白い魔法使いとカード   作:白鐘 夕朔

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今回は作戦会議とはサブタイトルにしてますが、ほとんど作戦会議の内容は触れていません。
ですので、気楽に読んでもらえれば幸いです


作戦会議

「さっそくだけど作戦会議よ。先にバゼット情報の提供をお願い。」

 

 車の中に入るとすぐに話し合いが行われていた。

 

「分かりました。あの英霊は、全ての英霊の力を秘めています。私と戦った時は、“ランサー”、“バーサーカー”、“キャスター”の能力を使われました。結果は、皆さんの見ていた通り敗北しました。」

 

「あの魔剣、フラグラックを撃ったの?」

 

 美遊とバゼットが使っていた魔剣を使ったのかどうかクロが確認するとバゼットは、首を縦に振った。

 

「なるほど。つまり“ランサー”のゲイ・ボルグをフラグラックで撃つ前に倒そうとしたけど、“バーサーカー”の蘇生能力で防がれた。そんなところね。そしてとどめに”キャスター”の大魔法か……。やっぱり怪物ね。」

 

 クロが冷静に戦闘を分析するとバゼットは、驚いたような表情をしてしまう。

 

「私は、使われたクラスしか言ってないのにどうして、そこまで的確な分析が出来るんですか?」

 

「クラスが三つしか無いのとフラグラックを防ぐとしたら、選択肢は限られてくるわよ。そこから導きだせる答えは、簡単ってことよ。ちなみに私は、“アーチャー”の矢を飛ばし返されたわ。」

 

「なるほどね。私たちの時は、“アサシン”の気配遮断を使われたわ。それから美遊との戦闘で“セイバー”を私用していたわ。あと使われていないのは……」

 

「あとは、“ライダー”だと思うんだけど……。」

 

「作戦を立てるにしてもアイリスさんが一緒に行くかによって変わってくるわね。とりあえず、来ると仮定して話を進めましょうか……。」

 

 クロは、何かを思い出したのかのように大きな声を上げる。

 

「ちょっとどうしたのよ、クロ?」

 

「あいつの狙いは、ママなのよね……。それなら説明がつくかもしれない。」

 

「どうゆうことですの? 分かるように説明なさい。」

 

「あいつは、『英霊は、聖杯を求めるもの』と言った。そして美遊を誘拐した。美遊は完成された聖杯だから、本来私たちを無視して聖杯の儀式をすれば終わるはず。だけど、あいつはそれをしない。その代わり私たちとママと交換だと言ってきた。この意味が分かる?」

 

 凜は、『アインツベルン』『人質』『完成された聖杯』などのキーワードを呟きながら考えると一つの答えが導かれたのか頭を上げて驚いている。

 

「もしかして、アインツベルンの聖杯を狙っている?」

 

「そうよ。それが狙いだと考えて問題は、無いと思うわ。それなら美遊を人質にする理由も分かる気がするわ。だってあいつには、一番効果的だと思うし……ね。」

 

 クロは、チラリとイリヤの方を見る。イリヤは、自分に何も出来ないと考えているのか落ち込んだように下を向いている。

 

「しっかりしなさいよ。あなたが元気なかったら、私だってやる気を失せるんだからもっと元気を出しなさいよ!」

 

「だけど、私のせいで……。クロや凜さん、美遊にまで迷惑をかけちゃって……」

 

 イリヤの頬を両手でクロが思いっきり叩いた。車の中には、パンっと大きな音が響いた。イリヤは、クロに文句を言おうとしたが痛覚共有のことを思い出したのか何も言えなくなってしまう。

 

「クロ、どうして?」

 

「どうしてじゃないわよ。迷惑をかけたと思うなら、その迷惑を帳消しに出来るぐらいの活躍をしてみなさいよ。迷惑何てお互いに掛け合うもんでしょ。だから、いちいち落ち込まないの。」

 

