―海馬ドーム―
この日もデュエルモンスターズ初心者講習会のステージは盛況で多くの家族連れで賑わっていた。先程までは。
子供達もその親も、果てはアシスタントでさえもステージ上方のスクリーンを固唾を呑んで見入っていた。
その様子をがステージ下の液晶を見つめている白衣を着た男の姿があった。
彼-八重樫遊作(やえがし ゆうさく)はドクドクする鼓動を感じながらも、口角が上がっているのを感じていた。
遊作は後ろを振り返り、ステージの奥のドラゴンを模したドームを振り返る。
「ようやく、ここまで来たんだな」
4年前、この街を震撼させた事件があった。襲撃者とこの事件を解決に導いた未来や異世界のデュエリスト達は今まで誰1人も見たことがなかった白色や黒色などの枠が異なるカードを使っていた。
事件後、彼らの協力もあってインダストリアルイリュージョン社(I2社)はこの時代、この世界始めてのシンクロモンスターやモンスターエクシーズ等の開発に成功。
I2社のカード開発は、自分達のチームを含め、これらの新しいシステムを中心に進められていた。
そして去年、自分たちのチームは外から与えられたものでない自分達だけのモノをつくりたいと強い思いを持っていた。未来や異世界を知ったからこそできる全く新しい召喚システムの開発に挑戦したのだ。
ドームの中では会長達によって新しい召喚システム―イノベイト召喚の発表会が行われている。
発表会の後、今まで開いていた子供向けの初心者講習会に出てた子とイノベイト召喚のデモンストレーションをすることになっている。
このデモンストレーションでみんなにイノベイト召喚を受け入れてもらえるか・・・。
近くにいたスタッフからGOサインの合図。
スポットライトで輝いているステージに上がり、マイクを軽く握る。マイクの重みとスポットライトの光がこれは現実なんだと意識される。
「ようこそ、会場にお集まりの皆様。私はI2社のイノベイト召喚開発担当者の1人 八重樫遊作です。ここからはイノベイトモンスターのデモンストレーションを始めていきます」
手元から灰色の枠のカードーイノベイトモンスターを取り出す。
「会長と海馬社長の説明にあったようにイノベイト召喚のシステムは簡単です。モンスターが特定の条件をトリガーとしてイノベイトモンスターへと進化します」
「イノベイトモンスターはシンクロモンスターやモンスターエクシーズと同じようにエクストラデッキに入れます。イノベイト召喚の最大の特徴は自分か相手のターンのメインフェイズに1度だけ行う事ができます」
一呼吸入れる。自分に向かう期待と興奮が入り交じった視線や思いを感じる。
「さて、今回は初心者用デッキを使って今日、初心者講習を受けた子とデュエルをしていきます」
初心者の子供がイノベイト召喚を・・・?
ざわめきが一層大きくなる。
予想通りの反応。初心者でも分かりやすい程、より完成された受け入れやすいシステムになる。ペガサス会長の言葉を今から示していこう。
選ばれた子供はかぶった帽子で顔を隠すように緊張した様子で自己紹介をする。
ルールを覚えたばかりでいきなり、こんな大舞台になるなんて緊張するだろうけど、楽しんでもらいたい。
「「デュエル!」」
「自分のターンから始めていきます。まずは《ジェリービーンズマン》(レベル3 ATK 1750)を攻撃表示で召喚します。カードを1枚伏せ、ターンエンドです」
初心者講習用のデッキはモンスターの8割が通常モンスターで構成されていて、魔法・罠カードは基本的なカードのみで構成されている。遊作が選んだのは地属性のデッキ。更に今回はお互いに1体ずつイノベイトモンスターを投入している。
八重樫游作 LP4000 手札3枚
場:《ジェリービーンズマン》
伏せカード:1枚
「僕のターン。ドロー!」
「《アレキサンドライドラゴン》(レベル4 ATK 2000)を召喚。《ジェリービーンズマン》を攻撃します」
ズシン、と《アレキサンドライドラゴン》が歩を進める。
《ジェリービーンズマン》は最強と自負する剣技をもって立ち向かうが、いかんせん20倍ほどの体格差は剣技だけでは埋められず、踏みつけられてしまった。
八重樫遊作LP 4000→3750
「カードを2枚伏せて、ターンエンドです」
少年 LP4000 手札3枚
場:《アレキサンドライドラゴン》
伏せカード:2枚
「私のターンです、ドロー。メインフェイズに移行し、リバースカード、《正統なる血統》を発動します。《ジェリービーンズマン》(レベル3 ATK 1750)を墓地から特殊召喚します。更に装備魔法《黒いペンダント》を発動。《ジェリービーンズマン》の攻撃が500アップします」
ジェリービーンズマン ATK1750→2250
「皆さまお待たせしました。イノベイトモンスターをお見せしましょう」
