IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第2話

「いやぁ、まさかこんな早い段階で模擬戦場の使用願が来るとは……流石織斑先生のクラスだなぁ」

 

毎年織斑先生のクラスは色々と騒ぎを起こすから、用務員さんの中では仕事増やし、とあだ名がつけられている織斑先生。

 

そんな仕事増やしが、名前の通りに仕事を増やしてきて今日はかなり焦った。

 

「まぁそれでも、こんな書類用意するだけなら、簡単なんだけどなぁ」

 

今回はただ模擬戦場の使用願が欲しいという理由だったので、簡単だったが、

 

「いやー、いきなり出てくるのはいつも反則だよなぁ」

 

そう、織斑先生は足音もなしにすっと現れてくるのである。

俺ら用務員は、基本生徒のいないところで仕事をしている。

つまり、そこは用務員1人、ということである。

だから、人が寄って来れば足音の一つや二つ、聞こえてくるはずなのだが、織斑先生は聞こえてこない。

ほかの人にも聞いてみたけど、みんな揃って同じことを言うのだ。

 

「はぁ、それにしても、明後日かぁ」

 

模擬戦場は、IS学園でよく使われると言っても過言ではない場所だ。

つまり、それと同時に用務員の手が必要になってくる場所でもある、ということである。

 

「こんな早い段階から使われるのはちょっと例年にないことなんだよなぁ」

 

大体最初に模擬戦場が使われるのは、年の初めに行われる、クラス対抗戦……クラスごとに候補者を1名ずつだし、トーナメント形式で争うものだ……の二日前くらいからだ。

てか普通の先生はおいそれと模擬戦場の使用願をもらいにこない。

 

なぜなら使用願を出してしまうと、学校の掲示板にでかでかと予定として乗ってしまうし、模擬戦場での試合は、全生徒が見ることが出来る。

つまり、戦力の偵察がし放題なのだ。

 

ってことであまり使わないのが、普通、というものなのだが、織斑先生はそんな常識をことごとく打ち破ってくる。

 

それに、噂によると模擬戦場の使用理由も、『クラス対抗戦の候補者選出のため』なんて書いてるもんだからほかのクラスは動揺を隠せないのか、用務員である俺にすらその噂が届いたわけである。

 

ま、そんなことせずとも、用務員である噂好きの中林さんに聞けば1発なのだが。

 

 

とまぁ、新年早々悪い予感しかしない織斑先生のクラス。

 

それにしても男の子の人気が途絶えない……。

 

いつになったら落ち着くんだろう……。

 

それに昨日だって男の子の部屋でなんかひと騒動あったらしいけど……

 

そんなため息をつきながら、日記を書いていき、その話題が終わったところで、さっきのことを思い出す。

 

「はぁ、これで1人で道場が使える日も最後なのかぁ」

 

俺は悲しみの表情を表しながら、日記にさきほどあったことを書いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガンガン、ガンガン

 

「なんだろ」

 

俺は道場の点検(仮)をしていると、突如道場のドアが音を立てる。

誰かが叩いているようだ。

 

俺はあまり深く考えずにドアを開けようとしてしまうが、あと少しのところで、少し思考し始めた。

 

用務員の皆さんはこの時間には仕事終えてるよな。

 

それに今道場の前には点検中の看板立てておいてるよなぁ。

 

それにこの時間に用務員に用事がある人は多分明日に回すだろうな、普通。

 

ってことは織斑先生か?

 

また仕事増やしに来て……ってか俺がここにいるの知ってるって事は、ここでやってることも知ってるんじゃ……

 

と考えていると。

 

ノックの音が鳴らなくなり、

 

「あの、用務員さん!私、篠ノ之箒、と言います!

 ここを少し使用させてもらえないでしょうか?!」

 

ドア越しに聞こえる声で、話しかけてくる。

俺はそれを聞いて、しばらく考えた後、生徒だと言うことだったので、ドアを開けてあげる。

 

「あ、あの、こんな時間にすいません……。

 あ、私、1年1組の篠ノ之箒と言います。

 今日は、ここを使わせてもらいたくて来ました」

 

「あ、あぁ、そうか。

 だけど、この時間には道場は使えないことになっているのは知っているはずだよね。

 今度からはちゃんと使用できる時間においで」

 

ドアを開けた先には、袴姿の、大きなリボンをつけたポニーテールで、凛とした顔つきの少女がいた。

俺はめんどくさいなぁ、と内心思いながら、言外に今は部屋に戻りな、という意思を伝える。

 

「じゃあ、用務員さんがここを私的に使ってるって、先生に言いますよ」

 

冷や汗が流れ始めた。

やばい、それは確実にやばい。

いやまぁ、点検はしているし、悪いことはなにもしていないのだが、確実に教頭あたりから雷が降る。

あの人の説教は長いから嫌いなのだ。

 

「……なにが目的ですか?」

 

しかも、1年1組といえば、仕事増やしのクラスではないか。

そんなことがバレたならばきっとこれから仕事増やしは俺の元に来るようになるだろう。

それだけは阻止したい。

教頭の説教よりも阻止したい、ということで、下手に出て様子を見る。

 

「いや、1時間ばかしここを使わせてもらえないかな、と」

 

「なら、使える時間帯で「その時間にはもう使っているけど、時間が足りないんです」……はぁ、そうですか」

 

俺は話を聞きながら、思考するが、どうにもこの少女に道場の使用を許可しない限り、逃げ道はないらしい。

 

「半ば脅迫のようにもなってしまっているのが申し訳ないですが、よろしいでしょうか……」

 

「あー、そうだな……」

 

ここで軽々と道場の使用を許可してしまえば、バレた時の反動がでかくなる。

 

「30分「1時間」……30分「1時間」……30分「1時間」……………………1時間だけな」

 

女は強かった。

そこから今日だけ30分で、明日から1時間、ということで、少女に使用を許可した。

その日は俺は途中で遊びを切り上げて、点検を初め、少女の使用時間が終わる頃には、道場の掃除以外の仕事は終わっていた。

 

「あの、きょうはありがとうございました」

 

ペコリとする篠ノ之さん。

こういうところがきちんとしている人はいいなぁ、と考えながら、さきほど盗み見していた篠ノ之さんの動きを思い返す。

 

それは典型的な剣道のものであり、俺もよく知っているものであったが、キレが違った。

いやもうあれは努力の賜物だな、というくらいの美しさで、思わず点検の手を止め、しばらく見ていたくらいだった。

 

「いやいや、こっちもなかなかすごいものを見せてもらったよ。

 ほんとすごかったよ」

 

まぁ、最初は怖い子だなぁ、という印象があったが、あれを見て、お礼を聞いた俺の篠ノ之さんへの好感度は、結構高かった。

 

そして、帰り際、仕事が残っているから、先に篠ノ之さんを帰らせ、その時な、気をつけて、と声をかけたら、

 

「あの、良かったら、明日、少し模擬戦してみませんか?」

 

このあとの言葉は、その時は社交辞令的な意味で言ったつもりだったのだが、後々この言葉を思い返してみると、俺はとても面倒なことを引き寄せてしまったのだということがわかる。

 

「あはは、まぁかなわないとは思うけど、良かったらお願いするよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、こんなもんか」

 

俺は日記を書き終え、寝ようとする前に、

 

「あ、そういえば転校生用の部屋一部屋使えるようにしておけってあったよな、忘れないようにしないと」

 

と思い出し、また仕事が増えた、とひとりため息をついていた。




次回、篠ノ之さんと戦闘です
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