが、ただの1行たりとも、私に亡命を進めるような文句は書かれていない」

ウェールズ様は苦しそうに言った。その口ぶりから、ミス・ヴァリエールの指摘があたっていることがわかる。

「アンリエッタは女王だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」

ウェールズ様の意思は硬いものだとわかる。

ウェールズ様は、アンリエッタ姫殿下を庇おうとしているのだろう。

ウェールズ様は、ミス・ヴァリエールの肩をたたいた。

「君は、正直な子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で、真っ直ぐで、いい目をしている」

正直すぎるがな。

「忠告しよう。そのように正直では大使は勤まらぬよ。しっかりしなさい」

ウェールズ様は、至極当然なことを言った。

「しかしながら、亡国への大使としては適任かも知れぬ。明日滅ぶ政府には、誰より正直だからね。なぜなら、名誉以外に守るものが他にはないのだから」

そう言ってウェールズ様は机の上の時計を見た。

「そろそろ、パーティの時間だ。きみたちは、われらが王国が迎える最期の客だ。是非とも出席してほしい」

平賀君達は、そろって外へ出て行く。

その際にキュルケさんに「ワルドの監視を頼む」と、頼んでおく。

「ん?君も行きたまえ」

「いえ、私はウェールズ様にお話が」

「私に?」

ウェールズ様は、怪訝な表情でこちらを見てくる。

まあ、当然だろう。大使ですらない俺が・・・そういえばキュルケさんとかシェリルさんとかトリスティン人ですらなかったけどこの場にいてよかったのだろうか。

俺を除いた全員が・・・

ちらっと隣にいる人たちを見る。

「お兄ちゃん一人にさせるわけがないじゃない」

「エルザちゃんんと同じです」

「私は貴方を守る」

・・・ま、いい・・・のか?

とりあえず、平賀君達はみんな行ったな。

「で、私に話とはなんだい?先ほど出て行った者たちには話せない内容のようだが」

「単刀直入に言います。ウェールズ様トリスティンにお逃げくださいませ」

「・・・君は先ほど言った私の言葉を聞いてはいなかったのかね?」

空気が少し緊張状態になる。

「もちろん聞いておりました」

「ふむ、では私に亡命の意思はないと言う事が伝わっていると思うが」

もちろん伝わっている。だが、俺が言っているのはそうじゃない。

「違います。トリスティンに『亡命』を進言しているのではございません」

「亡命じゃない?君の言っている意味が解らないな」

だろうな、だがこれはこの旅でわかった事と大きく関係があるといえよう。

 

「はい、亡命ではございません。もっと雑に言えばアルビオンからお逃げください。行先はゲルマニアでも、もしくはガリアやロマリア・・・はまずいか」

うん、ガリア・ロマリアはまずいな。

「よく言っている意味が解らないな。」

「申し訳ありませんが、何から話していいかどうか私自身も整理がつかない状態で。ですが、あと一日しか無い上、今後このように内密に話せる状態になるかどうかわからないので、今話します」

「ふむ、聞こう」

部屋に充満した緊張感が和らぐ。まあ、すぐに元に戻るんだろうけど。

「まず、御無礼を承知で言わせていただきます」

「・・・言ってみたまえ」

ふー、緊張する。これから言う事は言っておかなければならない・・・ような気がする。

普通に考えて俺の仕事じゃねえなあ。

「このまま、撤退もせずに内戦が進めばウェールズ様達は・・・無駄死にと言う事になりましょう」

ウェールズ様は眉を上げ、まあ、当たり前だが緊張感が部屋を包む。

「無駄死に・・・とは?」

「では、ウェールズ様は、いえ、アルビオン王家は何のため亡命もせず、死ぬことがわかっていながら戦いになられるので?」

「・・・アルビオン王家が、トリスティンに亡命しようものなら、奴らに、レコンキスタに進行させる理由を作ってしまうからだ」

「そうでございますか」

それはそれで予想外だったな、てっきり王家の意地か何かだと思っていたが。まあ、ある意味王家の意地か。でもこれなら話は簡単そうだ。

「では、レコンキスタはアルビオン王家を討ったあと、トリスティンに進行するきだとおっしゃったらどうです?」

「なっ!!馬鹿な!!そんなわけがあるか、第一なぜそう言い切れるんだ!!」

パリーさんを始め、護衛の人も驚いている。まあ、当然か。ついでに後ろの気配から、エルザ達も驚いているようだ。

「目的がわかる前に気を失わせてしまいましたから、正確な目的は解りませんが、ワルドは裏切り者です」

「なぜ、そんなことがわかる!!」

「彼に、正確には彼の遍在に襲われました。ただし狙いは大使であるミス・ヴァリエールではなくお付きの我々でしたが」

「なに!?」

「まあ、彼が敵だとわかっているものは先ほど出て行ったミス・ツエルプストーとここにいる者だけ。さらには襲ったのが遍在だったと言う事を知っているのは、私だけですが」

「それを、私に信じろと?」

まあ、嘘くさいわな。だけど、

「信じてもらわねば困ります。ワルドが、魔法衛士隊隊長が裏切り者である以上、他にも裏切り者が多数、トリスティンの上層部にいる可能性が高いこと。ラ・ロシェールの酒場で噂を聞いたのですが、レコンキスタの目的は王党派の撃破、そして聖戦だとか」

「そうだ、レコンキスタが掲げる目標はその二つだ」

その二つのうち前者が問題なのだ。

「トリスティンは王党派ではないと?」

「それは」

「もし、トリスティン上層部に裏切り者が多数いて、レコンキスタがトリスティンの王になりうるものを倒して何が得られるかと思いますか?」

「・・・」

今自分たちが置かれている状況だ、想像は容易だろう。

「しかし、仮にワルド子爵が裏切り者だとして、たったそれだけでどうしてレコンキスタの目的がトリスティンだとわかるのだ」

「そうですね、それだけの条件ではいまいち信憑性が薄いですね」

思わず苦笑してしまう『ワルド子爵が裏切り者だ、だからつぎの目標はトリスティンだ』じゃいくらなんでも信じろって言う方がむちゃくちゃだ。

「それに、君がその裏切り者で自分の利益のために、我々をトリスティンに呼び込もうと言う可能性もあるんじゃないかな」

「「「なっ」」」

そう言われる可能性があるとは思っていたので、俺は驚かないが、後ろの三人が。

とりあえず、視線で三人を黙らせる。ああ、出て行っててほしかったなあ。

「では」

両手を上げ、慎重にウェールズ様達に見えるように懐から杖を出し机の上に置く。

「なにを」

「いえ、必要以上に警戒されては元も子もないので」

「私がもし、敵方のスパイだとして、ウェールズ様達をトリスティンに招き入れる、目的はなんでしょう」

「?トリスティンに攻め入らせるのが目的となるんじゃないのかい?」

「少なくとも、私はウェールズ様がトリスティン亡命しようがしまいが、攻められると思います」

そう、まず間違いなく攻めてくるだろう。

「どうしてだい、わけを聞こうか」

「まず、此度の旅の目的が怪しいのです」

「??アンリエッタが私に送った恋文の回収だろう?」

「では、お聞きしますが、『恋文が見つかった!!貴様裏切ったな!!婚約は解消だ』となると?たかが恋文で?」

「現になる可能性があるから回収に来たのだろう?このままではゲルマニアとは破談になってしまうから」

「ゲルマニア皇帝がトリスティンのアンリエッタ姫を娶る目的はなんだとお思いですか?」

「目的?」

「はい目的です」

ウェールズ様は考え込む。

「トリスティンにはこれと言って特産品などもなく、衰退しているとしか言えません。しかもゲルマニアに対してあまりいい印象を持っている貴族がそれほど多くはない、と言えるでしょう。しかも借金もある」

