「女性との出会いで1番いい出会いって、どこがいいんだろうなぁ……」
と、恋愛経験ゼロの人間が何か言ってみるが、思いつくわけもなく、
「いや、でも職場的には出会いしかないんだけどなぁ……」
そう、用務員以外の人間は全て異性、という学園なのだ、ここは。
「いや、でもなぁ…………」
俺は日記を綴り始めるがため息をつく。
「今日のあの出会い方はないよなぁ……」
「うっげ」
俺は午前中にやっておくべき仕事を片付け、大体4時間目の中程あたりで用務員室に戻ってきた。
なんだかんだで早く終わってしまったため、ほかの人はいない。
マンガ本でも読んでようかなぁ……。
と、俺は呑気なことを考えていると、俺の机の上に、1枚のプリントがあった。
「やっぱりか……」
『修理届け』
それは生徒、または先生、はたまた用務員が、学校に関する故障、破損を見かけた時に出すものだ。
そしてこの修理の仕事は用務員がすることになっている。
例えばそれが、
「窓にヒビ、ねぇ…………」
業者に頼まないといけないような仕事でも、だ。
IS学園は、極端なくらいに部外者に対して厳しい。
まぁ今度行われるトーナメント戦とかは、世界中からいろんなVIPが来るから、例外もあるけど……。
それ以外の場面では、ほんとに部外者をいれない。
入れるとなるなら、多分書類も面倒だし、すごい制約をかけられるらしい。
ということで、こういう修理系は、用務員が全て担っている、ということであり、
「なんで今日に限って俺なんだ……」
その修理届けを誰が処理するのかは、未だに俺らが一度も見たことのない、存在するかわからない用務員長が、みんなの机の上にこっそり置いたりするのだ。
……昔気になっていたが、今となってはこのいきなり感にもなれてくるもんだな。
俺は"修理届け"を手に取り、読んで行くと、
…………なかなか簡単に終わりそうなんじゃないか?
ヒビだけだし、修理用の物は全部届いてるし、ただの張り替えだから……。
時計を見る。
4時間目が終わるまであと28分。
もの取ってついてから直すまで25分……。
「やるっきゃねぇ」
俺は即座に行動を開始する。
「いや、今思えばあの判断が間違いだったんだよなぁ……」
俺はまたもため息をつきながら日記を書いていく。
「こんどからちゃんと時間に余裕持ってやろ……」
「よし、始めるか」
今俺がいるのは女子トイレ。
1年からは二番目に近いトイレで、生徒はなかなか使わない。
そして、今回はISによる衝撃でガラスにヒビが入っていたらしい。
学園のガラスは強化ガラスがほとんどなのだが、ここは使われていないというのもあるし、グラウンドに面しているからか、みんが気づかないうちにどんどんダメージを受けていったのだろう。
「よし、間に合うな」
見たところ、ヒビもそんなに大きくなく、乱暴に扱わなければ割ることもなさそうなので、時間はかからなさそうだ。
「ちゃんと張り紙貼っておいたし、ものもある、手順はバッチリ。
よし、やるか」
四月のあの教訓をしっかりと生かして、俺は確認作業をした後、作業に取り掛かる。
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「あ」
それは突然だった。
張り替えるために少し立てかけておいたガラス。
そのガラスが、窓がないせいで吹き込んできた風によって、ヒビ割れて取れてしまった一部分が、落下してしまったのだ。
パリン
あんまり大きな音ではなかったが、しっかりと広がる破片。
キラキラと陽の光に照らされて床は輝いていた。
「っ…………あぁ………………」
俺は肩を落としながら、トイレにある用具入れに近づき、ちりとりと箒をとろうとする。
そして、俺がその二つをとってガラスを片付けようとして後ろを見た瞬間。
「何者だ……」
なんか臨戦態勢の、銀髪で眼帯のちびっ子がシリアスな雰囲気を纏っていた。
分割です