自由を愛する白き魔王《完結》   作:水華

10 / 10
シリアスな展開は苦手です。
ですがストーリーの展開上必要な犠牲なのです。(懺悔)


9話、王達の晩餐会

ウォオオオン!!!ガシャン、ガシャン

 

狼達が遠吠えを上げ、死者達が甲冑の()れる音を(かな)でながら突撃してきた。

 

「オラァ!」

開幕の一撃、正面に向かって震動を叩き込み騎士の甲冑を砕き吹き飛ばす。

 

「ハァァ!」「うりゃぁ!」

それに続く様にソウジとマルコも応戦し始めた。

 

「総帥、此処は我々に任せてお進み下さい!」

「ソウジ?」

 

「そうだよぃ、まだ間に合うかもな」

「マルコ・・・分かった、絶対に死ぬな!」

 

跳び掛かって来た狼を炎を噴かせた双剣で(なぎ)ぎ払い、生ける屍(リビングデッド)の首を銀閃が煌めき静かにずり落ちる。

 

「了解だよぃ」

承知(しょうち)!」

 

「レヴィ、カノン行くぞ!」

「ええ」「うん...」

 

2人が頷いたのを確認し、エド、レヴィ、カノンの3人は奥へと進む、そこには確かな信頼が見えた。

 

「さて、やるかよぃ?」

「えぇ、しくじらないで下さいね?マルコさん」

「うるさいよぃ」

ソウジの吐いた毒舌を受け長し、呪力を高める。いくら大騎士とは言え相手は神獣と生前は騎士だった者だ、負ける気は無いが油断は禁物、双剣に高密度の炎を翼の様に纏い羽ばたく鳥が(ごと)く舞う。

 

天然理心流(てんねんりしんりゅう)師範代、海王連合が3番隊隊長藤原宗次郎(ふじわらそうじろう)()して参る!」

刀を構え、宣言と共に縮地で高速に駆ける。

 

―儀式場side―

 

古城の一室、元は謁見(えっけん)の間だったと思われる祭場は今は見るも無惨な状態だった。一部天井が崩れ、壁には大穴が空き外の雨が撃ち込んでいる。魔方陣の中心たる祭壇は倒れ半ばより折れていた。

 

「うぅ...」

魔方陣の円周上に幼さの残る少女達が倒れて居り、意識を失った者はまだ良い方で、虚ろな目をした者や命の灯火が既に潰えてしまった者までもが居た。

 

「万里谷祐理!」

「...リリアナさん?」

銀髪をポニーテールにした少女の呼び掛けに意識を失っていた亜麻色の髪の少女は目を()ました。

 

「大丈夫か、どこかおかしな処等はないか?」

「・・・はい、大丈夫です」

暫し確認した裕理の答えに『そうか』と安堵の息が漏れた。

 

「あのっ、他の方は・・・」

その質問にリリアナは悔しそうに下唇を噛み、首を左右に振った。

 

「そ、そんな...」

裕理が息を呑む、その時。

 

ドカーン!ガラガラ

「「!?」」

出入口のドアが粉々に砕け、散乱し誰かが入ってきた。それは3人で先頭にガタイの良い銀髪に目鼻立ちの整った白いコートを羽織り右手に神々しい三叉の槍を持った青年、その(なな)め後ろに仮面で顔は分からないが、体型と身長から女性と少女だろうと思われる。

 

「あ、あれは!」

「リリアナさん?」

走り出したリリアナに裕理は慌てて着いていくのだった。

 

―エドside―

 

ドアを開けて(壊したとも言う)儀式場に入ったエド達はその光景に暫し唖然とした。

 

崩れた天井や壁はどうでも良い、魔方陣や祭壇もどうでも良い、だが倒れている少女達や虚空を見つめる虚ろな少女達はダメだった。やはり遅かったか、と元凶であるヴォバンや間に合う事の出来なかった自身に怒りが沸き上がって居たが、冷静さを欠くこと無く行動する。

 

「レヴィ、カノンまだ助かる子も居るハズだ、見てやってくれ!俺は船を『王よ』ん?」

エドが指示を出していると無事だった子が話し掛けてきた。その子はエドの前で(ひざ)を着き(こうべ)を垂れる。

 

「君は確か?」

「ハッ、私は、青銅黒十字(せいどうくろじゅうじ)所属の騎士、リリアナ・クラニチャールと申します。この間は知らぬ事とは言え申し訳御座いません、どうかその怒りはこのリリアナのみの命でご容赦頂きたく」

