自由を愛する白き魔王《完結》   作:水華

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お久しぶりです。
いや~粗筋は出来て居るのですが中々キーボード(筆)が進まなくて・・・
今回は短めです。


4話、正史編纂委員会

東京某所、1人男性が机に座り山の様に置かれた書類の整理に(いそ)しんでいた。

 

コンコン、コンコン、書類整理が一段落した時、不意にドアがノックされる。男性は『入れ』と告げながら扉へと視線を向けた。

 

「失礼します。」

入って来たのはスーツを着たありふれたサラリーマン風の青年だった。

 

「甘粕か、どうした?」

男の質問に甘粕と呼ばれた青年、甘粕冬馬は答える。

 

「はい、2点程ご報告が有りまして、沙耶宮室長」

男の名は沙耶宮(さやのみや)(きょう)、正史編纂委員会東京分室の室長を勤める、沙耶宮家の現当主だ。

 

「では、聞こうか?」

 

「まず、新潟県の御神楽岳(みかぐらだけ)で観測された謎の呪力上昇現象の続報ですが福島分室、新潟支部の調査では現在進行形で尚も上昇中であり神獣、最悪まつろわぬ神の顕現は確実とのこと」

 

「・・・そうか」

その報告を聞き、沙耶宮は黙考する。人員の配置や周辺地域の閉鎖などの対応について考えて一旦報告を全て聞く事にした。

 

「それでもう1つの報告は?」

「先日の新たに現れた王の事はご存知ですか?」

 

「ん?、確かスペインのヒホンで確認された!?まさか・・・」

「えぇ、航空券の購入記録と搭乗履歴から東京に来て居ると思われます。」

 

「こんなに時に、いや・・・」

顎に手を当てて考え込む沙耶宮室長は結論を述べる。

 

「甘粕、ちょっと王に謁見して来てくれ」

「!?、さすがに給料以上はご遠慮願いたいのですが...」

冷や汗を流す甘粕に沙耶宮は無言で微笑む、それに諦めた甘粕は溜め息をついて

 

「は~分かりました、もしもの場合は特別手当てをお願いしますよ?」

「あぁ、勿論だとも安心して交渉してくれ、あっ!最低でも神獣討伐の依頼を受諾して貰う様に」

 

「なっ!?」

ブラック企業ばりのムチャぶりに絶句する甘粕だが、悲しきかな彼に拒否権は無いのであった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

東京23区の根津に有る古本屋、其所に1組の男女が居た。

1人は長身の白髪にがっしりとした少年、もう1人は青い髪を腰まで伸ばした少女、2人とも整った顔立ちをしており周りの視線を集めていた。

 

「すみません、草薙一朗さんはご在宅でしょうか?」

「じいちゃん?、うん居るけど・・・お兄さん達は?」

エドが店番をしていた10歳程の少年に話し掛けると少年は疑問を投げ掛ける。

 

「ん~君のおじいさんの友達の息子かな?」

笑顔で答えるエドに子供は『へ~そうなんだ~』と(うなず)いて。

 

「じいちゃん、お客さん!」

奥に向かって声を掛ける、数秒して奥から初老の男性が出てきた。

 

護堂(ごどう)や、お客さんって?」

「うん、このお兄ちゃん達がじいちゃんに用だって」

 

「どうもエドワード・ジャクソンです」

「おや?君はもしかして...」

 

「はい、パーシー・ジャクソンの息子です」

「そうか、大きくなったね~、それで、そちらのお嬢ちゃんはフィアンセかな?」

【フィ、フィアンセ!?】

(ほが)らかに微笑みながら質問する一朗氏にレヴィはテンパるも。

 

「彼女はレヴィア、フィアンセじゃないですね、あと(仲間になるように)口説いて居る途中かな?」

 

「え、えっと、レヴィア・ブルームです」

【ふむ、なるほど、それとこれ以上女性を立たせたままにするわけにもいかんな】

何かを察した一朗氏は、取り敢えず家に上がって貰うことにした。

 

「はい、よろしく、立ち話もなんだ、良ければ上がりなさい、護堂やもう少し店番頼んだぞ?」

「うん、わかった!」

 

◆◆◆◆◆◆

 

草薙家の居間、そこで家主の草薙一朗とエドワード・ジャクソン、レヴィア・ブルームが対面で座り話していた。

 

「そうか、パーシーとエミリーが...」

「はい、残念ながら・・・俺意外の生存者は絶望的と(うかが)っております」

一通り、海難事故として経緯を説明したエドに一朗氏は笑顔を作って声を掛ける。

「二人の事は残念だが、君だけでも無事で良かった」

「・・・はい」

 

「もし困った事が有れば言いなさい、いつでも力になろう」

「えっと、ありがとうございます。」

 

「それと折角来て貰ったのだ、良かったら夕食を食べて行きなさい」

「良いんですか?、じゃあお言葉に甘えさせて頂きます♪」

「えっと、ありがとうございます」

夕食の誘いにエドとレヴィは乗る事にしたのだった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

草薙家を後にしたエドとレヴィの2人は宿泊しているホテルへと向かって歩いていたが、途中に有る人気の無い公園で立ち止まった。

 

「出てきなさい、居るのは分かっております!」

レヴィの警告に暫しの静寂(せいじゃく)が訪れたが、物陰から1人の青年が出てきた。

 

「隠行には自信が有ったのですが、流石は王の従者様ですかね」

「・・・」

「誰だあれ?」

現れたのはサラリーマン風の青年で、レヴィは警戒しているがエドは特に気にして居らず、誰なのかが気になっていた。

 

