ダンジョンに浪漫を求めるのは間違っていない 作:マジカル☆八極拳
ぶっちゃけのところ今回の話どうするか悩みに悩んでとりあえず捻り出した感じです。
骨と骨が
肉と肉が
重打と重打が
爆発と爆発が
何もない暗闇の中でぶつかり爆ぜる
ソレとソレ以外には何もない闇の中で二つは幾度も交叉する
一つは暖かみのある橙
揺らめく尾が炎のように激しく動く
一つは紅く燃え盛る焔
鬼気迫る表情に嬉々を混ぜて猛り咆える
それは近代の伝説
牽制の為のたった一打で相手を死へ至らしめる魔拳
それは爆発
まともに喰らわば七孔憤血し骸と化す猛撃
源流を同じとする二匹の獣は
哮り、猛り、この出逢いを、この死合いをただただ喜ぶ
己が目指した伝説との邂逅を
自分と同じ『地』に立つ同門との奇遇を
語る事無く拳を交わす
同門だからこそ
同じモノを用いるからこそ
そして二匹の矜持がぶつかり合う
『我が八極に二ノ打要らず!!』
空気と空気が真っ向からぶつかり合い、拳と拳がぶつかり合い
闇と相手と自分しかいないその場所を眩しい位の光に塗り替えた
□□□□□□
「夢、か?」
目覚めた場所は先ほどの闇の中でも光の中でも無い、ただの木造の部屋、ベッドの上、時間にして恐らく夜明け前か?
あの殺気と殺気がお互いを喰らい合っていた所とは似ても似つかぬ場所である。
夢、にしてもリアルな夢だった。
受けた拳の重みからぶつけた拳の感触まで、全てがリアルでしか味わえないものだった。
だか俺が戦った相手がアレを夢だと分からせる。
元いた世界で憧れた人物。
生きた時代が違ったので会う事は無く現代でも伝説として語られ、とあるゲーム会社にて
李書文
ただの牽制の一打で全てが事足りた拳士。
想像の中でしか戦えなかった伝説の男。
アレは正しくその人だった。
昔の写真は少なくどちらかと言えばゲームの方の彼しかあまり見た事がなかったせいか、夢の中の彼はfate/extraでの姿だった。
いや、この際容姿などはどうでもいい。
大事なのは夢の内容だ。
流石は八極拳士の頂点。
技のかけ方、虚実の使い方、勁の練り、どれ一つ取っても今まで戦ってきた相手以上であり、自分以上だった。
あの場所に到るまでどれほどの修練と死合いをしてきたのか、想像するのは難しい。英霊となって諸々の能力も人を越えた者とはなれど技術は人の身で培い得た者だ。
ヘスティアの恩恵が有ったからあそこまで戦えたがそれでも打ち勝つにはまだまだ足らなかった。
天井に手を伸ばし拳を握る。
やはり強い者との闘争は血を沸かせ心が躍る。それが自分よりも更に強い者なら特に。次相見える時は必ず一打報いてみせる、そうこの拳に誓っていると右隣で衣摺れ音。
はて?またヘスティアかベルでも潜り込んできたか、人の尻尾をもふりながら抱き枕にするのは少しやめて欲しいものだ。正直俺だってこのもふもふした尻尾を抱き枕にしたいのに。
そう思って掛け布団を捲ると見知らぬ誰か。
背を向け白の薄い着物の肌着を着たその者をよくよく見れば、綺麗な金髪に自分の者とは違った感触を持つ尾っぽ。
うなじから見える白く陶器のような、少し乱暴にしてしまえば壊れてしまいそうな柔肌。
…ん?
そして左隣で寝返りを打ち、柔らかいモノが腕に当たる。
……ほう。
こちらは褐色肌に柔らかい肉の中にも鍛えられた筋肉の硬さ。おそらく戦う者、冒険者の類か?それにどんな男も誑かし堕としてまうたわわに実った豊満な胸。この場から寝顔を見ると成熟した女だ。見てくれは今まで会った中で言うと自分の好みだ。
おもむろに先程拳を握った手で彼女の胸を鷲掴みにする。丁度形の良い突起を指差しに挟んだ形で愛撫するかのように一揉み。
んっ…。
小さな嬌声と少し酒の匂いを纏った熱い吐息、起きる気配は無い。
アマゾネス。だったか?
