この素晴らしい世界に傭兵を! TSR   作:ボルテス

10 / 16
予告通りヤツが出ます。もちろん、皆さんが大好きなベルディアさんも登場しますよ!


九話 この廃城にモフモフを!

「…つまり、私はカズマ達の侵入がバレて、廃城から脱出する際に爆裂魔法を撃てばいいのですね?」

 

 クリス様の頼みとは、幹部討伐のための騎士団が到着するまでに、城の内部構造及び、敵の規模を調べるのに付き合って欲しいというものだった。

 

 何でも、お偉いさんに無茶を言われたギルドの職員に泣き付かれたらしい。

 俺達はクリス様の案内でとある洞窟へと向かっていた。

 

 廃城に忍び込む前に、クリス様が俺達に見せたい物があるらしい。

 一言で説明すると、極めて効果的に敵の戦意を喪失させる装備だとか。

 

 今回の作戦概要は、俺とクリス様が廃城に潜入して敵の規模と内部構造を把握した後、速やかに撤退するというものだ。

 めぐみんの言葉通り、万が一にも見つかった場合。

 フラッシュの魔法を封じ込めたマジックスクロールを使い、城の近くで待機しているめぐみんに合図して爆裂魔法を撃ってもらい、混乱している内に逃げる予定だ。

 

「うん、そう言う事になるね。…おっと、もう着いたね。ここだよ」

 話している内に小さな洞窟に着いた。

 クリス様は懐から、携帯型の小型のランプを取り出すと、次に火打ち石をポケットから取り出す。

 それを見た俺は、すかさず火の初級魔法を唱えた。

「『ティンダー』ッ!」

 ジュボッという音と共に、ランプに火が灯る。

 

「おお、キミ気が利くね! ありがとう」

「いえ、こちらこそ。お役に立てて光栄です」

 軽く微笑みながら言ったクリス様に対し、俺は優雅に一礼する。

 

 そんな紳士的な俺を見て、めぐみんが尊敬するような目を俺に向け。

「カズマは、クリスといると態度が変ですね…」

 おっと、これは珍獣を見る目でしたか。

 

 そんな事より、今はクリス様のお美しい後ろ姿をこの目に焼き付けなければ。

 クリス様は、ポケットに火打ち石を戻すと、ランプを持ち直す。

「じゃあ、はぐれないように着いてきてねー」

 

 俺達は先頭をゆくクリス様の隣に並び、洞窟の中へと入る。

 洞窟の外とは違うひんやりとした空気に触れながら暫く進むと、やがて洞窟の最深部まで辿り着いた。

 

 クリス様がランプの光で辺りを照らしながら、左右の壁に備え付けられた大型のランプを指差し。

「ねぇ、キミ。また火をくれないかな?」

 

「了解です、クリス様。『ティンダー』ッ! 『ティンダー』ッ!」

 大型のランプに火が灯り、洞窟の中を明るく照らす。

 俺達がいたのは、洞窟という割には綺麗な空間だった。

 

 そしてその中央には、布を掛けられた人より一回り大きい何かが鎮座している。

 クリス様は洞窟の中央まで歩いて行くと、その布をバサッと取り、不敵な顔で。

 

「これこそが、着ぐるみ型魔導汎用兵器…。通称、ボン太くんだよ…!!」

 

「…か、可愛い!!」

 めぐみんは紅い目を輝かせ、ボン太くんに駆け寄ると、頬を緩ませただらしない表情でボン太くんをペタペタと触りまくっている。

 

 その犬なのかネズミなのかよくわからない頭に、ずんぐりとした二頭身。

 胸には蝶ネクタイを付け、そのくりくりとした大きな瞳は小動物を彷彿とさせ。

 

 そして、頭にはヘルメットを被り、戦闘用のタクティカルベストを着ている。

 ちなみにボン太くんとは、日本で有名だった、某遊園地のマスコット・キャラクターだ。

 

 でもなんで、ボン太くんがこの世界にあるんだ?

