この素晴らしい世界に傭兵を! TSR   作:ボルテス

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カズマはアクセルの街を走る。
クリスのぱんつを奪ったまま全力で走る。
馬小屋で睡眠をとるためーーー

ーーースッキリとした気分で、明日を迎えるために。


五話 この盗賊の少女と逃走劇を!

「さあ〜クリス! 俺を捕まえてごらん!! うふふふ、あはははっ!」

 現在俺はギルドの裏にて、仲良くクリスと追いかけっこに興じていた。

 

「あ、あたしがキミを試すような事をしたのは謝るから、ぱんつ返してよおおおおおおおおおおおっーーー!」

 

 物欲に駆られたクリスが、俺の軽いサイフだけでは満足できなかったのか、赤い顔で必死に俺の後を追ってくる。

 

 …クリスは、もう自分のぱんつを買う金もないのだろう。

「安心しろクリス! 新しいぱんつなら俺が買ってやるからー!」

 

 …そう、俺は常に用心をする男。

 馬小屋に非常用の金を隠しているのだ。

 念のためアクアに見つかる可能性も考慮して、巧妙に偽造を施しておいたので、まず見つかる事はない。

 

「そ、そう言う問題じゃないよおっーーー!? キミのサイフなら返すよ、返すから!」

 

「…いや、このクリスのぱんつはもう俺の物だ。俺のぱんつは俺の物。クリスのぱんつも俺の物だ。 喜べクリス! これから、このクリスのぱんつは我が家の家宝として奉られる事になる! …家宝、つまりはトレジャーだな!」

 

 言いながらも俺は、めまぐるしく頭を回転させ、馬小屋までの最短ルートを計算する。

 確か、ここを右に曲がると裏路地に出るはずだったな…。

 …そう、俺はこの世界で労働者をしている間に、暇を見つけては街を歩き、この街の地形の殆どは把握済みなのだ。

 

「何その横暴な理屈!? それにあたしのぱんつは、家宝にもトレジャーにもならないよ!? だ、だって、キミが盗んだ物は、ぱ、ぱんつなんだよ!!」

 

 予定通り、裏路地へと続く道を右に曲がろうとすると、突然俺の目の前にバッと手を広げたダクネスが現れた。

「そこまでだ! クリスのぱんつは返してもらうぞ…!」

 

 …どうやらダクネスに先回りされていたようだ。

 いつまでたっても、俺を追ってこなかったのはそういう訳か…。

 

 やっと俺に追いついたクリスが、俺の前に立ち塞がるダクネスを見て、感動したように声を震わせ。

「だ、ダクネス…! 流石あたしの親友だよ!!」

「囲まれたか…」

 …そう、俺は挟み撃ちされていた。 

 

「女性の下着を奪った挙句に逃走するとは……! な、なんと言う鬼畜の所業だ! 許せん! そんなにぱんつが欲しければ、この私から奪うがいい! さあ!!」

 

 ずいっと一歩前に出て、怒りで顔を真っ赤にし、俺に言ってくるダクネス。

 その姿を見て俺は考えていた。

 

 なるほど…。

 きっとダクネスは騎士としても、人間としても正義感が強く、クリスのぱんつを盗んだ俺を許せないのだろう。

 

 クリスのぱんつを盗むぐらいなら、代わりに自分のぱんつを奪えと。

 …つまり、私のぱんつで我慢してくれと。

 な、何という美しい友情だろうか……!

 

 …素晴らしい! 素晴らしいデス!  

 ぱんつという目に見える形での二人の友情!

 その友情の何と……、何と美しきことか……!

 

 …ああ、脳が……! 脳が震える……!