「ふむ、確かにな。現に我がアルビオン貴族もそれほど好印象に思っている者が多いとは、お世辞にも言えないな」

では

「では、何故ゲルマニアはトリスティンを欲しているのでしょう」

「それは・・・」

「こういう話を聞いたことがあります。ゲルマニア皇帝は始祖の血筋ではないため発言力が少ないと」

「それは」

思い当たる節があるのだろう、ウェールズ様が深く考え込む。いい流れだ。

「まあ、あくまで憶測ではありますが。始祖の血筋を手に入れるためにトリスティンを抱え込もうというのです。たかが恋文一枚で解消するとは思えませんが」

憶測とは言ったが、これ以外にトリスティンを抱え込むメリットが思いつかない。

「確かに・・・そうだね」

「では、何故回収をしに来たのでしょう」

「・・・誰かが政治的な判断をしたのでは・・・」

自分で言って無理があることに気づいたのだろう、言葉を濁す。

「実は、旅立つ前日に、アンリエッタ様が突如訪問なされたのです」

「・・・」

「馬車から降りるのを見ていましたが、一緒にいたのはマザリーニ枢機卿と護衛の魔法衛士隊だけでした。その次の日です、任務に旅立ったのは。とてもではありませんが聡明と有名な枢機卿がたかが恋文ごときに一介の学生に命令を出すとは思えません。しかもその学生がレコンキスタに捕まる方がリスクが大きい。なにせ旅の中心にいるのは、ヴァリエール家の子女です」

「・・・」

「ですので、私はこう考えました」

「・・・聞こう」

「レコンキスタに組みするトリスティン上層部の誰かが、ウェールズ様に恋文を送ったことを耳に入れ、アンリエッタ姫殿下をそそのかし、アンリエッタ姫殿下勅命で、ワルドが護衛となるように、ある目的のために学生達をアルビオンへと送り込んだ」

「・・・その目的とは」

「一つ、アンリエッタ姫の恋文を手に入れる。微微たるものではありますがこれで、トリスティン側の混乱が起こるでしょう。何せ有力な貴族ほど始祖を崇めているものが多い」

「・・・」

「二つ、ヴァリエール公爵家令嬢を手中に収める。ワルドが裏切り者と仮定した場合当然ついているのはレコンキスタ、レコンキスタがトリスティンに攻め込む場合、有力貴族の令嬢を人質に取っていることは大きい」

国と3女どちらが大切か、3女を取り、下手をしたらヴァリエール家はトリスティン国家に、そして間違いなくどうして3女がアルビオンに行ったかの調査がされ、下手をしたらヴァリエール家はレコンキスタ側に近くなる。

「そして三つ。これが本命でしょう」

「・・・本命とは?」

「アルビオン王家国王と次期国王の首です」

「・・・」

「これには、数々の利点が「もういい」・・・」

いかん、少し調子に乗りすぎたか?

「そこから先は、説明されなくてもわかる」

「さようで」

ウェールズ様はしばらく考え込んだ後、こちらに問いかける。

「しかし、私にどうしろと言うのだね?その話からするとトリスティンに亡命したとしてもアンリエッタはともかく、最悪トリスティンの上層部とやらに私は殺されてしまうのではないかね」

「そうでしょうね、少なくともトリスティンに亡命するのは危険すぎる」

「君は、自分が言っている意味が、解っているのかね?」

「わかっております。私はトリスティンに亡命を勧めているのではありません。トリスティン『地方』に逃げることを、お勧めしているのです」

 

 

 

 

 

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「逃げるとはどういう意味かね?」

ウェールズ様は顔をしかめ聞いてくる。

まあ、当然の反応だろう『亡命』ではないのだから。

「今、アルビオンにはどれぐらいの傭兵が集まっているのでしょうか」

「傭兵?」

「はい、傭兵です」

先ほどウェールズ様自身で言われたことだけどね。

「まさか、君は傭兵に混じって逃亡しろと言いたいのかね」

「傭兵5万に対しこちらは300。いくら金を稼ぎに来ているからと言っても300に対して5万は多すぎる。ラ・ロシェールに向かうものも少なくはないでしょう。ラ・ロシェールに少しばかり傭兵が増えても誰も気づかない。ラ・ロシェール自体にも傭兵はかなりの人数がいますしね。それに『亡命』で、ない以上レコンキスタ側の攻める理由にはなりえません」

「むちゃだ」

ウェールズ様が即答する。『むちゃだ』と。

「何故、むちゃなのです?」

「まず第一に船が足りない。今、我々の手元にあるのは君たちと共に来たあの二隻だけだ。非戦闘員を乗せていくのに精一杯だ」

「そう、ですか」

まさか、船がないとは。

「それに、王家の者が、部下を配下の者を見捨てて逃げ出すわけにはいかない」

そう言ってウェールズ様は、ずいぶんと決意のこもった視線を向けてくる。

「で、殿下」

その声に、ウエールズ様の後ろに控えているペリーさんに目を向けると、ぺりーさんを初め護衛の方も涙ぐんでいる。

「一つ気になったことがあります。お聞きしてもよろしいでしょうか」

感動ムードを、とりあえずぶち壊す俺。

「なんだね?」

「ウェールズ様は何故、イーグル号にお乗りになられていたのですか?」

「それは、王立空軍大将、本国艦隊司令長官としてだね」

「明らかにその役職は、皇太子殿下が付くようなものではないでしょう?誰に、勧められたのですか」

ウェールズ様は少しムッとし

「ペリーだ。仮とは言え、いるに越したことがないと言われてね」

「そうですか、いや実によかったですね」

「ん?何がだい?」

「いや、もしもウェールズ様が帰る前に開戦していたら帰ってくることなんてできなかったでしょう?何せ敵に秘密の港を教えてしまったら、内部からも攻められる危険性がある以上戻ることもできず。イーグル号を『脱出艇』に、とは言え撃ち落とされるのを承知で戻っても、意味がありませんから、ね」

此処まで言って気づいたのだろう、ウェールズ様は後ろを向く。

「ペ、ペリーまさか」

「も、申し訳ございません殿下。しかし、これはこの城にいる者の総意なのでございます」

「総意・・・つまりお父上も、ということか」

「さようでございます。血筋さえ残っていれば国家再建も不可能ではない・・・と」

「・・・そうか」

ウェールズ様は一言言うと椅子にもたれかかった。

「ウェールズ様は、先ほどのお話からすると一人で逃げる気はないと、考えてもよろしいでしょうか」

「今は『出来れば』だがね。この城にいる者の総意と、言われてしまったからね」

「殿下」

ウルウルとした目でウェールズ様を見るペリーさんと護衛の方・・・いい年した男がするようなことじゃないな。

「ウェールズ様この城の地下の港には他の船は一切ないのですか?例えば直せばいいとか」

「ああ、あるにはあるが、大穴があいていたりとかでちょっとやそっと埋めればいいというものではないし、そのような木材もない」

「僭越ながら、少々見せてもらってもよろしいですか?」

「構わないが・・・」

机の上に置いた、杖を手に取り

「一応、私が船に忘れ物をしついでにウェールズ様も忘れ物がある、と言う事にしといてください」

「わかった」

部屋から出て、ウェールズ様の後をついていく。

「あっ」

あることに気づき、小さく声を上げる。

「どうしたの?お兄ちゃん」

「いやな、サイレントかけときゃよかったってな」

いまさら遅いが、痛恨のミス。

「心配ない、私がかけておいた」

と、シェリルさん。・・・いつの間に。

「ありがとう、シェリルさん」

「かまわない」

少し頬を赤くして答える。・・・何故赤くなる?

そして何故エルザとラコイはムッとする?

