基本的には、三人称での投稿となります。
誤字とかがあるかもしれませんが、よろしくお願いします
そして右手には、魔法少女に変身に必要なステッキであるルビーが握られていた。左手には、クラスカードが握られている。
そしてイリヤを囲うようにバゼット、凜、ルビア、クロ、美遊が立っている。クロは、落ち着いた様子で立っていたが他の人たちは緊張した様子でイリヤを見ている。
「イリヤ、準備は良い?」
「は、はい!」
緊張した顔つきでイリヤが凜の言葉に返事をする。
返事をすると左手のクラスカードを自分の肩と水平になるぐらいにまで手を上げていく。
「クラスカード“アサシン”インストール!」
そう叫ぶとカードからイリヤを余裕で尽くすような魔方陣が出てくる。そして、イリヤを中心に半円を描くように回転をしていく。
ルビアたちの方に風が吹き荒れていく。ルビアや凜は、その風に驚いたのか少し体勢が崩れてしまう。クロやバゼットは、慣れているかのようにそのまま眺めているだけだった。
風が収まるとイリヤは、ボロイマントを頭から被っているだけだった。そして右手にあったはずのステッキが手元からは無くなっていた。
「これがインストールの力なの? イリヤ、何か変わったって思うところはある?」
「うーん、特には変わってないと思う。」
「何よ、その煮え切らない返事は……。アサシンだから分身とか出来るんじゃないの?」
「だって、これは凜さんから頼まれたから仕方なくやってみただけで……」
◇ ◇ ◇
「バゼット、それは本当のことなの!?」
ルビアの家の書斎で凜の声が響いていた。
「ええ、本当です。私は、ゼルレッチ卿の青のステッキを持った女の子が英霊を身に纏っている所を確認しました。それに私自身がその女の子と戦ったのだから間違いありません。」
「そんな、まさか美遊が……。」
ルヴィアは、驚いたように脱力していく。だが、すぐに頭を切り替えたのか話に戻ってくる。
「美遊が本当にしたのか確認してから、これからの方針を決めていきましょう。丁度、私たちにカードの解析も回ってきたことですし。」
「確かにルヴィアの言う通りかもね……。美遊の確認が取れたら、イリヤにもやってもらいましょう。私たちも実物を見ないことには、判断できないしね。ルヴィアもそれで良いかしら? それにあのバカステッキに聞いたら、分かるかもしれないわね。もうどうして肝心な時にいないのよ。」
凜は、頭を掻きながらぼやいている。
「ええ。文句は、ありませんわ。」
◇ ◇ ◇
「確か“アサシン”のインクルードは、囮になるだけだし。これを見ると確かにインクルードとは、違うようね。だけど、そのローブに英霊としての力を持っているかは微妙なところよね。」
凜が考察するように独り言を呟いている。
「それなら、軽く闘ってみたら分かるんじゃない? ”アサシン”の能力は、気配遮断だしね。どうせなら私が闘ってあげても良いわよ?」
クロは、やる気に満ちたかのように二本の刀をイリヤに向けて楽しそうな表情をしていた。
凜は、一度考えるしぐさを取ると「そうね。それじゃあクロお願い。」と言ってイリヤとクロの戦闘を眺める。
クロは、イリヤの正面に転移をするとさっそく刀を勢いよく振り下す。イリヤは、一瞬反応に遅れたが紙一重ところで右側に転がって刀を回避する。そして、そのまま右の方向へと走っていく。クロもイリヤを逃がすまいと同じように走っていく。
イリヤは、地面を魔力を溜めて放つ。すると地面が少し崩れ、砂煙がイリヤを中心にして巻き起こっていく。
「なるほど。目くらましと言った所ね。だけど残念。それは、私には効かないわよ。あれ、気配が探れない……。そうか“アサシン”の気配遮断ね。」
クロは、イリヤの行動パターンを考えてどこから来るのかを予想してイリヤが来るであろうタイミングに合わせて刀を振っていく。イリヤは、刀を振り終わったタイミングを見計らってたのかタイミングよくクロの背後をつく。
「惜しい。だが残念ね。それは、外れよ。」
クロは、一瞬で転移をするとイリヤの体に刃を振り下ろそうとするが寸前のところで止めようとしたがイリヤが自分から刃に当たりにいった。
「ちょっ、あんた何やって……。あれ、痛覚共有が来ない……」
「油断したわね。クロこれで終わりよ。」
イリヤは、分身を一体作ってわざとクロの攻撃を受けることでクロの動揺を誘った。
イリヤは、クロの動揺と気配探知が出来ないことを見越したうえで、砂煙の中をクロの方に向かって走っていく。正面からいくと防がれる可能性があると思ったのか、少し迂回をしながら背後を取るように走っていく。そして、クロの背後を取るとすかさず刀を掴んで奪う。
煙が晴れたころには、イリヤがクロが使っていた刀を持っている状態になっていた。その光景に凜たちは、驚きを隠せなかった。
