IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第10話

「あ、織斑先生……」

 

「な、なんで千冬ねぇが……」

 

俺は凰さんの織斑先生の呼び方よりなにより、織斑先生のそのセリフに驚愕を隠せなかった。

 

俺が、あのISを撃退したことを、ほとんど確信している?

 

そんな思いが頭の中で暴れ周り、焦りを呼び、冷や汗が額を流れたのを感じた。

 

「凰、学校でその呼び方はやめろと……まぁ、今は時間帯が時間帯だから許してやろう」

 

「あ、あの、なんでここが……」

 

凰は動揺を隠せていない。

なぜなのかは分からないが、どうやら織斑先生に見つかることで都合の悪いことが起きているらしい。

俺は自分より焦っている人を見ると冷静になる、の法則で、落ち着きを取り戻す。

 

そして、これからでも挽回できるであろう、とひとまずポジティブに考え、気を取り直す。

 

「あぁ、この子がすいません。

 私は寮母をしているもので、こんな時間帯に生徒に外出は認めてないんですが、なんでこんなところにいるんだ、凰」

 

と、織斑先生は凰さんを睨み……俺を見る。

 

「と言いたいところだけど、この状況は私には願ってもない状況だ。

 今だけは許してやる」

 

「え……それって…………」

 

「ま、黙っているのが正解だ」

 

織斑先生と凰さんは俺をおいてけぼりにして話をした後、俺の方を見る。

 

「私はまどろっこしいことは苦手なので、率直に聞かせてもらうが、

 "君が、あのISをやったんだろう"」

 

心臓が跳ね上がる。

 

早鐘を鳴らす。

 

そんな状況で俺はまだ希望を捨てない。

 

「あのISって、どのISですか?

 ってか、やったって、何の話ですか?」

 

あくまで知らない体で。

がんばれ俺、と自分をはげましながら、頭を働かせていく。

 

「……まぁ、白を切るよな」

 

織斑先生は、当然と言った口調で、腕を組む。

 

「そういえば、箒から聞いているぞ。

 なかなかの剣の使い手だとな」

 

「え、えぇ、まぁ、趣味の範囲で嗜んでいます」

 

俺は突然の話の展開に神経を尖らせながら、返事を返す。

 

「というか、なんであいつもこんな時間に外出してるけど、怒られないのよ」

 

あいつ、とはここでは篠ノ之さんのことをさすだろうが、ここで凰さんが俺が今まさに思っていたことを話した。

 

「はぁ、黙っていろと言っただろう。

 まぁ、いいか。

 篠ノ之は私のところまで来て、ちゃんと野外外出願を出してから来ているんだよ」

 

「そ、そんなものがあったなんで……」

 

「まぁ、転校したばかりでは分からないだろうが、そういうものが存在するのだ」

 

あ、篠ノ之さんとそういうの出してから来てるんだ……。

俺の中で篠ノ之さんは改めていい人度が上がったが、それで篠ノ之さんがこの状況をよくしてくれるかというと、そうでもないので、

 

「まぁ、道場も空いてるのだろう?

 ちょっと剣の手合わせでもお願いしたいな」

 

「い、いきなり何を言ってるんですか?

 こんな時間だし、先生だって朝のお仕事があるでしょう」

 

俺は早くいなくなって欲しいという意味をオブラートで隠しながら断る。

 

「ま、30分だけならいい運動になる。

 それに、聞いた話によると、君もここをこの時間に使用しているらしいな」

 

くそっ、篠ノ之さんそんなことも言ってたのか……。

俺の中で篠ノ之さんのいい人度が下がったが、そんな篠ノ之さんがなにかしてくれるというわけでも……

 

「そ、それなら、模擬戦で決着をつけたらどうでしょうか……」

 

ないわけじゃなかった。

むしろダメだった。

いやダメとかのレベルじゃない。

死んだ。

身体的にも、社会的にも、精神的にも。

 

だって相手はISの世界大会王者の人だよ。

 

それに一部の生徒の中では"素手でISと同等"なんて呼ばれてるんだからね、無理だよ。

 

だが、

 

「あぁ、それなら模擬戦をして、君が勝ったら、君が聞かれたくない事は聞かないようにするが、どうだろうか」

 

「あ、はい、ならそれで」

 

いつの時代も男子は弱いわけで、

 

「なら、さっそくはじめようか」

 

「あ、うっす」

 

