IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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いつもに比べれば長いです。


第11話

牙突は、漫画では零式がよく目立つが、実はとても理にかなった素晴らしい技なのである。

 

そのいくつもの利点をのうちのまず一つ。

 

「はっ!」

 

俺は思い切り一歩を踏み出し、牙突を繰り出す。

一見届かないような距離。

織斑先生は後ろに避けようとするが、その切っ先は、どんどん織斑先生のもとへ近づいていき、

 

「くっ」

 

織斑先生のもとへと届くが、ギリギリのところで、織斑先生は身をひねって俺から見て左側に躱す。

 

 

牙突は目算が非常に難しい。

 

 

あまりにも身を引いて放つことから、あまり届かないように見えるところも、左足を軸にして牙突は放たれるので、右足が前に出ることにより、肩幅の分だけ、さらに相手へと届くようになる。

 

でも普通は躱せるわけないぞ、今のは……。

 

俺は織斑先生の化物っぷりに呆れるが、気を緩めない。

 

そしてもう一つ。

 

「ふっ!!」

 

身をひねって躱した織斑先生は、回転しながらこちらの首筋に向かって刀を振るう。

 

俺はそれに対して、防御するのではなく、

 

水平に突き出されている刀を横に振るい、織斑先生の首筋を狙う。

 

そしてその結果は、

 

 

「「…………」」

 

俺と織斑先生の首筋には、寸止めされた刀が向けられている。

 

そう、連続攻撃のしやすさ、である。

 

今は俺から見て左側に避けたので、刀によって追撃ができたが、これが右側だったら、俺はすぐさま刀を捨て、格闘戦に持ち込んだだろう。

 

牙突は、このようによけられたあとの追撃手段が明確になっているので、素早く追撃に移ることが出来、相手は対応出来ずに倒されることが多い……と思う。

 

ちなみにこれに使われる格闘戦は、拳法じゃなくてケンカ殺法を使うことでなんとかカバーしている。

 

「なんで避け無かったんだ?」

 

「いや、織斑先生が避けてくれるとばかり……」

 

俺は強気に返す。

というか普通は避けるやつだよな……これ…………。

 

「この場合はどうする?」

 

織斑先生は刀を首筋から離し、こちらを向きながらいう。

 

「お互いに1ポイントずつでいいんじゃないですか?」

 

俺は苦笑いしながら答える。

いや、ほんとこの人の身体能力はおかしい。

だって普通あの目算を見誤った牙突をかわせるの自体普通じゃないし、それからの反撃はもうギリギリじゃなくて予め知ってて避けていたと言わんばかりの反撃だった。

 

「まぁ、私もそれで異存はないよ」

 

織斑先生は俺の言葉に同意する。

多分織斑先生のことだから自分の方が先に当たった、とかいうと思ったけど……。

案外いい人なのかも、と思ってしまうちょろい自分に活を入れ、

 

「続きをしましょうか」

 

俺は呟き、またも構える。

 

「性懲りも無く同じ構えとは……。

 よほどその技に自信があるようだな」

 

織斑先生は俺の構えを見て剣道の構え……ではなく、腰元に刀を置き、抜刀術の構えをとる。

 

俺は織斑先生から漂う死の気配、というものをビンビンと感じる。

 

いや、こんなん人間が出せるものじゃないよ……

 

こんな思いは二年くらい前に一年生の使っていたISが俺に向かって走り出してきた時以来だ。

 

あの時は本当に死ぬかと思った。

 

いやまぁ避けきれたけどさぁ。

 

「ん?それは構えを変えたのか?」

 

俺が織斑先生の気配の変化を感じて、構えを変えたことを織斑先生は機敏に察する。

 

そう、俺は構えを変えた。

 

少しの変化だが、俺にとっては型すら違うもの。

 

牙突、弐式。

 

知らない人が見るのであれば、腰のあたりの高さに構えていたものが、顔あたりの高さに来たもの、というように映るだろう。

 

だがしかし、これこそが牙突の本領であり、斎藤一が本気を出す時に使う型なのだ。

 

俺と織斑先生との距離は、先程より近く、3歩くらいの距離がある。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

俺はその近さを利用してまたも飛び込む。

織斑先生は待つ。

 

俺は牙突、弐式を織斑先生へと放つ。

 

俺の牙突が先に届くか、織斑先生の抜刀の方が早いか。

 

 

傍目からはそう見えるだろう。

 

 

「しっ」

 