 俺が二人の友情の美しさに打ち震えていると、クリスが大声を上げた。

「ダクネス! 同時に取り押さえるよ!」

 

「分かった!」

 言うと同時に、俺に飛びかかって来るクリスとダクネス。

 俺に逃げ場はなく、絶対絶命だ。

 

 …いや、一つだけあった。

 俺はダクネスの方へと駆け出す。

 そのまま俺は、猫のような俊敏さで地を蹴り、ダクネスの肩を足場にして、大きく跳躍。

 

「とうっ!」

「ええっ!?」

「…わ、私を踏み台にした!?」

 

 ダクネスが後ろを振り返り、宙に舞った俺を見て、屈辱にまみれた赤い顔で驚きの声を上げた。

 

 ダクネスを突破し、予定通りに裏路地に入る。

 そうして暫くすると、俺とクリスの距離はグングンと離れて行く。

 

 ダクネスはクリスの少し後ろから、俺を追ってきていた。

 息も絶え絶えになったクリスが必死に俺を引き止める。

 

「…ま、待って……。本当に待って……!」

 が、俺はそれに構わず走り続けた。

 

 ……勝つる、これは勝つる!

 俺も傭兵として生きてきたのだ、体力には自信がある。

 優秀な兵士とは、誰よりも勇敢なヤツではなく、最後まで走れるヤツの事を言うのだ。

「……フフフッ。……ククククッ、フハハハハハハッーーー!!」

 

 俺は悪役のような高笑いの三段活用をしながら、全速力で裏路地を走り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所はとある飲食店の物陰。

 未だにしつこく追って来るクリスとダクネスを、時には物陰に隠れて潜伏スキルでやり過ごしたり、時には人混みの中に隠れたりしながら、俺は街中を逃げ回っていた。

 だが、それも終わりにしよう。

 …そう、俺はもう少しで馬小屋にたどり着くという段階にまで来ていた。

 

 目の前の大道通りを抜けて、しばらく歩けば馬小屋に着く。 

 俺はポケットに入れたトレジャーを取り出し、右手で握って無事を確認する。

 

 …良かった、無事だったか……。もう少し、もう少しで馬小屋に…。

  いや、落ち着け、俺…。

 佐藤和真。お前は何年傭兵として戦ってきたんだ?

 ここで焦ってミスをするようなヤツは、大馬鹿者のアマチュア野郎だ。

 

  …だが、俺は違う。

 佐藤和真、お前はプロの中プロだろう?

 そう考えていたところで、俺はハッと我に帰った。

 

「い、今まで俺は何をしていたんだ…」

 俺はダラダラと滝のような汗を流しながら、自分の行動を振り返る。

 

  …確か、クリスのぱんつをスティールで奪った俺は、サイフなら返すからと言って追ってきたクリスから、俺の持ちうる技能を総動員して逃げ回り……。

 

 そして、クリスのぱんつを馬小屋に持ち帰り、俺は何をしようとしていたんだ!?

 客観的に見た今の俺の姿は…。

 

  ……クリスのぱんつを握り締め、汗をダラダラと流している変態だろう。

 どこからどう見ても変質者ですね、分かります。 

 俺はクリスを探し、ぱんつを返して謝ろうと思い、潜伏スキルを解いて立ち上がる。

 

 そのまま一歩を踏み出すが、俺は背後に人の気配を感じ、後ろを振り向いた。

「すいません。 急ぎの用があるので、道とか聞きたいのなら、悪いんですけど他の人に……」

 

 俺の背後にいたのは真面目そうな男。

「………」

 その男が無言で懐から取り出したのは、一冊の手帳だった。

 

 男は、俺に鷹のような鋭い目を向け。

「私は警察の者なんだが……、君が手に持っているものは何かな?」

 

 し、私服の警官だと!?