 

しばらくし港に着く。

「こっちだ」

案内され破損した船の前に。

「時間と材料があれば簡単に直せるのだがね。風石をコントロールする部屋を砲に貫通されて動かないのさ。他にもメインマストが折れたりとかいろいろね」

ふーむ、基本構造とか一切知らないがこれは・・・

「ウェールズ様、大きめの布はありませんか?」

「布?いったい何に」

「少し試したいことが」

ふむ、とウェールズ様は少し考えた後

「おい、誰か布を持て」

 

持ってこられた布は船を貫通し、出来た穴を覆うには十分な大きさだった。

「しかし、まさかこれで穴をふさぐとでもいうのかい?君は」

「まあ、見ててください」

以前、固定化について研究した時にできた副産物がある。

「少々魔法を行使させていただきます」

そう言い、杖を取り出し呪文を唱える。

まずは布を水にぬらす。

ウインディ・アイシクルの要領で、水浸しになった、布を凍らす。

船に出来た穴の周辺に水をつけ、凍った布を貼り付け更に凍らす。

この時、気温を下げれば下げるほど、布は固くなっていく。

最後に固定化をかける。

固定化は、物質の変化を抑える役割がある。鉄を錆びないようにしたり、食べ物を腐らせないようにしたり、『氷』を融かさないようにしたり。

出来た布の壁を、近くにあった廃材で殴る。

ゴンゴンと音がし、それの丈夫さを物語る。

「布を多く貼り付ければ貼り付けるほど。氷を厚くすればするほど。温度を低くすればするほど。固定化を掛ければかけるほど丈夫になっていきます。これは使えませんか?」

しばらく、ウェールズ様を始め、そばにいた人たちが目を丸くし茫然としていた・・・が、

「急げ急げ!!布を持ってこい!!」

「水と風メイジを!!いや、固定化が出来る城内すべてのメイジを集めろ!!」

「風石を集めろ!!先ほどウェールズ様と、トリスティンの方の言った通りに全てを内密に行え!!」

「クリス殿!!今すぐ私と共に父上の下へ来てくれ!!早急に話を詰めよう!!」

ウェールズ様は先ほど俺が言った事と、自分と一緒に来い!!みたいなことを言い、作業を始めさせた。

そして俺は、手を引かれ、現アルビオン国王陛下の下へ、ほぼ引きずり出されたとしか、言いようのない感じで、前に出された。

「うむ、話は聞いた。ベットの上からですまんな、クリス・ド・プルトンよ」

「い、いえ。お構いなく」

いくらなんでも、あまりに急に引きずり出されたので、心の整理とか何も出来なかった。

「さて。して、どうするかね?確かに、船が直れば全員で脱出できよう。しかし、間違いなく敵は追ってくるぞ?」

「スキルニルはございませんか?」

「スキルニルとな?」

「はい、私はそれを元にディテクト・マジックでもわからない、死を演ずる人形を作ることができます。さすれば、この城にて、国王殿下と皇太子殿下の人形を作り、敵がそれを本物と信じ、効力が切れる最高3週間後にはどこにいるは解らないと、言う事です」

後ろで、他の兵士の「スキルニルをかき集めろ!!」という怒声が聞こえる。

「なるほどのう、敵はあくまで世と、ウェールズの首と言うわけか」

「その通りです。一応考えているプランは二つ。一つは裏切ったふりをさせ、スキルニルを明け渡し国王陛下たちは、アルビオンを脱出する。もう一つはスキルニルを元に最後まで抵抗し、敵側に捕えられたことにする事です」

「ふうむ」

国王陛下が、考えていると後ろにいた護衛の方々が

「演技といえど、国王陛下を裏切る振りなど出来るわけがございません!!」

と言いながら、こちらを睨んでくる。

「スキルニルが30も40もあるというのなら、その分だけ作りましょう。まあ、魔法は放てませんが、普通のスキルニルと同じく動くことはできます。しかし、それだけの数があるとはとても」

と、言った瞬間『バタンッ』と、扉が開き「スキルニル!!89体持ってまいりました!!」

俺の二日連続壮絶徹夜タイム決定の瞬間だった。

 

 

 

 

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コンコン

 

部屋の扉がノックされる

「どうぞ」

「さて、私達の番だ」

ウェールズ様がお付きの方を連れ添い入ってきた。

「ではこちらに、血をお付けください」

目の下に隈を作った俺がスキルニルを差し出す。

「あ、ああ。しかしすごい光景だな」

そう言われ後ろを向く。

確かにすごい光景だ、今この部屋には、スキルニルの山を前に遍在+本体(俺)の合計31人で囲みちまちまと作業をしている。

 

 

『口は災いの下』とはよく言ったものだ。

たしか『古代のマジックアイテム』だったかな?

まさか90体近くスキルニルがあったとは。

そんなにあるとは・・・思わなかったな。

『スキルニルが30も40もあるというのなら、その分だけ作りましょう』と言った手前、まさか今更『勘弁してください』とは言いづらく、そのまま二日間連続徹夜コースとなった。

流石に全部を一人でやれるわけもなく、だからと言ってやり方を知らない人に手伝ってもらうわけにもいかないので、アルビオンの底にはっ付いていた刀を呼び、それにぶら下がっていた遍石入りの袋を回収した。

一時期『作りすぎかな?』と思っていたが、作るに越したことはなかったようだ。

 

この部屋は、秘密の港に近く目立ちにくい所にある物置小屋であるため、まず人はこない。

ここに来るのは事情を知る人たちだけだ。

スキルニルをただ加工するだけでは何も起きない、実際に使用するためには対象者が必要だ。

対象者は、王族やこの城の中で地位の高い人たちだ。

その対象者の方々には、人目に付きにくいよう入ってもらってきている。

 

流石にほぼ休憩なしで二日目に突入はきつい。

「さて、作業をしたままでいい。聞いてくれ」

「はい、作業をしたまま聞きます。言ってください」

スキルニルすべてを同じ性能にすると二日どころか1週間あっても足りない。

よって、3週間持つ奴から遍石をただ仕込んだだけまである。

こうすればすべてのスキルニルが情報を共有することが出来る。

「クリス殿。君の言った通り、ワルドが行動を開始した」

ウェールズ様のスキルニルを起動する。

「予想道りですね。このスキルニルはウェールズ様と同じ記憶を持っています。それを元に行動させるので、後はこれに任せて避難をお願いします」

「ああ、わかった。すまない、後は任せた」

「はい、任されました」

ウェールズ様はお付きの方と部屋を出て行かれて行く。

しばらくし、ウェールズ様のスキルニルと俺の遍在が出ていく。

正直猫の手も借りたいこの状況で、遍在を外に出すのは、話を聞くためだ。

流石に、遍在の一部が入っているとはいえ、スキルニルから記憶を覗くことはできない。

あくまでできるのは、スキルニルと同じものを、見る・聞くだけだ。

まあ、もしできたらできたで俺の脳が軽くパンクするとは思うが。

さて、遍在からウェールズ様のスキルニルからの情報だと、ワルドが結婚式をするそうだ・・・

馬鹿じゃないのか?あいつ。

誰が聞いても正気の沙汰とは思えない。

結婚式の立会人に3日後には確実に死んでいる人を立会人て、縁起が悪すぎるだろう。

・・・いやまあ、そういう問題でもないんだが。

ああ眠い。

頭が回らん。

 

そのままその後も、せっせせっせとスキルニルを作り続けたので、思ったよりも早く終わりそうだ。

余裕が見えてきたので俺は寝る。

寝るったら寝る。

誰にも言うでもなく、俺はそのまま眠りにつく。

ちなみに、俺の考えた、計画の、準備は、ほぼ、終わりを、見せて、い、る。

 

 

 

 

 

「・・・た・・・!!本・・・!!おい!!起きろ!!本体!!」

俺は、目をさまし飛び起きる。

「あー、よく寝た」

体を動かすとあちこちからぱきぽきと音がする。

「で?どこまで行った?」

遍在に若干寝ぼけた頭で尋ねる。

尋ねなくても遍在とリンクを張ればわかるのに、聞いたのがその証拠だ。

「ああ、各スキルニルの配置は完了した。あとはワルドの結婚式と脱出だけだ」

各スキルニル達、特に『死を演じる』ことが出来ないスキルニルには爆弾を抱え込ませてある。

人が死んだあと、スキルニルが残っていたらいくらなんでもばれるため、粉みじんにする必要があるからだ。

門や柱等壊れれば重大なことになりやすい位置に爆弾を抱えたものは配置し、敵が攻めてきたときに強襲しやすい位置に死を演じる期間が長い順に配置してある。

まあ、魔法が使えないために、砲撃手が多かったり、ただマントと杖を持っているだけの者が多いいので、見かけ倒しの者が多いいが、それはしょうがない。

敵方に損害を与えるのが今回の目的ではなく、こちらが敗北をより、疑問視しにくい状況にするのが目的だ。

だが、重要人物。ウェールズ様たちと言った方々には逆に遠い所にいる。

これは、死んだように見せかけた方が逃げるのに都合がいいし、重要人物になればなるほど、あったはずの死体が消え、生きていた方が相手に対する混乱の度合いは大きいからだ。

さて、遍在の報告を聞き、結婚式場着いたので、遍在を消す。

せいぜいワルドを利用させてもらうとしよう。

 

 

 

 

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本来、結婚式は礼拝堂で行われるのだが、今回は至急に準備した場所で結婚式は行われる。