「クロ……ありがとうね。そうだよね。落ち込んでたら、周りの人も重たい空気になっちゃうもんね。自分の事ばかりになってごめんなさい。」

 

「別に気にしてないから大丈夫よ。さっそくだけど、クロはアイリスさんの護衛をお願いできるかしら?」

 

「ママだけで良いの?」

 

 凜は、自信満々に「ええ。」と返事を返す。クロは、その自身はどこから来るのか分からなかったが、信用してみることにした。

 

「ってことでイリヤは、自分のことは自分で守ってね。」

 

「それでルヴィアは、多分学校内に結界は張ってあると思うから外で私たちと待機。そしてクロの戦闘の合図と同時にサファイアで変身をして突撃をしてちょうだい。もちろん最優先は、美遊の確保よ。美遊にステッキを渡すとそのまま宝石で戦闘に参加して。あとは、全員で戦闘をするのみよ。この作戦に質問は、ある人はいる?」

 

「はーい。」

 

「どうぞって、シロじゃない。どうしてこんなところに……。」

 

 シロが車の中にいたことに誰一人気付かなかったのか。全員がシロから距離を取る。シロは、呆れたようにため息を吐く。

 

「一つ言い忘れてたから、言っておくね。サファイアも中に一緒に入ってくること。これも条件につけようと思ってね。思ってた以上に早く美遊との交渉に成功したから、暇になって遊びにきっちゃった。だけど、ルヴィア今すぐ美遊を助けに行こうとしても無駄だよ。私自身は、“アサシン”の分身だからね。本体は、美遊と楽しく談笑でもしてるんじゃないかな……。」

 

「交渉って何ですの?」

 

「関係のない人には、話したくないな。この中で関係してくるのは、イリヤお姉ちゃんとクロお姉ちゃんぐらいだよ。聞きたいなら話しても良いよ。ただし、二人だけにだし、もしその内容がルヴィアとかに伝わるようなら……。」

 

 偽イリヤは、たくらみのある笑みを浮かべながらイリヤとクロを見ている。イリヤは、それが危険だと感じたのか口にたまっていた生唾を飲み込んでしまう。

 

「それなら遠慮しておくわ……。もしイリヤがルヴィアとかにうっかり話して、それがあなたにバレたら美遊がどうなるかも分からないしね。今は、美遊を助けるためにも余計なリスクを回避するのが先決よ。」

 

「さすがクロお姉ちゃん。私が考えてることが分かるのかなって言いたいぐらいに的確な回答だと思うよ。それに比べてイリヤお姉ちゃんは、『教えてほしい』とか言いそうになってたでしょう?」

 

 シロがそう問い詰めるとイリヤは、「うっ」と小さい声を上げて下を向いてうつむく。まるでシロは、それを見越していたかのように小さく微笑んでいる。

 

「やっぱり。クロお姉ちゃんが正解したから良いことを教えてあげるね。私が求めているものは、聖杯って言ったよね。だけど私の目的は、美遊じゃなくてアインツベルン家の聖杯。ここまでは、正解だったけど確証を持たせるために言っておくね。クロお姉ちゃんのここまでの推測は、間違ってないよ。ここまでは……ね。私の聖杯を求める理由まで正解することが出来たら、美遊を返しても良いかな。」

 

 それを言うとシロの体は、体の内側からの魔力弾によって風船のようにはじけ飛んだ。だがすぐに体が集まっていき、元の形に戻る。

 

「ごめんなさい。美遊を返すのは、やっぱり無理だって。私も本体から切り離された一部だから、そこまで決めさせてくれなかったみたい。これだと私の面子的にも少しまずいことになるかも……。だけど、これ以上教えてあげられることなんて……。」

 

 シロは、考え込むように両手を組む。だが、やはり何も思いつかないのか考えるのは諦めた。そして申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「結局、迷惑をかけたね。ごめんなさい。それじゃあ、私もあそこで待ってるね。」

 

 シロは、そういうと転移をしたのかその場から姿が一瞬で消えていた。そしてイリヤたちは、沈黙が数十秒間も続いた。

 

