この世界は、ある一人の天才によりISと呼ばれる人類の歴史上最強の兵器が出現した。だが、女性にしか操る箏ができないこの最強兵器は人々を歪ませ差別を生んでしまった。女性優遇の世界。権力が偏り人々の心に闇が生まれ増大していく中
人智を超えた存在が迫っていることにまだ誰も気づいていない。
真夜中の町から離れた森の公園にて。汚れたスーツをきた中年男性が空になった酒の缶を放り投げ公園のベンチに横になっていた。
「くそ…なにが、離婚だ…俺の金欲しさに結婚したくせに…」
男は会社をリストラされ妻は子供と共にどこかに行ってしまい酒におぼれていた。職を探す日々が続き面接には落ちてばかりでついには現実逃避してしまった。
男は自身を切り捨てた女の上司を憎み、すべては女のせいだと何度もつぶやく。
「ちくしょう…こんな世界、俺が変えてやるの…女なんか、消してやる….」
男が涙を流しながら誰もが聞けば鼻で笑う言葉を口に、そして誰かが答える。
「「 ほう、世界を変えるのか、おまえが?」」
「そうさ、ISがなんだ、女がなんだ…そんなもん俺がぶっ壊してやる」
男は酔って意識がはっきりしてないまま、姿のない声に答える。
「「そうか、だったら…」」
数秒後、ベンチに横になっていた男に変化が起こる。体が巨大化し着ていたスーツがやぶけてさらに手が大きくなり、全身に黒い毛が生えその姿は巨大な大熊だった。
「「がはははっ!! すげぇ、力が沸いてきてやがる…」」
凶暴な大熊と化した男は、公園にある遊具を次々と破壊して高笑いをした。
「「この力なら、ISも女もなにもかも俺の手で…」」
邪悪な笑みを見せ、口から見える鋭くとがった牙が月夜に照らされる。魔物と化した大熊は手にした力を使い、自身を切った女上司やこれまで見下してきた人間に復讐してやろうと思いながら一歩踏み出そうとした時
「悪いけど、それはさせないわ」
突然の声に大熊が振り向くと、公園の入り口に一人の女性が立っていた。女性は青いロングコートを着込み、長身で腰まである青い髪が風で揺れ、見た目は十代後半で端正な容姿と鋭い目つきのせいか彼女から出る雰囲気が普通ではなかった。
「「あぁ、ちょうどいい。さっそく俺の恨みを晴らしてやる!!」」
大熊は四足で走り、女性をつかもうとするが。女性はその場からジャンプして飛び大熊の頭上を通りすぎる。女性は大熊の背後に着地し胸元の青い宝石がついたペンダントに両手を置くと、二つのハンドガンを握り二つの銃口から出る弾丸が大熊を容赦なく襲う。
「「がぁ!! ぐぁ!! くそ!!」」
銃弾を受けひるむ大熊。さらに女性は弾切れになった二丁のハンドガンをその場に捨て、再度ペンダントに手を置き今度はショットガンを取り構えて打つ、散弾が広がり大熊の巨体に次々と打ち込まれる。
「「 ぐぅっ!! くそが…俺は、俺は力を手にしたんだ!! おまえみたいな女なんかに!! 」」
かつて普通の男だった大熊は力を手にしてまともな考えができなくなっていたのか、もしも判断ができていれば今目の前にいる女性が普通ではないと気づくはずだった。
普通の女なら、まず大熊を見た瞬間叫んで逃げたりするはずだが、この青髪の女性はこんな真夜中にたった一人で、しかも銃をなれた手つきで扱っており彼女が自分を狩る狩人だと気づくき逃げるべきだった。
「そんな力、必要ない」
女性は一言告げ。弾が切れたショットガンを捨て、また別の銃を取り出そうとしていた。
「「この!! 俺が負けるか!! 俺が世界を変えるんだ!!」」
攻撃が止んだところで大熊が反撃に出て巨大な手を振り上げ、鋭い爪で女性を切り裂こうとしたが、気づくと目の前に女性の姿がなかった。
「「なに!? ど、どこだ… 」」
カチッ
大熊の背後で何かの音が聞こえ、大熊が振り向くと背後に女性がいた。そして手にある大型リボルバーの引き金が引かれて一発の銃声が森に響くのであったーー
「…おつかれ、今日は早く終わってよかったね」
「うん、そうだね」
遠くからサイレンが聞こえる中、暗い夜道を一人の少女が歩いていた。彼女は更識簪と言い、まだ中学に通う少女だった。そして、もう一つの声は姿がなく彼女の胸にあるペンダントから聞こえていた。
「相手が油断してたからよかった、もし逃げられたら厄介だったし…」
「もしかしたら、あの熊お酒に酔ってたかもね。簪も、大人になったらお酒には気をつけてね?」
「ふふふっ、ありがとうエルメス」
二つの声はまるで長年連れ添った友人同士の会話のように楽しそうだった。その後、大きな屋敷についた簪はなれた手つきで、自分で作った抜け道を使い電気が消えている自分の部屋に入り、すぐに寝間着に着替えベッドの中に入る。
彼女の家は、古来より日本に存在する暗部の家柄で現在は簪の姉が当主を務めていた。今屋敷の中では森で起こった騒ぎの情報収集のため人が出払い、両親は別の仕事で、姉は高校の寮にいるため数人の使用人しかいないが、簪はそのおかげで抜け道を作りこうして夜に出歩く箏ができた。
「それにしてもさ…」
「ん?」
「本当によかったの? こっちが巻き込んでしまったせいで簪に戦わせてばかりで、しかも高校だって…」
「気にしないで、あの時エルメスが助けてくれなかったら今の私はいなかったから…それに」
簪は一旦言葉を切り、胸元にあるペンダントを手にし顔の前に持ち笑みを浮かべる。
「そのおかげで私はヒーローになれた」
「そっか…そう言ってもらえると助かるよ…あ、そうだ明日は…ってもう今日か。卒業おめでとう簪」
「ありがとう、エルメス」
その日、簪は幼馴染と共に中学の卒業式を向かえ数日後。簪は高校の制服を身に着け学校に行くためのモノレールに乗っていた。人工の島の上に建つその学校の名はIS学園。 様々な国の生徒が集まるこの学園では兵器であるISを学ぶために国や政府が総力をあげ作り上げた学校だった。
簪はこの学校に入学し、そしてこの学園で彼女の大きな戦いが始まるのであったーー