「次はとります」
そして、勝ちます。
言葉にならない声が俺の耳に届いたような気がした。
俺と箒ちゃんは、開始位置に戻る。
きっと箒ちゃんの中では、負けられない、そんな気持ちがグルグルと渦巻いていることだろう。
大して俺は、終わった、という負の感情がズンズンと溜まっていく。
客観的に見ても、俺は明らかな優勢であり、逆転勝利など、漫画の主人公じゃない限り、できないくらいの差が生じている。
「行きますよ」
箒ちゃんから感じる威圧感というかなんというか、あれだ、プロの選手とかから感じるあの独特の凄み、みたいなものを箒ちゃんから感じる。
……俺が、先程までの二本を制することが出来たのは、あくまでも、さっきまでやっていたことが、二人にとっては初見だった、という利点があったからだ。
つまり、何が言いたいのかというと、
もう引き出しがない!
がんばってようやっと見せれる形になった陰陽撥止。
凰ちゃんの昆術から作った円の動き。
これ二つを二人にバレないように完成させるのがやっとだったし、個人的には奇跡だと思う。
だって陰陽撥止なんか同じ位置に小太刀投げるんだよ。
難しいわ。
それに、手探りでがんばってなんとか見つけた円の動き。
これは、本来なら直線上に加わる力を、うまいこと利用して、円の動きにすることで、強力な攻撃からでもすぐさま返し技を狙えるようになる、というものだ。
こっちのほうは、意識してやっていないとできない。
ガン
俺は箒ちゃんの左斜め上からの袈裟斬りを二刀揃えて、右へと受け流す。
守れるのは守れる。
守りに徹していれば。
すぐさま受け流された刀を俺に振るう。
下段の右からの薙ぎ払い。
すぐさましゃがみ、当たる面積を小さくするとともに、頭近くまで上がっていた刀を下ろす。
衝撃の音とともに、俺は受け流せないことを悟る。
左に飛び、威力を殺す。
ほんとにどうしようか。
そんな感情のまま俺は戦っていた。
威力を軽減させたにも関わらず、脇腹に痛みを感じた。
受け流せなかった分が剣を通じてダメージとして来たのか、と思いながらも、体制を整え、追撃に備える。
いや、受け流せなかった分がダメージとしてって、強すぎじゃない?
そんな疑問に足を引っ張られそうになるが、追撃は来ないため、助かった。
「舐めているのですか?」
箒ちゃんは切っ先を俺に向け、少し、怒っているような顔をしていた。
「今のやり取り、全くと言っていいほど覇気を感じなかったです。
なのに、こちらの攻撃は、完璧に防いでいる。
まるで、圧倒的な強者のような戦い方です」
箒ちゃんは、そのまま、正眼の構えをとる。
「そんなやり方をするなら、私だってやり方があります」
先程までと変わらない突撃、
箒ちゃんの得意な右上からの袈裟斬り、
俺は近くまで迫ってきていた剣に対して、いつものように二刀を揃えて防御をしようとする。
しかし、剣は生きたようにその剣閃を揺らめかせ、
「1本です」
その首にはいつの間にか、箒ちゃんの刃が添えられていた。
分割です