「フラグは回収しきった……よな?」
俺は日記をつけようとし、今日一日の内容を振り返った後、少しの疲労感を思い出したながらも、それに見合った報酬を受け取ったのではないかと考え出す。
「いや、これ以上これで騒ぎはなくなる……よな…………」
日記を書いていく。
そこには今日の朝からの出来事や、変わったことなどが記されていく。
「いやでも長期的に見るとマイナスなのかな……?」
なんて考えごとをしているうちに、俺の日記は今日の放課後まで記されていく。
「でも今を考えるといい感じにフラグ回収されてるよなぁ……」
そして、俺は道場での箒ちゃんたちとの模擬戦やらなにやらを終えた後のことにさしかかり、筆を止める。
「……………………」
「………………」
「……」
「………………………………」
「…………」
なにやら外から話し声が聞こえた気がした。
俺は十分ほど前に箒ちゃんたちを帰した後に、1人で牙突の練習をしていたところ、外からなにやら物音が聞こえた気がしたので、そろりと近寄ってみると、
「なんか聞こえるな……」
それは確信に変わった。
明らかに人の話し声だ。
しかも2人。
何を話しているかは聞こえないが……
これは開けるべきか?
俺は一昨日の女子トイレ事件を思い出し、このごろなにか良くない予感がしていると思う。
いやでも、このまま待っていて開けられるのも気まずい。
俺は今、広い道場の限界に近い方の隅っこで牙突を何回も放っている状態だ。
それでこの状況で扉を開けられたら、と考え始めたので、
「えぇい、なるようになれ」
心の中では織斑先生+誰かなのだろう、というのはうすうすだが察していたので、俺はズンズンと扉に近づき、勢いよく扉を開ける。
「「っ?!」」
そこにいた案の上の1人と予想外なもう1人…………織斑先生と女子トイレのおチビちゃんを見て、驚かせたはずの方の俺が固まってしまいそうになる。
ま、まさか俺チクられた?
内心冷や汗だくだくで、もう今すぐにでも扉を閉めて逃げたいのだが、生憎なのかそんなことをしても織斑先生に捕まるオチしか見えてこない。
そして俺は硬直しながら待っていると、
「あ、あの…………」
おチビちゃんの方から声をかけられた。
なんかおチビちゃんは、妙にそわそわしていて、なんだかこの前襲ってきたおチビちゃんとは大違いだった。
「その……だな………………。
この前は……………………」
なにやらボソボソと話し始めた。
ぎりぎり拾える音量なので、かろうじて聞こえて入るが、これより小さい声で喋られると聞こえなくなるくらいだ。
「すまなかった……」
と、俺がよく聞こうと、少し近寄ると、おチビちゃんは急に顔を上げてこちらの目を見て、しっかりと謝ってきた。
「………………この前のこと?」
コク、と頷くおチビちゃん。
そして俯いてしまったおチビちゃんを見た俺は、織斑先生にアイコンタクトを飛ばす。
「あぁ、この前こいつにIS学園に男が一夏以外にいるのか聞かれてな。
用務員とかは全員男子のメンバーだ、と答えたら、こいつが顔を青くして」
「え?あぁまだ信じていなかったの……」
「いやいや、なにぶんこいつはまだ転校して三日と経っていないからな。
そりゃあ普通に考えるなら、男子は絶対に入れない学園に男がいる方がおかしいものな」
そして織斑先生は、それに、と付け加えて、
「それで、これは生徒から聞いたのだが、こいつ、漢字が得意じゃないらしくてな。
この前女子トイレで窓の修理してもらった時、きちんと張り紙してただろ?」
「あ、はい、あとから確認もしましたよ」
そう、そのとおりなのだ。
俺は確かに修理中の紙を貼っていた。
なのに人が来たからことさら動揺したのだ。
「それを読めなくて入っていったら男がいるもんだから、びっくりして危害を加えてしまったから、その謝りだそうだ」
「いや、普通に考えてびっくりして危害を与えるものじゃないでしょうよ……」
人間には言語というほかの生物にはできない能力があるでしょう?
使いましょうよ。
あ、肉体言語はなしですからね、などと言ったら挑発にしかならないようなことは飲み込んで胸にしまっておく。
「いや、あの、そのことはすまない……」
当の本人も申し訳なさそうにしている。
「まぁ、別に怪我があったわけじゃなかったし、いいよ別に」
「そ、それは助かる……助かります…………」
「ま、そっちも割れたガラス飛び散ってたけど怪我なかった?」
「ガラス?」
おチビちゃんはとぼけた顔をしてこちらを見る。
「いや、あの時ガラス割っちゃって破片飛び散っててさ、怪我しそうだったから危ないよ、って言ったら突っ込んできたじゃん」
「………………あっ」
分割です。