 つーか、着ぐるみが兵器とか…。

「…クリス様、これをどこで?」

 

「最近潜ったとあるダンジョンの最深部で見つけたんだよ。でも動かし方が分からなくて…」

 クリス様の言葉を聞きながら、ボン太くんを調べていると首の少し下にレバーを発見した。

 

 何かこの構造に見覚えが……。

 試しに引っ張ってみると、ボン太くんの背部がスライドしてコックピットらしき物が現れた。

「!?」

 

 それを見ためぐみんが杖をカタッと取り落とし、呆然とする。

 その反応は、好きだったマスコット・キャラクターの着ぐるみから、おじさんが出てきた時の子供の反応に似ている。

《初期設定を開始します。 姓名、階級、認識番号を》

 

 俺が立ったまま、ピクリとも動かなくなっためぐみんを見ていると、突然ボン太くんが機械的な声を発した。

 まさか、AIまで積んでるのか!?

 こ、こんなぬいぐみに無駄な技術力を……! 

 

「そこまではあたしでもできたんだけど、何を言ってるか分からないし、操縦方法も分からないから、動かせないんだよね…」

 

 クリス様がお手上げだと言いたげに肩をすくめる。

 …しかし、このぬいぐるみ何だかASみたいだな。

 首の後ろにコックピット開放レバーがあるし、操縦系統も見た感じソックリだし…。

 

 ちなみにAS。正式名称アーム・スレイブとは、俺がいた世界で絶賛大活躍中の全長八メートル前後の人型兵器のことだ。

 昔、研修を受け、搭乗資格を取得したので動かすぐらいは問題ない。

 

 俺は、そのAIらしき低い男の声の指示に従う事にした。

「佐藤和真軍曹。認識番号、 iー9029」

《ーーー登録完了。 あなたを以後、軍曹殿と呼称します。ご命令を》

 

 ダメ元で言ってみたのだが、あっさりと認証されてしまった。

「えっと…。 クリス様、何だか動きそうです」

「おお、やるねキミ! じゃあ動かしてみてよ!」

 

 そう言って興奮気味に、はしゃぐクリス様。

 …ああ、クリス様。はしゃいだ姿も素敵です!

 流石は俺の女神様…!

 

 動かす前に、ボン太くんの背部から俺が丸見えなので、ハッチを閉める事にした。

「ハッチ閉鎖」

 

《ブラジャー。 ハッチ閉鎖。メインシステム及び、ボイスチェンジャーを起動します 》

 

 …い、いや、そこは格好良くラジャーだろ。

 作った奴の顔を見てみたい.....。

 ハッチが閉鎖され、正面のスクリーンに周囲の景色が投影される。

 

 クリス様はボン太くんをワクワクとした表情で見ており、未だめぐみんは杖を取り落としたまま、厳しい現実を受け入れられなかったのか呆然と突っ立ったままだ。

 

「ーーーふもっふ!」

 

 そんな対象的な二人をボン太くんのモニター越しに見ながら、俺は妙な起動音と共に立ち上がった。   

                 

 …いや、ふもっふってなんぞ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在地は廃城の二階。

 俺とクリス様は、無事廃城の潜入に成功し、順調に廃城の内部構造と敵の規模を把握していた。

 

 めぐみんは廃城から、少し離れたところで合図があるまで待機している。

 見張りのアンデッドもいたが、ボン太くんのセンサーで感知して迂回した。

 

 豊富なセンサー類に加えボン太くんには、パワーアシスト機能があるらしく、着ていても疲れる事はなかった。

 俺は隣で潜伏しているクリス様に話しかける。

 

「ふもっふ。(順調ですねクリス様)」

 ……もふもふ言いながら。

 

 この妙なボイスチェンジャー機能をオフにしたら、ボン太くんが動かなくなるので、仕方なくオンにしたままなのだ。

 

 めぐみんには、『ふもっふ』としか聞こえないそうだが、なぜかクリス様はちゃんと俺の言葉が理解できるらしい。

 

 これも愛ゆえだろう。

 そう考えた俺は、クリス様の白く美しい手を、ボン太くんのモフモフした手で握りながらキメ顔で。

 

「ふもっふ、ふもっふ。(クリス様、俺と結婚しましょう)」

「ええ!? お、お付き合いもしてないのにいきなり結婚を申し込むの!?」

 

「ふもっふ。 ふもっふ!(大丈夫です。俺はクリス様の事を愛してますから!)」

 

