ダンジョンに浪漫を求めるのは間違っていない   作:マジカル☆八極拳

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前話の分割した部分です
フィン視点




第7話 勇者の意地

 

 

 

『雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインに釣り合わない』

 

 

初め、それを感じたのはベートがアイズに対して言った時のこと。

突如全身を駆け巡った怖気と悪寒。

店の一角から飛んできた鋭い殺気のようなもの。

すぐに消えたので酒を飲み過ぎて、酔っ払った時の気持ち悪さと勘違いしたのかもしれない。

遠征での疲れが抜けきれなかったのかも。

 

そう、最初はそう思った。

この男が僕に話しかけてくるまでは…。

 

 

ロキ・ファミリア 団長 LV.6 フィン・ディムナ。

 

自他共に認めるが僕より強いものはそうそう居ない。

それは個人の能力としても団長、部隊を指揮する者としてもだ。

何故なら僕には【危険を報せる親指】がある。

これはスキルとは別の生まれ持ったもので、この指のお陰で幾度も危ない所を逃れてきた。

 

が、それも今日までなのかもしれない。

 

ベートに絡まれ、それがこちらに向かって歩いて来た時から。

いや、それが僕を見定めた時から僕の【親指】が激しく震えていた。

 

小人族(パルゥム)という成人してもヒューマンの子供にしか見えない僕へと真っ直ぐ歩み声を掛けてきた時に先程の悪寒は間違いじゃなかったことを悟る。

 

僕だけにしか分からないこの若者の危険度(ヤバさ)

能力的には恐らくこちらに分がある筈だが勝てるビジョンが見えない。

なす術もなく只の一手で【終わる】予感。

幾人も手に掛けてきただろう裏の者独特の匂い。(気配)

モンスター専門ではなく人を狩る事に長けているだろう彼の強さ。

 

何故、こんな輩が、意気揚々とこんな場所に居るのか。

理解ができなかった。

話しかけられて分かる彼の殺意と怒気の具合。

 

求められる謝罪の言葉と意思を座ったまま素直に述べる。

不手際によりミノタウロスを逃したのはこちらだ。ベートはああ言ったがどちらが悪いとなれば、大元を正せばそれは僕等である。

 

団長としての立場がある以上、立って謝る事はできないが彼もそれを察してくれる筈だ。

 

案の定、こちらの意を彼は汲み取ってくれはしたが彼の求めていたものを読み違えたらしく次はロキにその鉾先が向く。

 

神とはいえど、下界に降りた神々はそれこそ一般人程度の強さしか持たない。

何かあったらそれまでだ。何も出来ぬまま瞬きの間で全てが終わる。

 

どうすればいいのか思考を逡巡させてる間に対話が始まった。

 

 

 

 

その対話を聴いて再認識する、こいつはホンモノだ。

 

 

本当にヤるとなればたった一人で【 ロキ・ファミリア】を敵に回すし、何の考えもなく何の躊躇いもなくロキを殺すだろう。

 

止めろ、止めてくれ。

彼を、この得体の知れないナニカヲ刺激するのは止めてくれ。

頼むから伝わってくれ。

話が進めば進むほどに高まる周りの警戒心と殺意。

それに連れて痙攣しだした親指。

努めて顔に出さずには居るが今の僕の状態を分かって居るのは付き合いの長いリヴェリア、ガレス、あとはしっかりとわかっては居ないだろうが僕の事を好いてくれてるティオネが異変として感じてくれてはいるだろう。

 

ロキは相手を値踏みし確かめ試すような事を言っていく。

ダメだこの神、早くどうにかしないと。

 

そう思うのが遅かった。

行動するのが遅かった。

外聞など投げ捨てロキに謝らせればよかったのだ。

 

だがそれも手遅れだ。

 

彼が纏う雰囲気が変わる

一瞬の間、空気が止まり

僕の親指が()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

魔力が迸る。

橙色だった筈の毛色が金色に変わり、黒へと塗りつぶされる。

彼の後ろで揺れていた尾がいつの間にか4本へと増えている。

それでも少ないと感じる、あとは5本は足らないそう思わせるほど何かが足りない。

 

彼の背から黒い獣が、狐に似た何かが周りを睨み吼えるのを幻視する。

 

彼の顔は笑顔なのに()()()()()

見えている表情とそのなかにある感情が別のものだった。

ティオネが一度僕と女絡みで色々あった時このような顔をしていた。

彼がその顔でロキを見て口を開く。

 

 

 

 

「それが、答えでいいんだな」

 

ゆっくりとロキに問うがロキはアレ(殺意)を真正面から受けているせいでまともに息をする事が出来ないでいる。

当たり前だ、神とは言え今は普通の人間程度でしかないんだ。

 

『ただ振りまかれただけの殺意』ですら弱いものは泡を吹き白目をむいて気絶したり、中には失禁しているものだって居るんだ。

 

最上級クラスの冒険者ですら呼吸を忘れているのに彼女が普通で居られるわけがない。

 

「っ…は、はっ、ま、まっt」

 

答えようとするも声が出ていない。

陸に上げられた魚の様に口をパクパク開けしめするだけだ。

それをどう捉えたのかはわからないが判決が下る。

 

「…そうか、ならば」

 

 

 

 

 

 

 

【死ね】

 

 

 

 

 

 

死の宣告。

終わりがくる。

 

待て…待つんだ、待って、待ってくれ待ってください待ちやがれ!

