それと、この話を投下した後、当面の間、投稿できなくなりますので、今後の話みたいなのを書きました。
ネタバレ書いてましたが、やりすぎな気がしたんで消しました。ごめんなさい。
16. ???
600年前
とある者の手記
信じらないことが起きた。ユグドラシルの最終日に異なる世界に来ていた。仲間たちは困惑していた。電脳法で規制されていた嗅覚が存在し、NPCたちが自律して動き出し普通に話もする。……まるで意味が分からない。
そして、この世界の環境は大変素晴らしい。川があり、森があり、夜空がある。この光景に仲間とともに感動したものだが、感情抑制が起きた。……煩わしいものだ。
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少しこの世界を探索してみると、牧場のような物があり、人間が飼育されていた。仲間たちは憤ったが、自分は何も感じない。もはや、人間ではないということなのだろう。
仲間たちは、今すぐにでも助けようとしていた。自分は乗り気ではなかった。しかし、皆が言うのなら仕方がないということで、助けることにした。
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その後、各地を回り、あらゆる場所で人間を助ける旅に出ていた。果たして、これでいいのだろうか? 今までは雑魚ばかりだったから良いものの、藪蛇をつつくようなマネは続けたくなかった。
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ついに、厄介な敵と遭遇することになった。吸血の竜王と朽棺の竜王たち、それらの配下と我々は戦争することになった。人間など助けなければこんなことには……そう言いたい気分だったが、仲間たちはやる気マンマンだ。
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数ヶ月にも及ぶ戦いの果てに、駆逐すること出来た。そして、多くの人間たちを救出することに成功した。仲間はギルド拠点を囲むように『スレイン村』というものを作った。仲間たちは分かっていない……本当に辛くなるのはこれからだということを
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竜王たちが我々に目をつけて、滅ぼそうとしてきた。以前よりも強大な敵がひたすらに攻めてきた。そんな中、仲間たち同士であったり、異世界で助けた者同士で恋愛関係を作っていた。こんな時に何をやっているんだと文句を言ってやりたかった。
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敵はどんどん強くなっていった。人間を助けたいと強く主張していた女性プレイヤーの1人が妊娠した。1年間戦えないと言う。自分で助けたいと言い出しておいて、戦わないなどふざけるなと言いたかったが、我慢した。その後、それに続くかのように仲間たちは誰かと結婚したりし始めていた。女性姿の仲間は戦えなくなり、男性と自分でなんとか前線を保っていた。
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ついに子供が生まれた。人間である仲間たちは可愛いと言っていたが、別に自分は何も感じなかった。むしろ、足手まといが増えて面倒だと思った程だ。それと、ここら辺で仲間たちが少しずつ、老化していっていることに気がついた。……寿命、自分以外の仲間は全員人間だ。皆、自分を残して死んでいってしまうのだろうか?
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戦いは更に苛烈になっていく、大陸の中のあらゆる敵が連合を組んで攻めて来ている。一体、あと何年ここを防衛していればいいのだろうか? 人間を助けなければこんなことには……
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仲間が生んだ子供が育ち、自分たちと共に戦うと言い出した。驚いたことに、異世界人との間にできた子供がこの世界独自の始原の魔法を使うことができた。今はまだまだ弱いが……いずれ我々を超えるかもしれない。
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チームを分割して、近場の拠点から少し離れた場所にいる敵の群集地を滅ぼしに行く。防衛一方ではキリがないからだ。我々は時間をかけて強大な竜たちを追い詰めていった。少し離れた場所にアーグランド評議国という国があった。その中で白金の竜王と私が一体一で戦い、アイテムを使ってなんとか勝利した。こことは休戦協定を取ることで、戦いは終結した。