「これ、私の勝ちで良いんじゃない?」
「仕方ないわね。まだ続けてあげても良いけど、能力の確認としては十分でしょ。凜あなたも満足したんじゃない?」
「ええ、確かにそうね。けどこう考えると凄くややこしい事態になっちゃうのよね。」
「ややこしい?」
「ええ、そうよ。だって、このカードは複雑な魔術回路で作られているのに自分の体を媒体に英霊の力を引き出せると知ったら、他の魔術師たちは黙ってこのカードを見逃さないでしょうね。」
「そうですわね。この事実を魔術協会が知れば、ややこしい事態になりかねませんわね。」
「イリヤ、もう解除をしてくれても構わないわよ? 協力してくれてありがとうね。それにクロも。」
「これくらいなら全然、大丈夫よ。それに少し体が鈍ってたから運動としてはそんなに出来なかったけど、まぁ良いわ。そんなことより、イリヤ。早く変身を解除しちゃいなさいよ。」
「そうしたいのは山々なんだけど、変身が解除できないんだよね……。」
イリヤは、申し訳なさそうに笑っている。そんなイリヤのことが不安になったのか美遊がイリヤの傍へと駆け寄る。
「一度ルビーに呼びかけてみたら? 私がインストールをした時は、サファイアともちゃんと話すことが出来たし。」
「う、うん分かった。ルビー、起きてたら返事をしてー。」
だが、イリヤが呼びかけてもルビーからは全く返事が返ってこなかった。声をかけてから、数十秒が経過をするとイリヤの目には、うっすら涙が零れていた。
「ねぇ美遊、これどうしたら良いの?」
「と、とりあえずイリヤ落ち着いて。サファイア、どうしたら良いとか何か分からないの?」
「私に言われましても……。」
イリヤが戸惑っていると凜たちもすぐに異変に気付いたのか、傍まで駆け寄ってくる。
「どうしたの、イリヤ?」
「実は、変身が解除できないの。」
「美遊、今までこんな経験は?」
凜は、すぐに今まで何度もインストールをしている美遊に聞いてみるも首を横に振っている。
「私たちの時は、こんなことありませんでした。」
「そうね。私もイリヤの体を借りてインストールした時もこんな状態には、ならなかったわね。」
「私、ずっとこのままなのかな……。え? 何なのこれ?」
イリヤの体の胸辺りから、黒いものが発生していた。それは、セイバーや二枚目のアーチャーのような農密度の黒い霧だった。すると突然、イリヤを中心にした大きな竜巻が巻き起こる。
「みんな、一度距離を取って!」
暴走する霧から一度、距離を取る。
「ねぇ、あの霧どうするの? あれは、明らかにセイバーの時と同じ魔力できた濃密度な霧にしか見えないんだけど……。」
「確かにそうね。だけど、あの中にイリヤがいるから下手に攻撃は出来ないのよね。」
「それなら私がやってきましょう。」
バゼットは、拳と足に魔力を集め地を蹴る。そして、拳をイリヤに振り下ろそうとした瞬間、固い棒のようなもので防がれていた。
バゼットの目の前には、美遊がいた。美遊は、魔力弾を撃つためにステッキを振るとバゼットは黒い霧から離れていく。
「一体何のつもりですか?」
「イリヤには、指一本触れさせない!」
「だったらどうするのです? このまま黙って眺めているわけにもいかないでしょう。」
「そ、それは……。」
「美遊、イリヤスフィールの方を見なさい!」
「あ、あれは、一体……」
言い争いをしていると今まで広がりを見せていた霧たちが一斉にイリヤの元へと集まっていく。そして黒い霧は、イリヤが魔法少女に変身した状態と全く同じに姿になっていた。本物のイリヤは、変身が解かれた状態で倒れていた。
「あれ? そんなに警戒して皆どうしたの?」
「あなたは、いったい何者なの?」
「何者って……。イリヤだよ。凜さん、どうしちゃったの?」
「それじゃあ、殴ってみればすぐに分かるんじゃない? あなたと私は、痛覚共有で繋がってるんだから。偽物かどうかを見極めるためだから、イリヤ動かないでね……。」
クロは、自分のお腹に描かれている痛覚共有の呪術を指さしながらイリヤに近づいていく。それを偽イリヤは、首を横に振ってクロの方へ微笑みかける。
「クロお姉ちゃん……。そんなの確認しなくても大丈夫だよ。これだけ敵意の視線を向けられたら、誰だって分かるよ。私が偽物だって分かってるんだよ。けどね私には、やらないといけないことがあるの。私は、黒化英霊の魔力の残りが生み出した英霊だからね。英霊は、やっぱり聖杯を求めるものなのかな……。だから、クロお姉ちゃん少し痛いと思うけど許してね。私の名前は、そうだなクロお姉ちゃんと反対だからシロ、シロエ・フォン・アインツベルンでよろしくね。気軽にシロって呼んでね。」