この場所は港に近く、ワルドが逃亡がしやすいと思われる場所が選ばれた。

ワルドの本当の目的がはっきりとわかったわけではないが、仮に、偽のウェールズ様を殺した後、その事実を広めてもらうため無事に、逃亡に成功してもらわねば困るからだ。

さて、俺は、結婚式場の中に、扉を開き入っていく。

 

結婚式場には、礼装をしている偽・ウェールズ様・エルザ・ラコイ・シェリルさん・キュルケさん。

そして、主役であるミス・ヴァリエールとワルド、ついでに、ウェールズ様の何も知らない護衛がいた。

「申し訳ございません、遅くなりました」

そして、俺は席に着く。

平賀君は何でも「見たくない」と言って参加しないそうだ。

グラモンは「彼一人だけでは心配だ」と言って逃げた。

まあ、本当は他のみんなも帰ってほしかったのだが、エルザ達は最初「作業を手伝う」と言われたが無理なので断りを入れ、ワルドの監視と撤退準備を手伝ってもらった。

まあ、遍在30人の所に護衛なんていらないしね。大砲でも外から撃ち込まれない限り、まず大丈夫だ。

キュルケさんは、素直ではないがミス・ヴァリエールの事が心配なんだろう。

いや、まあ、裏切り者と結婚式なんて嫌がおうにも不安になるだろうが。

 

さて、この結婚式を止める作戦は・・・はっきり言ってない。

だけど必要ない。

え?なぜかって?

結婚式が中盤になると、敵が責めてくるからさ!!そう、あくまで敵だよ?たぶんね

ドーンドーンってね!?

まあ、ミス・ヴァリエールが、あんな情けない男と結婚するとは思えないが。

だって、もんのすごい嫌そうな顔してるしねぇ。本人、気が付いてるかな?

ワルドは気が付いてなさそうだけど。

まあ、もしミス・ヴァリエールが本気で結婚する気だったら、ワルドの正体ばらして、力ずくで止めていたが。

キュルケさんがいて助かった。まさか一発で見抜いてくれるとはねえ。

「ルイズ、まず間違いなく、ワルドとは結婚するつもりないわ」ってね。

 

「新婦?」

おっと、式の途中だった。

偽・ウェールズ様がミス・ヴァリエールを見ている。

急に俯いたからだ。

「緊張しているのかい?仕方がない。初めての時は、事が何であれ、緊張するものだからね」

そういい、にっこりと偽・ウェールズ様は笑い、式を続けた。

式の途中、ミス・ヴァリエールは首を振った。

「新婦?」

「ルイズ?」

偽・ウェールズ様とワルドがミス・ヴァリエールの顔を覗き込む。

すると、ミス・ヴァリエールは悲しい表情を浮かべ、再び首を振る。

「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」

「違うの、ごめんなさい・・・」

「日が悪いなら、改めて・・・」

「そうじゃない、そうじゃないの。ごめんなさい、ワルド、わたし、あなたとは結婚できない」

おお、ずいぶんとまあいきなりの展開だな。

まだ式は中盤にも行ってないのに。

これは、近くで爆音が鳴る必要ないかな?

「新婦は、この結婚を望まぬのか?」

偽・ウェールズ様は首をかしげ、ミス・ヴァリエールに尋ねる。

「はい、そのとうりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」

ワルドの顔が一瞬にして赤くなる。

平静を装っているのが・・・怒っているのだろう。

まあ、公衆の面前で恥をかかされたのだから、当然のような気もするが。

偽・ウェールズ様は困ったように、首をかしげ、残念そうにワルドに告げた。

「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」

しかし、ワルドは偽・ウェールズ様に見向きもせずに、ミス・ヴァリエールの手を取った。

「・・・緊張しているんだ。そうだろルイズ。きみが、僕との結婚を拒むわけがない」

・・・いや、すごい自信だな。この旅で、あれだけ恥をさらしておいて。

「ごめんなさい。ワルド憧れだったのよ。もしかしたら、鯉だったのかもしれない。でも、今は違うわ」

するとワルドは、目を吊り上げまるで、トカゲのようなどこか冷たい顔に変った。すごいな人間ってあんな顔になるんだ。

思わず顔を触り、ならないよう気をつけようと、思った。

そして、ワルドは叫んだ。

「世界だルイズ。僕は世界を手に入れる!そのために君が必要なんだ」

豹変したワルドに怯えながら、ミス・ヴァリエールは首を振った。

てか、そんな口説き文句で承諾する奴って・・・魔王?『世界の半分を与えよう』的な?

ミス・ヴァリエールは「わたし、世界なんていらないもの」と、誰でも普通は思うようなことを言った。

ワルドは両手を広げ「僕にはきみが必要なんだ!君の能力が!君の力が!」と・・・どんな口説き文句だ。

ワルドのあまりの剣幕に、ここにいるみんながドン引きしている。

気が付いていないのはもちろん、ワルドだけ。

いや、1人だけ違った。

ミス・ヴァリエールは間違いなく、怯えているなありゃ。

さて、そろろか。と思っていた時、ワルドがとんでもないことを言い出す。

「ルイズ、いつか言った事を忘れたか!きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう!きみは自分で気づいていないだけだ!その才能に」

ブリミル・・・どういうことだ?ただのワルドの戯言か?

「ワルド、あなた」

ミス・ヴァリエールは震える声で言った。

「子爵・・・君はフラれたのだ。いさぎよく・・・」

いいかげん、ミス・ヴァリエールがかわいそうになってきたので、偽・ウェールズ様が止めに入る・・・

が、ワルドはその手を撥ね退ける。

「黙っておれ!」

偽・ウェールズ様も俺たちも、あまりのことに驚き、茫然とする。

フラれた男が女に縋るのって、すっげぇ見苦しいんだな。

「ルイズ!きみの才能が僕には必要なんだ!」

「わたしは、そんな、才能あるメイジじゃないわ」

「だから何度も言っている!自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」

ミス・ヴァリエールは、掴まれているワルドの手を振りほどこうとしているが、ワルドは離そうとしなかった。

「そんな結婚死んでもいやよ。あなた、わたしをちっとも愛していないじゃない。わかったわ、あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという、在りもしない魔法の才能だけ。ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。こんな侮辱はないわ!」

ミス・ヴァリエールは暴れた。

偽・ウェールズ様は、ワルドの肩に手を置いて、引き離そうとしたが、今度はワルドに突き放された。

「ウェールズ様!!」

護衛の方が叫ぶが、偽・ウェールズ様が目によって、止めさせる。

突き飛ばされた偽・ウェールズ様は、顔を赤くして怒り始めた。

いくらスキルニルとは言え、元はウェールズ様だからなぁ。

「うぬ、なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を放したまえ!さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」

すると、ワルドは、今までの顔が嘘のような笑みを浮かべ、ミス・ヴァリエールに語りだした。

「こうまで僕が言ってもダメかい?ルイズ。僕のルイズ」

ミス・ヴァリエールは誰がどう見ても怒っている表情で、怒りに震えながら「いやよ!誰があんたなんかと結婚なんかするもんですか!!」と言った。

おお、キュルケさんの言う通りに・・・悩むところも一部あるが、なった。

するとワルドが天を仰ぎ「この旅で、君の気持ちを掴むために、ずいぶん苦労したんだがなあ」と・・・

「冗談!!この旅であんたの株は、大暴落よ!!」

うん、そうだねミス・ヴァリエール。

ただ惜しむらくは、ワルド本人が一切覚えていないってことかな・・・っぷ。

「こうなってはしかたがない。ならば目的の一つは諦めよう」

ワルドの言葉に、護衛の方・ミス・ヴァリエールを除いた俺たちに、空気が張り詰める。

来た。

「目的?」

ミス・ヴァリエールは首を傾げ、ワルドに聞く。

すると、ワルドは唇の端を吊り上げ、禍々しい笑みを浮かべる。

「そうだ。この旅における僕の目的は3つあった。その二つが達成できただけでも、よしとしなければ」

「達成?2つ?どういうことよ」

ミス・ヴァリエールが尋ねる。

ワルドは右手を掲げると、人差し指を立てて見せた。

「まず1つは君だ。ルイズ。君を手に入れることだ。しかし、これは果たせないようだ」

「当たり前じゃないの!」

次にワルドは、中指を立てた。

「二つ目の目的は、ルイズ、きみのポケットに入っている、アンリエッタの手紙だ」

ミス・ヴァリエールと護衛の方ははっとした。

「ワルド、あなた・・・」

「そして、三つ目・・・」

ワルドの『アンリエッタの手紙』『二つ目』と言う言葉から、偽・ウェールズ様は杖を構え、わざとらしくない程度に、隙を見せる。

ワルドはその瞬間、素早く杖を抜き、呪文を唱え完成させ、身を翻し偽・ウェールズ様の胸を貫いた。

「き、貴様・・・『レコン・キスタ』・・・」

偽・ウェールズ様の役目の一つである『確認』をする。

偽・ウェールズ様の口から本物そっくりの鮮血がどっと溢れる。ミス・ヴァリエールは悲鳴を上げた。

「ウ、ウェールズ様ああああああああああ」

護衛の方も悲鳴を上げる。

「3つ目・・・貴様の命だ。ウェールズ」

どう、と偽・ウェールズ様は床に崩れ落ちる。

「貴族派!あなた、アルビオンの貴族派だったのね!ワルド!」

ミス・ヴァリエールは、わななきながら。怒鳴った。

なんと!!ワルドは裏切り者だったのだ(笑)