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敵の苛烈さはやや抑えられたものの、まだまだ戦いは続いた。仲間たちは既に目に見えて老化していった。自分は変わりなかったが、仲間は直に戦えなくなると言っている。今は仲間の産んだ子供たちが第二世代として戦いに参加し、前線を維持していた。
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遂に、ともに戦い続けた戦友が老衰で亡くなった。自分たちと子供に未来を託してこの世界から去っていったのだ。死んでいるのに、未練なく幸せそうな顔をしていた。仲間や助けられた人間たちは涙を流していたが、自分はオーバーロードだから涙は出ないし、悲しい感情はすぐに抑制されてしまった。それがとても悲しく、人間たちが羨ましいと思った。
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仲間たちは老衰や病気で次々と亡くなっていった。彼らは死んでいってしまったが、今ここには彼らの面影がある子供たちがいた。彼らは面影だけでなく意思も継いでいた。……自分の浅はかさに笑いがこみ上げてきた。今にして、ようやく人間を助けて良かったと思えたのだ。
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異世界に転移して寝ることもなく100年間戦い続けた。遂に、世代は3代目、4代目へと変わっていった。かつての敵の猛攻はなくなっており、人間にとって平和が訪れてきていた。そして、もはや自分を知る者はいなくなっており、皆が守護神と呼んだ。気軽に話せる者はもういなくなっていたのだ。……いい加減疲れてきた。そろそろ自分も仲間のように眠りたい……そんなことを考えていた。
この世界に来てからあのアインズ・ウール・ゴウンのことを考えた。もしかして、彼らはこの世界のことを知っていたのではないだろうか? もし、彼らがこの世界で傾城傾国を知ったと言うならば……有り得ない話ではあるが、いや、既に異世界転移などという有り得ない事なのだが……それを前提に考えると……
色々と準備をしておく必要があるだろう。私は既にデスペナルティでレベルダウンしており、エクリプスでもワールドガーディアンでもない。先は長くないかもしれない。私はかの竜王の息子、ツァインドルクス=ヴァイシオンの元へと旅立った。
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500年前
「よう、初めましてだな、スルシャーナ」
「……? 誰だ? 君たちが浮かべているのは敗者の烙印……ユグドラシルプレイヤーか……だと、するとやはり……」
「何を言ってるのか分からねーが、年貢の収めどきってやつだ」
「そうか……ようやく眠れる時が来たのか……」
「思い出したぞ、君はアースガルズの天空城のギルドマスターか……」
「やっと、思い出したのかよ、てめぇのせいで、俺たちはギルドを失った……」
「そうか……別に謝る気はしないが、私にとどめを指す前に一つだけ聞いていけ、この世界はな……」
「ありがとう、これで眠れる……」
スルシャーナは最後の一撃により消えていった。
「……なぁ、これで良かったのかな?」
「まぁ、いいんじゃねーか、なんか疲れてたみたいだしな」
「これから先どうするよ?」
「そうだな……南だ、南へ行こう」
「それにしても、将来アイツ等がくるとはな……」
「俺らには関係ねーよ、どうせ寿命で死んじまうらな。……だが、もし子孫ができたら伝えておくべきか……」
―――
200年前
「あなたが、伝承にあるアインズ・ウール・ゴウン……」
「あぁ、そうだが? それがどうかしたのか?」
「であるのならば、スルシャーナ様と同じように我々人類を救いに来て下さったのですね?」
「……はぁ? お前らが呼んでいる魔神ってのが邪魔だから狩ってるだけで、人類救済なんざ別に興味ないわ」
「……そんな、だってスルシャーナ様は」
「俺もスルシャーナを知ってるし、話したことあるけどさ、そんな積極的に人間を助けたようなヤツじゃないと思うぞ? アイツ、オーバーロードだったしな」
「そんな、ではアインズ・ウール・ゴウンというのは……」
「メリットが無ければ、人間を積極的に助けるとは思えないね」
「……」
―――
「ツアー、お前にお願いしたいことがある」
「何かな?」
「この指輪を預かっていて欲しい。これだけは絶対に奪われちゃダメなんだ」
「多分、僕より強い君が持っていたほうがいいと思うけど……」
「俺のギルマス、モモンガさんが警戒しているアイテムに備えてだ。ここにずっと引き篭っている君に渡したほうが安全そうだ」
「そうかい……そういうのなら、僕が預ろう」
―――
私は最強の力を得た。この者によるアイテムのお陰で天使となり、永遠の命が得られた……
これさえあれば……堕落したスレイン法国を復帰させ、いずれ現れるアインズ・ウール・ゴウンに対抗できるだろう!!
フフフ、ハハハハ、ハーハッハッハッハッ……