―インダストリアルイリュージョン社 Bチーム 企画室―
Bチームの企画室は会議がしやすい大きな机と、仕切り板で区切られた個人用のデスクに分かれている。
昼間のこの時間は皆、デスクに向かっている。
しんと静まり返っているわけでなく、電話を掛ける者や隣と話している音もする小気味の良い雑音。
カチッとホチキスの音が鳴る。小宮山慶之(こみやまよしゆき)はスッと立ち上がると、左隣の遊作に資料を差し出す。
「八重樫チーフ代理、当日の進行表だ。目を通してくれ」
「あぁ、ありがとう。目を通しておくよ」
パラパラとページを捲る遊作。
「良い感じだね。スケジュール的に駆け足気味だから、どこかもう少し削っても良いかもね」
「わかった。もう少し調整しておこう」
今度は左隣からの声。
「八重樫チーフ代理、ポスターはこんな感じですか?」
「さすが田崎さん。綺麗な絵だね」
カタカタ カタカタ
キーボードは一定のリズムをたてる。次第に日が傾き、空が茜色に染まっていく。
「今日の所は、こんなところだね。みんなお疲れさま」
―インダストリアルイリュージョン社 屋上庭園―
缶コーヒーを片手に遊作はベンチにつく。プルタブをカシャッと開け、一息つく。
自動ドアが開く音がして、そちらに眼をやると、そこには苛立たしげな表情をした小宮山が仁王立ちしていた。
「小宮山・・・。珍しいな」
「お前もな遊作。どうしたんだ、お前。最近、覇気がないぞ」
「そんなことはないさ」
「熱意が薄い。殆ど指摘もない。しかも、こんな屋上まで来て・・・!」
「そう思われても仕方がないよな。あの時のことを話さなきゃいけないな・・・」
「あの時の事?」
いぶかしむ小宮山。
「先週、通り魔にあったって言ってただろ?あの時、イノベイト使いとデュエルしたんだ」
言葉を紡ぐ遊作。
「そいつは底知れない位強かった。しかも、開発者である俺たち以上にイノベイトモンスターを使いこなしてたんだ。しかも、そいつの仲間は超能力みたいなこともしてくるし。イノベイトの開発でみんながトラブルに巻き込まれるんじゃないかってな。情けないよな」
「情けないな、腑抜けてる。お前のイノベイトへの思いはそんなモンかよ!」
「っ!」
「立て、デュエルだ!俺のイノベイトにかける思いに応えてみろ!」
「・・・わかった」
「「デュエル!!」」
「先攻は俺だ。俺は《サプライ・アタッカー》(レベル3 ATK1000)を召喚。効果でレベル3の通常モンスター、《サイバテック・アタッカー》を手札に加える」
「永続魔法カード《補給部隊》を発動。トリガーを満たした《サプライ・アタッカー》をアセンション!イノベイト召喚!戦場の守護者となれ!《フロントライン・ブロッカー》!」
《フロントライン・ブロッカー》
レベル6/地属性/魔法使い族・効果・イノベイト/ATK1100/DEF2400
攻撃力1000以下の戦士族モンスター1体
トリガー:自分のターン中、自分が魔法カードを発動した場合
①:このカードが相手によって破壊された時、自分のデッキの上からカードを1枚、墓地に送り、1枚ドローする。手札からレベル4以下の戦士族か魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
「イノベイトは使うんだな」
「ああ、イノベイトは俺達の夢と努力の結晶。存在を否定するつもりはない。カードを1枚セットしてターン終了だ」
八重樫遊作
LP4000 手札3枚
場:《フロントライン・ブロッカー》
魔法・罠:《補給部隊》
「俺のターンだ。ドロー」(小宮山:手札5→6枚)
「マジックカード《影依融合》を発動する。相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがあるため、デッキ内の《シャドール・ドラゴン》と《暗黒界の龍神グラファ》を融合する。融合召喚!現れろ。レベル5《エルシャドール・ミドラーシュ》(ATK2200)!《シャドール・ドラゴン》の効果で《補給部隊》を破壊する」
「素材にグラファだと・・・?」
「更に、《暗黒界の術士スノウ》(レベル4 ATK1700)を召喚。墓地のグラファの効果を発動。スノウを手札に戻し、蘇れ、《暗黒界の龍神グラファ》(レベル8 ATK2700)!」
裁定上、ミドラーシュを召喚したターンにもう1体、モンスターを特殊召喚する事は可能。
「相変わらず、ルールの穴をつくのがうまいな、小宮山」
「当然だ、バトル。《暗黒界の龍神グラファ》で《フロントライン・ブロッカー》(DEF2400)を攻撃」
黒色の炎が燃え盛り、《フロントライン・ブロッカー》は破壊される+