さからえるわけなんてないのだ。

 

 

 

 

 

「じゃあ、準備はいいか?」

 

織斑先生はスーツ姿のまま竹刀を持って立っていた。

 

「え?それでいいんですか?」

 

「あぁ、まぁちょうどいいハンデだろ」

 

「は、はぁ……」

 

俺は織斑先生の堂々とした格上宣言にあっけに取られながらも、頷く。

 

「だが、竹刀でいいのだろうか……」

 

「え?何がです?」

 

「いや、壊してしまわないか心配でね」

 

「あ、そっすか」

 

もう敬語すら忘れそうな俺は、気を取り直して、

 

「なら、少し重くなりますけど、硬いヤツ出しますか?」

 

と言ってみた。

今回は、俺にとっては負けられない1戦。

だから、俺は今回の模擬戦では、斎藤一の技を使おうと思う。

 

しかし、それには問題も多く、その一つに、織斑先生の言ったとおり、耐久度の問題があったのだ。

 

多分本気でやれば余裕で竹刀なんて壊れる。

 

だから、本音でいうと、もっと耐久度の高いものを使いたかったのだが、織斑先生が先に言ってくれたおかげで助かった。

 

「いや、それだと怪我をさせてしまう可能性も高い。

 やすやすと使うわけにはいかない」

 

「いや、寸止めルールでやろうと思うんで、大丈夫ですよ」

 

といいながら、用具室に入って、俺がよく使う武器をまとめて置いてあるところにある、刃を潰した日本刀を二本取り、用具室をでる。

 

「お、そんなものがこの学校の道場にあったのか」

 

織斑先生は驚いた顔をして、刃を潰した日本刀を受け取り、刃を見る。

 

「えぇ、割とこの道場にはいろいろ揃ってるんですよ」

 

俺は日本刀を予め抜いておいて、本当に切れないかしっかりとみる。

よし、安全は確認。

俺はその日本刀を2、3回ふる。

 

うん、この重みだ。

 

「じゃあ、ルールはどうするんだ?」

 

「あ、それは…………」

 

俺は自分に有利になる、かつそれを悟られないようなルールを考えるが…………無理だ、俺は普通の人だから思いつくわけがないな。

 

ということなので、

 

「基本は寸止めで、相手の攻撃を交わしきれなかった、または防御し損ねた、で1ポイント、3ポイント先取で勝ち、というのでどうでしょうか?」

 

「うむ、いいぞ」

 

「あ、それと万が一ですけど、武器が壊れたらまけですから」

 

「あぁ、まぁ、なかなかこれが壊れるなんてないだろうけど」

 

刃を見ながら言う織斑先生。

 

「まぁ、万が一ですよ、万が一」

 

俺は苦笑いを浮かべ、軽く体を動かす。

 

「ま、いいか。

 さぁ、はじめようか」

 

空気が変わった。

ほんと化物だな……。

一気に体が警告を発する。

にげろ、むりだ、かなわない、と。

ま、それはそうなんだけど。

俺はその体が発する警告を無視し、構える。

 

「ほぅ」

 

織斑先生はニヤリと笑い、篠ノ之さんは怪訝な顔でこちらを見て、凰さんはもう決着がわかっている、というふうな顔でボケっとしている。

 

「さぁ、始めましょうか」

 

そう、俺の構えは、俺の師匠である漫画、るろうに剣心の、斎藤一の技、牙突の名前なのである。

 

漫画では斎藤一は左利きだったが、俺は右利きなので、刀の持ち手は右手である。

 

よって、その構えは、右手右足を半身になるくらいに引き、右手に持っている刀は、敵である織斑先生の方へと切っ先を水平に向ける。

 

左手は刀に添え、腰を低くする。

 

普通ならば有り得ない構え。

 

織斑先生は剣道の構えをとっている。

 

「篠ノ之さん、カウントを」

 

「あ、はい」

 

篠ノ之さんは座ったままで、カウントを始める。

 

「3」

 

俺と織斑先生との距離はおよそ2mと少し。

 

ちょうど4歩くらいの差がある。

 

「2」

 

睨み合う織斑先生。

その目には、強者のみが浮かべる余裕の色が見えた。

 

「1」

 

俺は腹を括る。

 

「行くぞ」

 

小さくつぶやいた瞬間。

 

「始め!」

 

激闘の火蓋は切られた。




すいませんまた分割です。

次で終わります。
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