「そうとも。いかにも僕は、アルビオンの貴族派『レコン・キスタ』の一員さ」

よしこれで言質は取った。

ぶっちゃけ、もはやワルドには用はない。

「きっさまああああ、よくもウェールズ様おおおおおおおおお」

護衛の方が、ワルドに突っ込み切り結ぶ。

ワルドは「ふん」と、鼻で笑うと護衛の方を、吹っ飛ばす。

てか、死なれちゃ困るんですけど、護衛の方Aさん。

気絶しているのを確認すると、ワルドを見る。

皆で静かに構える。

「はっはっはっは、いくら束になろうとも、魔法衛士隊隊長であるこの僕に、勝てるとでも思っているのか?」

さっきの『世界を手に入れるのだ』と言いこれと言い、ほんと魔王みたいだなワルド。

恐らく『殺気』なのだろう。ぶっちゃけ、初めてミノタウロスと対峙した時の方がきつかったなあ。

しかし、キュルケさんとミス・ヴァリエールは違ったらしく、若干震えている。

すると、

「助けて」

ミス・ヴァリエールは蒼白になって、後じさった。

ワルドは首を振り、

「だから、だから!共に、世界を手に入れようと言ったではないか」

するとワルドは『ウインド・ブレイク』放つがキュルケさんの『ファイヤ・ボール』によって相殺され、エルザ・ラコイの陰ながらの、精霊魔法によるサポートにより、ミス・ヴァリエールは無傷だったが、『ファイヤ・ボール』が破裂し、いい感じに炎が舞った為、ワルドが一層魔王っぽくなったのだ。

ミス・ヴァリエールは腰を抜かし、

「いやだ・・・助けて・・・」

ワルドは一歩踏み出し、

「言う事を聞かぬ小鳥は、首を捻るしかないだろう?なあ、ルイズゥ?」

ミス・ヴァリエールは更に震え上がる。

「助けて・・・お願い・・・」

まるで、呪文のように、ミス・ヴァリエールは繰り返す。

ワルドはどこか楽しそうに・・・いや、完全に自分に酔った表情で、ワルドは呪文を唱え始める。

なんと、ワルドはドSだったのだ!!あの表情は間違いない。

さーて『トライアングルメイジ』である、シェリルさんと、同じく『トライアングルメイジ』である、キュルケさん。

『吸血鬼』である、エルザと『翼人』である、ラコイ。

最後に『スクエアメイジ』である俺とで、『軽くワルドを捻りつぶし、ちゃっちゃと、追い出すか~』と、思っていると。

「残念だよ・・・。この手で、君の命を奪わねばならないとは」

最後の戯言をワルドh「サイト!助けて!」っていないし平賀君!!

すると、天窓が割れ、1人の人影が飛び込んできた。

 

「貴様・・・」

ワルドがつぶやく。

天窓をぶち破り、間一髪?飛び込んできた平賀君が、ワルドの杖をはっしとデルフリンガーで受け止めていた。

おお魔王 (ワルド)にさらわれたお姫様 (ミス・ヴァリエール)を救う為、勇者様(平賀君)の登場だ・・・って凄いいいタイミングで、飛び込んできたな、平賀君も。

 

 

 

 

43

 

 

 

 

「貴様・・・」

ワルドが呟く。

天窓をぶち破り、どこぞのヒロイック・サーガ(英雄譚)のごとく飛び込んできた平賀君が、ワルドの杖をはっしとデルフリンガーで受け止めていた。

「てめえ・・・」

平賀君は剣を横殴りに払ったが、ワルドは飛び退り、それをかわす。

平賀君は腰を抜かし、若干泣いているミス・ヴァリエールをちらっと横目で見た。

まるで、火のような怒りを含んだ目で、平賀君はワルドを睨みつけた。

眼光で殺すかのように睨み付け、唇をぎりっと強く噛み締めて、平賀君は唸った。

「許さねえ」

「なぜここがわかった?ガンダールヴ」

残忍な笑みを浮かべてワルドが・・・ってガンダールヴ?なんだそりゃ。

俺が少し考えてる中で、戦いは進む。

「そうか、なるほど主人の危機が目に映ったか」

ガンダールヴ、ガンダールヴ・・・何処かで聞いたような。

「よくもルイズを騙しやがったな」

ガンダールヴ、思い出せん。まあ、今は放っておこう、ワルドは平賀君の事を言ったみたいだけど、後で期会があったら聞いてみよう。

「目的のためには、手段を選んでおれぬのでね」

「ルイズはてめえを信じていたんだぞ!婚約者の手前を・・・幼いころの憧れだったてめえを・・・」

「信じるのはそちらの勝手だ」

(お兄ちゃんお兄ちゃん)

ラコイが小声で話しかけてくる。

(なんだ?)

(ちょっと、エルザこの雰囲気だと入りずらいと思うんだけど)

ちょうどそのとき、ワルドは風の呪文である『ウインド・ブレイク』を放ち、平賀君は剣ごと吹き飛ばされるが、怒りの表情で立ち上がる。

(そうだな、平賀君、こちらには頼る気・・・と言うか、こちらは全く目に入ってないみたいだし、一応いつでもサポートできるよう、準備はしといてくれ)

そう、みんなに伝えたときだった。

「思い出した!」

デルフリンガーが、空気も読まず叫んだのは。

「なんだよてめえ、こんなときに!」

「そうか・・・ガンダールヴか!」

「なんだよ!」

「いやあ、俺は昔、お前に握られていたぜ。ガンダールヴ。でも忘れてた。なにせ、今から6千年も前の話だ」

また、ガンダールヴか、デルフリンガーも言っていることから、ワルド側からの平賀君に対するコード・ネームでもなさそうだ。

「寝言いってんじゃねえ」

ワルドの『ウインド・ブレイク』が飛ぶ。

平賀君は少し掠るもよける。

「懐かしいねえ。泣けるねえ。そうかぁ、いやぁ、なんか懐かしい気がしていたが、そうか。相棒、あのガンダールヴか!」

程よく、空気が壊れたので、平賀君に話しかける。

「平賀君!!サポートする!!」

「えっ?クリスさん!?」

やっぱし、目に入ってなかったか。

「嬉しいねえ!そう来なくっちゃいけねえ!俺もこんな恰好してる場合じゃねえ!」

そうデルフリンガーが叫ぶなり、デルフリンガーの刀身が光りだす。

「デルフ?はい?」

その時、ワルドが再び『ウインド・ブレイク』を唱えた。

完全にデルフリンガーが目くらましとなり、猛る風が、平賀君めがけて吹きすさぶ。

俺たちはワルドに注意していたため、デルフリンガーの行動が予想外の事態だったため、誰一人動けない。

「危ない!!平賀君!!」

平賀君は、咄嗟にデルフリンガーを構えるが、

「無駄だ!剣では避けられんぞ!」

ワルドが叫ぶ。

平賀君が吹き飛ばされる!!そう思ったのだが・・・何も起きなかった。

「あれ?」

俺が間抜けな声をだし、思わず平賀君を見る。

平賀君は何ともなってなく、変化があるとすれば、デルフリンガー今まさに研がれたかのように、光り輝いていた。

「デルフ?お前・・・」

「これがほんとの俺の姿さ!相棒!いやぁ、てんで忘れてた!そういや、飽きてたときに、テメエの体を変えたんだった!なにせ、面白いぃことはありゃあしねえし、つまらん連中ばっかりだったからな!」