「《フロントライン・ブロッカー》の効果。デッキからカードを1枚ドローして、手札のレベル3以下の戦士族か魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。《サイバテック・アタッカー》(レベル3 DEF200)を守備表示で特殊召喚!」
《サイバテック・アタッカー》
レベル3/炎属性/戦士族・通常/ATK1600/DEF200
再び戦場に向かうため自ら進んで機械化された戦士。様々な火器を使いこなす。
「《エルシャドール・ミドラーシュ》で《サイバテック・アタッカー》を攻撃!」
《サイバテック・アタッカー》は竜の爪でバラバラに砕かれる。
「カードを1枚セットして、ターンエンド」
小宮山慶之
LP4000 手札4枚
場:《エルシャドール・ミドラーシュ》、《暗黒界の龍神グラファ》
魔法・罠:伏せカード1枚
「俺のターン、ドロー」(遊作:手札3→4枚)
ミドラーシュ、厄介だな。
「《レックレス・アタッカー》(レベル3 ATK1600)を召喚。更に《団結の力》を装備させる」
《レックレス・アタッカー》
レベル3/地属性/戦士族・効果/ATK1600/DEF1000
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した自分のターンバトルフェイズ中、自分のエクストラデッキから相手のターンにのみI召喚できるIモンスター1体を公開し、このターンのメインフェイズ2のスキップを宣言する事で発動する。自分のデッキまたは墓地からレベル3以下の通常モンスター2体を自分フィールドに特殊召喚する事ができる。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時まで、罠カードの効果を受けない。
身の丈よりも随分と大きい剣を持った少年の兵士が出現する。
「カードを1枚セットして、バトルフェイズに入る。エクストラデッキから《ディフェンシブ・ガーゴイル》を相手に見せ、このターンのメインフェイズ2をスキップすることで《レックレス・アタッカー》の効果を発動する。自分のデッキから、レベル3以下の通常モンスターを2体攻撃表示で特殊召喚する。《チューン・ウォリアー》(レベル3 ATK1600)、《サイバテック・アタッカー》(レベル3 ATK1600)」
《レックレス・アタッカー》(ATK1600→2400→4000)!」
「ぬるいぞ。リバースカードオープン。手札を1枚捨て、《サンダーブレイク》を発動!《団結の力》を破壊する」
「ダメージステップ時、速攻魔法《収縮》を発動。ミドラーシュの攻撃力を半分にする」
《エルシャドール・ミドラーシュ》ATK2200→1100
蚊のように小さくなったミドラーシュには少年剣士の斬撃は大きすぎた。
「くっ。だがミドラーシュが破壊された事で墓地の《影依融合》を手札に加える」
小宮山LP:4000→3500
「ターンエンドだ」
八重樫遊作
LP4000 手札1枚
場:《レックレス・アタッカー》、《チューンウォリアー》、《サイバテック・アタッカー》
魔法・罠:なし
「俺のターン、ドロー!」(小宮山 手札:4→5)
「随分とハンドアドバンテージがついたな。場に流され、不利になるお前のデュエル。今のお前自身を見ているようじゃないか」
「・・・」
遊作は沈黙する事しかできない。遊作自身も気づいているのだ。
「お前は何を恐れてるんだ?」
遊作は眼を瞑る。
「俺と闘ったやつは俺以上にイノベイトを使いこなしてるって話したよな。イノベイトは本当に俺達が生み出したのか?あいつらは元々イノベイトを知ってたんじゃないか?」
「俄には信じがたい話だな」
「だろうな。俺は怖いんだ。自分達が作ったものが、実は巨大なもので、俺達も巻き込まれるんじゃないかって」
「それを悩んでいたのか。そんな事でお前はイノベイトの開発が中途半端になって良いのか?!」
「俺は・・・!」
うつむき、目の前が暗く染まる。
「俺は《ダーク・グレファー》を召喚。手札から《暗黒界の番兵レンジ》を墓地に送り、デッキから《シャドール・リザード》を墓地に送り、《シャドール・リザード》の効果で《シャドール・ビースト》を墓地に送る事でカードを1枚ドローする。手札を1枚セットする」
「これがこのデッキの核だ。墓地に名前の異なるモンスターが5種類存在するため、俺は手札から、《衛生軌道兵器ハイドランダー》(レベル8 ATK 3000)を特殊召喚!」
夜更けの空にイカのような巨大な構築物が姿を現す。独立する複数のアームは触手のようだ。
「ハイドランダーなんて。流石だな。しかもこの局面。ラストモーメントも対策しているとは」
