しばらくの静寂。
織斑先生はおチビちゃんのことをにらみ、俺は何を言ってるのかわからないから真顔、対しておチビちゃんはやってしまった、という顔でこちらを見る。
「いや、ほんとにその、あれは…………すいませんでした!!」
もう土下座をセントばかりの勢いに俺はやめてくれ、と言い、話が終わってしまいそうなので、織斑先生にアイコンタクトを飛ばす。
「私からも謝る。
すまなかった」
二人揃って土下座、とまでは行かなかったが、頭を下げられては、さすがの俺も断れない。
「ま、何にそんな申し訳なく思っているのかはわからないけど、怪我がなかったし、もういいよ」
と、2人の顔を上げさせる。
「お礼、といえばいいのかは分からないが、1ヶ月……いや、きりよく4週間くらいだが、教えようか?剣道。
私が考えたなかで一番の償いが分からなかったから、こんなことで悪いが……」
「いえ、いいです」
俺はきっぱりと断る。
「え?
いや、まぁ、そういうのならばいいんだが、なんで断るんだ?
前に何もいらないのにこれだけには反応したじゃないか。
てっきり剣道の指導が一番欲しいのかと……」
「いや、そんなバトルジャンキーみたいに言わないでくださいよ」
俺は不服そうに返す。
いやだってこれはあくまで趣味の一環であって、まぁ強くなることは嬉しいし、ここまで長いことやってきたから、もっと強くなってみたいなぁ、とは思うけど、
「俺は最初に勝ったら、と言ったんですよ。
それを曲げてまで強くなることに強くなることになんの意味があるんですか?」
「はぁ…………。
そういうことなら分かったが、他になんか償いできるものはないか?
借りを作ってばかりは嫌なんだ」
……自分に置き換えてみたら嫌だな、お世話になってばかりの人にお返しできず、欲しいものはあるかと聞いたら、かといって欲しいものはない……。
なんかないかなぁ………………あ、
「じゃあ、ちょっとお願いがあるんですけど、良いですか?」
「あぁ、なんでも言ってくれ」
え?今なんでもって………………と、くだらないことを考えるのをやめ、
「なんか織斑先生ならいい武器作る人知ってそうなんで聞きますけど」
あー、隣におチビちゃんがいるけど、まぁ分からないだろうからいいか。
「一振、ヒーローの刀が欲しい」
と、織斑先生にわかりやすいように、かつおチビちゃんには絶対に伝わらないように言った。
「……なかなか難しいことを言うな」
「まぁ自覚はありますけど、頼まれた以上過剰なくらいがちょうどいいんですよ」
あんまり力は使ってはいないのだが、男たるもの全力、というものを知りたい。
そう、俺の全力、とは
力を使った状態での牙突、だ。
だけど、生半可な刀だと、多分スピードと衝撃にまず耐えられないと思う。
だからこそ、
「あなたくらいにしか頼めませんよ、こんな無茶苦茶なこと」
「ふっ…………ま、そのくらい無理難題の方がありがたいな」
「流石ですね」
俺は素直に賞賛の言葉をかける。
力を使った状態での俺の力を見たのに、それに耐えられる刀を作れると言ったのだ。
「ま、こんなところでいいでしょう
俺としては十分ですよ。
謝ってもらったし、いいものも貰えそうだし」
「あ、あの!」
と、俺はナチュラルな流れで帰らせようとしたが、ここでおチビちゃんが俺に話しかけてきた。
「ん?あぁ、なんだい?
別に年下からお詫びのものとかもらうつもりは無いよ」
「あ、いや、それはそれで私の方が落ち着かないので、後日なんか持っていきます」
お、いい子だな、と自分が思ってしまい、そこで自分の現金さに気付き、ちょっと苦笑いしながら、
「他になんかあるような顔だけどどうしたの?」
「あ、あの、素手での戦闘を、教えていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「「は?」」
「いや、この前に攻撃してしまった時に、見事に防がれてから反撃をされたし、なにより、あの技」
おチビちゃんはこちらをじっと見て、
「かっこよかった」
「素手より剣術の方に興味はないかい?」
「あー、まぁ、女子トイレフラグは回収しきってるから、大丈夫だよ……な」
俺は日記を書き終わり、一息つき、考える。
…………いや、まぁ、一応牙突教えるってなっちゃったけど、後悔はないなぁ……。
だってかっこいいって言ってくれたし。
俺も最初はかっこいい、から始めたもんなぁ……。
何も知らない状態で。
今思えば懐かしいなぁ……。
まぁ、人に教えるなんてやったことは無いけど、今まで自分がやってきたことは伝えることが出来るはずだよな。
なんかちょっと、うきうきしてきたな。
決して自分の技じゃないけど、
決して極めたわけじゃないけど、
"俺"っていうものに対して、そんな感情を持ってくれたのが、嬉しかったな
寿司……じゃなかった弟子フラグです