この素晴らしい世界に傭兵を! TSR   作:ボルテス

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今回は思ったよりも早く投稿できました。

リメイクと称しながら、暫くリメイク前と変わらない話が続きますが、地の文などやセリフ回しは、リメイク前よりだいぶ良くなったと思っているので、そこに着目して頂ければなあと……。

すいません、言い訳ですよね。
それも、全部私の技量不足が原因です。
読者の皆様、どうか怠惰な作者をお許し下さい。


一話 この素晴らしいステッキに祝福を!

「……おいおいおい。本当に異世界だ。俺、本当にRPGみたいな世界に来ちゃったよ…」

 思わず呟いた俺の目の前に広がっているのは、レンガの家が立ち並ぶ、中世ヨーロッパのような町並み。

 

 いつもRPGゲームの中で見ていた光景がそこにはあった。

 もしかしたら、異世界は中世ヨーロッパ風であるべきだという、宇宙の真理やマニュアル本でもあるのかもしれない。

 

 俺は街中を行き交う人々の中から美人を求めて、視線を周囲へとくまなく向ける。 

「エルフだ! エルフがいる! 美人だし、エルフだよな! おお、獣耳の娘もいる! さようならブラック稼業! こんにちは異世界! 俺この世界ならのんびり生活できるよ!」

 

「………」

 俺は隣で呆然としているアクアを振り向き。

「おい、どうした。さっきからずっと黙ってるが、どこか具合でも悪いのか? …ま、まさか運悪くパーに……!」

 

「ああああああああああああああああああああーっ!」

 突然奇声を上げたアクアは、泣きながら俺に摑みかかってきた。

 

「うおっ! アレか、さっきの事怒ってんのか? 色々とご奉仕して俺を楽しませてくれって言うのは冗談だよ! 冗談だから!」

 

「それもあるけど! 私帰れないんですけど! 魔王倒しても帰れないかもしれないんですけど! どうすんの!? ねえ、どうしよう!? これから私どうすればいい!?」

 

 泣きながら取り乱し、自身の髪の毛をガシガシと掻きむしるアクア。

 そのここに来るまでの態度とあまりに違う痛々しい姿に、俺は持ってくる『もの』を間違えたかと軽く後悔する。

 

 本当に残念だ、黙っていれば凄い美少女なのに…。

 まるで、詐欺にでも遭った気分だ。

 

「まあ落ち着け。こういう時は、まず情報収集からだ。人が集まる酒場とかに行けば情報が手に入るだろう」

 どこかにギルド的な存在があるはずだ。それが、RPG世界におけるお約束という物だろう。

 

 …と言っても、ここは異世界なのだが……。

「何でそんなに......。そう言えばあなた傭兵だったのよね、それぐらいは当然なのかしら....。 あ、カズマ、私ことはアクアって呼んで。 一応私、この世界で崇められてる神様なの」

 

 言いながら後ろをバタバタとついてくるアクアと共に、俺はギルドを目指して歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルフのお姉さんにギルドの場所を尋ね、暫く歩いて行くと、かなり大きな建物に着いた。

 ここがギルドで間違いないだろう。

 生きるのにもお金がかかる。

 

 なので冒険者になって楽なクエストでも受け、金を稼いで、のんびりと釣りとかしながら暮らしたい。

 ゲームがないのが残念だが、まあそこは異世界なので仕方がないと諦めよう。

 

 ガラの悪いヤツに絡まれたら面倒だなと思いながら、ドアを開け、ギルドの中に入る。

 すると……。

 

「いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席へどうぞー!」

 ウエイトレスのお姉さんが、俺達を笑顔で愛想よく出迎えてくれた。

 

 笑顔が素敵ですねお姉さん、俺と結婚しませんか?