「この局面をどうする遊作?」
「俺は、このデュエルは諦めない!トリガーを満たした《サイバテック・アタッカー》をアセンション! 世界傾きし時 終焉の彼方から姿を現せ! イノベイト召喚!現れろ!レベル8《ラストモーメント・ドラゴン》!」
《ラストモーメント・ドラゴン》
レベル8/闇属性/ドラゴン族・イノベイト/
ATK2500/DEF2000
表側攻撃表示のレベル3以下の通常モンスター1体
トリガー:相手ターン中、相手フィールドのモンスターの攻撃力の合計が5000以上になった場合
「ラストモーメント・ドラゴン」の①の効果はデュエル中、1度しか適用できない。
①:このカードがイノベイト召喚に成功した場合、このターンを終了する。
②:1ターンに1度、自分フィールドの戦士族または魔法使い族のモンスター1体を選択して発動する。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで2000ポイントアップする。この効果を発動したターン、このカードは攻撃できない。
FI-P06CA
漆黒のドラゴンが姿を表し、身体中の黄金の幾何学模様の光が翼に集中し、光が円を描く。
「《ラストモーメント・ドラゴン》がイノベイト召喚された場合、このターンを終了させる。『Moment at the Ragnarok』!」
「《ラストモーメント・ドラゴン》の効果にチェーンして、《衛生軌道兵器ハイドランダー》の効果を発動。デッキからカードを3枚墓地に送る。墓地のモンスターの名前が全て異なるため、《ラストモーメント・ドラゴン》を破壊する!」
ハイドランダーのアームの先端から閃光が奔り、《ラストモーメント・ドラゴン》を貫く。
「だが、ラストモーメントの効果は無効化されていない。そうだ。俺のイノベイトへの思いもこんなもんじゃない。俺のターン!ドロー」(遊作 手札:1→2)
「装備魔法《簡易武装》を発動。《レックレス・アタッカー》に装備!」
遊作の狙いは《インビンシブル・ジェネラル》の召喚。レベル3以下のモンスターが存在すれば、破壊耐性を持つ。
《簡易武装》
装備魔法
①:装備モンスターは攻撃力が200ポイントアップする。
②:このカードがフィールドから墓地に送られた場合、自分のデッキから「簡易武装」1枚を選択して手札に加える事ができる。
「させるか!《衛生軌道兵器ハイドランダー》の効果を発動。デッキからカードを3枚墓地に送る。墓地のモンスターの名前が全て異なるため、《レックレス・アタッカー》を破壊!」
《インビンシブル・ジェネラル》の召喚を小宮山は予測していた。触手の砲塔から再び閃光が走り、《レックレスアタッカー》は砕け散る。
「俺は《死者蘇生》を発動。蘇れ《ラストモーメント・ドラゴン》!(レベル8 ATK2500)」
「《ラストモーメント・ドラゴン》の効果!このターン、ラストモーメントは攻撃を放棄することで《チューン・ウォリアー》の攻撃力を2000アップさせる」
《ラストモーメント・ドラゴン》は《チューン・ウォリアー》を背に乗せ、宙を舞う。
《チューン・ウォリアー》(ATK1600→3600)
「バトルだ。《チューン・ウォリアー》で《衛生軌道兵器ハイドランダー》を攻撃!『ダイビングクラッシュ』!」
雷光を纏った《ラストモーメント・ドラゴン》はハイドランダーに突っ込み、大穴を穿つ。
「やるな」
小宮山LP3500→2900
「ターンエンドだ」
「待てよ。メインフェイズ2終了時にトリガーを満たした《暗黒界の龍神グラファ》をアセンション!悠久の檻に囚われし、暴虐の魔獣よ!今こそ戒めを解き放て! イノベイト召喚! 現出せよ!レベル10《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》!」
《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》
レベル10/地属性/獣族・効果・イノベイト/ATK4200/DEF0
レベル8~9のモンスター1体
トリガー:自分フィールドのモンスターが戦闘またはカードの効果で破壊されたメインフェイズ終了時
①:このカードが相手ターン中にI召喚に成功した場合、相手ターンのバトルフェイズになる。この効果に対して、魔法・罠・モンスター効果を発動する事ができない。
②:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手フィールドの表側攻撃表示モンスターはこのカードに攻撃しなければならない。
③:このカードは攻撃できない。
山を思わせるかのような巨体。それはすべてを飲み込む暴虐の化身!