するとシロは、イリヤの体を持ち上げてステッキで思いっきりクロの方へと殴り飛ばす。一瞬でも気をそらせたのを確認するとシロは、魔力弾を地面に撃って砂煙を立ちこもらせる。
煙が晴れるころには、シロの姿は完全に見失ってしまっていた。
「イリヤ、大丈夫?」
不安そうな表情をした美遊は、イリヤの元へと駆け寄っていく。イリヤは意識はあるようだが、返事をしなかった。
「私は、先にあいつを追いかけます。あなたちは、どうしますか?」
「そうね……。私たちは、イリヤの無事を確認してからあなたの後を追うわ、バゼット。」
「分かりました。それでは、お先に失礼します。」
そういうとバゼットは、シロが逃げていったと思われる方向へと走っていく。
「イリヤ、クロ大丈夫?」
「私は、何とかね……。だけど、イリヤの方がまずいかも。」
イリヤは、ルビーや美遊が何度も呼んでも返事をしていない。
「ルビー、イリヤの状態とか分かるかしら?」
「はい。イリヤさんの魔力を全部、あの偽物に吸い取られちゃってますね。このまま魔力が戻らなかったら、大変まずいことになります。」
「まずいこと……?」
「はい。魔力は、普通の人でも微量は持っています。そしてそれは生命エネルギーをもつかさどっています。つまり、このまま魔力が戻らなかったら……。クロさんみたいに異質の存在なら魔力を作ることは、出来ません。しかし、イリヤさんや凜さんとかなら自分で魔力を生成することが出来ます。それなら問題は無いんですけど……。どうやら、そっちの機能もあの偽物に吸い取られちゃったようなんですよ。」
「それってつまり、この状態ならイリヤが死ぬってこと?」
「はい。でも安心してください。今の状態ならまずいですけど、私がついています。コンタクトフルオープン。」
ルビーは、そう言うとイリヤが魔法少女の姿に変わる。イリヤは、ゆっくりと目を開けてゆっくりと体を起こす。するとイリヤは、何が起こっているのか理解できていないのか頭にはてなマークをついてるような表情をしている。
「えっと、みんな集まってどうしたの?」
「とりあえず、この状態なら私から魔力供給を出来るから問題ないでしょ。だけど、これは一時的な処置にしか過ぎません。早く偽物を倒さないとまずいことになります。イリヤさんだけでなく、クロさんの命の危険性も出てきます。」
「そうね……。のんびりは、していられないわね。すぐにバゼットの後を追っていきましょう。追いながら作戦を考えるわ。行くわよ!」
凜は、そういうとすぐにルビアの車の方へと走っていく。他の人たちも凜のあとに続いて車の方へと走っていく。
「ねぇルビー、どうなってるの?」
イリヤは、走りながら今までの状況をルビーに確認していた。
「クラスカード”アサシン”の中に私たちが倒した英霊たちの残りが入っていて、それが暴走をしました。そして、イリヤさんはそれに取り込まれて魔力を全部吸い取られてしまったんです。」
「待って。それって……結構まずいんじゃ……。」
「だから、こうして急いでるんですよ。イリヤさんもっと真剣に走らないと置いてかれますよ。」
クロや美遊は、イリヤの少し前を走っている。凜とルヴィアは、さらにその前を走っている。
「うん。分かった!」
返事をするとイリヤは、走るテンポを上げて美遊たちに追い付く。
「美遊ー、クロー。心配かけてごめんね。」
「ううん、大丈夫。イリヤは、私が救ってみせるからね! イリヤは、戦闘しない方が良いと思う。今はルビーがいるから大丈夫だけど、戦闘中にルビーが離れたらその……」
「そうね。今回はばかりは、美遊の言う通りだわ。もし万が一のことがあったら、私だって死ぬ可能性もあるんだし……。」
「えっ、死ぬ可能性……?」
クロは、失敗したと思ったのか口元に手を当てている。美遊もそれに気づいたのかどうしたら良いのか分からないような表情になっている。それ以上にイリヤが青ざめた表情になる。
そして今まで走っていたイリヤの足が止まってしまう。
「ねぇ、ルビーどういうこと?」
「はい。イリヤさんの魔力をすべてカードに入ってた英霊の残りに吸い込まれた話をしましたよね。実は、魔力は普通の人も生活を必要なものなんです。今のイリヤさんは、クロさんと同じように魔力を生成出来なくなっています。それに魔力をすべて英霊に吸い込まれてしまっています。ここまで言えば、分かるかと思います。けど安心してください。私がいる限りイリヤさんが死ぬことはありません。私が魔力を循環させているからです。ただしそれが出来るのは、変身をしている状態での話です。もし万が一、変身が解かれるようなことがあれば……」
「だから、イリヤは戦闘しない方が良いってこと。分かった?」
「う、うん……」
イリヤは、美遊に手を引かれて車の方向へと走っていく。
長くなってすみません。
次回は、バゼットとシロとの戦いから始まります