「あ、愛してる!?」

 耳まで真っ赤にしてあわあわと、狼狽えるクリス様。

 そんな姿をモニター越しに見ながら、俺はふもっと頷く。

 

「ふもっ。(そうです)」

「じじじじっ、実はこの廃城に来たのはもう一つ理由があるんだよ!?」

 

 俺は無理やり話題を逸らそうとするクリス様を、慈しむような目で眺めながら、続きを促した。

「ふもっふ?(理由?)」

 

「…ふ、ふう……。この城にいる魔王軍幹部が持っているらしい、透視ができるメガネを盗みに……」

 

 大きく息を吐いて、ようやく落ち着いてきたのか、そう途中まで言いかけたクリス様。

 その言葉を途中まで聞いた俺は、真顔になると素早くボン太くんのAIに語りかける。

「…この城のモンスター達を突破して、幹部のいる部屋に向かう事はできるか?」

《肯定。本機のスペックなら可能と判断》

 

 俺はそのボン太くんのAIの言葉に、潜伏スキルを解除して立ち上がると、近くを巡回していたアンデッドモンスターに向かって歩いて行く。

「えっ、ちょっとボン太くん!? 見つかっちゃうよ!」

 

 俺は声を潜めて言ったクリス様の言葉を聞かなかった事にして、ボン太くんの腰から電撃の魔法が封じ込められた、スタンロッドを引き抜いた。

 

 突然現れたボン太くんに、アンデッドモンスターは、一瞬呆けた顔になるが。 

「か、かわ…じゃない…。 し、侵入者だあああああーーーっ!」

 

 侵入者だと気づいたアンデッドモンスターが、大声で叫んで仲間を呼んだ。

《敵モンスター、推定三十体、接近中》

 ボン太くんのAIが警告する。

 

 透視ができるメガネとか、そんな素晴ら…けしからん物は俺が回収せねば……!

「ーーー五分で片付けるぞ!」

 

《ブラジャー》

 

 ………次の瞬間、俺は勢い良く跳躍すると、モンスター共に襲いかかった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃城はモンスター達の悲鳴で支配されていた。

「た、助けてくれええええええええーーーっ!」

「ま、魔王さまあああああああっーーーっ」

 

「し、死に神……! も、もふもふな死神だあああああーーーっ!」

「ぼ、僕は死にましぇーん!」

「ふもふもふも!(おらおらおらっ!)」

 

 俺は悲鳴をあげるアンデッド達に高速で接近し、スタンロッドの一撃で次々と屠っていく。

 …圧倒的、圧倒的じゃないかボン太くん!

 

「ふもっふ…! (次はお前だ…!)」

「く、くるな! くるなあああああああああっ!!」

 俺は床を這いながら逃げるアンデッドに素早く接近。

 スタンロッドを振り下ろす。

 

 スタンロッドの直撃を受けて、アンデッドの頭部がグシャと潰れた。

《警告! 八時方向から、複数の弓による狙撃を感知!》

 ボン太くんのAIが警告。

 

「もっふる!(分かってるよ!)」

 俺はその攻撃の射線を見切り、ステップを踏むように回避する。

 動きを止めずに、そのまま跳躍。

 

 弓を射ていたアンデッドモンスター達の前まで移動し、スタンロッドでまとめて吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたアンデッド達は周囲に腐肉を撒き散らし、ピクリとも動かなくなった。

 

《戦域内の全高脅威目標の撃破を確認。索敵モードへ切り替えます》

 AIの報告を聞いた俺は高いテンションで呟く。

 

「ふもっふ、ふもっふ……!(出て来なければ、やられなかったのに……!)」

「な、なんてデタラメな性能……!」

 クリス様の驚いている表情が印象的だった。

 

 驚いた顔も素敵ですよクリス様!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくここまで辿り着いたな、冒険者よ! 俺はああああああっーーー!?」

 現在俺達は、廃城の最上階。

 つまり魔王の幹部ベルディアの部屋へと辿り着いていた。

 

 そんな俺達の目の前には、ボン太くんを見て激しく動揺している首無し騎士の姿が。

「…そ、その愛らしい。 い、いや、そのネズミのような生き物はなんなのだ?」

 