「初めまして王よ、私は正史編纂委員会、東京分室所属、甘粕冬馬と申します、王のご尊顔を拝し光栄の極みにございます。」

(うやうや)しく一礼する甘粕。

 

「正史編纂委員会?」

聞き慣れない名称に首を傾げるエドを見かねてレヴィが説明する。

「正史編纂委員会は日本における魔術結社で国家とも繋がりの深い組織です、日本国内の魔術に関連する事象の調査や解決もしていましたね」

それにエドは『へ~』と相づちを打つが、レヴィは構わず進める。

 

「それで、そのエージェントがどういったご用件ですか?」

「ハハ、そんな身構えないでくださいよ、正史編纂委員会として王への面通しと、この国へ来た目的等を教えて頂けたらと考えておりまして、はい」

 

「ん?、目的?」

「御身はどういった王で在らせられるのか我々は把握仕切れておりませぬゆえ、ご容赦を」

 

「目的ってもな~ただ知り合いに会いに来ただけだし、特にね~わ」

「・・・はい?」

一瞬、呆けた甘粕にエドは再度告げる。

 

「いや、だから特に無いって、後は観光でもして帰るだけだし」

肩を(すく)めるエド、それを見て杞憂(きゆう)である事を悟った甘粕は話題を変える事にした。いや、寧ろ此処からが本題かもしれない。

 

「ならば王よ、1つ依頼を受けては頂けないでしょうか?」

「ん?依頼?」

 

「ええ、実はここ数日、呪力の高まっている地域が有りまして、高確率で神獣ないしまつろわぬ神の顕現が予測されます。王にはそれを討伐して頂きたいのですが、どうでしょう?」

 

「エド・・・」

心配そうに見詰めるレヴィに笑顔を見せて、甘粕に向き直る。

 

「良いですよ、引き受けましょう」

「!本当ですか、ありがとうございます、では場所を移しましょう。」

詳細を聞く為、甘粕の案内で東京分室に向かおうとした時、突如ケータイがなり、一言断ってから甘粕が通話し、その顔色には焦りが浮かんでいた。

 

「...何か有ったようですね」「...だな。」

通話が終わり戻った甘粕が申し訳無さそうに告げる。

 

「王よ、いきなりで申し訳ありませんが、今すぐ現場へ向かいます!」

「何か有ったようだな?」

「えぇ、想定された中の最悪のケースが発生しました」

 

甘粕に案内されて2人は急遽、新潟県へと向かった。

 

◆◆◆◆◆◆

 

カーン、カーン

 

新潟県の御神楽岳(みかぐらだけ)、その(ふもと)の林の中で何かを打つ音が響く、その出所には1人の男が佇み大きな槌を振り下ろしていた。

 

その男は白い着物と青い(はかま)を着ており、黒い髪は左右で()わえて居る。

髪型を除けば一見どこぞの神主の様にも見えるが正面から見ると眉間(みけん)の辺りに大きな1つ目と明らかに人では無かった。

 

トントン、カーン、カーン!

 

彼が槌を振るう度、岩の上に有る何かが整形されて行く、それはやがて1つの矛へとなった。

 

「ふむ、こんな物かの~、ん?」

その矛の出来具合を確かめて居ると何かに気付いて振り返る男の視線の先には1人の少年がいた。

 

「我に何か用かの~、依頼かえ?」

「へっ?依頼ぃ?」

「何か、例えば剣を打ってくれとかの、じゃがその様子では違うのぉ?」

男は少年をじっくり観察し、『ふむ』と何かに納得する。

 

「お主、神殺しじゃな?我の首でも取りに来たか?」

「!?ああ、悪いが倒させて貰う」

そう言って少年、エドは腰を落として構える。

 

「そう簡単に取れるとは、思わぬことじゃ!」

 

カーン!!、地面を槌で叩くと其所(そこ)を起点に地面から剣が生え、エドへと向かう。

 

「オラァ!」

ドーン!ビシ、バキバキと空間に(ひび)が入り、次の瞬間にはエドへと殺到していた剣山が粉々に砕かれる。

 

「ほぉ、衝撃波かのぉう?、じゃが」

再度、地面を叩くまつろわぬ神、その都度地面より剣山が生えるが、エドも空間震で砕き辺りには破片が散らばる。

 

【なんだ?】

先程からの剣山と空間震の応酬に違和感を感じるエド、徐々にだが砕かれる迄のタイムラグが長くなっていた。

 

「ふむ、衝撃波とは、ちと違うようじゃのぉ、震動かぇ?」

「・・・」

長引くのはまずいと感じたエドは攻撃の間が出来た瞬間に駆け出して接近するが。

 

「そう()ぐで無い!」

そう言った、まつろわぬ神の手には矛が握られており、矛先を地面に向ける。

 

猿女(さるめ)の君の遠祖天鈿女命、すなわち手に茅纏(ちまき)の矛を持ち、天石窟戸の前に立たして巧にわざおぎす!」

聖句を謡い、矛先を地面に突き刺す。

 

「!?クッ」

ビシィ、ゴゴゴゴゴゴ!!!

地面が裂け、エドを呑み込まんと迫るも、直前で危機を感じたエドは回避行動を取っており且つ、狙いも甘かった為、落ちずに済んでいた。

 

「ムッ!?・・・やはり(にな)い手の様には()かぬか、まぁ良い」

矛の刃は砕けており、唯の棒となったそれを投げ捨てる。

 

「それより神殺し、お主の名は何と言う?」

 

「・・・エド、エドワード・ジャクソン、でっ?聞いたからには教えてくれんだろ?」

 

(しか)り、我が名は」

 




次回はバトルが中心になります。
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