前回の続きから入っていきます。今回は、とうとう学園へと出発します。
楽しんでいただけると幸いです
「はい、持ってきたよー。」
シロは、分身から荷物を受け取ると分身は姿を消した。
「美遊、お腹すいてない?」
美遊の方を振り返るとちょうどお腹の虫がお腹をすいたと控えめだが、明らかに主張してくる音が聞こえてきた。美遊は、恥ずかしそうにしながらも首を立てに振った。
「それじゃあ、ご飯を食べないとね。一回拘束を解くから暴れないでね。」
そういうと魔力で作った錠を一瞬で外す。美遊は、自由になっても逃げようとしない。逃げられるのを悟っているのかもしれないが、それ以上にシロを敵として認識してないようにも見える。
そして二人でルヴィアの家から貰ってきたお弁当を開きながら、静かに食事をとり始めた。美遊は、何を話したら良いのか分からずに黙々とご飯を食べていく。
「そうだ、美遊。私の分身がイリヤお姉ちゃんと少し話してきたんだけど、私はイリヤお姉ちゃんが美遊を悲しませるようなことをするんじゃないかって不安になってきた。」
シロは、そっと優しく美遊の手を握る。
「美遊は、私にとって大事な存在なんだよ。美遊がここにいるから今、私がここにいるの。そんなことも分かっていないイリヤお姉ちゃんに何を美遊は、何を期待してるの?」
「私は、イリヤのことを信じてる。私を一人にしないって言ってくれたイリヤの言葉を……。私のことを大切な友達って言ってくれたイリヤの言葉を。私にとっては、それ以上に嬉しい事なんて無いよ。」
「美遊……。私は、イリヤお姉ちゃんを直接は傷つけるつもりなんて無いから安心して。それに美遊には、あれを渡してるからちゃんとイリヤお姉ちゃんに返してあげてね。」
あれと言うと美遊は、顔が朱色に染まりながら首を縦に振る。
それからは、二人とも黙々とご飯を食べ始める。
◇ ◇ ◇
「一体クロもどうしっちゃたのよ……。これから、あいつと闘わないといけないのに……」
凜は、ため息をつきながら考え込んでしまう。だが当然、考えたところで思い当たる節なんて分からない。だが事情を知っているイリヤに聞き出そうとしても今は怯えて聞けるような状態ではない。
「まるで私たち、蚊帳の外ですわね……。」
ルヴィアが無意識で呟いたのかそんな言葉が聞こえてくる。確かにその通りだ。今回の件は、完全な部外者に感じてしまう。
リビングの空気が悪くなったからか誰も食事に手をつけようとはしない。むしろ、一人一人が何かしらを考えているようだ。だが、考え事をしているだけでも時間だけは刻一刻と進んでいく。
夜の十時には、余った食事だけが残り皆は各自好きな場所に移動していた。凜とルヴィアとバゼットは、ルヴィアの書斎のような場所に移動していた。
「今回のシロの件、どう思う?」
「私にとっては、単純にアインツベルン家の聖杯を狙っているようにしか思えないのですが……。その聞き方をすると言う事は、他に何かしらの意図があるかもしれないと言うことですか?」
「クロとイリヤの様子がただことじゃない。あれは、間違いなくシロが何か言ったからに違いない。だけど、クロはそれを話をさせないようにしているし、イリヤはただ黙り込んじゃうし……。考えても全く分からないわね。」
「考えても分からないなら、いっそあの子たちに託してみては良いのでは?」
バゼットは、ことの重たさが分かっていないのかすぐに結論にたどり着けようとする。だが、それが一番なことはすぐに分かってしまうが何だが納得がいかない。ここまで付き合っておきながら、今更蚊帳の外なんて納得しがたい。
「結局は、またなのですね……」
ルヴィアがぽつりとそんな言葉を呟く。
「そうね。あの時も私たちは何もできずにあの子たちだけで解決さしちゃったもんね。」
凜も同じように納得してしまう。そしてまるであの時のことを思い出しているかのように拳を強く握ってしまう。そんなことを話しているといつの間にか一時間が経過しようとしていた。