「!?」

裕理はリリアナと青年のやり取りで彼がカンピオーネで在ることを認識しその場にへたり込んで両肩を抱き震え始めた。気丈(きじょう)に振る舞うリリアナも肩が小さく震えていた。エドは盛大に溜め息を吐き思案する。

 

【さて、どうするか?】

「エド、その子達はお願い、私は他の子とカノンを」

「あ、あぁ任せた」

レヴィに返事をしたエドはチラッとカノンを見る、フラフラと歩くカノンも心配だが、先ずは目の前の子達を相手にする事にした。

 

「クラニチャール、俺は気にしていない、それより無事ならアイツを手伝ってくれ」

そう言ってレヴィを指差すエド、一般的にそれを丸投げとも言う。

 

「あとその子も頼めるか?」

そう言ってエドは裕理を指差す。裕理はビクッと反応するが、恐怖のせいか口は動くが声が出なかった。

 

「王の寛大(かんだい)なご処置、感謝致します。お任せ下さい!」

(うやうや)しく一礼するリリアナにエドは溜め息を吐くのだった。

 

―カノンside―

 

カノンはフラフラと天井が崩れた所まで歩いて、そして焦点の合わない目でそれを(なが)めていた。

 

「ドナ...ステファニー......」

瓦礫(がれき)の下には運が悪かったのだろう、複数の少女だった物が転がっていた、そしてカノンの友達も・・・

 

ガラッ

 

「?」

瓦礫の崩れる音が聞こえ、何となく視線を動かしたカノンは目を見開いた。

 

「ミシェル!」

カノンは直ぐに瓦礫を退かして声を掛ける。

 

「ミシェル!聞こえる?私、カノンよミシェル!!」

ミシェルと呼ばれた少女は崩れた天井から少しズレた場所に居たため助かったのだろう、(もっと)も無事では無かったが...右手と右足が瓦礫によって潰され、生きてはいるが虚ろな目をしており精神が壊れていることは明白だった。

 

「カノンちゃん...」

「・・・・・・」

そんなカノンにレヴィアは声を掛けられず、カノンは返事を返さないミシェルを無言で抱き締めた。

 

「「・・・・・・」」

手伝いに来たリリアナと何とか立てる様になった裕理はその光景で事情を(さと)り、何も言えない。

 

【カノン・・・くそジジィ、必ず落とし前を着けるからなぁ#】

エドは怒りを表には出さない、助かった彼女達に負担が掛かるからだ。だが再度エドは内心で報復を決意する。

 

ピッシャーン!ゴロゴロ

「「「「!」」」」

穴の外から雷が落ちる轟音が響く、すぐ近くで且つ膨大な呪力を(はら)むそれはただの雷で無い事は直ぐに分かった。

 

「・・・」

カノンはミシェルをゆっくり横にし、額に付いた前髪を左右に払ってあげると無言で穴へと歩き始めた。

 

「カノンちゃん?・・・まさか?!」

「「?」」

何かに気付いたレヴィが止めようとするが、少し遅く。

 

「エンジェルズウイング」

カノンの背に白く輝く光子(フォトン)が集まり1対の翼を生成すると羽ばたき、飛翔する。

 

「!待てカノン!!」

エドの静止も聞かずに飛んでいくカノン、『チッ』と舌打ちしつつも行き先が分かるので、切り替える事にした。

 

「あの膨大な呪力...まさか!?」

「そんな・・・」

リリアナと裕理もカノンが何者で在るかを察した、ただ(いん)の仮面で霊視が発動する可能性が低い為、イマイチ確証を持てないが。

 

「レヴィ、カノンは後回しだ、彼女達を()()乗せるぞ!」

「!?分かったわ!」「「!?」」

エドの横の空間が歪み木製のドアが出現した。

エドの権能黄金の鹿号(ゴールデンハインド)の応用で、亜空間に有る船の一部を召喚して直接船に乗り込めるが、エドがビットの役割を(にな)うので動けない制約が有り、当然本人が乗り込む事は出来ない。

また、少女達を乗せると言うことは戦闘で船を使うのは彼女達に危険なので出来ないが、そもそも夜なので使う予定も無かった。

 

困惑しながらも2人はレヴィの指示に従い少女達を船に乗せて行った。死体も含め全員が乗った事を確認し、ドアを閉じる。儀式場にはエドだけが残った、最早(もはや)全力で暴れるのを躊躇(ためら)う理由は何も無い、戦場へと向かうエドは怒りを現しながらもその口端(こうたん)()り上がっていた。

 

◆◆◆◆◆◆

 

ウォオオオン!!、ピカッドゴーン!