  …さ、流石に、警官の巡回ルートまでは把握してなかった……。

 

 俺は男の言葉に、自分の右手へと視線を向ける。

 そこにあったのは、右手でしっかりと握り締めたままだったクリスのぱんつ。

 

  俺は視線をゆっくりと男に戻し、汗をダラダラと流しながら震え声で。

 

「…ト、トレジャーです」

 

 その言葉に男の俺を見る視線が険しくなった。

「…署までご同行願おうか。……いいね?」

「あっ、はい」

 

 もちろん俺は即答した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうクリス…。 …いや、クリス様。 こんなゴミクズのような俺を許してくれるなんて……」

 俺はダクネスの隣を歩くクリス様に、感謝の言葉を述べていた。

 

 なぜ、俺が警察のお世話にならなかったかと言うと、それはクリス様のお力が大きい。   

 警官に署まで連行されている俺を、偶然にも俺を探していたクリス様とダクネスが見つけてくれたのだ。

 

 その場で警官に詳しい事情を説明し、今回の事はお互い悪かったからと、クリス様が警官を説得してくれたので俺は捕まらずに済み、現在へと至る。

 

 もちろん、ぱんつはクリス様に返し、地に伏して謝った。

 その際に、クリス様が俺のサイフを返そうとしたが、せめて半分だけでもと強引に金を渡したので、いくらか治療費の足しになっただろう。 

 

「さ、様付けはやめてよ。クリスでいいよ。…それより、これ飲む?」

 そう言ってクリス様が俺に差し出したのは、とある栄養ドリンク。

 

 クリス様は心底心配そうな顔で俺を見つめ。

「キミ、疲れてるんじゃないの? 目にくまもできてるし…」

 

 その慈悲深い言葉に俺はクリス様の手をガシッと摑み、

「め……女神様……!」

 クリス様の目を真っ直ぐ見つめ、感動で声を震わせながら呟いた。

 

「や、止めてよ。わ、わたし、女神じゃないから!」

 何故か一人称まで変わり、慌てふためくクリス様を尻目に俺は考えていた。 

 

 クリス様は栄養ドリンクを持ち歩くほど、日頃から苦労しているのだろう。  

 自分のぱんつを買うお金にも困るほどなのに、慈悲深くも俺なんかの体調を心配してくれるなんて……!

 

 感極まった俺は、力強く手を振り上げながら、その場で大声で叫ぶ。

 

「クリス・イズ・ゴッド! クリス・イズ・ゴッド! クリス・イズ・ゴッド! クリス・イズ・ゴッドッ!!」

 

「や、止めてよ! それ何かの嫌がらせみたいだから!」

「ふむ…。羞恥攻めとは、中々やるな…」

 

 ダクネスが感心したように何かを小声で呟いたが、感涙にむせび泣く俺の耳には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達がギルドに戻ると、アクアとめぐみんが談笑していた。

 二人は俺に気づくと、口々に。

 

「あっ! やっと帰って来たわね。カズマ、遅かったじゃない」

「確かに遅かったですね、どこで油を売っていたんですか?」

 

 い、言えない…。

 クリス様のぱんつを盗んで逃走し、馬小屋でごそごそしようとしてたなんて、言えない……。

 俺が言葉に詰まっていると、隣のダクネスが口を開いた。

 

「うむ。カズマはクリスのぱんつを剝いだ後、そのまま逃走したのだ。その際に私を踏み台にしたり、挙句の果てには涙目のクリスを羞恥攻めにしたりもしたな」

 

 ダクネスの言葉にアクアとめぐみんは、俺を見てドン引きしている。

 俺はそんな二人に慌てて、弁解を始めた。

 

「ま、待ってくれ! あ、あれは不幸な事故だったんだよ! 不可抗力なんだ!!」

「うるさいですよ。ぱんつ泥棒」

 

「流石にその言い訳は苦しいわよ。ぱんつ泥棒」

 大声で言った二人の言葉に反応したらしい女性冒険者達が、一斉に俺の方を向いた。

 

 こ、怖いです。

 周囲の女性冒険者達の冷たい視線を受け、ビクビクしていた俺に、ダクネスが首を傾げ。

 

「…そのまま走って逃げたのにか?」

「ごめんなさい、超反省してますクリス様」

 俺は速やかに床に頭を擦り付け、クリス様にDOGEZAをして謝った。

 