 アホな事を考えながら、アクアを引き連れ、真っ直ぐカウンターへと向かう途中で俺は、ハタと気づいた。

 

 もしかして金かかるんじゃ…。

 大体何かに登録したり、カードを作る際にはお金がかかるものだ。

 

「アクア。悪いんだけど、受付の人に冒険者登録に金がいるのか聞いて来てくれないか?」

「わかったわ!」

 

 アクアがノリノリで、へなちょこな敬礼をしてきたので、俺も敬礼を返してアクアを見送る。

 その間俺は暇になったので、アクアの尻をガン見しながら、暫く待つ。

 

 そうして、俺が有意義な時間を過ごしていると、やがて受付の人と会話を終えたアクアが、こちらにパタパタと駆けてきた。

 こいつ犬みたいだな…。

 

「どうだった」

「お金いるって」

 マジかよ、俺この世界の金なんて持ってないぞ。

 

「…いくらかかるんだ」

「一人、千エリスだって…」

「…お前、金持ってる?」

 

 俺は期待を込めてアクアを見るが……。

「ないけど……」

 …どうしよう、早速詰んだ。 何だよ、このクソゲー。

 だいぶ不親切だな、どうなってんの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやって登録手数料を調達するか考えるが、俺達はいい案が思いつかなかったので、一端ギルドから出ることにした。

 アクアが俺の方を見て、ポツリと呟く。

「…ねえ、私今晩のご飯はお肉がいいんですけど……」

 

「アホか! 一文無しなのにどうやって食うんだよ!」

 アクアが晩御飯の心配をし、俺が頭を抱えて、途方に暮れていたその時だった。

「ぐすっ、う、うう…」

 

 俺達のすぐ近くから、誰かの泣き声が聞こえてきた。

 アクアと顔を見合わせ、声がする方に視線を向けると、小さい女の子が手におもちゃのステッキを持って、泣きじゃくりながら歩いている。

 

 歳は五、六歳ぐらいだろう。おさげの髪の可愛らしい子だ。 

 俺達はその子の前まで行くと、しゃがんで目線を合わせ、努めてやさしい声で話かけた。

 

「どうしたんだ。よかったらお兄ちゃん達に話してくれないか?」

 その子は俺とアクアの顔を交互に見た後、手で涙を拭い。

 

「ぐすっ…う、うん。 えっとね、昨日の夜、パパがいつもいい子にしているご褒美だってお小遣いをくれたの…」

「…それで?」

 

「今日、パパがくれたお小遣いを持って、街に行ったの。そしたら、露店のおじちゃんに声をかけられて、『お嬢ちゃんは可愛いから特別サービスだ。この普段は十万エリスはする、なんでも願いが叶う魔法のステッキを今ならたったの一万エリスで売ってあげよう』って言われたの…」

 

 ……一気に胡散臭くなったな。

 俺達が黙って話を聞いていると、女の子は更に続けた。

「これで何でもお願い事が叶うと思って、早速家に帰ってパパに使ってみたの…」

 

 小さい子のお願いだ。きっとパパと一緒にもっと遊びたいとか、パパと結婚したいとかそんな微笑ましい願いだろう。

「何てお願いしたの?」

 そう聞いたアクアに女の子は、再び目に涙をウルウルと溜め。

 

 

「ぐすっ…。『パパ、イケメンになあれ!』って」

 

 

「「えっ」」

 思わず固まった俺達に構わず、女の子はなおも続ける。

 

「…パパがイケメンにならなかったから、私のやり方が悪かったのかなって思って何回も試したの…。…それなのに、それなのに…パパが……パパがイケメンになってくれないのおおおおおおっーーー!!」

 

 それ程、親父さんがイケメンにならなくて悲しかったのか、泣き叫ぶ女の子。

 そんな女の子の頭を、アクアが優しく撫でながら。

 

「…よしよし、パパがイケメンにならなくて悲しかったのね…。大丈夫よー。お姉ちゃんがついてるから。ほら、いい子だから泣かないで…」 

 

「…うん。そ、そしたらね、パパが『あ、ありがとう。俺が美人なママと釣り合ってない事を気にしてるのを知ってて、魔法をかけてくれたんだな』って言ったから、元気に『うん!』って答えたら、パパが用事を思い出したって言って、お部屋から出て来てくれないの……」

 

 悲しそうに表情を曇らせながら、そう言った女の子。

 お、親父さんも気の毒に…。

 きっと、この子は悪気などなかったのだろう。

 だが、子供は時に残酷だ。

 

「そ、そうなのか。お父さんは、しばらくそっとしておけば部屋から出てくるよ」

 俺の言葉にようやく女の子が泣き止み、満面の笑みを浮かべ。

 