 

ふざけろよ、こんなバカな事があってたまるか、小人族復興という夢の為にここまで来たんだ。

夢の為にここで、この地位を得るまでやって来たんだ!

それをこんな、ポッと出たワケの分からないものに壊されて、

いいものじゃ無いんだ、させていいものじゃ無いんだ!

 

誰か、誰か動ける者はいないのか?

 

だめだ。

動けない。

幹部もみんな完全に呑まれている。

豪胆で剛胆なドワーフのガレスだって拳を握りしめ死を覚悟した顔をしている。

 

誰か居ないのか

 

誰か誰か誰か誰か誰か誰か!!

 

 

 

 

……誰か…だと?

 

 

 

……………ふざけるな。

 

 

ふざけるな!!!

 

 

自分は何をしている?

 

何故誰かに助けを求めているんだ?

 

自分の名を思い出せ、自分の夢を思い出せ!!

 

その名に付けられた【勇者】(ブレイバー)というのは飾りか?

 

そうじゃないだろう!!

 

周りを見ろ、動けるのは今、事前にコレの異常さがわかっていて覚悟のできていた自分しか居ないんだ。

 

ならば自分がやるしかないだろう、やるしかないんだ!

何もせず家畜の様に殺されるのを待つなんて出来るわけがない。

死ぬなら ー 諦めるわけではないが ー どうせ死ぬのなら、足掻いて足掻いて足掻いた先で死ぬべきだ!!

 

生き残ってやる、恥なんてくれてやる、どんな恥辱ですら飲み込んで生き延びる

 

それが、小人族復興の夢を掲げた

最も勇気ある種族と呼ばれた小人族の

 

 

フィン・ディムナの《意地》だ。

 

 

覚悟が決まれば動くのは早かった。

彼とロキの間に入り盾となる。

僕という邪魔が入ったことで僕に対して殺意が向けられる。

 

体が重い、心が寒い、気持ちが消えそうだ、逃げ出したい、だがもう後には引けない。

やるしかないんだ、フィン・ディムナの全てを賭けて真正面からコレと対峙する。

 

 

 

「待て!待ってくれ、謝る!ロキに謝罪させるしベートにも謝罪させる!!」

 

「…」

 

「必ずだ!君が望む全てを受け入れる!!受け入れさせる!だから、殺すのだけは止めてくれ!頼む。この通りだ…」

 

 

彼に深く頭を下げてその時を待つ。

 

全てを出し切った。

持てる勇気も恥じも何もかも。

あとは彼の良心に任せるしかない。

 

「わかった」

 

やる事はやったんだ。

これで死ぬことになっても悔いは…ん……今なんといった?

 

「聞こえているだろうか?わかったと言ったんだが?」

 

気がつけば彼から出ていた殺気が嘘のように無くなっていた。

何も無かったかのように日常の空気に、ただ静かなだけの空間に戻っていた。

 

 

「す、すまない。君の要求だが流石に今彼等に謝罪させる事はできない…君の殺気に当てられてまともに話せる状態じゃ無いからね」

「それは…こちらも理解している。こちらの望みは後日、そちらのホームに出向かせて頂いた時に呑んでくれれば問題ない」

「ありがとう、君が話の分かる人で助かる」

「何、こちらも貴方が止めてくれなければ関係ないものまで巻き込んで居たかも知れないしな。助かった」

 

 

もう遅いよ。

 

 

もう今すぐ笑い出したくて仕方なかった。

勝った!生き延びたぞ!という喜びとあまりにも呆気なく終わりを迎えた事によるとてつもない疲労感。

 

あぁ、これストレスでハゲたらどうしてくれようか…。

 

「さて、他のものもすまなかった。お騒がせした…女将さん、この詫びは後日させて貰うので出禁にはし無いでもらえると嬉しいんだがどうだろうか?」

「っ…あ、あ。ウチの子達次第だがわかったよ」

「あとウチの会計と迷惑料はロキにツケといてくれ。それでは失礼する」

 

さりげなくこちらに色々ふっかけて彼は出て行った。

魂が口から出て行きそうな程大きな溜息を出せば、動ける者に声を掛け皆を起こし診ていく。

幸いにも気を当てられて気絶していたものが大半で、これといった外傷だったり死んだものも居なかった。

 

 

もう今すぐ帰って風呂に入り自分のベッドで眠りたい。

 

 

やる事全てが終わってやっと帰宅したところで僕の意識は途切れた。

 

僕が目覚めたのはその日から二日経った後だった。





やっぱりこう短いほうが自分は落ち着きます。
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