鋭い呼気とともに、俺の牙突を俺から見て左側……背中側に躱し、抜刀する織斑先生。

 

それに対して俺は待っていたと言わんばかりに体を半回転させ、全力で振るわれる刀の防御に回す。

 

がんっ

 

鈍い音が鳴り、織斑先生の刀の中腹あたりに俺の刀があたり、防御に成功する。

 

「ちっ」

 

織斑先生は、防御されたことで一度体制を立て直そうと後ろに下がる。

 

そして普通ならばお世辞にも綺麗とは言えない形で防いだ俺も、下がるべきだが、

 

「なっ」

 

織斑先生の驚愕の表情が近くに見える。

 

織斑先生が後ろに下がったのに顔が近くに見える……ということは、

 

刀を捨てたか(・・・・・・)!!」

 

「誰も刀しか使わないとは言ってないですよ」

 

俺は防御しようとする織斑先生より先に、

 

「なるほど、さしずめルールに守られていない"剣術"ということか」

 

顔面の目の前で拳が止まる。

 

「リーチをかけられたな、先に」

 

織斑先生は悔しそうな顔をしていた。

 

「えぇ、あと1ポイントです」

 

俺はここまで来て、リーチをかけれたという現実より、ここまでは予定通り、という感情の方が大きかった。

 

斎藤一の牙突は、ただ相手を殺すことへと特化した技。

つまり、防御は考えられておらず、ただ攻める、それだけを考え、そして極められたものだ。

 

だから、予想としては2度目まではうまく術中にはまってくれるのは予想通りといえば予想通りだ。

 

だから、一番の山場はここから……。

 

俺と織斑先生は、再度少し離れる。

 

今度は織斑先生は少し遠目に位置をとる。

 

大体5歩くらい。

 

後ろに避ければ牙突が届かないちょうどいい距離だ。

 

おそらく牙突の距離感をつかんだのだろう。

 

たった二回見せただけで距離感を掴まれるとは、なんともまぁやっかいな相手だ。

 

ここまで才能が溢れているとは…………と俺は内心で悔しがっているが、

 

「まぁ、何をしてこようが変わらないですよ」

 

構えは先ほどと変わらず弐式のまま。

 

ここからが頑張りどころ。

 

気を引き締め、俺は飛び出す。

 

しかし、今度はいきなり牙突は放たない。

 

ある程度走り、距離を詰める。

 

それに対して織斑先生は今まで見せていたどの構えでもなく、自然体で刀を持っていた。

 

あと2歩、1歩…………と近づいていき、助走のおかげでついた速さを乗せて、突きを放つ。

 

牙突、弐式は、上から突き下ろす感じで放たれる。

人体で一番避けづらい足を狙うためであり、より連続攻撃へと特化させた形だ。

 

それを難なく躱す織斑先生。

 

俺から見て左側……刀を振るう。

 

織斑先生は避けずに刀で防ぐ。

 

ガン、と織斑先生の刀の中腹にあたり、金属同士の独特の衝突音がする。

 

 

俺はそこから牙突の形を作る。

 

なんども練習した連続の牙突。

 

牙突から、刀を振るうというワンアクションを挟むことで、自然に牙突の構えへとつなぐことが出来、そしてそれは、

 

「っ?!」

 

まるで相手からすれば驚異を感じるほどのものとなる。

 

だけどさすがは織斑先生と言ったところか、刀を使って受け流す。

 

ぎゃりぎゃり

 

金属の擦れる音。

織斑先生の刀の中腹を滑る俺の刀を織斑先生は弾き、体制を崩してこようとする。

 

しかし、それもだいぶ練習した。

 

俺は自然に体を回転させて、織斑先生に振るう。

 

「ちっ」

 

織斑先生は俺のどの状態からでも放たれる攻撃に、舌打ちをしていたが、しっかりと刀で防ぐ。

 

ガン

 

織斑先生の刀の中腹に当たった刀は、まるで岩に当たったかのように弾き返される。

 

そこで俺は追撃を…………

 

「……なにか企んでいるのか?」

 

織斑先生はこの模擬戦で初めて引いた俺にとっては疑問を抱く。

 

そう、俺は追撃の手を緩め、下がったのだ。

 

本来だったら俺からしても考えられない行為。

 

「それとも舐めているのか?」

 

怒気を感じる。

そりゃそうだろう。

さっきまで戦っていた相手がいきなりおかしな行動をとったのだ。

しかも追撃のチャンスがあったのに。

舐めているのかと考えられても不思議じゃない。

俺は黙って構える。

 