「そうなの? 良かったー。 じゃあ、またパパにイケメンになる魔法かけてあげなくちゃ!」

 や、やめてやれよ……。

 

「…そうね。ずっと言い続けたら、いつか本当にイケメンになるかもしれないし、これからはパパが寝ている間に言うといいわ!」

 アクアはそんなフォローしたいのか、親父さんにトドメを刺したいのか良くわからない事を女の子に吹き込んでいる。

 

「うん、明日の朝に試してみるね!」

 アクアのアドバイスを聞いて、女の子が元気に頷いた。

 

 親父さんが気の毒だから、本当にやめてやれよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アクアと意気投合した女の子が、突然俺達の前を横切った野性のネロイドとやらを追い回し、疲れたと言ってギルドの陰で休憩していた時の事。

 

 日陰で涼んでいた女の子が、『お兄ちゃんにも、イケメンになる魔法をかけてあげるね!』と、太陽のように眩しい笑顔を俺に向けて言ってきた。

 

 その申し出を頬を引きつらせながら丁重に断り、俺の顔を指差し、腹を抱えて笑い出したアクアにデコピンをお見舞いして涙目にした後。

 

 俺はようやく女の子に、露店の男に騙されている事を伝え。 

 これから女の子を連れて、警察にでも行こうとした時に、俺はふと良い案を思いついた。

 

 俺を涙目で睨むアクアと共に、女の子に件の露店の男の所まで案内してもらいOHANASIをしたのだ。

 その結果、俺の華麗な交渉スキルにより、騙された分の金を女の子に返金させる事に成功。

 

 その際に露店の男が俺に、二万エリスを差し出してきたので、ありがたく貰っておいた。

 やはり良い事をすると気分がいい。これで手数料の問題は解決した。

 

 アクアの話では一エリス一円換算らしいので、今日の晩飯もなんとかなるだろう。 

「ありがとねーお兄ちゃん、お姉ちゃん!」

 俺達に何度も手を振りながら、去って行く女の子の姿を見送る。

 

「カズマ。子供っていいわね」

 ニコニコしながら、女の子に手を振り続けるアクアが俺にそんな事を言ってきた。

 

「…子供が欲しいなら、いくらでも協力するぞ」

 その言葉を聞いたアクアは、俺にゴミでも見るような目を向け。

 

「…ねえ、カズマ知ってる? それってセクハラよ。セクハラなのよ? 女神にセクハラとか、あんた天罰が落ちるわよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は再び冒険者ギルド。

 一番美人の受付のお姉さんの説明を聞きながら、俺の視線はある一部分に固定されていた。

 

 …凄い。いや、何が凄いとは言わないが。

 お姉さんの凄い部分でパフパフされたい。凄くされたい。

 アクアの俺を見る目が冷たいような気がするが、きっと気のせいだ。

 

 俺は悪くない、お姉さんが凄いのがいけないのだ。

 …あと俺、男の子だしね、仕方ないね。 

 俺が内心誰にでもなく言い訳をしていると、お姉さんが俺達に一枚ずつカードを差し出して来た。

 

「ではお二人とも、こちらのカードに触れてください。それであなた方のステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね」

 俺は仕方なくお姉さんの凄い部分から視線を外し、カードに触れる。

 

「ええと…。 サトウカズマさん、ですね。 筋力、生命力、器用度、敏捷性が全て平均よりも高いですね。 知力もそこそこ高いのと……。あれ? 凄いですね、幸運が非常に高いですね。ステータスがもう少しだけ高ければ、上級職にもなれたのですが……。このステータスなら基本職の《冒険者》か《アーチャー》、もしくは《盗賊》をオススメしますが、どうされますか?」

 

 上級職になれなかったのは残念だが、なれない物は仕方がない。

 元よりなかった物として考えよう。

 ゲームでもリアルでも職業選びは大切だ。

 

 ここは慎重に選ばなければ…。

 そう考えた俺は、慎重を期してお姉さんに質問することにした。

「その職業について、詳しく教えてもらってもいいですか?」

 