小戦士の首に黒いペンダントがかかると頭上に恒星のようなフレアを持つ光の玉が輝き、閃光が放たれる。
「トリガーを満たした《ジェリービーンズマン》をアセンション。今生無敗の将軍よ。我らに勝利を導け!イノベイト召喚! 切り開け!《インビンシブル・ジェネラル》!(レベル7 ATK2500)」
光が剥がれ、大剣を背負った銀の鎧を纏った戦士が現れる。
《インビンシブル・ジェネラル》
レベル7/光属性/戦士族・イノベイト/ATK2500/DEF2000
元々の攻撃力より高いレベル3以下のモンスター1体
トリガー:自分のターン中、魔法・罠カードの効果で自分フィールドのモンスターの攻撃力がアップした場合
①:このカードがイノベイト召喚に成功した場合、墓地のレベル3以下のモンスター1体を効果を無効にし、攻撃力を800ポイントアップして自分フィールドに特殊召喚する事ができる。
②:レベル3以下のモンスターが自分フィールドに存在する限り、このカードは相手のカードの効果の対象や攻撃対象にならない。
FI-P02LB
「まずは、墓地に送られた《黒いペンダント》の効果で500ダメージ。(少年LP4000→3500)そして、《インビンシブル・ジェネラル》の効果を発動。このカードがイノベイト召喚に成功した場合、レベル3以下のモンスターを効果を無効にして蘇生させ、攻撃力を800アップさせる。来い、《ジェリービーンズマン》(ATK 1750→2550)」
三度現れる《ジェリービーンズマン》心なしか目が据わっている気がする。
「《インビンシブル・ジェネラル》、このカードは最初のイノベイト(ファーストイノベイト)の1体です。このカードは、『攻撃力がアップしたレベル3以下のモンスター』が『魔法・罠カードの効果で自分フィールドのモンスターの攻撃力がアップする』ことをトリガーにして対象のモンスターを墓地に送る事で特殊召喚される事になります」
「バトルフェイズに入ります。《ジェリービーンズマン》で《アレキサンドライドラゴン》に攻撃!」
突進は光の如く龍の首を狙う。
切っ先が首元を掠めるが突如、爆発が起こる。
「《炸裂装甲》を発動します。《ジェリービーンズマン》を破壊します!」
「では《インビンシブル・ジェネラル》で攻撃!『グロリアスブレード』!」
一閃!
《インビンシブル・ジェネラル》は極光とともに大剣を振り下ろし、《アレキサンドライドラゴン》を切り下ろす。
少年LP 3500→3000
「メインフェイズ2に入り、モンスターを1体セットします」
「僕は罠カード、《正統なる血統》を発動します。《アレキサンドライドラゴン》を墓地から特殊召喚します」
「私はメインフェイズ2を終了します」
直後、空が光球が輝く。
「僕はトリガーを満たした《アレキサンドライドラゴン》をアセンション。イノベイト召喚!《
《
レベル8/光属性/戦士族・イノベイト/ATK3000/DEF1000
光属性モンスター1体
トリガー:相手のターン中、相手フィールドにモンスターが2体以上特殊召喚されたメインフェイズ2終了時
①:このカードがI召喚に成功した場合、手札の通常モンスター1枚を墓地に送ることで特殊召喚されていないカード1枚を選択して発動する。そのカードを破壊する。
②:このカードが攻撃力1000以上の相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは2000になる。
「そう、相手ターンでの特殊召喚!これがイノベイトモンスターの最大の特徴です。私はこれでターンエンドになります」
八重樫遊作 LP3750 手札2枚
場:《インビンシブル・ジェネラル》
伏せカード:0枚
「僕のターン、ドロー。《聖騎士アルトリウス》(レベル4 ATK1800)を召喚。《正義の巨人》で《インビンシブル・ジェネラル》に攻撃。《インビンシブル・ジェネラル》を破壊し、2000ポイントのダメージ!そして、《聖騎士アルトリウス》でダイレクトアタック!」
八重樫遊作LP3750→1750→0
「ご覧になったようにイノベイト召喚は相手のターンでも窮地を脱すことができます。デュエルモンスターズはよりスリリングなゲームになっていくでしょう。これにてイノベイト召喚のデモは終了です」
カメラに向けて一礼し、ステージを下りる。
あぁ本当に大一番だった。
無造作にポケットに手を突っ込むと紙がクシャリと鳴る音がする。まだ入れっぱなしだったか。
1週間前、開発部の大野チーフのデスクに置いてあったものだ。
”後は自分がいなくても大丈夫だろうし、しばらくでかけてきます。 大野”
ひとまずは、チーフをひっ捕まえてこようと思う。
2話~5話まで3,4日に1話更新していきます。