デルフリンガーがのたまう。

「早く言いやがれ」

まったくだ、戦闘中に目をつぶるなんて自殺行為もいい所だ。

「しかたがねえだろ。忘れてたんだから。でも、安心しな相棒。ちゃちな魔法は全部、俺が吸い込んでやるよ!この『ガンダールヴ』の左腕、デルフリンガーさまがな!」

興味深そうに、ワルドは平賀君の握ったデルフリンガーを見つめた。

「ほう・・・ただの剣ではなかったか。『ガンダールヴ』の左腕か・・・」

ワルドは余裕の態度を見せ、杖を構え、薄く笑った。

「さて、ではこちらも本気を出そう。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、その所以を教育いたそう」

平賀君は飛びかかったが、ワルドはまるで軽業師のごとく剣戟を交わしながら、呪文を唱える。

「ユビキタス・デル・ウインデ・・・」

呪文が完成すると、遍在が4体出てきた。

ワルドはもったいぶった言い方をしていたからな、正直言ってしらける。

明らかに、平賀君とミス・ヴァリエール以外の俺たちは、緊張を解く。

なにせさっきまで俺は30体も遍在を出してたからな。

「分身かよ!」

「ただのb「平賀君!あれは風のムビキタス『遍在』と言う魔法だ。切り付け、ある程度損傷すれば勝手に消える!」・・・そうだ」

ワルドの分身は、すっと懐から真っ白の仮面を取り出し、顔に着ける。

「あ、あんた護衛の!?」

平賀君が驚きの声を出す。

まあ、そりゃそうだ。ワルドの遍在から奪った仮面をつけてたからなあ。

「護衛?」

ワルドが首をかしげる。

まあ、そりゃそうだ。ワルドは気絶してたんだからなあ。

「平賀君、あの人は敵から落ちた仮面をつけていたから違うと思うよ?」

「そ、そうでしたっけ?」

「この『遍在』は個々別々に意思w「平賀君!!分身は任された!!君は本体を倒せ、ミス・ヴァリエールにいいところを見せるチャンスだぞ?」・・・」

「っ!!おうっ!!」

ワルドの話を元から長々と聞くつもりはないし、ウェールズ様を倒した後逃げる時のことを考えればあまり時間がない可能性がある。

早々にけりをつけたい。

平賀君はワルド本体に狙いをつける。

「シェリルさんとキュルケさんは右の一体を、エルザとラコイは左の2体に椅子を全力で投げつけてくれ。俺は、みんなのフォローに入る、また怪我をしたら俺が治すから言ってくれ」

俺が正面切って戦うと、もし他のみんなが傷を負ったとき直せなくなるから参加出来ない。

てか、エルザ・ラコイ・シェリルさんの目が語る・・・「下がってて」と。

そして、戦いが始まる。

平賀君が真っ向からかなりのスピードでワルドに切りかかる。

ワルドは何とかついて行っている感じの上に、時々魔法を放つが、デルフリンガーに魔法が吸収されるため決定打に欠けていた。

シェリルさんとキュルケさんも中々に強く、俺は時々相対しているワルド遍在にわざと見えるようにアクア・ウイップを放ちかく乱する。

エルザとラコイは・・・あの腕力で椅子(時々机)を(恨みを込めて)全力投擲しているため、ワルド遍在は迎撃どころか避けるのが精一ぱ・・・1体に椅子が激突しその瞬間消え去り、やっと避けていた飛来物が2倍となり、早々にもう1体も姿を消した。

気が付けばシェリルさんとキュルケさんの方もけりがついてをり、残るはさっきからなんか会話をしている、平賀君とワルド本体だけとなった。

「戦うのはお前だ、ガンダールヴ!お前の心の震えが、俺を振る!」

なんかさっきから、ごちゃごちゃ喋っている思ったら、いきなり平賀君のルーンが激しく輝きワルドの左腕に深い傷をつける。

平賀君は少しよろけ膝をつく。どうやら疲労が限界に達したようだ。

ワルドはよろめきながらも平賀君を睨みつけている。

「くそ・・・、この『閃光』がよもや遅れを取ろうとは・・・」

平賀君はワルドを睨み付け動こうとしているが、うまく立てないようだ。

「ああ、相棒。無茶をすればそれだけ『ガンダールヴ』として動ける時間は減るぜ。なにせ、お前さんは主人の呪文詠唱を守るためだけに生み出された使い魔だからな」

デルフリンガーが説明する・・・てかそういうことはもっと早くに言ってやれ。

ワルドは右腕で杖を振り宙に浮く。

「まあ、目的の「待ちなさい!!ワルド!!よくもウェールズ様を」

ワルドの言葉を遮り大声を上げるミス・ヴァリエール。

「ルイズ!そんなことを言ってていいのかn「みんな!!外から爆音が聞こえる!!レコン・キスタが攻めてきたぞ」

予想通り、ワルドはレコン・キスタが攻めてくる正確な時間を知っていたようだな。

予定していた時間よりも少しばかり早い。

「で!でもワルドが!!」

「んもう!ルイズ!今ここで逃げ出さなきゃ全滅よ!!それにダーリンももう戦えないわ」

作戦を知っているキュルケさんがミス・ヴァリエールに言い含める。

「っく、ワルド!!覚えてなさい!!」

心底悔しそうにワルドを睨み付けるミス・ヴァリエールを引き連れ俺たちは撤退する。

 

 

 

 

「・・・えーと・・・まあ、目的の一つは『ドーーーーン』

 

 

 

 

44

 

 

 

平賀君はミス・ヴァリエールとキュルケさんに肩を貸してもらい、俺が護衛の方を抱え、脱出艇へ走っていく。

「いいかいみんな。道中誰に会っても、先ほどの事は誰にも言ってはいけない」

まあ、会わないんだけど。

「なっなんでよ!!」

ミス・ヴァリエールが反発する。

「ワルドはトリスティンの魔法衛士隊隊長だ、下手をすると間近でみていた護衛の方ですら、俺たちを疑う危険性がある」

「そっそんなの、誠意をもって話せば」

「んもう、ルイズ?それが危ないって言ってんの!!」

「とりあえず、このことは君たちに密命を出した人以外には誰にも言わない方がいい。うかつなことを言うと、敵だと思われかねないからね」

「・・・」

ミス・ヴァリエールは悔しそうに俯いた。

「とは言え、船に戻ったら、状況を説明しなければならないだろうからな、船の船長にも説明しないとな」

背負っている護衛の方を、見ながらつぶやく。

道中グラモンに出会った。

「いきなりサイトが『ルイズが危ない』なんて、飛び出して行ったからね。何かあったのかい?ワルド子爵の姿も見えないけれど」

いや、すれ違わなくてよかった。

下手をしたらグラモン、アルビオンで死んでたな。

とりあえず「あとで説明する」と言って、脱出艇へと急ぐ。

 

脱出艇は全部で表向きは3隻、雲に隠れ下に降下し、海から各地へと逃げる船を含めると全部で10隻にも及ぶ。

表向きの、アルビオンからでる脱出艇の1隻に着く。

「あ、あなた方はトリスティンからの大使の方々!早く船へ、もうすぐでますので、早くお乗りに!!」

船員に促さ船に乗る。

「ところで」と言い、俺が背負っている護衛の方を見る。

「そのことで、船長とお話がしたいのですが」

ミス・ヴァリエールが、正直に何も知らない人たちの前で話し出す前に、先に言っておく。

「・・・わかりました。どうぞこちらへ」

うん、いい演技だ。

スムーズに物事を行かせる為、この船員には事情が知らされている。

船員に先導され、俺たちは船長室へと行く。

船長室にいたのは、船長・副船長・護衛の3人だ。

ちなみに、船長だけが唯一の本物で、副船長はペリーさん、護衛はウェールズ様の変装だ。

「なにか、話があるようだね」

船長が予定通りに尋ねてくる。

「お初にお目にかかります。私はトリスティンより、大使としてはせ参じた、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、申します」