「ふもっふ。(ボン太くんだ)」

 やはりボン太くんの言葉は理解できないらしく、ベルディアはその視線をクリス様に向け。

 

「な、何と言っておるのだ?」

「…ボン太くんだって」

 ベルディアの問いに、律儀にも答えたクリス様。

 

「なら、ボン太とやら…」

「くんを付けなよ、デコ助野郎!」

「で、デコ助野郎!?」

 

 クリス様の言葉に、ショックを受けたらしいベルディアが自分の首を落としそうになり、慌てて持ち直す。

「ふもっふ、ふもっふ。(お前の部下は、全滅した。観念してエロメガネを出せ)」

 

「部下なら全滅させたから、透視するメガネを出せって言ってるよ」

 ボン太くんの言葉をクリス様がそう翻訳した。

 

 するとベルディアは視線を忙しなく彷徨わせ、動揺しながら。

「な!? そそそそ、そんな物、俺は知らんぞ!?」

 

 この反応を見るに、間違いなく心当たりがあるのだろう。

 魔王の幹部の手に、そんなすば…けしからん物がある事をよしとしない正義感の強い俺は、ベルディアに飛び掛かった。

「ふもっふ!(問答無用!)」

 スタンロッドを構え、ベルディアへ接近。

 もふもふなボン太くんの腕から無数の打撃を放つ。

 

 だが、流石は魔王軍幹部。その攻撃を全て大剣で防いでみせた。

「なるほどな…。 ただ可愛いわけではないという事か……」

 

 ベルディアが俺を見て、感心したように呟いた。

「…ふ、ふもっふ…。(…な、何言ってるんだコイツ……)」

 

《対象の脅威判定が更新されました。 奴はケモノナーの可能性が高いと推測。 色んな意味で危険です。 即時撤退を推奨》

 

 俺がベルディアに若干引いていると、ボン太くんのAIが警告してきた。

 あ、アイツ、ケモノナーなのか…。

 …なら、さっさとエロメガネを奪って撤退を!

 

「ふもっ! ふもっふ!(クリス様! スティールでエロメガネを!)」

 ベルディアの背後に回り込み、隙が出来るのを狙っていたクリス様が叫ぶ。

 

「了解!『スティール』ッ!」

「ふもっふーーー!(『スティール』ーーーッ!)」

 もふもふなボン太くんの右手には、何の感触もない。

 どうやら失敗したようだ。

 

 俺がクリス様の方を確認すると、その手にはピンク色のメガネが。

「き、貴様…! 俺のトレジャーを返せ!」

 ベルディアが肩を怒らせ、クリス様に大剣を振り下ろした。

 

 クリス様は咄嗟にダガーを抜こうとするが間に合わない。

「くっ!」

 焦った顔のクリス様。

 

 恐らく、あの攻撃に当たればタダでは済まないだろう。

 それを見た俺の脳裏に浮かんだのは、あのハンサムな世界で、最後に丸◯製麺であらゆるトッピングを、とだけ言い残して息を引き取ったクリス様の姿。

 

 前回は幻だったが、今回は……。

「ふ、ふもっふーーーっ!!(ク、クリス様ああああーーーっ!!)」

 

 俺はボン太くんのパワーアシスト機能をフル稼働させ、クリス様の前に立ち塞がると、そのまま盾となった。

「ふもっふーーーっ!?(ぐああああああっーーー!?)」

 

 ベルディアの斬撃は、ボン太くんの超アラミド繊維を貫通し、胸部フレームに当たり、金属が軋む歪な音を立てた。

 悲鳴を上げる俺を見て、ベルディアとクリス様が悲痛に叫ぶ。 

 

「「ぼ、ボン太くーーーん!!」」

 

《損害報告! 胸部装甲にクラスAの損傷。これ以上の戦闘続行は不可能と判断。 機を捨て自爆させる事を推奨します》

 ボン太くんのAIが淡々と被害報告をした。

 

「お、俺は…。 俺は何て事を……!」

 ベルディアは床に両膝を付いて、何やら呆然としている。

 …俺はそんなベルディアに組み付つき、自爆機能を作動させた。

 

「ぼ、ボン太くん…。 お、俺を許してくれるのか……?」

 ボン太くんに抱き着かれたベルディアが、何を血迷ったのかぬいぐるみ相手に許しを乞っている。

 

