夫との出会いは、高校卒業後に、親戚がサイドキックとして在籍するヒーロー事務所でアルバイトを始めた事がきっかけでした。
『あ、熊ちゃん。紹介するね!彼は
ちなみに、私の旧姓は
そして、私は独楽次郎さんの隣に立つ青年を、見上げて思わず聞いていました。
『おっきい!…何メートル有るんですか?』
『2メートルも無いわ!』
おっ、
それが、日流十さんの第一印象でした。
独楽次郎さんはそんな彼の言葉に、
『…198㎝、だよな?ビルト。』
2メートル有るじゃねーかよーって感じで。
『えぇ、ですから、2メートルも有りません。』
日流十さんは“そこ大事っ”てニュアンスで。
『木津原さん、顧客のデータ入力でわからない事があったら、僕に聞いてください。』
優しい、笑顔でした。もっとも当時の私は、…コワモテの優しい笑顔はギャップ萌えじゃね?とか、けっこう失礼な事を考えていました。
その出会いから二年…はたってなかったかな?
とある大物ヴィラン逮捕の際の騒動のさなか、私がヴィラン達に捕らわれ、人質にされてしまう事件が起きてしまいました。
ハッピートリガーさんや、サイドキックの皆さんが体をはって私を救出して下さったのですが、その中で最も
今でもはっきりと覚えています。
『個性』で動けなくされた私を乗せて爆走するオートバイに、アスファルトを砕きながら走り続け、追い付いてきた必死な姿を。
ヒーロー達の攻勢に追い詰められ、乗っていた車を捨てて河を渡って逃げようとしたヴィランに向けて、彼らの乗っていた車を対岸に投げつける怒りの勇姿を。
感極まって抱きついた私を、優しく力強く受け止めてくれた時の不器用な笑顔を。
その直後に体力を使い果たし、倒れてしまった時の、目を回したマヌ…可愛い顔を。
事情聴取の為に警察に連れていかれる時の、しょんぼりとした背中を。
(罪には問われずに済みました)
この騒動の直後、私からプロポーズしました。
『お付きあいからじゃないんだ?!クマちゃん大胆だね!』
独楽次郎さんからはそう言われましたが、いつでも、いつまでも、一日も早く一緒にいたい、そう思ってしまったのです。
だから結婚して一年後、息子を授かった時に、家族が増えた、日流十さんと本当の家族になれた。
幸せって、限りなく大きくなるんだ。
そんな気持ちでいっぱいになりました。
息子、真問は素直な手のかからない子ではありましたが、ヒーローに憧れる思いがちょっと強い以外は、ごく普通の子供でした。
(夫は、私に似て良かったと繰り返していましたが)
ヒーローへの憧れも、夫の身体能力増強や、私の『個性』
だから、皆さんもご存知の、真問の『個性』発現後の騒動で、私は、私達夫婦は息子の力になると誓ったのです。息子が幼くして夢を無くさぬように。
私達の『個性』なんかより、もっと大きく大切な物が繋がっているんだと教える為に。
ここからは、息子の『個性』を調べ始めた時の様子です。
『金色で、ふわふわなのね?』
息子の見る“エネルギー”は、どうやら体全体から発せられ、体を覆いながらも、揺れる焔か湯気のようにして消えていっているようでした。
それは呼吸や心臓の拍動のように、止まらず、緩やかにあふれでているのでしょう。
色は金色。でも、街の中で見かけた人によっては色合いが違ったようです。
どうも、異形型の人は色が違うような話でした。
輝き、というか光量は個人差があるようで、健康的で体力に自信が有る、夫のような場合は光が強く、病院で見かけたひとたち、体に不調を覚える人の場合は、全体的に輝きが弱く、また、まったく光を発していない部分もあるようでした。
『じゃあ、パパお願いねぇ。』
『おぉっ!
夫が『個性』を発動させます。見た目は何も変わりませんが、その全身にみなぎるパワーはまさに超人。
アスファルトを砕きながら時速150㎞をこえて爆走し、跳躍すればビルの5階は余裕で越え、乗用車を持ち上げて放り投げ、睨み付ければヤクザも土下座待った無しです。
『ぶわあっ!て、感じで出てるのね?倍以上に。』
光は、倍以上の量で夫の体を覆いながら、空気に溶け込むように消えていくようです。
溢れ出す勢いを、プールとかの大きな蛇口に真問は例えました。
『二分、と三十秒経過ぁ。』
『ま、まだまだ…だっ!』
『光の勢いが弱くなってきたのね?周りの量は変わってない、多いままね?』
『個性』発動のリスク、体力の過剰消耗。それはそのまま、溢れ続けて消えていく光に現れているようです。
『くっ、限…界。』
座り込む夫。冷たいジュースを渡して労います。
『最初の感じに戻った?特に弱くは見えないのね?』
夫の様子は疲労の極み。けれど、真問の目に映る輝きは『ビルド・アップ』の発動前と変わり目ないとのこと。
光そのものがしめしているのは、単純に体力では無いようです。
そして、
『映像を通しても、光が見えるのね?!』
大きな発見。録画された動画の中にも、真問の『個性』は光を見いだしていたのです。
個人差の有る輝き、個性によって異なる(かもしれない)色合い。
直接視認しなくても、映像ごしで判断可能。
私は、私達は大きな可能性を見いだしたような気持ちになっていました。
まさしく探偵ヒーローへの道!
けれど、真問の『目』は、見るべきでは無い、知るべきでは無いことも暴いてしまうのだと、私達はわかっていませんでした。
この言葉を息子の口から聞いても、なお。
『ねぇ、ママ? オールマイトの光はぜんぜんちがうんだねー。トップヒーローだからかなー?』
『なんにんも、いるみたいだよ。』
思わせ振り幼年期、もう少し続きます。