と、目の前にいる3人ともが知っている事実を言い続ける。

ワルドが裏切って、偽・ウェールズ様を殺害して、ワルドが護衛の方を吹っ飛ばして、ワルド撃退して、ここに至る、と言う説明をしだす。

今、この場で驚いているのはグラモンだけだ。

「ふむ、つまり、『君達』と一緒に来たトリスティン大使ワルド子爵は裏切り者だった、と」

「はい、その通りでございます。しかし!私達は始祖に誓って、裏切り者などではございません!!」

一応、あまりに素直にこちらの話を信じられると、逆に怪しいと言う事で、こちらに疑いの眼差しを向けてくる御三方。

しばらく船長は目を瞑り、考えるふりをする。

「ふむ。今、ウェールズ殿下の護衛に付いていた者を治療している。そのものが目をさまし、話を聞き出し次第、追って沙汰を申す」

「わかりました」

「副船長、客人たちを部屋にお連れしろ」

「はっ」

俺たちは部屋から連れ出され、二組に分けられる。

一組は副船長 (ペリーさん)とミス・ヴァリエール・平賀君・キュルケさん・グラモン。

二組目は、護衛(ウェールズ様)と俺・エルザ・ラコイ・シェリルさんだ。

ある程度歩き、若干離れた別々の部屋へ入れられる・・・ふりをする。

平賀君達は、本当に部屋に入れられたが、俺たちは今来た道を戻る。

「今の所、君の計画通りと言うわけか」

「そうですね、ウェー「ふむ、今後僕を名前で呼ぶのはまずいな」・・・なんとお呼びましょう」

「ふむ、ウィルと呼んでくれ」

「では。今の所、計画通りですね、ウィル様。唯一の予定外は、護衛の方の気絶でしょうか」

後ろから副船長に扮したペリーさんが追いついてくる。

「では、ウィル様。こちらに」

「うむ」

気絶している護衛の方のいる部屋に入り、目覚めるのを待つ。

「こ、ここは」

護衛の方が目を覚ます。

ちなみに俺達は、ややこしいことにならないように隠れている。

「やあ」

「ウ、ウェールズ様!!」

「目が、覚めたようですな」

「ぺ、ペリー殿まで!!・・・そうか、ここはバルハラ、か」

まあ、あの世だと勘違いするのも無理はないかな?

「さて君は「も、申し訳ありませぬ!!ウェールズ様!!」・・・ふむ何について謝っているのかな?」

「わ、私はウェールズ様の護衛でありながら、ウェールズ様を守ることも出来ず。まして、逆賊、ワルドを討つことも出来なかった。ウェールズ様に顔向けできませぬ」

・・・ちょっと、悪いことしたかな?さすがに。

「そのことなんだけどね、クリス殿」

「はい、ここに」

「なっ貴様は!!トリスティンの!!」

まあ、ワルドと同じトリスティン出身だから疑われても何もいえないし、敵意を向けられてもしょうがない。

「落ち着きたまえ、彼らは敵ではない」

「ど、どういうことですか殿下」

そして、今までの経緯を説明する。

 

説明が終わり、急に黙った護衛の方に「申し訳ない。ワルドが敵だと証明する手段として貴方を利用してしまって」と謝罪する。

すると、

「いいえ、私は嬉しい。ウェールズ様が生きておられる。これほどまでに喜ばしいことがほかにあろうか、クリス・ド・プルトン殿、謝られる必要はございませぬ。ウェールズ様私は・・・いや、我等家臣一同アルビオン王家に忠誠を誓っておりまする。アルビオン王家が生き残るために、我等に嘘を付く必要があるのなら、これからもどうぞお付になって下さいませ。アルビオン王家に必要とあらば、我等は命を差し出すに異存は御座いませぬ」

うるうるとした目で、ウェールズ様を見つめる護衛の人。

「そうか・・・ありがとう」

同じくうるうるとした目で見つめ返すウェールズ様。

まあ、感動的な場面なんだろうが・・・ちょっとな。

 

その後護衛の方改めダムトさんも交え、色々話した。

ちなみに、ウェールズ様達がここにいるのは一部の人しか知らない。

多くの人に知られると、それだけでばれる危険が高くなると判断したからだ。

他の知らない人達には「詳しくはいえないが、私を、アルビオン王家を信じてほしい」みたいなことを言ってウェールズ様が従わせていた。

 

 

 

 

45

 

 

 

「ミス・ヴァリエール殿。詳しい事情はダムトから全て聞いた」

先ほど、ワルドの件を話し終え、ミス・ヴァリエール達を呼び出し、話をしている。

話の内容を率直に言うと「全部上に報告していいよ」だ。

まあ、話をしている時ちょくちょく「トリスティンから裏切り者が~」とか「大変申し訳なく~」だとかミス・ヴァリエールは言っていたが、そんなことはどうでも良い。

今重要なのは『ジェームズ1世』並びに『ウェールズ・テューダー』が『死亡』したと言う事を広めてもらうことが重要なのだ。

ただ、アルビオン貴族王族派が譲歩などすると不自然すぎるので、非戦闘員の受け入れを条件に出した。

まあ、ミス・ヴァリエールにはそのような権限がないので、トリスティン王家には事後承諾みたいな形にはなるのだが。

 

そして、

「さて、これからの話をしようか」

ウェールズ様改めウィル様が言う。

ウィル様と、他の各隊の隊長と、王族派に残ったお偉いさん達が今後についての話し合いの時間となった。

議題はもちろん『レコン・キスタ』の今後の行動だ。

さて、邪魔者になる前に出ていくか。

 

・・・

 

「さて、今後レコン・キスタが攻め入るとしたら何時だろう。クリス君」

「・・・いや、あの」

ここにいる皆さんが黙って『じいっ』と見てくる。

「?なんだい」

「何故、私に聞くのですか?」

いや、ホント。

「え?君の事だから何か考えがあるのではないかい?」

無い!!本当にない!!

どうしよう。

もしここで、「ありません!!」なんて言って責められでもしたら・・・

その可能性も無くはない・・・かな?

とりあえず、

「すみませんが、私は今回の政治的な事を殆ど知らないのですが」

あらかじめ、断りを入れておく。

「トリスティンとゲルマニアの結婚式は何時行われるので?」

何とかして、考える時間を稼がなくては!!

「ふむ、アンリエッタ姫からの手紙では、約3月後と書いてある」

3カ月後か・・・何の参考にもならないな。

「結婚式には、アルビオンを打破したとされるレコンキスタも呼ばれるでしょうね」

呼ばれる・・・よな?自信ないが。

「そうだね。まず、アルビオン側からの代表が行くだろうね」

う~む、

「お聞きしますが、今、混乱しているアルビオンをまとめ、トリスティンに攻めるとしたら3月で足りますか?」

ここら辺は本当に分からん。軍事関係の事なぞ全然わからんぞ。

「ふむ、そうですな。本来ならば、もう少し時間がほしい所でしょうな、5万もの軍勢をまとめるにあたって3月は時間が少ないでしょう」

恐らく、軍関係の人なのだろう。俺の問いに答えてくれるが、最後に「ただ」とつける。

「ただ、レコン・キスタの統率力では3月もあれば・・・と言ったところでしょうな」

ふ~む『結婚式にぎりぎり攻め込む準備が出来る』と言う事か。

「ゲルマニアとの軍事同盟は、結婚式が終わった後に組まれるんですよね?」

それはつまり・・・ってことでいいのかな?

「ふむ・・・つまり君は結婚式直前にレコン・キスタが結婚式直前に襲撃する・と?」

そうウィル様が言うと周囲から「おおっ!」「なるほど!」「流石クリス殿!」と言う声が上がる。

あれ?俺じゃないよ?ウィル様が言ったんだよ?