そういえばロキ・ファミリアの幹部?らしきテーブルにもこの女と同種の娘がいたっけか。
こちらは右隣の者とは違い何も身につけていない。
つまりは全裸である。
もう一度言おう、全裸だ。
かくいう俺も全裸だ。基本的に寝床や家ではあまり服を着ていたくないなのでこれはいつもの事だが…
ゆっくり昨日の事を思い出してみる。
酒場から出た後、体が滾って仕方なかったので街を歩いていた。ダンジョンにはベルが向かったので確か反対方向に向かったはずだ。
それで、フラフラ歩いていると歓楽街のような場所に出て…あぁ、そうだ。
この着物の娘を連れて歩いていた女が醜悪なカエルのような肥えた人型のモンスターと何やら裏路地で揉めていたんだ。
憂さ晴らしがてら近くにあったゴミ箱の中にそいつをぶち込んでから、酒を呑んだんだっけか。
二人は遊女で先輩と後輩。あのモンスターがいけ好かないお局…みたいな説明を聞いたような気がする。アレで遊女とは笑わせてくれると何かツボにハマって大笑いしていたのは憶えていたが…なるほど。
そこから先は少し曖昧だ。
確か極東の酒ーー日本酒みたいなのがあると聞いて呑んだのか、元いた世界では日本酒と相性が悪かったのを忘れて飲み耽り、今に至ると。
細部は思い出せないがこの娘がぶっ倒れたあと女とそのまま酒を飲み寝た。寝たというのは勿論そういう意味でだ。
常日頃からヘスティアという圧倒的暴力がそこにあり、少年と彼を想う彼女を思って色々
他の男だって目の前に自分好みの女が迫ってくれば応じるはずだ、誰だってそうする。俺だってそうした。
何故か少しばかり身内の少年と駄女神に罪悪感が沸き起こったが、まぁ自分も普通の人だという事だ。
さて、この後どうするか
「ん、なんだ、もう起きてたのかい?」
アマゾネスの女ーアイシャ・ベルカが自分の胸板に顔を摺り寄せ、見上げるようにして脳髄を響かせるような甘ったるい声を出す。
流石はアマゾネスの娼婦だな、と腰に手を這わせてくる女にそんな感想を抱きながらその手を掴んで止める。
「俺は構わんが流石にこの娘に悪い。起きたらまた気絶させてしまうのは流石にな?」
「まぁ…そうだねぇ。けどこの子も娼婦なんだから男慣れしないといけないんだけどね」
娘の世話係でも姉代わりでもあるアイシャが俺の隣でスヤスヤ眠る妹分の背中を憐憫の情を含んだ優しい眼差しで見つめる。
サンジョウノ・春姫
男の鎖骨を見ただけで卒倒してしまう程の初心な生娘。娼婦としては何の役にも立ちそうにない少女が何故こんな所にいられるのか。見た目も良くいい所のお嬢様であろう所作振る舞いに、話せばどんな悪党も純真さにその心に癒されしまう、そんな少女は極東の方からその首輪と共にオラリオにやって来た。
そう、
何て事はない、生前の世界の裏側では色んな所でそんな話はあったのだが、この異世界に於いてもそれは変わらないものだった。
彼女の話を聞いて想像するに、大切な供物を食べたと知り合いの商人にでっち上げられ、あとはその商人の言いくるめられてそのままこっちに流れてきたのだろう。
強く自分はやってないと親に言えば少しばかりは何か変わったのだろうが、彼女は心優しく、そして弱かった。
流されるままに流れてきた結果、奴隷としてこの【イシュタル・ファミリア】が仕切る歓楽街に身を落としてしまう事になったそうだ。
にしてもだが、いくら歓楽街とはいえこの
昨日のモンスター上司がこの子を躍起になって連れ戻そうとした事と、アイシャの目がそれを物語っている。
何か楽しい事が起こりそうだ
尾っぽの先にミコーン!と何かを感じてアイシャに話を持ちかける。
「アイシャ、俺を雇わないか?」
◇◇◇◇◇◇
豊饒の女主人から出て行った後、僕はダンジョンに潜った。
あのベートと呼ばれた獣人の言葉が胸に突き刺さって僕の心を掘り進むように奥の奥まで削って削って、死にたくなるほど恥ずかしくなって、弱い自分が嫌になった。
あの時隣にアカツキが居て僕の為に怒ってくれていなかったら、僕はただこの感情に流されるまま逃げ出していたと思う。
彼に大事にされている、大事に思ってくれているのは嬉しいけど、彼に護られてばかりなのは
想い人の隣に並ぶために、あの人の立つ場所へたどり着くために。