 その間に掛かった時間は、僅か数秒。目にも止まらぬ早業であった。

「だ、だからクリス様は止めてってば! それに、もう気にしてないから頭を上げてよ、他の人がこっちを見てるから!」

 

 クリス様が、俺に暖かい言葉を掛けて下さったその時だった。

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 冒険者各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。 冒険者各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 突然、街中に大音量のアナウンスが響いた。

 恐らく、魔法で音を拡大しているのだろう。

「おい、アクア。 緊急クエストってなんだ? 魔王軍の連中が街を襲いに来たのか?」

 

「バカねー。カズマは、駆け出し冒険者しかいない街なん……、いひゃい、いひゃいはら、ほっぺひゃぱらないれ!」

 

「おら、もう一回言ってみろ。 誰がバカだって? お前にだけは言われたくないぞ。 柴犬みたいな顔しやがって!」

 そんな俺達を見て、何故かダクネスが頬を赤らめ。

 

「魔王軍ではなく、多分キャベツの収穫だろう。そろそろ収穫の時期だからな」

 なるほど、キャベツか……。

 

「……って、え? き、キャベツ!? 一体、キャベツと冒険者に何の関係性があるんだよ! そんなのは農家の仕事だろ! それとも、ここらの農家の連中は揃いも揃って引き篭もりにでもなったのか?」

 

「え!? キミ知らないの? キャベツって……」

 クリス様が驚いたように、俺に何かを言いかけるが、それを遮る様におっぱいさんがギルド内にいる冒険者達に向かって大声で説明を始めた。

 

「今年もキャベツの収穫の時期がやって参りました! 今年のキャベツは出来が良く、一玉の収穫につき一万エリスです! すでに街の住民の皆様は家に避難して頂いております。では皆さん、できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに納めてください! くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしない様にお願い致します!」

 

 …いや、キャベツに逆襲って何だよ。

 俺、十六年間生きてきたけど、初めて聞いたぞそんな表現…。

 

 俺はおっぱいさんの言葉を聞いて、嬉しそうにしていためぐみんに尋ねた。

「…なあ、めぐみん。 俺、キャベツに逆襲されないようにって聞こえたんだけど、俺の聞き間違いだよな?」

 

「…何を言ってるのですか、カズマは。 相手はキャベツと言えど、結構な重量があるのです。 油断して、怪我なんてしないで下さいね?」

 

 何言ってるんだコイツは、という様なめぐみんの言葉に俺は夢でも見ているのかと困惑する。

「来たぞーーー! 収穫だあああああっーーー!」

 

 誰かが、冒険者ギルドの外で叫ぶ声が聞こえてきた。

 めぐみんの話から察するに、この世界のキャベツは地面を転がって移動でもするのだろう。

 

 サンマが畑で取れるような世界なのだ。

 今更、キャベツが地面を転がって移動したぐらいでは動揺したりはーーー

 

「と、飛んでるだと……!?」

 ギルドの外に出た俺が目にした光景は、俺の予想の斜め上を行き、街中を飛び回るキャベツ達の姿だった。

 

 その訳の分からない光景に呆気にとられている俺に、アクアが芝居掛かった口調で。

「この世界のキャベツは飛ぶわ。味が濃縮してきて収穫の時期が近づくと、簡単に食われてたまるかとばかりに……」

 

「....要約すると、渡り鳥ならぬ、渡りキャベツみたいなもんか」

「カ、カズマさん。い、今、上手い事言ったつもりなの!? プークスクス!」

 投げやりに言った俺の言葉にアクアが吹き出す。

 

 腹を抱えて笑い出した自称女神を放置する事に決め、俺はクリス様から頂いた栄養ドリンクを取り出すと一気に飲み干した。

 

 キャベツ一玉につき一万エリスだったな…。

 つまり、日本円だと一万円か。

 普段の俺だったら馬小屋に帰って寝るところだろうが、今の俺には戦う理由があるのだ。

 

 俺は隣にいたクリス様を真剣な表情で見つめ。

「クリス様、見ていて下さい。俺はあのキャベツ達を誰よりも収穫して見せます。 この星の誰よりも! …そしてクリス様の持病を治すための金を!!」

 

 俺はそれだけ言うと駆け出した。

「え? き、キミ、ちょっと待って…! あたしの持病って何の事!?」

 背後から聞こえるクリス様の疑問の声を置き去りにして、俺は空を飛ぶキャベツを目掛けて襲いかかった!