「はい。 基本職である冒険者は全ての職業のスキルを習得し、使う事ができます。アーチャーは弓による遠距離攻撃に特化した職業です。そして、盗賊はダンジョン探索には必須なんですが、地味な職種なので成り手があまりいません」

 

 どうしようか…。

 敵の射程外からセコセコ狙い撃つ方が楽だという安易な理由で、スナイパーをやっていた俺が選ぶのなら。

 

 無論、第一候補はアーチャーだ。

 だが、弓の射程などたかが知れている。

 となると、盗賊か…。

 

 でも、地味で成り手がないという話から推測するに、あまりモンスターとの戦闘に役立つ攻撃的なスキルが少ないか、対人向けスキルが多いのかもしれない。

 なら、俺が選ぶのはーーー

 

「冒険者でお願いします」

「え、冒険者ですか? その、よろしいのですか?」

「はい、大丈夫です」

 

「本当にいいの? 冒険者はスキル習得に大量のポイントが必要になるし、職業による補正もないから同じスキル使っても本職には及ばないわよ。 器用貧乏みたいな」

 

 即答する俺を見て、心配そうな表情を浮かべるアクア。

 …器用貧乏か。

 昔、教官にも似たような事を言われたな。

 

 確か、『カズマ、貴様は何をやらせてもパッとしない成績だな、ワザとやってるんじゃないか? ハハハッ!』だったか。

 

 ちなみにその後、その教官の部屋に忍びこんで、部屋にあったお宝ビデオに細工し、ハエの交尾やガチムチのお兄さん方が絡み合う少々ショッキングな映像に差し替えておいた。

 

 怒り狂う教官を思い出し、俺が昔を懐かしんでいると、アクアのカードを見たお姉さんが大声を上げる。

 

「はああああっ!? 何です、この数値!? 知力が平均より低いのと、幸運が最低レベルな事以外は、全てのステータスが大幅に平均値を超えてますよ!? 特に魔力が尋常じゃないんですが、一体あなた何者なんですか……っ!?」

 

 その声を聞いたギルド内が途端にざわめく。

 …おかしい、普通そういうイベントは俺に起こるんじゃね?

 べ、別に気にしてないけどな!?

 お姉さんに、全ステータスが平均よりも高いって言われたし!?

 

 極端に高いステータスが幸運しかないからって、全然気にしてなんかないんだからな!

 …もう、何なのホント……。

 実はあいつが主人公だったの…?

 

「なになに、私が凄いって事? まあ私くらいになればそりゃあ当然よね?」

 流石は一応女神だ。

 まあ、今の調子に乗って照れているアクアの姿は、俺がこの世界に来る前に見た神々しいオーラの欠片もないのだが。

 

 あの時のアクアを一言で表現するなら…。

 …そう、まるで女神のようだった。

 

「す、凄いなんてものじゃないですよ!? 高い知力を必要とされる魔法使い職は無理ですが、それ以外ならなんだってなれますよ? 最初からほとんどの上級職に…!」

 

 お姉さん、お姉さん。それってバカって事なんじゃあないですかね…。

 俺にバカ認定されているとも知らず、お姉さんの質問にアクアは少し悩む素振りを見せ。

 

「そうね、女神って職業が無いのが残念だけど…。私の場合アークプリーストかしら」

 

「アークプリーストですね! あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛もこなせる万能職ですよ! では、アークプリースト…っと。 冒険者ギルドへようこそアクア様、サトウカズマさん。 スタッフ一同、今後の活躍を期待してます!」

 

 お姉さんはそう言って俺達に、にこやかな笑みを浮かべた。

 お姉さん、俺を様付けで呼んでくれてもいいんですよ。

 

 …そう言えばお姉さんの名前を聞いてなかったな。

 名前を聞くのは今度にして、あのお姉さんの事はおっぱいさんと呼ぼう。

 

 まあ、色々あったが、こうして俺の異世界での冒険者生活が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リメイク後のタイトルどうしよう……。

フルメタぽく、『この素晴らしい世界に傭兵を! TSR』にしようかと検討しておりますが、そもそもTSR(ザ・セカンドレイド)の意味が分かりません。

グーグル先生に尋ねても、イマイチよく分かりませんでした。
どなたか、分かる方がいましたら無知な作者に教えて下さい。
お願いします。

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