 

雷が落ちる、だがその雷を銀線が(きらめ)き切裂かれた。

 

「!」

その直後、巨大な拳が落ちて来て、剣を持った男は何とか横に(かわ)したが、隕石が落ちた様なクレータが出来て発生した衝撃で男は吹飛んだ。

 

【ハハ、流石は最古の魔王様、強いな~♪でも今は退くべきかな?】

金髪にアロハシャツの剣を持った男、サルバトーレ・ドニは戦闘狂で在りながらも決して愚者では無い、彼我(ひが)の戦力比を冷静に判断し撤退も念頭に置いている・・・まぁ非っ常ぉ~~に勿体無いとも思っているが、それは置いておく。

 

「小僧、このヴォバンの獲物を奪ったのだ、(ただ)で済むと思うな!」

ビリビリと怒声が響く、声の主は30メートルを()える灰色の鋼の様な毛皮に包まれた狼、ヴォバンが権能貪る群狼(リージョン・オブ・ハングリーウルヴズ)によって化身した姿だ。

 

ウォーン!雄叫びに呼応して周囲の空気が収束し、ドニに向って開放された。

「ハァァ!」

気合と共に呪力を高め、抵抗力を上げると共に体の周りをルーン文字が(おど)る。手に入れたばかりの権能鋼の加護(マン・オブ・スチール)を発動して体重を増加したのだ。

 

「これで動けまい」

【!ハハッ、ちょっとヤバイかな?】

ヴォバンが拳を振り被った時、白く輝く球体が降注(ふりそそ)いだ。

 

「ムッ!?」

振上げた右腕をそのままガードへと移行して防ぐ、ドニもヴォバンの気が逸れた事で(あえ)て風に乗って距離を取りつつ剣で向ってきた光球を切裂く。

 

「誰だ!?」「!?へ~♪」

ヴォバンとドニは空を見上げる。そこには白く輝く1対の翼を生やし仮面を着けた背格好(せかっこう)から少女と思われる者が(たたず)んでいた。

 

「・・・ヴォバンはどっち?」

「何だ、小娘?」

 

「あなたがそう?じゃあ...死んで」

無数の光球が現れ、灰色の狼へと降注ぐ。

 

「舐めるな、小娘がぁ」

周囲の空気を収束し壁にして光球を弾く。

 

「そう...ロンターノVer3」「グォ!?」

光球から剣状の光に変える事で空気の壁を切裂き、ヴォバンに直撃する。しかし狼の毛皮で弾かれるが完全には防げずに軽い裂傷で済んでいた。

 

「おのれ器用な真似を『ハンドソニック』なに!」

光の剣、その影に隠れて接近していたカノンが両手に展開した手甲剣を振るうが矢張り傷は浅かった。

そして(つか)もうと迫る手をひらりと(かわ)して距離を取る。だが逃すまいとヴォバンが()おうとしたが。

 

「ここに誓おう。僕は、僕に斬れぬ物の存在を許さない。この剣は地上の全てを切り裂き、断ち切る無敵の(やいば)だと!」

ドニが銀色に輝く腕に持った剣で斬りかかって来て、直感で危険を感じたヴォバンは追撃を止めて飛退(とびの)いた。

 

「・・・」

カノンは無言でドニの側に降りて翼を消すとジーっと真意を問う様にドニを見詰める。ドニは肩を(すく)めて理由を話し始めた。

 

「言っとくけど、僕とジイ様の戦いに割込んだのは君だからね?それに三つ(どもえ)ってのも愉しそうだ♪」

「・・・そう、(かたき)が取れれば何でも良いわ、邪魔はしないで?」

「へ~そうかい、僕のメリットは?」

「......特に無い」

「じゃぁ約束出来ないよ」

「そう、困ったわ...」

 

「貴様等ぁ」

自身を無視して話すドニとカノンに切れたヴォバンが無数の狼を召喚して(けしか)けたが。

 

ゲートオープン(砲門開放)セット(狙い付ける)ファイヤー(砲撃)!」

ズドドドドドン!!!!