「このタイミングでイノベイト召喚だと!」
「そうだ、再びバトルフェイズに巻き戻る!そして、相手モンスターはこのカードに攻撃させる『グラビティハウリング』!」
「くっ!《サイバテック・アタッカー》で《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》を攻撃」
攻撃宣言を行った瞬間、《サイバテック・アタッカー》は内側から砕け散る。
遊作:LP4000→2200
「墓地の《イノベイト・エンゲージ》の効果を発動。墓地のこのカードと手札を1枚ゲームから除外する事で自分のイノベイトモンスター1体を選択して発動する。俺は《ラストモーメント・ドラゴン》を選択する。選択された《ラストモーメント・ドラゴン》は次の自分のターンのスタンバイフェイズまで、戦闘またはカードの効果では破壊されない。更にカードを1枚ドローする!」(遊作 手札:0→1 LP2200→500)
《イノベイト・エンゲージ》
通常罠
①:自分の墓地のモンスター1体をデッキに戻し、自分のライフを900回復する。
②:墓地のこのカードと手札を1枚ゲームから除外し、自分フィールドのIモンスター1体を選択して発動する。
選択されたモンスターは次の自分のターンのスタンバイフェイズまで、戦闘またはカードの効果では破壊されない。自分はデッキの上からカードを1枚ドローする。
「《フロントライン・ブロッカー》の効果で墓地に送ったカードか!」
「そうだ。ターンエンド」
八重樫遊作
LP500 手札1枚
場:《ラストモーメント・ドラゴン》
魔法・罠:なし
「俺のターン、ドロー!」(小宮山 手札:3→4)
「マジックカード《影依融合》を発動する。相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがあるため、デッキ内の《シャドール・ヘッジホッグ》と《マスマティシャン》を融合する。融合召喚!現れろ。レベル10《エルシャドール・シェキナーガ》(ATK2600)!《シャドール・ヘッジホッグ》の効果で《神の写し身との接触》を手札に加える」
今度は機械と人形が結合した偉業が姿を現す。
「まだだ。《暗黒界の術士スノウ》(レベル4 ATK1700)を召喚。墓地のグラファの効果を発動。スノウを手札に戻し、再び蘇れ、《暗黒界の龍神グラファ》(レベル8 ATK2700)!」」
「バトルだ。《エルシャドール・シェキナーガ》で《ラストモーメント・ドラゴン》を攻撃!」
「だがラストモーメントはこのターンまで破壊されない」
遊作:LP500→400
「《暗黒界の龍神グラファ》で《ラストモーメント・ドラゴン》を攻撃!」
遊作:LP400→200
《ラストモーメント・ドラゴン》は咆哮を上げ、3体の魔獣を威嚇する。
「ベヒーモスは攻撃できない。仕留めきれないな。カードを1枚セットしてターンエンド」
小宮山慶之
LP2900 手札3枚
場:《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》、《エルシャドール・シェキナーガ》、《暗黒界の龍神グラファ》
魔法・罠:伏せカード1枚
「あれだけ展開して、手札が減らないなんて。俺のターン、ドロー!」(遊作 手札:1→2)
「俺は、《サポーター・メイガス》(ATK1000)を召喚。効果でセットカードを破壊する!」
《サポーター・メイガス》
レベル4/光属性/魔法使い族・効果/ATK1000/DEF1700
①:このカードが召喚に成功した時、相手フィールド上の魔法カード1枚を破壊する事ができる。
②:このカードをリリースして発動する。自分フィールドのモンスターはターン終了時まで攻撃力が1000ポイントアップする。
