初めて自分の『個性』が発現したときの事を、皆は覚えているだろうか?
僕ははっきり覚えている。
それは、僕がまだ3才の頃。両親とリビングでテレビを見ていた時の事。
日曜の朝、お気に入りのヒーロー番組、『キューティー・レスキュー』を
僕はどちらかというと、オールマイトの実録物の方が好きだった。
作り物じゃない、リアルな本物ヒーローに憧れていた。
あんなカッコいいヒーローになりたい。
だから、早く個性が欲しいなぁ。
そんなことばかり考えていた。
父の『個性』は、『一時的な身体能力増強』。
体力の消耗が激しいが、早くて強くなるもの。
大きなオートバイを片手で持ち上げるのを見たことが有る。
母の『個性』は、『自分自身の治癒促進』
ちょっとした傷なら一瞬、骨折すら半日で治したそうだ。
両親ともに一般人。ヒーローって訳じゃない。
でも、『個性』は
パパやママの個性がどっちか、うまくいったら両方がボクの個性になる。
そうしたら、きたえてヒーローになるんだ!
それが僕の夢だった。
『キューティー・レスキュー』のエンディングが終わって、父がこちらに満面の笑みを浮かべて顔を向けてきた時、
父が、父の体が、ぼんやりと光るモヤモヤした何かに包まれていたのだ。
『パパ?!』
驚く僕。その僕の様子に驚く父。
あわてて母の方を向くと、母の体も同じような光に包まれていた。
『どうしたの?!パパも、ママも!!』
二人には、僕がどうしてあわてているのかわからないようだった。
つまり、異変が起きているのは両親では無く、自分自身だったのだが、この時の僕には理解ができていなかった。
だが、視界に入る自分の手が光っているのに気がついた時、自分が、僕の方がどうかしてしまったのだと思いしらされた。
僕の混乱した説明を、それでも両親は理解してくれたようで、父の運転する車で僕たちは病院に向かった。
自治体の指定する『個性一斉検査』を行う病院だと、後で知った。
出会う人、出会う人その全てが光っていた。
看護士の猫耳のお姉さんも、ストレッチャーを押す四本腕のお兄さんも、待合室に並んで座っている人も…あれ、光が弱い人がいる。何でだろう?
この頃には多少は落ち着いていた僕は、周りの観察をしていた。
何となくわかったことは、元気そうな人は光が強い。具合が悪い人は光が弱かったり、ところどころが抜けているということだった。
そして、両親の光は強かった。外で、病院で見かけた誰よりも綺麗で、大きく輝いていた。
何となく嬉しくなって、だいぶ落ち着いたのを覚えてる。
通された診察室で、眼鏡をかけた鶏みたいな顔の先生に、僕はガンバって説明した。
先生が聞いてくる質問にも、いっしょうけんめいに答えた。
そして、先生は言った。
『桜邏真問くん…これは君の個性の発現と考えて間違いない。』
はつげん…個性がでたってこと?おおら・まといは僕の名前。
あれ?でも?
『はっきりしたことはまだ言えないが、これは多分、生体エネルギー視認…とでも言えば良いのかな』
え?待って、だってパパと、ママの個性は…
『周りの人の“元気の良さ”が見える個性。この方が分かりやすいかな?』
周りの人は相変わらず光っていたが、
“僕は目の前が暗くなった”。
夢と希望が、遠ざかっていく。
これが、僕のスタートライン。
長く、とても長く続く道のりの始まりだった。
個性が両親とまるで違うのはなぜかなー(棒)