三咲町、路地裏。
「…なあ、シオン」
「なんですか、リーズ」
「もうすぐホワイトデーだろ?」
「そうですね。それがどうしました?」
「いや、サツキがほしがりそうなものを買ってやりたいんだが、思いつかなくてね」
なんだか、私の目の前でそんな会話が広げられてて少々困惑気味の私、弓塚さつき。
なんで直接聞かないのかな?
「本人がいるんだから本人にきけばいいじゃないですか」
「イヤ、こういうのは本人は当日まで何が貰えるのかワクワクしてほしいじゃないか」
「うん、失敗してるからね。その目論見失敗してるからね」
思わずツッコんでしまった。
「おお、サツキいたのか」
「さっき私が言ったじゃないですか」
「そうだっけか?」
小首を傾げるリーズさん。
この人はそういうところがある人だった、と再確認して、小さく息を落とした。
まあ、そういうところがリーズさんのいいところなんだけれども。
「じゃあ、サツキ。何かほしいものある?」
「ほしいもの、かー」
改めてそう聞かれると困ったりする。
もともとそういう物欲は薄かった方だしなあ。
「うーん…、思いつかないなあ。リーズさんが私のことを思って選んでくれたものならなんでも嬉しいし」
「本当か?!よしわかった指輪にし」
そこまでいって、シオンがリーズさんの頭を思いっきり叩いた。
凄い良い音が路地裏に響いた。
こう、パコーン!って。
「何を言っているんですか、リーズ」
「何も叩かなくて良いじゃないか、シオン。とても痛い」
「でしょうね。痛いように叩きましたから」
「酷いじゃないか…。私だって一介の女の子だぞ」
「一介の女の子はほいほいと指輪をあげたりしません」
「いいよ、シオン。確かに指輪とかそう出るものじゃないけど、私が何でもいいって言っちゃったのが悪いんだし…」
「サツキ…!サツキぃ!」
そう言って、リーズさんが抱きついてきた。
私とリーズさんの背は私がちょっと小さいぐらい、なので毎回胸の当たりに私の口があたり。
息がとてもしづらいのである。
「はいはい、嬉しいのはわかりましたから、そろそろ離してやってください」
「そ、そうか。ごめん、サツキ」
「う、ううん、大丈夫だよリーズさん」
「そうです。大体ですね、サツキはリーズに甘すぎです。リーズもリーズですが、サツキもサツキで…」
ぐだぐだ、とシオンが説教を始めてしまった。
いやうん、私が悪いのはわかっているけれど説教が始まると長いんだよねえ、シオンって。
ちょっと困った顔をしていると、リーズさんが、ぽんぽん、と肩を叩き。
ちょっと外でよう、という顔をして誘ってきた。
うーん、でも、居ないと居ないでシオンはさらに起こるしー…でもシオンのお説教は長くなるし…。
よし。
二人で夜の街を見守ってこようか!
そう、だって私達は正義の吸血鬼、路地裏同盟なのだから!
次の日から一週間、私とリーズのご飯はとても貧相でした。
ご、ごめんね、シオン。