 

「おらおらおら、逃げるんじゃねえぞ諭吉ィーーー! 俺が一玉残らず収穫してやらあっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このキャベツの野菜炒め、美味過ぎだろ…。キャベツだろ、キャベツのくせに何でこんなに美味いんだ……」

 俺は、ゆき……キャベツ狩りを終え、ギルド内の酒場で一口食べたキャベツ炒めの美味さに驚いていた。

 

「さっきは凄かったわね、ダクネスは! 高速で迫り来るキャベツ達を前に、一歩も引かない姿は、流石のキャベツ達も震え上がっていた事でしょうね」

 

「いや、私は硬いのだけが取り柄の女だ。 私は不器用で、剣を振ってもロクに当たらず、誰かの壁になるぐらいしか出来ない。その点、めぐみんは凄まじかったぞ。 キャベツを追って来ていたモンスターの群れを、爆裂魔法の一撃で消し飛ばしていたではないか」

 

「ふふ、我が爆裂魔法の一撃を受け、消え去るモンスター達の断末魔が今でも聞こえてくるようですよ」

 恍惚とした表情でそんな事を言うめぐみん。

 

  …めぐみん、それヤバいヤツの発言だぞ。

 前に情報収集した時の頭のおかしい子ってお前のことじゃないだろうな……。

 

 俺がめぐみんを疑うような目で見ていると、クリス様が俺の方を向き、感心したような口振りで。

「そう言えば、キミも凄かったね。 無茶苦茶な動きでキャベツを背後から強襲してる姿には、不思議と芸術性を感じたよ」

 

「ありがとうございます。クリス様、勿体ないお言葉! クリス様こそスティールで愚鈍なキャベツ共を一網打尽にする姿には、優雅ささえも感じましたよ」

 

「だ、だから、クリス様は止めてってば…」

 クリス様が困った顔で言ってくるが、その顔もまたお美しい。

 

 …余談になるが、クリス様は顔面神経痛ではなかった。 

 本人に何度も確認を取ったので間違いない。 

 どうやら俺の勘違いだったようだ。

 

「…確かに、カズマは洗練された無駄のない動きをしていましたね。 周りの冒険者達に、変態機動をする男がいると噂されていましたよ」

 

「……狂った様に一心不乱にキャベツを乱獲するその姿は、まるで狂戦士のようだったな」

 今回のキャベツ狩りで、野菜相手に転ばされて泣いていたアクアが言った。

 

「カズマ…。私の名において、あなたに【キャベツ狩りの変態狂戦士】の称号を授けてあげるわ」

「いらんわ! そんな称号! 変態と狂戦士を足すな! もし、そんな称号で俺を呼んだら引っ叩たいてやるからな!」

 俺は頭痛を感じ、頭を抱えた。

 ……ああもう、どうしてこうなった!