《軍曹殿。 本機は約百八十秒後に自爆します。速やかに脱出を》

 俺はAIの指示に従い、ボン太くんから脱出し、青い顔でボン太くんを見ていたクリス様に駆け寄った。

 

「き、キミ大丈夫!? け、怪我は!? 我慢とかしてない!?」

「問題ありません。…それよりクリス様。 ボン太くんの自爆機能を作動させました。ここは危険ですから早く逃げましょう」

 

「じ、自爆機能!? そんな…!」

「じ、自爆だと……! というか、誰だ貴様! ま、まさかボン太くんの中に人間が乗っておったのか! クソッ、油断したわ…!」

 

 後ろで、俺の存在に気づいたベルディアの動揺した声が聞こえた。

 そして、ベルディアと同じく動揺してるクリス様から、二メートル程離れた地面には、エロメガネが転がっている。

 …時間がない。本当に本当に残念だが諦めよう。

 俺は顔色を悪くしたクリス様を、無言で肩に担いで走り出した。

 

「きゃっ!? ち、ちょっと待って…!」

「ええい…! は、離せ! 放すのだボン太くんよ…!」

 

《ーーーくたばれ、首無し野郎》

 

「!?」

 

 外部スピーカーをONにしたボン太くんのAIが、淡々とした声を発し、それに驚いたベルディアが言葉を失う。  

「は、放してよ! ぼ、ボン太くん! ボン太くんが!!」

 

 肩に担がれたクリス様が暴れながら、悲痛な叫び声を上げるが俺はそれに構わず走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 廃城を脱出して、すぐに聞こえてきたズドンという爆発音に足を止める。

「あ、あああああっ……!」

 

 クリス様は俺の肩から降りると、力なく地面にペタンと座り込んだ。

 俺は短い付き合いだった戦友に敬意を評し、廃城に向けて敬礼をすると。

 

「あばよ、ダチ公ーーーっ!」

 

 スクラップになったであろう、もふもふな戦友に向けて熱く、熱く叫んでいた。

 …その後、ボン太くんを失った悲しみから立ち直ったクリス様に聞いた話なのだが。

 

 何でも、あんなバカげたスペックの着ぐるみの量産は不可能だという事らしい。

 現在の技術力では、模造する事さえ難しいのだとか。

 

 なら、何であんな物があるんだろうと首を捻ったが、考えた所で答えが出る訳でもないので、早々に考える事を放棄した。

 

 …本当に、あんなふざけた代物をどこの誰が作ったのやら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺がクリス様と廃城デートに出かけてから、三日後の朝。

「緊急! 緊急! 冒険者の皆さんは武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっ!」

 

 今日も三時間程しか寝ていない俺が、二度寝しようとした時に聞いたのは、迷惑な緊急の呼び出しだった。

 その呼び出しに渋々と装備を整え、街の正門へと向かう。

 

 俺が街の正門に着くと、なぜかケモノナーにして魔王軍幹部のベルディアがいた。

 だが、今日のベルディアは一味違う。…そう、二人に増えていたのだ。

 

 …流石は魔王軍幹部。ボン太くんの自爆攻撃に耐えただけでなく、分裂までするとは……!

 二人に増えたベルディア達は、自分達の首をズイッと同時に前に差し出し。

「「…俺は、つい先日、この近くに越してきた魔王軍の幹部の者だが……」」

 くぐもった声で言うと、ベルディア達の首が小刻みに震えだした。

 

 …何だろう、あれも何かの芸だろうか…。

 分裂したりと器用な事だし、案外昔は本気で芸人でも目指してしたのかもしれない。

 俺がそう考察していると、二人のベルディア達は。

「「毎日毎日毎日毎日っ!! おお、俺の城に毎日爆裂魔法を撃ち込んでいく頭のおかしい大馬鹿は、誰だあああああああーーー!!」」

 

 二人して、それはもう見事なキレ芸を披露した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回大破したボン太くんですが、その内再登場するかもしれません。
次の活躍に期待ですね。…と言っても、私が書くのですが。
が、頑張らなきゃ…!

ふも、ふもっふ!(では、また!)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。