「あのー、一つ良いかな?」

 

「どうしたの、イリヤ?」

 

「私は、あの人がそんなに悪い人には思えなくて……。今回、美遊を誘拐したのも何か理由があるんじゃ無いかって思ってるの。私には、どうしてもあの人が悪い人には見えないんだけど。」

 

 イリヤの発言にルヴィアは、まるで呆れた様なため息を吐いた。

 

「イリヤスフフィール、どうしてあなたはそこまで言い切れるんですの? あいつは、私の妹である美遊を人質にしましたのよ。さらにバゼットも瀕死の状態まで追い詰めた敵ですわ。何を庇う余地があると思いですの……。」

 

「ルヴィア、少し落ち着きなさい。とりあえず、悪いやつかどうかはともかく当初の予定通り美遊を人質に取られているんだから奪還させるのを最優先に作戦を立てていくわよ。ちょうど車も着いたみたいだし、すぐに準備に取り掛かるわよ。悪いけどクロ、アイリスさんを呼んできてもらえる?」

 

「分かったわ。」

 

「それなら私も……。」

 

「イリヤは、凜たちと一緒のほうが良いと思うわよ。その恰好をセラたちにも見られても良いなら、ついて来ても良いわよ。」

 

 クロは、イリヤの恰好を見ながら笑ってくる。イリヤは、思い出したかのように恥ずかしそうに顔を少し朱色に染めている。クロは、「それじゃあ、行ってくるわね。」と言うと勢いよく車を飛び出していく。

 

「それじゃあ、私たちも移動して準備を始めていきましょうか……。」

 

 凜たちは、門をくぐりエーデンフェルト家に入っていく。そして、すぐにいつも会議のために使っている部屋に向かって歩いていく。

 

  イリヤたちが席に座ってしばらく待っているとクロとアイリスも部屋の中に「お待たせ。」と言いながら入ってくる。アイリスは、どうして自分が呼ばれているのかわかっていないような雰囲気を醸し出している。

 

「アイリスさん、突然呼び出してすみません。」

 

「それは、言いんだけど話って何かしら? イリヤちゃんが変身した状態なのも気になるけどね。」

 

「まずは、すみません。私たちがついていながらイリヤを危険に巻き込んでしまって。」

 

「それは、大丈夫よ。イリヤも危険だと分かってやっているみたいだし。それに大切なものも見つけたみたいだしね……。」

 

 アイリスは、優しくイリヤに向かって微笑む。イリヤにとって嬉しかったのか、イリヤもアイリスにつられて笑顔になってしまう。

 

「すみません。さっそく本題に入りたいんですけどよろしいですか?」

 

「ええ。」

 

「実は、イリヤの友達でもある美遊という子がいるのは、ご存知だと思います……。」

 

 アイリスは、その名前に聞き覚えがあるのかゆっくりと首を縦に振る。普段なら一つ冗談でも言いそうな性格なのに今回は、何も言わずに黙って聞いていた。

 

「美遊が人質に捕られてしまいました。相手は、英霊の魔力の残りでイリヤの魔力を全て吸い取った敵です。人質の交換条件がアイリスさんとクロとイリヤをつれていくことです。」

 

「なるほどね、分かったわ。つまり、その子の目的はアインツベルンの聖杯を狙っているのね……。それなら、私もついて行くわ。イリヤの大事な友達が人質になってるなら、一緒に助けに行くのもママの役目よね。」

 

 凜は、まだアインツベルンの聖杯とは一言も言っていないのにすぐにそこまで理解してしまうアイリスに驚きを隠せなかった。

 

「それでさっそく作戦会議なんですが……」

 

 凜を中心としながら作戦が決まっていく。そして話が終わるころには、既に太陽が落ちており外は真っ暗になっていた。




次は、シロとの約束まで時間があるので少し日常シーンになります。
そして次のシーンでも展開が進むので、楽しみしておいてください!
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