ダンジョンに浪漫を求めるのは間違っていない   作:マジカル☆八極拳

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暖かい、ここは何処だろう…、取り敢えずドゴゾの部屋の中で、布団かベッドに寝かされてるのは理解した。
あの何もない黒い空間では味わえなかった暖かみと、目を開ければ見知らぬ天井。

ポヨン。

腕を動かそうとしたら何か柔らかいモノに当たった。
なんだろう?と見てみれば黒髪の小さな女の子が居た。居たというより抱きつかれていた。何か良い夢でも見ているのだろうか、突如『グヘヘへ』と言いそうな ーそのあと実際言っていたー ゲスな笑みを浮かべて『ベル君…やっと僕を…』と寝言を言っているが、幼い女の子がするような顔でなくて思わず苦笑いする。

抱き枕代わりの俺はゆっくりと、だが起こさないように素早く彼女から離れると自分が何も着ていない事に気づく。そして体のあちこちに包帯が巻かれている事も。

どうやらこの子に助けられたらしい。拙くもしっかりと巻かれ少し血の滲む包帯がそれを教えてくれた。
彼女には感謝しないと…まぁ取り敢えずは服を着よう。そう思いそれなりに広い部屋の中を物色していると、誰かと目があった。

背は高く、だいたい自分より大きいくらいか?橙色に燃ゆる炎みたいな髪と切れ長の目に、髪と同じ色の狐の耳と先の黒い大きな尾が特徴的だった。
ほー、面白い格好してるなこいつ。そう思いながら頬を掻こうと腕をあげる。
鏡の中のそいつも同時に腕を上げる。同じ仕草をするそいつにやっとそれが鏡であり、そいつが自分であったことに気づいて絶叫する。


『ヌァァァンじゃコリャァァァァぁ!!!??』



第2話 狐、目覚める。

 

突然の大砲でも落ちてきたかのような絶叫に思わず飛び起き、身を守るようにして辺りを見回す。部屋には特に誰も居らず、強いて言え自分の体をペタペタ触りながら『なんじゃこりゃぁぁ!?』と叫んで鏡を睨む狐人《ルナール》。

 

一目見て瀕死だった彼を拾って来たのは自分だが、正直ダメかもしれないと思っていた。そう思える程の出血量だったしそれほどの傷だった。

それがまさかこんな騒げるほどに回復するしてるとは…僕と同じ冒険者なんだろうか?

ひとまず彼に声をかけてみよう。

 

「あ、あの〜…大丈夫、ですか?」

 

「体は大丈夫だが『身体が』大丈夫じゃねえ!!と言うかお前誰だ?!」

 

 

いや、あんたが誰だよ、あとどういう意味なんですかそれ。

 

 

「俺か?俺は…暁。暁…だと思うけど…いや体がね?」

 

いや、聞かれても…と苦笑いで流す。

顎に手を当て考え込んだあと出た言葉は頼りない言葉に僕じゃ手に負えないと考える事を放棄した。

ひとまず彼に服を渡して着てもらい、僕の主神が起きるまで大人しくしてもらう。と言うかあの爆音で何でこの神様起きてないんだろう。ちょっと心の中で愚痴りながら彼女の体を揺すって起こしにかかる。

 

 

 

 

 

その後、起きた神様ー僕の主神・ヘスティア様ーがご友神のミアハ様ー懇意にして下さってる施術院の神様でとても優しい方だーを呼んで彼の容態を診てもらうとミアハ様が不思議そうな顔をしていた。どうやら昨日傷が嘘のように塞がっていたらしい。

その代わりと言ったらなんだけど、どうも自分が誰か、此処がどこかとか色々忘れてしまっているみたいだった。

ミアハ様は『記憶の混濁』と言ってたかな?体と心にダメージを負った脳がパンクして起きる症状なんだそうで、生活をしているうちに記憶取り戻すだろうと説明を受けた彼は一言『そうか』と言って興味を無くしていた。

 

 

「それで君はこれからどうするつもりなんだい?」

 

ミアハ様は一通り検査したあと、僕らに任せて帰って行った。本当によく出来た人…いや、神だった。ミアハ様を見送った僕達は彼、アカツキさんにこの街のこと、 僕ら冒険者の事を説明する。

 

【迷宮都市オラリオ】 この世界に於いて最もホットで注目されている場所。その名の通り【ダンジョン】と呼ばれた地下に伸びる大穴の迷宮の上に作られた都市だ。

 

そんなダンジョンに挑戦する者の事を【冒険者】と人々は呼んでいる。冒険者は天界から娯楽を求めて降りてきた神々から【恩恵】ーファルナーを授けて貰い【眷属】ーファミリアーとなって、このオラリオで生活している。

冒険者と言ってもその形態は様々で、ダンジョンを探索して生計を立てる探索系と、回復薬や武器に防具といったダンジョンに潜る為の道具や、日々の生活に必要な食材を売買して生活資金を集める商業系のファミリアなど様々である。

 

もちろん僕もこのダンジョンを攻略し夢を追う冒険者の一人だ、…といっても、つい最近冒険者になったばかりの新米だけどね。

 

「へぇ、夢を追って冒険者ねぇ…そいつはどんな夢なんだ?」

 

彼に訊かれて僕は少し戸惑ったがそれに応えた。

 

「僕は御伽噺に出てくるような英雄になって女の子と恋に落ちたり…ハーレムを作りたいんです!」

 

僕の夢を聞いた彼は目を見開いて気持ち良く大声で笑った。

少し恥ずかしかったけど、なんでか彼に笑われるのは嫌じゃなかった。




実に愉快だった、彼の願いもそれに賭ける想いも全てが本物で本気で、何より眩しかった。それに『英雄になりたい』と、彼はそういった。それが何よりも嬉しかった。

座していたベッドから立ち上がり、彼の前で土下座する。

彼が英雄になりたいのならば、俺がこの見も聞きもしたことがない、この世界でする事は決まった。彼には多大な恩がある。命を拾ってくれた恩が。そしてこの生命を賭けても良いと思える願いが。

ならば

「少年、この俺を仲間に入れてくれないか?少年に貰ったこの生命、少年がその夢を諦め折れるまで付き従おう。少年が英雄になるその日まで、俺がその背中を護り通そう」

「だから俺を、仲間にしてくれ」

困惑する彼は二、三度本当にいいのか?と尋ねるも、俺の意思が変わらないのを知り最後には頷いた。

「ようこそ、ヘスティア・ファミリアへ」
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