俺ははじめの合図とともに駆ける。
「やっぱ、変わったね、やり方」
その言葉とともに、凰さんの昆をもってに力が入ったのが分かった。
俺のやり方が変わった。
いや正確には、直った、という方が正しいのだろう。
だって、今までの俺のやり方は、
「はぁっ!」
右手の小太刀を最短距離で凰さんに振るう。
その右からのなぎ払いは、凰さんの昆に受け止められる。
凰さんの昆は、自分の身長より高いものであり、とてもじゃないが扱いやすそう、とは思えないものだ。
その構え方は、昆の先端を俺に向け、体の左側をこちらに向けるように半身にしている。
よく映画とかでよく見る構えだ。
それを見た俺は最初、あれ?これ右からの攻撃に弱いんじゃね?と考えてた。
だって、自分より大きい武器を軽く振り回すことは、普通に考えれば難しいと思う。
しかし、それは俺の思いすごしだった。
「はっ!」
凰さんはその場で360度時計回りに回転して、俺の小太刀を昆で防ぎながら、反対の方の先端で、俺の足元に攻撃を仕掛けてくる。
ガン
俺はすぐさま左手の小太刀で昆を払おうとするが、衝撃に昆が少し揺らいだだけで、俺への攻撃が当たることには代わりがなかった。
「くっ」
俺は少し声をこぼしながらも、右へ飛び、昆をかわす。
当然、そんな大きい動作の避けを見逃さない凰さんは、攻撃した方とは逆の方で、俺を殴りつける。
しかし、右へと飛んだことで、両手が自由になり、二刀での防御に成功する。
「なんかさっきの箒ちゃんの攻撃に比べたらずいぶん軽いですね」
「そりゃ、あの馬鹿力とやってればそういうふうに感じるわ、よっ!」
俺は二刀を鋏のようにして、昆を受け止めるが、凰さんは鍔迫り合いをするまでもなく、昆を縦に回転させ、下からの攻撃に切り替えた。
俺はそれに対して、今までだったら退いていたものを、あえて、
一歩踏み込み、小太刀二刀流を鋏の形のまま、凰さんの首に、鋏を閉じるように攻撃する。
「っ?!」
凰さんは、驚いた表情で、後ろに下がる。
当然、リーチの短い小太刀は、その攻撃を外す。
「ほんと馬鹿じゃないの?」
凰さんからありえない、というふうな声が聞こえてくる。
まぁ、俺だって模擬戦じゃなきゃこんなことはしない。
でも、今の感じだ。
戦いながら、整理していった四乃森蒼紫の戦い方。
それは、攻めながら守る、ということだ。
牙突は、攻める前に攻める、という感じだったが、小太刀二刀流は、攻めることは攻めるが、そのリーチの短さゆえ、相手からの反撃の方が早くなってしまう。
だから、二刀を使い、自分の間合いまで自分を守りながら突き進み、そして、相手からの反撃を防御しながら、安全に攻撃する。
おそらくだが、これが俺に向いている戦い方であり、四乃森蒼紫の戦い方に近いのではないだろうか?
まぁ、存在しない人物だし、疑問に思っても仕方がないことなのだろうが、
これはいける。
先程の戦いから、手応えをつかみ始めている。
それに、牙突の練習のせいか、自分が早く攻撃できると感じると、一歩前に出すことが出来る。
まぁでも、やられてしまうかもしれないので、あまりやりたくはないのだが。
「それにしても、凰さんも強いですね」
凰さんは、強い。
昆の戦い方が完成されている。
凰さんの戦い方はいたってシンプルだ。
"相手の攻撃を受け止め、カウンター"
それに尽きる。
先程も言ったとおり、自分の身長よりも大きいものなのだが、凰さんは悠々と使っている。
「…………そんな自滅戦法みたいなことされれば私も避けるしかないけどね」
凰さんは苦笑いしながらこちらを見る。
それに、俺が練習しているなんちゃって円の動きを、しっかりと収めていて、力で押し込もうものなら、簡単に力を受け流されてカウンターを食らってしまう。
「そんなことをしないでも勝ちたいねぇ、ほんと」
俺は凰さんに聞こえないようにボソリとつぶやきながら、凰さんに攻撃する。
先程凰さんは退いたといっても、そんな大層な距離後ろに下がったわけでもなく、俺が二歩くらい近づけざ、容易に小太刀の間合いに入るようなものだ。
今度は、両手で攻撃を仕掛ける。
相手を挟むように、その両手の小太刀二刀を振るう。
凰さんは、それに対して、後ろに飛び、俺の間合いから離れるようにする。
俺の小太刀が虚空を切ったところで、俺は追撃をする。
自分の体を抱くようにした俺は、先ほどの攻撃を巻き戻すかのように仕掛ける。
「かかった!」
それに対して凰さんは、一気にしゃがみこみ、その曲がった膝を思い切り伸ばし、俺の足元へと攻撃を仕掛ける。
俺は予想外のかわし方に対して、驚きながらも、思い切りジャンプをする。
「読み通りよ!」
両手は攻撃をしている最中、よけられない空中。
そして俺は、
「1本だね」
その胴体に昆を突きつけられた。
分割です