この国でオールマイトほど勇名が轟いたヒーローはいないだろう。
だが一方で、彼の『個性』については詳細が語られたことは無い。
『怪力』『ブースト』などと噂されはするが、わかっていることはただ一つ。
“誰よりも速く、誰よりも強い肉体”
父の
(もっとも、忘年会の持ちネタ『なんちゃってオールマイト』が理由だろうけれど)
3分と持たぬ、だがその時間の中では凶悪なヴィランですら手を焼くその超人化でも、オールマイトの足元にも及ばないのだ。
…父は一般人だから当たり前の話ではあるが。
だから、一対一でオールマイトに詰め寄られることは、事実上の敗北を意味している。普通は。
僕の目に映る物は、黄金の輝きに包まれた英雄。
距離を
けれど、ブレイヴァーは冷静だった。
おそらくは、オールマイトが行動に移る前に構えをとっていたのだろう。
眼前のオールマイトへブレイヴァーの両の掌は向けられていた。
そこから溢れ出す
『
爆発を伴わない
スマッシュと呼称されるオールマイトの一撃であったのならば、容易く突き破っていたことだろう。
だが、ブレイヴァーを捕らえる為の接近、いかなる対応を成すか余裕を持っての動きがゆえに、わずかな隙をオールマイトは見せた。
それを見逃すブレイヴァーではない。
いやむしろ、最初からこの一瞬の攻防の結果に賭けていたのかもしれない。
同じ構えのまま、全身全霊を注ぎ込むかのように莫大なエネルギーが集中する。
それは爆裂する光球の連弾、嵐のごとき猛攻となってオールマイトに迫る。
『
だが、オールマイトも又、その場で体を捻るような動きを見せ、その真骨頂を言葉に載せる。
『Oklahoma…』
オールマイトの体から吹き出す光の奔流。
全身の輝きが、倍以上の大きさをもって僕の瞳に映る。
『…
『…SMASH!!!』
二人が叫び、天を突くような焔の渦がオールマイトを中心として巻き起こり、衝撃が周囲の土を削り飛ばす。
充分な距離をとっていたはずの撮影班も影響を免れなかったのか、映像が大きく乱れる。
ブレイヴァーは後方に大きく弾き跳ばされながらもしっかりと着地し、火焔旋風とも言うべき猛威を黙って見つめていた。
何度も見た映像では有るが、そこは幼いヒーローファン。普通なら、がんばれオールマイト!とか、オールマイトが負けちゃう!とか騒いでいたろう。
自分の『個性』の確認という自覚はあるので、この時の僕は静かに視聴していた。
いや、オールマイトの
…ちなみに、友達の
腕を組んだまま、ブレイヴァーが呆れたように
『こいつは俺の
渦が小さくなっていき、そこには
『おいおい、生身の人間に向けていい技じゃないぞ、それは。』
火傷一つない平和の象徴。
いつもの“画風が違う笑み”をうかべて、オールマイトが立っていた。
『無傷か。回転して俺の衝撃弾を全部弾き返したんだな。ま、あんたには通用しないだろうって思ってたから撃ったんだがよ。』
ブレイヴァーの言葉には呆れと敬意が同時に滲む。
『まだやるかい?』
ブレイヴァーは力なく両手を上げる。
『いや、降参だ。切れる札が無い訳じゃ無いが、間違いなく周りで撮影してる連中を巻き込んじまう。オールマイト、あんたなら
オールマイトは頷いて
『己れの標的と、目的を阻む為に立ち塞がる者以外には個性をふるわない“世直しヴィラン”だろう?』
ブレイヴァーは嬉しそうに
『あぁ。けどよ、それを自分で名乗ったことはいちども無い。俺は斬奸のヴィラン、悪党を殺す悪党さ。だからよぉ、俺はここまでだが、俺のやってきたことが
差し出されたブレイヴァーの右手を、恐ろしい『個性』を発現できるその手を、オールマイトはしっかりと掴んだ。
『私は君の行いを決して肯定しない。だが、君が何を思い戦ったか、君の行いを否定できない人たちは誰が救わねばならなかったのか、答えを探し続けよう。…勇者の名を持つヴィランよ。確かに受け取った!!!』
かわされた握手の意味は何だったか。
それは重すぎて、
そして、見終わった僕は。
オールマイトがブレイヴァーの奥の手を出した瞬間に見せた光景が凄すぎて、母にどう言えばいいのか迷っていた。
オクラホマ・スマッシュ。体全体の回転から生じる衝撃で全てを弾き飛ばすオールマイトの必殺技の一つ。
だが、僕の見たものは。
彼の体の中から飛び出す力の奔流。
そして、その瞬間に感じられた力の源泉。
太陽のように、神々の炉のように、煌々と燃えて輝く莫大なるエネルギーの塊。
一人の人間の中にどうしてコレほどの力が宿っているのか。
混じり合いながらも、確かに見えた幾つもの色と流れ。
もちろん、当時の僕にここまではっきりとした形で表現できてはいない。
画面は切り替わり、『DJ・サガラン』のブースが映し出されていた。
『やー、ブレイヴァーとオールマイトのアツいバトルはどうだったかな?ちなみにブレイヴァーの裁判はまだ審理中だが、減刑を望む声がとても大きいんだぜ? さて、お次はどうするかな?お薦めは、ホラーハウスを舞台に、本物のゾンビや悪霊を喚び出したヴィラン“デス・スパイラル”と漆黒ヒーロー“猛モンガー”のバトル!!』
母も僕も画面は無視して、僕の『個性』
他の人とまるで違うこと。光が消えないで体の周りを覆って留まっていること。
それが爆発的に輝いて、オールマイトが超人的なパワーを発揮していること。
特にスマッシュの時には、オールマイトのパワーそのものが見えたような気がしたこと。
うまく言葉にできないながらもガンバって母に伝えると、母の顔は緊張の色が濃くなった。
『ねぇ、真問。今日のことは、オールマイトの“光”のことは、よその人には喋っちゃだめよ?パパとママにだけ、ね?』
僕は少し考えて
『チキン先生にも?』
母は即座に
『えぇ、知勤先生にも内緒にしましょ。』
ぼくの個性にナイショができた。ヒーローには秘密がつきものだって、DJ・サガランもよく言ってるし。
スゴいや、ぼくの目はアザムケナイってパパが言ってたけど、オールマイトのナゾにせまっちゃったぞ!
…幼かったから、ね。
『うん、わかった!ヨソの人にはナイショにする!』
母は一先ず安心したようだった。
自分で言うのも何だが、僕は聞き分けのよい子だったから。
だから、この時は考えもしなかったと思う。
僕の言う他所の人の中には、当事者は含まれていないことに。
DJ・サガラン『一人は皆の為に。皆は一人の為に。最強ゆえに選んだ荊の道、背負った荷物の重さ、気がつくboyが現れたみたいだぜヒーローofヒーロー? さて、卵には孵化して欲しい。雛鳥には大空を羽ばたいてほしい。それがとりあえずの俺の望みだが、どこまで行けるかなぁ、孤独な念の使い手さん?』