 

「人のファミリーに手ぇを出して、覚悟は良いか犬っころ?」

「あっお兄ちゃん...」「エド?」

狼達を殲滅したのは背後の波紋から無数の大砲を出現させたエドだった。

 

「よぉドニ、さっきの件、俺達と共闘するなら今度再戦してやっても良いぞ?」

「本当かい!あっ出来ればその子とも決闘したいな?」

「ハッ、欲張んなよ?俺で手を打っとけ」

「え~まぁ今回は良いか」

 

「貴様らまたしても、それに犬だと?一緒にするなぁ!!」

ヴォバンの怒りに呼応して無数の雷がエド達に落ちる。

 

「フッ!」「オラァ!」

ザシュ!ドニは剣でエドは黒く染まった槍、三叉の神槍(トライデント)で雷を切り裂いた。

 

荷電機動(オーバードライブ)

カノンは()えて雷を受け、頭頂部に顕現(けんげん)した蒼い角で吸収して全身に(まと)う。

 

「ディレイ...ハンドソニックVer2」

光子(こうし)で構成された薄刃の長剣を展開し、神速で斬りつける。

 

「グゥオオ、こしゃくな」

権能荷電機動(オーバードライブ)は頭部に1本の蒼い角を生やし雷を自身に落として纏い、神速で動ける権能だ。そしてディレイは思考加速で神速機動を制御出来る。

 

「うっ!!」「カノン!無理するな落ち着け」

ただし反動で強烈な頭痛に襲われる為、使い処が重要なのだ。エドも知っている為、苦言を(てい)する。

 

「・・・分かった」

「フン、少し驚いたが貴様の神速にはリスクが有る様だな」

「・・・・・・」

「まぁ良い、3対1か面白い先ずは」

ヴォバンが膨大な呪力を使う、天蓋(てんがい)に火が灯りやがて炎となって焔から業火そして劫火へと至った。

 

「私に挑む資格が在るか試してやろう」

いつの間にか狼の化身を解いて空中に居たヴォバンがパチンと指を鳴らしたのを合図に権能劫火の断罪者(レッド・パニッシュメント)の劫火が降りてくる。

 

そしてカノンが両手を組んで()ちてくる劫火に向け、聖句を(とな)えた。

 

「咎人達に、滅びの光を。神の炎よ、全てを撃ち抜く光となれ。貫け!閃光!最後の審判(フィナーレ)

此方も呪力を注ぎ込んで光子(フォトン)を収束し白い柱の様な砲撃で劫火を撃ち抜いた。

 

「ほ~う」「へ~」

暫し拮抗したが、僅かにカノンの収束砲が上回り劫火を貫いて互いに拡散していった。

 

【カノンが切り札を切ったか、さてどうするか...】

 

「「「「!!!!」」」」

その時、4人とも体に力が(みなぎ)るのを感じ、宿敵の顕現を悟った。

 

◆◆◆◆◆◆

 

「なんじゃ神殺しが居る思っちょったら、お前か」

「・・・火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)か」

それは地面が割れ、マグマと共に(あらわ)れた、赤い浴衣の様な着物を着た日本のヤクザを彷彿(ほうふつ)とさせる風貌(ふうぼう)の男神、輝く火の神だった。

 

「久しいのぉこれで3度目か、そろそろ決着を着けにゃ~いけんが、4対1は流石にゴメンじゃき」

そう言って両手をゴポゴポと真っ赤なマグマに変え空に向かって打ち上げた。

 

「流星火山!」

「チッ、カノン!マルコ達の所に行け!!」

「!?でも・・・」

エドの命令にカノンは渋る、まだ仇討(あだ)ちを諦めて居ないのだ。

 

「間違うな!!またファミリーを失う気か?マルコ達を避難させて来い!」

「!分かった、荷電機動(オーバードライブ)

ピシャン!再度自身に雷を落として神速に入ったカノンはその場を離れた。

誰も追撃しないのはエドが牽制していたからだ。

 

そして降注ぐ火山弾の雨、揺れる大地、吹き荒れる嵐、裂ける大地、まるで終末の様な光景が其所(そこ)には有った。

 

後に魔術師の間では魔王達と神による戦争、王達の晩餐会(ばんさんかい)と呼ばれた大事件だった。




自由を愛する白き魔王はこれにて完結です。
読んでくださった方々には御礼と謝罪を。

尚、完全な終了では在りません。
この世界観を引継いで原作編を新構成で始めます。

まぁ原作では主人公を絡ませるイベントが少ないのでほぼ脇役に成ってしまう為、苦肉の処置です。
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