「まさか!攻守入れ替えカードか?!ならば《神の写し身との接触》を発動する。フィールドの《エルシャドール・シェキナーガ》と《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》を融合。融合召喚!《エルシャドール・シェキナーガ》!」
《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》守備力が0という致命的な弱点がある。どうしようもなくなる前に先手を打つ。
「流石だな。ここまで読むなんて。《ラストモーメント・ドラゴン》を守備表示に変更。カードを1枚セットしてターンエンド」
遊作は手札を一瞥する。
八重樫遊作
LP200 手札0枚
場:《ラストモーメント・ドラゴン》(守備)、《サポーター・メイガス》
魔法・罠:伏せカード1枚
「俺のターン、ドロー」(小宮山 手札3→4枚)
「ここまでのようだな。バトル。《暗黒界の龍神グラファ》で《サポーター・メイガス》を攻撃!」
「まだだ!リバースカードオープン!《マジックアームシールド》!」
《サポーター・メイガス》がシールドを構えるとボヨン、という音と共に《エルシャドール・シェキナーガ》の巨体がオモチャの腕に捕まえられ、グイと引っ張られる。
「ようやく、お前らしくなってきたが遅い!《エルシャドール・シェキナーガ》に攻撃!」
遊作LP200→100
「《エルシャドール・シェキナーガ》の効果で再び、《影依融合》を手札に加える。そしてメインフェイズ2で《影依融合》を発動する。相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがあるため、手札の《シャドール・ファルコン》とデッキ内の《スノーマンイーター》を融合する。融合召喚!現れろ。レベル9《エルシャドール・アノマリリス》(ATK2700)!《シャドール・ファルコン》の効果で《エルシャドール・シェキナーガ》を裏側守備表示で特殊召喚する。ターンエンドだ」
直前、《ラストモーメント・ドラゴン》が光に包まれる。
「これはイノベイト召喚!いつトリガーを満たした?!まさか!」
「そうだ。これは先程の再現!メインフェイズ2終了時にトリガーを満たした《ラストモーメント・ドラゴン》をアセンション!悠久の檻に囚われし、暴虐の魔獣よ!今こそ戒めを解き放て! イノベイト召喚! 現出せよ!レベル10《レィジィ&タイラント・ベヒーモス》!」
再び屹立する巨体。奥の手がこのような形で牙をむくとは。カードゲームである以上、自分が使うものは相手も使う可能性がある。その可能性を捨てていたことに小宮山は歯噛みする。
「再びバトルフェイズに巻き戻る!この効果にチェーンは不可能!相手モンスターはこのカードに攻撃させる『グラビティハウリング』!」
《暗黒界の龍神グラファ》と《エルシャドール・シェキナーガ》は重力にひかれるように突撃し、何の傷も与えられないまま砕け散る。
「こいつは予測してなかったな」
小宮山:LP2900→0
「あのブラフが上手くいかなかったらと思うと、ゾッとするよ」
遊作はため息をつく。《神の写し身との接触》を使ってくれなかったら、負けていた。
「完璧な演技だったぜ。まさかベヒーモス狙いだったとはな。流石だな。どうやら、完璧に吹っ切ったようだな」
「ああ、済まなかった。迷惑をかけて・・・、いやこれからもっと迷惑をかけるかもしれない」
「俺は覚悟できてるし、デュエルモンスターズに陰謀がつきまとうのはみんな知ってるだろ?みんなも何となくわかってるさ」
「そうだな。で、早速なんだけどもっと盛り上がれるようにデュエルアカデミアも巻き込もうと思うんだけど。大会前に向こうでもプロモーションしてさ」
「いいんじゃないか。細かな運営は俺達だけでも大丈夫だ。行ってこい遊作」
息を吸うと心の中に熱い灯がこみ上げてくるようだ。