 

「では、改めて。 名はダクネス。 職業はクルセイダーだ。私の事は戦力としては期待しないでくれ。なにせ、不器用過ぎて攻撃がほとんど当たらん。なので、壁代わりにこき使ってくれ。これからよろしく頼む」

 

 そう、ダクネスが仲間になったのだ。

 今の発言で俺は確信した。信じたくはない、信じたくはなかったが……。

 

 ……もう認めざるを得ない、ダクネスはドMだ。間違いない。  

 やはりキャベツ狩りの時、袋叩きにされて、喜んでいる様に見えたのは俺の見間違いではなかったらしい。

 

 しかもこのダクネス。攻撃が全く当たらない。

 キャベツ相手でも掠りもしなかった。

 攻撃が全く当たらないのは百歩譲っていい。

  …いや、あまりよくはないのだが、壁としての性能だけは期待できそうだ。

 何故かというと、ダクネスはスキル構成を全て防御系で固め、攻撃スキルなどは一切取っていなかった。

  だから、その分強固な壁として活躍を……。

  す、するといいですよね…。

  ……しかし、最初に見たダクネスの印象は美人の女騎士だったのに、今の印象は汚いセ◯バーだ。 

 アクアは俺のそんな気持ちも察さず、満足そうなドヤ顔で。

「ウチのパーティーもなかなか、豪華な顔触れになってきたじゃない? 四人中三人が上級職なんてパーティーそうそうお目にかかれないわよ。カズマは最高についてるわよ? 感謝なさいな」

 

「…ああ、ありがとう。そいつはラッキーだな」

 俺の言葉を皮肉とも気づかずに、アクアはドヤ顔のままだ。

 

 俺は深いため息を一つ吐くと、向かいの席のクリス様へと視線を向け。

「……クリス様、俺のパーティーに入ってくれませんか?」

 

「キミには盗賊のスキルを教えたし、盗賊スキル持ちが二人もいるとお互いの有用性が損なわるからね。だから、遠慮しとくよ」

 

「そうですか……」

 クリス様がそうおっしゃるのなら、残念だが仕方がない。諦めるとしよう。

 俺達が話を終えた頃を見計らい、ダクネスが口を開く。

「それではカズマ。これから、間違いなく私が足引っ張る事になるだろうが、その時は強めに罵ってくれ。これから、よろしく頼む」

「ああ、動く肉壁として散々使い倒してやるから覚悟しとけよ」

 

「い、今の肉壁いう言葉……! やはり、私の目に狂いはなかった! ぜひ、今の言葉を蔑むような感じでもう一度頼む!」

 

 俺の言葉に興奮したらしいダクネスの言葉を聞かなかった事にして、改めてパーティーメンバーの顔を見る。

  一日一発しか魔法を撃てない豪砲ロリに、カエルに食われ、キャベツに泣かされる自称女神。

 

 そして、たった今、仲間になった俺の方を見ながら、『これは放置プレイ、放置プレイなのか!? 』とか呟いている汚いセイ◯ー。

 

「俺のパーティーがこんなに残念なわけがない…」

 ボソッと呟いた俺の声が聞こえたのか、クリス様が懐から栄養ドリンクを取り出し。

 

「…これ、もう一本いる?」

「…頂きます。クリス様」

 俺が栄養ドリンクをありがたく受け取ると、クリス様は苦笑を浮かべた。

 

「キミもこれから大変だねえ。…まあ、あたしの親友をよろしく頼むよ」

「任せて下さい。俺の女神様のお言葉ならどんな事でも守りますよ」

 

「ま、まったくキミは、調子がいいことばっかり言うんだから…」

 俺の言葉に照れたらしい俺の女神様が、顔を赤くして挙動不審になると水をちびちびと啜りだした。

 その姿を見て、からかいたくなった俺は真面目な顔で。

「クリス様、照れた顔も可愛いですね。どうです? 俺と付き合ってみませんか?」

 

 それを聞いて、水を飲んでいたクリス様がゴホゴホと咳き込む。

「キ、 キミ。 と、突然、何て事言うのさ! それにあたし達、今日始めて会ったわけだし、いきなりそんな……!」

 

 俺は何やら、ブツブツと小さい声で呟いている純情そうなクリス様を眺めながらこう考えていた。

 

『俺の女神様はこんなにも可愛い』と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回ミツルギさん登場。
途中から何だかんだあって、学園ラブコメになりますよ!(嘘は言ってない)
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