「そろそろ戻りますわよ。準備は、よろしくて?」
ルヴィアの言葉に凜もバゼットも首を縦に振る。ルヴィアの後に続いて二人とも書斎を出て、再びリビングに向かう。
リビングに到着すると既にイリヤとアイリスが中にいたが、クロの姿だけ見当たらなかった。
「それじゃあ、移動しますわよ。」
イリヤは、何か言おうとしたがそのまますぐに黙り込んでしまう。そんなイリヤを見て凜は、不安感が強まってしまったのか難しい表情をしている。凜が何かを言う事は無く、大人しく車に乗り込んだ。
「作戦は、みんな大丈夫わね。私たち三人は中に入れないから待機になるけど、戦闘とかが始まったらすぐに駆け付けれるように準備をしておく。それに捕縛陣ちゃんと準備しておくわ。クロたちのことは、アイリスさんお願いします。何か起こったらすぐにこの宝石を投げて逃げてください。簡単な目くらましを行うように魔力を込めておきました。」
「ありがとう。任せておいてと言っても私は、守られる側なんだけどね。」
そんな調子で作戦の確認がされている中、イリヤだけまだ迷ったような表情をしていた。まだ自分の解答が見つけられずに考えているようだ。
「ちょっとイリヤ、聞いてる?」
「う、うん!」
急に名前を呼ばれてビックリしたのか、大きな声になってしまう。凜は、ため息交じりに再び話を始める。
「イリヤは、ダメージを喰らわないようにね。ダメージを喰らったらクロにまで回ってくるし、それ以上にあなたは魔力がほとんど無いんだから無理な戦闘はしないこと。」
「はい……。」
イリヤは自分自身の役割を聞くと悲しく思えてきてるのか、少し落ち込んだようすになる。今回の戦闘は、邪魔者だから戦闘には関わるなと言われているような感じがしてならない。そんなことを考えてる余裕はなく、今はシロに聞かれた答えを探すのに頭が一杯だ。
「もすぐ着きますわよ。準備をお願いいたしますわ。」
穂群原学園が見えてきたころには、みんなの表情が少しずつ強張っていく。
『みんなで来たんだね。まぁ、分かってたけど……。じゃあ、そこで車を降りてイリヤお姉ちゃんとママとサファイアは、学園内に入ってきてね。クロお姉ちゃんは、既に私のところに着いてるよ。美遊も当然、無事だよ。』
頭の中に直接シロの声が流れ込んでくる。それだけでも一瞬、周りが困惑をしたがすぐに理解して全員が車から降りる。
そしてイリヤとサファイアとアイリスは、学園内にゆっくりと歩いていくことにした。歩いてもそんなに距離が無い場所なのにいつも以上に長く感じてしまう。そして学園前に着くといつもの雰囲気とは違い、重苦しいような感じがしてしまう。
「イリヤちゃん、行くわよ……。」
アイリスは、イリヤの手をぎゅっと優しくそして力強く握ると、イリヤもその手に応えるように握り返す。そして二人でゆっくりと学園内に入っていく。
「イリヤちゃん、怖い?」
「怖いよ。これから何が起こるかも分からないし……。クロや美遊のことがどんな状態なのかも分からないし……。」
「安心して。私がイリヤちゃんの隣にいるんだから。何かあったら全力で守ってあげる。可愛いイリヤちゃんには、手出しなんてさせないからね。」
アイリスは、決意が固いように話をしてくる。その言葉に安心したのか恐怖心が少しは薄れていく。だがアイリスには、話していないがそれ以上に不安が強くなっていた。シロと会うと考えるだけでルヴィア家で起きったことを頭を過ってしまう。
「なんか焦っているように見えるけど、私は何も聞かないわ。きっとそれは、イリヤちゃん自身で見つけないといけないものだと思うから。だけど、イリヤちゃんなら必ず見つけられると信じてるわよ。なんて言ったて、私の子供なんだからね。」
アイリスは、根拠のない言葉を並べてイリヤの気持ちを落ち着かせようと努めている。そしてその言葉は、歩いている廊下に響いて山びこのように何度もイリヤの耳に届いて来る。
そんな言葉を聞きながら自分が美遊のために出来ること。それから美遊を悲しませるようなことをしないための偽りじゃない、自分自身の気持ちと向き合っていく覚悟を決めた。