我武者羅に走りモンスターを倒し、爪を避け、ナイフを刺し、牙を躱し、蹴り飛ばし、気が付いた時にはウォーシャドウの群れと戦っていた。
6階層
知らぬ間にここまで降りてきていたようだ。
人型で鋭い爪を持ったモンスター。
全身は真っ黒で形だけが人と似ているが後は立派なモンスターだが、少し攻撃するのを躊躇ってしまう。
その隙を突かれ相手に一手、先を取られる。
『戦いとは命のやり取りだ。敵となる相手に慈悲はいらない。優しさを見せても自分が殺されないとは限らない。相手の嫌がる事はどんどんしていけ。どんな卑怯な手でも勝てばいい。勝ったやつが生き、負ければ死ぬんだ。余計な想いなどコボルトにでも食わせておけ』
ずっと後ろで見守っていてくれた彼の言葉を思い出し心の中で反省しながら相手の動きを見る。
『いいかベル。もし相手に先手を取られたとしても焦る必要はない。逆に感謝しても良いほどだ。相手から動いてくれるのならこちらはそれを見ていれば良い。動きを見て攻め手を学べ。攻撃など二の次でいい。攻めれるなら攻めて、動きを学べ。それが初見の敵なら特にだ』
記憶の中の声に従い、順番に攻めてくれるウォーシャドウの攻撃をかいくぐりながら敵グループの後ろを取る。多対一は相手全体を視界の端に置いて立ち回る。おかしな動きをするものには牽制し、相手を誘導して単純な攻撃だけさせるように心掛ける。
そうすれば必ず
「反撃の糸は見つかる!!」
群れの中で一匹だけ反応の遅いものを見つけ取り柄の敏捷にモノを言わせて近寄り、一撃。手応えありだ。
心を燃やせ、想いを燃やせ、だけど頭は冷静に、理想を掲げろ、常に最強だと思う自分の を作り出せ、そしてそれを目指して脚を回せ。
たとえ近くに居なくとも彼の教えは僕の中に息づいてる。
彼が助けてくれなくても、彼の教えが導いてくれる。
「っ…!!」
二匹目と打ち合ってる時にナイフに違和感を感じる、武器の
それまでに何としてもこいつを倒さなきゃ…!!
だがその意図がばれたのか、仲間をカバーするように他のウォーシャドウが邪魔に入る。
「じゃっ、ま!!!」
向き合った個体からカバーに出てきた一匹に向かって走り、そのまま蹴り飛ばして追い打ちをかける。
それが上手くハマり、魔石へと姿を変える。そして灰と変わっていくがウォーシャドウの鋭利な三本の爪だけが残る。
シメた、これでまだ戦える。
彼は言った。
強くなりたければ戦い続けろと。
何を使ってでも生き残り、最後には勝てばいいと。
手持ちの
ならば
「っああああぁあぁぁぁぁ!!」
片手に壊れかけのナイフを持ち、片手は血に濡らしながら【ウォーシャドウの指刃】をもち、雄叫びをあげながら残りの個体に切り迫る。
連戦に次ぐ連戦で体は重い。だが、それ以上に心は軽く、燃えている。あの店を出てから燃え続けている。背は熱く何かが改竄されていく感覚とともに身体に熱を帯びていく。
もっと、もっとだ。
自分が強くなる為にはこれしかないんだ。
戦って、戦って、戦って。
戦い続けた先に
☆
僕がダンジョンから上がってきた時には世界は新しい朝を迎えていた。
眩しいなぁ…それにちょっと疲れたや
至る所に切り傷に打撲傷を拵えてやっとのことでホームに帰ってきた。
廃協会の入り口でこんな朝も早い時間から神様がソワソワしている、どうしたのかな…アカツキがまだ戻ってないのかな?
そうこう考えてると神様は僕に気付いて小さな悲鳴を上げて小走りに駆けてくる。
神様ちょっと大声出しすぎで耳が痛いです…とも言えず重傷が無いか確認する彼女の胸の中に僕は力尽きて倒れこむ。神様が騒いだせいで緊張の糸が切れたみたいだった。やっぱり僕の帰るところはここなんだなぁなんて、お母さんのようなお姉ちゃんのようないものような人懐っこい神様の肩を借り、いつでも僕達を待って心配してくれる
「神様…ぼく、強くなりたいです…つよく、なります。神様が、安心して待っていられるように…」
あの頂きを目指して
神様の暖かい手が僕の頭を撫でながら名前を呼んでくれる。
その心地良さに僕は意識を手放した。
感想、評価など気軽にいただけますとこれ幸い
この話からおそらく更新速度遅くなりますが御理解いただきますようお願いします