「ほう。

 舐めているのかは分からないが、こちらも潰しにいこうとしよう」

 

織斑先生は構える。

 

剣道の構えだ。

 

そしてそれは、上段の構え。

 

なんともまぁ都合のいいことか……。

 

俺の頬が少し緩む。

 

「余裕の表情だな、ずいぶん」

 

どうやら見つかったようだ。

また怒気が強くなった。

そういうつもりじゃないのに、という言い訳はもう遅いし、やる意味が無い。

 

俺は走る。

 

届くはずの距離でも牙突は放たない。

 

そして、俺は織斑先生の間合いにはいった瞬間。

 

 

織斑先生へと倒れ込む。

 

 

だが織斑先生は動じず、俺の動向を見守り、その凶刃には力が込められる。

 

 

もうすぐで地面と接触する。

 

その瞬間、織斑先生の刀は振るわれた。

 

死の予感が強くなる。

 

俺でも感じるほどのものだ。

 

これは死ねる。

 

そう確信しながら、俺は足を踏み込む。

 

そして、立ち上がる力と共に、天にその刀の切っ先を向け、

 

「牙突!!」

 

織斑先生の刀へと放った。

 

 

キーン

 

 

甲高い音が鳴る。

 

俺と織斑先生は互いに刀を奮ったあとの形で膠着していた。

だが、そこで勝敗は決した。

 

 

カーン、カンっ、カンっ

 

ものが落ちる音。

篠ノ之さんや凰さんが落としたわけでもない。

 

 

織斑先生が落としたのだ。

 

 

いや、正確には、

 

 

俺が落とさせた。

 

 

そう、落ちたのは、織斑先生の持っていた刀の切っ先だ。

 

織斑先生の持っているものは、刀の中腹から折れて、使い物にならなくなっていた。

 

そして、俺が最初にルールを決めると気に入った言葉を覚えているだろうか。

 

『あ、それと万が一ですけど、武器が壊れたらまけですから』

 

つまり、これで俺の勝利が確定したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの後は結構あっさりしていたよなぁ、あの人」

 

織斑先生は、自分が負けたことを悟ると、「負けは負けだ、素直に認めるし、君には何も聞かないようにするよ」と言って、篠ノ之さんと凰さんを連れて帰っていった。

 

「ほんと、災難だったなぁ」

 

正直、割と厳しすぎる戦いだった。

分が悪いにも程があった。

 

まず、普通の牙突を見てから躱せる人だ、っていう時点で人間としておかしいし、それをくらってもまだ追撃できるのもおかしい。

 

まぁ、後半は攻めまくったおかげで反撃はされなかったけど……。

 

 

それに一番は武器破壊が決まってよかった。

 

 

あれが一番の賭け要素でもあったからなぁ。

しっかりと本気の一撃を打つ前にいくらかダメージを与えて置いたし、あまり大きい声ではいえないが、織斑先生に渡した方の刀は、俺が練習に使っていた方で、ちょっと劣化していたし、というように細かい小細工を重ねた結果、やっとのことでの武器破壊だったのだ。

 

 

それに、最後に使った技。

 

あれは牙突、参式を実用化させたものである。

 

実は、牙突、参式は対空用の牙突といいながら、やってみると実はただの上向きの牙突なのである。

 

だから俺は参式に改良を加え、倒れ込む……つまりは自らの姿勢を低くすることで、わざと隙を作り、それを迎え撃つ。

 

つまりは攻め、というものの結晶である牙突唯一の、カウンター技なのである。

 

しかも、わざと姿勢を悪くすることで、反射で足が出る。

 

反射とは、自分で考えて体を動かすよりも速い。

 

つまり、牙突の威力も自ずと高くなるので、おそらく弐式以上の威力が出ると思う。

 

ただし、普通の牙突よりも、攻撃の範囲が少ないので、使い所が難しい。

 

思い返すとなんか疲れてきた……。

 

もうほんとに嫌だな……。

 

俺は日記を書き終え、すぐさま寝るようにする。

 

ちなみにその日の夢は織斑先生に仕事を大量に頼まれる夢だった。




ということで、11話にしてやっと、この小説でいう序盤、というものが終わりました。

お気に入りしてくださっている方々、評価、感想をくださった皆様、ありがとうございました。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!

評価、感想も、いつでもお待ちしております。

これからもなにとぞ、『IS学園用務員物語』を、よろしくお願い致します。
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