「いや、何者だっていうか、なんでここに……?」
俺はいきなりのことに動揺を隠せない。
そしてそれと同時に、俺は頭の中で最悪の想定がされる。
まず、この子が悲鳴をあげ……そうには見えないが、外部に何らかの形でこの状況が伝えられる。
それが正式な形で、俺が修理を行っている女子トイレにはいった、ならいいのだが、間違ってでも、
女子の入っている女子トイレに俺が修理をしに入った、となればどうなるだろうか。
……………………ハメツデス。
「貴様…………女しかいないはずのIS学園になぜ…………」
俺が最悪の想定をし終えた時、目の前のおチビちゃんは、なにやら考えていた。
俺は冷静になってきて、おチビちゃんのことを見る。
長い銀髪の髪の毛……眼帯……明らかにキャラの濃そうな喋り方…………。
………………転校生?
そういえばこの前書類渡した気がする。
3週間前くらいに……。
織斑先生に…………。
また織斑先生か…………。
「貴様…………どうやって敷地内に入ったのかは知らないが、不法侵入者だな……」
「あー、いや、あの、俺は違いますよ」
用務員なんです、その言葉をいう前に、おチビちゃんは、その長い髪をなびかせて、
「実力行使で行かせてもらう!」
飛びかかってきた。
「え?なんで?」
まさか男が女子トイレ入っている状況で、逃げる、叫ぶ、引く、とかの女子っぽい反応じゃなくて、襲うという思考になるのが信じられなくて、一瞬呆然としてしまうが、
「そんなことすると怪我しちまうよ!」
割と細かい破片だったし、靴を貫通する、みたいなことは無いと思うけど、転んだりしたら怪我しちゃうよな、と俺はガラスのことを思い出し、おチビちゃんに忠告をするが、なにやらブチッ、という音が聞こえた気がした後、
「私を舐めているのかぁ!」
右の大振りのパンチが向かってくる。
俺はいつもの道場での癖で、横にかわしてしまう。
ちなみに、IS学園のトイレは、結構でかい。
まぁ、女子トイレだから例外なく個室オンリーなのだが、廊下が結構広い。人が頑張れば3人くらい横並びできるほどの幅がある。
そして、俺はさっきまで窓の交換を行っていたため、必然的に窓際にいることになる。
結構ぶち切れてたから、壁にぶつかっていくのかな?
と、楽観的に考えていた俺への報復のように、おチビちゃんは壁に両手をつき、反動を使ってドロップキックをしてくる。
後ろからの攻撃は、普通の人ならよけれないだろう。
俺だって、この前までだったら後ろから予想外の攻撃をされても反応できなかったが、
「なにっ?!」
今では対応できるようになってしまった……。
いやだって、凰ちゃんすごいすばしっこいし、攻撃受け流されて後ろ取られちゃうんだもの。
もうなんか咄嗟に防御できるようになってしまったよ……。
俺はおチビちゃんからのドロップキックを体をひねることで、体の側面で受けることができた。
「くっ……」
おチビちゃんは俺の体を足場にして跳び、俺から距離をとる。
「まさか見ていないのに反応とは……化物か?」
「いや化物は織斑先生だよ……」
俺はおチビちゃんに聞こえないように否定をする。
そして、自分の本来すべきことを思い出し、
「あ、いや、あの、俺はIS学園の用務員をやってて、今ここの窓ガラスの修理をしていたんだよ!」
「………………ふん、ならばそれを証明できるものを見せてみるんだな」
俺は慌てて自分の来ている服から、スタッフカードをだそうとした途端、
「隙だらけだ!」
えっ?なんで?
なんで殴りにきてんの?
俺の頭の中は疑問で埋め尽くされたが、何年も練習を重ねてきた技は、
「なっ…………」
裏切らない。
俺の体は無意識のうちに素手での牙突を放ち、その凶手はおチビちゃんの首元に添えられていた。
「あっぶね」
今度の危ないは、すんでのところで俺が止めれたことに対して、だ。
俺は手を離そうとするが、なにかされるのでは?と思い、なかなか手を引っ込めることが出来ず、そっとおチビちゃんの顔を見ると、
ムス
もうそんな擬音がぴつたりの顔をしていた。
なにが不満なんだろうか、まだやる気なのか?
そんなことが頭の中に巡っていると、
「何もするつもりは無い」
おチビちゃんから無愛想にそんなことを言われた。
俺はそっと手を離し、改めてズボンのポケットからスタッフカードを取り出し、おチビちゃんに見えるように見せる。
「な、これが証明だ」
「ふむ…………」
おチビちゃんはまじまじと俺のスタッフカードを見て、しばらく考えた後、
「今のところは信じてやろう」
と言って、踵を返し、女子トイレを出ていった。
「なんだったんだろう、ほんと」
俺は日記を書き終え、改めて起こったことを思い返し、不思議に思う。
そして、
「やばいな、なんか嫌な予感がする」
このごろ平和だなぁ、なんて思っていたのに…………。
そして俺は薄々気づいていたことから目を背けていることに、自分で気づいていない。
それは、
「あの子、織斑先生のクラスの子だったのか……」