だが覚悟を決めたころには、屋上の扉の前に来てしまっていた。そして扉を開けるとクロと美遊とシロがいた。
「あっ、ママとイリヤお姉ちゃんだ。ようやく来てくれたんだね。サファイアも一緒だね。」
「私と交換に美遊ちゃんを返す約束でしょ?」
アイリスは、ゆっくりと慎重にシロに近づいていく。その面持ちは、いつものイリヤと一緒にいるときと違い真剣そのものだった。
「ママ、そんなに急かさないでよ。サファイア先に美遊のところに行って安心させてあげて。錠は、もう解いてるからあとは変身したら美遊自身で何とか出来ると思うから。」
イリヤは、シロの発言に驚いていた。凜が考えた策を簡単にも実行に移せたからだ。本来なら戦闘をしながらでも美遊のところにサファイアを連れて行って、変身をしてもらう手順なのに先を越されてしまう。
「あら、そんなことしちゃうと美遊があなたに襲ってくるんじゃない?」
「美遊は、襲ってこないよ。絶対に襲ってこない。私は美遊のことを信じてるし、それに美遊と私にはあの約束があるからね……。」
シロは、余裕そうに笑っている。クロもシロを心配しながらも戦闘をしようと言う気にはならないのか、いつも刀を出していなかった。サファイアは、美遊の元に一直線に向かって行った。
「ちょっとクロ、どういうつもり? どうしてシロと仲良くしているの!」
「私の役目は、ママを守ること。私は、シロがママに手を出さない限り戦う理由が無いの。むしろあなたは、どうしてそこまでシロを敵対視しているのか分からないわ。それであなた、自分の答えを見つけることが出来たの?」
「それは……」
クロの言葉にイリヤは、目を逸らしてしまう。クロは、それだけでイリヤ自身の答えを出せて無いことに気付いてしまう。
「それならその腐った根性を今度こそ私が切り裂いてあげる。」
「美遊様。ご無事ですか?」
「うん。サファイアも来てくれたんだ。ありがとうね。さっそくで悪いけど……。」
サファイアは、返事をするとすぐにステッキ状になり美遊に変身をさせる。変身するとすぐにイリヤの方に走っていく。
「イリヤ、心配させてごめんね。。ちょっとだけ動かないで……。」
そう言うと美遊は、恥ずかしそうにしながらもイリヤの唇に自分の唇を近づけていく。イリヤは、とっさに体を動かして話そうとしたが体を動かすことは出来なかった。そしてそのまま美遊の唇がイリヤの唇に触れる。
「シロちゃん、いったい何をしたのかな?」
アイリスがイリヤの体を動かないことを気付いたのかシロを睨んでくる。
「ママなら知ってると思うけど、“ライダー”には魔眼を持っているの。それは、石化の魔眼でね。相手の体の自由を奪うことが出来るの。それで一瞬だけイリヤの体を動かなくさしたってだけよ。だから、そんなに睨まないでよ。」
美遊とイリヤのキスが終わるとクロがようやくって感じで、待ちくたびれていたのか刀を投影して自分の手に握らせる。美遊は、イリヤから離れるとイリヤは少しぐったりしたような表情をしていた。
「これでちゃんと戻ったの?」
「うん。美遊もイリヤとキス出来て満足できたでしょ?」
「そ、それは……」
恥ずかしそうにしながらも美遊は、確かに首を縦に振った。シロもそんな美遊を見て満足したように笑っている。クロは、やっぱり不機嫌なままイリヤを睨んでいる。
「早く立ちなさいよイリヤ。私がその根性を叩き切ってあげるから。死んでも文句を言わないでね。」
「そんなことを私がさせると思う?」
「ママ、少し黙ってて! これは、私とイリヤとシロの問題なんだから!」
アイリスは、イリヤを庇うように前に立つがシロの魔術によって一瞬で拘束されてしまう。そしてシロは、アイリスが戦闘の邪魔にならないように屋上でも危なくない場所に運んでいく。
「それじゃあ、会場を移動するよ。」
とうとう次話から戦闘が再びスタートします。
また次の話も楽しみしておいてくれると嬉しいです。