その後「だとすると効果地点はタルブか」「しかしタルブ周辺に兵を配置するとばれてしまうぞ」「タルブ村を中心とした各地に散ろう」等々。

あっという間に話が決まっていく。

・・・俺を置いて。

 

話は決まり船はラ・ロシェール付近まで来た。

「さて、もうすぐラ・ロシェールだ。もうすぐお別れだね」

「申し訳ありません」

『ウィル様がどこに身元を隠すか』で、何故か俺の近くと言う案が出たが、流石にそれは丁寧にお断りした・・・と、言うより、後ろから『断れ』と言う念が後ろにいる3人から出ていた。

その念の持ち主はもちろん、エルザ・ラコイ・シェリルさんの3人だ。

無言でこちらをじいっと見てくるのだ。こう、自分たちを棚に上げ、冷ややかな目で。

まあ、まさか『君達も、十分厄介ごとだよ?』なんて言えないし。

 

「ダムト、後は任せたよ」

「っは、ウィル様。必ずや使命を果たして見せましょう」

「では、クリス殿。これを」

そう言いウィル様は俺に書状を2通渡す。

この書状、1通はアンリエッタ姫殿下に、もう1通はマザリーニ枢機卿宛だ。

アンリエッタ姫殿下には、死に行く者が恋人に送る最後の文。

マザリーニ枢機卿には、今後のレコンキスタによるトリスティンの危険性、ダムトを『アルビオン生き残り代表』とし、秘密裏にそちらに渡らせると、記した文。

本来ならミス・ヴァリエールに渡すべきものを何故か俺に渡される。

まあ『ダムトさんが実は持っていました!』とか『乗り合わせたアルビオンの者が持ってました!!』では怪しすぎると、シェリルさんやキュルケさんはトリスティン国民ではないので論外。まだ『俺が実は直前に渡されていました!!!』の方が信憑性があるとウィル様方の結論だ。

ああ、何故俺なのだろう。

本当に、何故俺なのだろう?

「確かに承りました」

顔は平静を装いながら心で泣き受け取る。

何故かうまく回らない頭で『今後』の事をどうするか考えようとしたときにウィル様が

「そういえば、君ともし連絡を取るときに何らかの用語を考えないといけないね」

と、言い出した。

「用語、ですか?」

「ああ。恐らく、連絡を取るときにはダムトを通じるだろうからね。そのまま『クリス』と言おうものならばれてしまう可能性があるからね」

そうか、俺はこれからも彼らに関わらなければいけないのか。

あ~、また厄介ごとが。

いや、今までの厄介ごとは俺の都合?に近いものがある。

これは、国の存亡に関わることだから、しょうがない・・・しょうがないんだよな?

しかしまあ、またか・・・

 

 

 

 

 

46

 

 

 

 

「ふむ、君の呼び名は・・・そう『知将』!!どうかね?」

なんだかもの凄くいい笑顔で言ってくるウィル様。

「はあ、知将ですか」

ウィル様が俺のいわゆるコードネーム?を決める。

周囲からは「おおっ、いいですな」とか「なるほど、まさしくですな」だとか言っている。

知将って、ちょっと過大評価のような、それに一体何時から俺は将に?それに、『ウィル様』にそう言われるってことは、アルビオン王国側と勘違いされる可能性も・・・

ツッコミ所は探せばまだ出てきそうだが。

まあ、いいか・・・いいのか?

今後俺は秘密裏?に知将と呼ばれる立場になるのか・・・

「だめかい?」

恐らく顔に出ていたのだろう、ウィル様に尋ねられる。

「いえ、そんな。ウィル様直々につけられたのです。不満など恐れ多い」

まあ、この世界ではそう言った二つ名が当然のように使われているから、問題ないかな?

にしても今更ながらだが、アルビオン王家に関わるとはなあ。

翼人に吸血鬼にガリア王家にエルフと全部が全部大ごとだと言うのに、この上更に大ごとに関わるとは。

と言うか、翼人のラコイは他のに比べるとかすむな。

「それでだね、もう一つ頼みがあるんだがいいかね」

「もう一つ、ですか」

もう一つとな?

厄介ごとか?厄介ごとなのか?

「その、僕の友になってはくれまいか」

友か、それはまたかなりの厄介ごと・・・ん?友?

「『友』ですか」

ん?それってつまり・・・

「えっと、それはつまりウィル様のご友人に私がなると言う事で?」

「ああ、その通りだ。恥ずかしながら僕には友人と呼べるものがいなくてね」

まあ、王族だからな。友人なんてそうそう簡単に作れる立場では無かったろうに。

「いや、恐れ多い。私などがウィル様のご友人等と」

「やはりダメかい?」

どこか寂しそうにウィル様は呟く。

「いや、その・・・」

う~む、何と断ればいいのか。

「私は友人に礼を取るようなことは致しません。それでもよろしいですか?」

これなら、大丈夫だろう。

まあ、無礼者!!とか言ってこられると困るがしょうがない。これ以外いい案浮かばないし。

「ふむ。確かに友人に畏まるのは不自然だね。ではこれからは『様』は要らないよ?クリス」

そうそう、畏まるのはって・・・通ったよおい。

「そ・そうですか?では失礼して・・・」

本当に大丈夫なのだろうか?と思わず周囲を見渡すが、目が合うものにことごとく頷かれる。

えっと・・・

「これからよろしく。ウィル」

「ああ、クリス。これからよろしく頼むよ」

そう言いお互いに握手をする。

その瞬間周りから『パチパチパチパチ』と拍手が・・・パリーさんなんて涙ぐんでるよ。

・・・今度は王族と友になるとか。

本当にますますわからないな、この世界は。

 

その後、部屋にいるとペリーさんが話をしに部屋にやってくる。

話の内容は「ウィル様のことで」と切り出されたとき「ああ、やっぱり『立場を考え、少しは自重しろ』と釘でもさしに来たのかな?」と思っていたが・・・

 

「・・・で、あるからしてウィル様は王族ゆえに幼少のころから王族としての教育を常に受け臣下とお話をされるときにも王族として接しなくてはいなく年近い者もおらず真に心を許せるような人が母君しかおらずしかもその母君もウィル様が10に満たない時に病でお亡くなりになられてしまい今まで王族ゆえに心寂しい時を過ごしてきましたが皮肉にもレコン・キスタと言う者どもが現れた結果悲しきかなアルビオン王族と言う立場を追われてしまいしかしまた皮肉にも王族ではなくなった結果アルビオン貴族でもなく敵方ではないクリス殿と言うご友人を作れる立場になりまして・・・」

 

・・・

 

まあ

 

要するにだ

 

『ウィル様を頼む』と言う事なのだろう。

 

「・・・つまり今の性格になられたのは幼少期における状況と教育と周りの環境により致し方なくしかし心優しく皇太子として王族として正しい存在であろうとした結果でありさらには・・・」

 

要約すると、素直になれなくなったのは子供のころに色々あったからだと・・・てか長っ!

さっきから延々とペリーさんによる『ウィル様の心境』とでも言うべき話が続いている。

たまたまだが、エルザ・ラコイ・シェリルさんたちの立ち位置がペリーさんの後ろになって本当によかった。

物凄いうんざりした顔のエルザ。

苦笑いしたラコイ。

なんて言うか、オーラ?そう嫌そうなオーラを醸し出しているシェリルさん。

俺も、顔には出てはいないが内心うんざりしていた。

と、言うわけで・・・

「あの」

「・・・であるからしてウィル様は国王閣下と言う理想の王となるべく日々精進しておいでなのであって今回におけるレコン・キスタの発生原因は・・・」

「あの!!」

「つまり何が言いたいのがと言いますと「あのっ!!!」はっ!少々熱くなりすぎましたか。それでクリス殿?何でございましょう」

「いえ、あの、その、えっとペリー殿。あなたの思う気持ちは良くわかりました。私自身ウィル様の友人として日々精進し、ウィル様の友人とし恥ずかしくないよう努力するつもりです」

ペリーさんの話を中断させ話を終わらせる。

「おお!!ありがとうございます。しかしですな貴方は何も意識なさらずただ普通の友人とし、ウィル様とお付き合いしてほしいと思っております」

思わず俺は「えっ?」と声が出る。

そうすると今までの熱い口調はなりを潜め、どこか遠くを見るような目をして語りだした。

「いままで、ウィル様・・・いえ、アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーとして、決して表には出しはしませんでしたが、内心は大変さびしい思いをしていらしたことを容易に想像できます。ですが皮肉なことにレコン・キスタにより、『皇太子』と言う肩書を奪われ、そして皇太子ではなくなったからこそ『友』が出来ました。どうかクリス殿、ウェールズ様をよろしくお願いします」

そう言い、ペリーさんは俺に向かって頭を下げた。

う~む、どうやら周りの方々御公認のご友人となっちまった訳だ。

「はい、これからは『友』として、末永くお付き合いをしていきたいと思います」

なんか、言い方間違ったな。

 




これでにじふぁんにのせたのは終了。
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