IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第28話

「………………」

 

凰さんは迷っている。

そんなふうに俺は感じ取れた。

 

「凰さん」

 

俺は首に突きつけた剣を戻し、開始位置に戻った後に言う。

 

「なに?」

 

いつもの凰さんからは考えられない、感情のこもっていない声。

俺はその声を聞いて、迷っている、というのが確信に変わっていく。

 

「どうやったら勝てるか、とか考えてる?」

 

「………………なによ、悪い」

 

「凰さん、なんで負けたのかって考えた?」

 

「そんなもの、自分から攻撃したからでしょ。

 私のスタイルはカウンターを狙うもの。

 自分から攻撃を仕掛けてしまえば、カウンターへの行動が遅れて、結果的に後手後手になっていって、決定的な隙が生じる」

 

「それだけで終わった?」

 

「じゃあ次はどうするつもりなの?」

 

「そんなもの教えて、何になるのよ。

 不利になるだけじゃない」

 

「そっか、なら俺は教えるよ。

 俺はさっきと同じように歩いて近づいて、仕留める」

 

その瞬間、凰さんからブチッ、という音が聞こえたかと思ったら、

 

「あんたふざけてんの?!

 普通そうそう同じやり方でやられるわけないじゃない!

 そんなに私のことを舐めてるの?!」

 

「いや、舐めてなんかないよ」

 

俺は、息を大きく吸い込み、

 

「舐めていないからこそ、君の弱点を喜んで突く」

 

吐き出し、

 

「それが君の成長にも役立つと、俺は信じてるよ」

 

歩を進める。

 

「ふざけないでよ…………」

 

ボソリ、と凰さんがつぶやいたのが聞こえる。

 

あと10歩。

 

「私は、負けちゃいけないの……」

 

あと7歩。

 

「強く、強くならなきゃいけないの」

 

あと4歩。

 

「いや、違う」

 

あと3歩。

 

「強く、在らなきゃいけないの!」

 

凰さんは、両手で持っていた昆から、左手を離し、なにやら特殊な構えをする。

 

 

その構えは、右手右足を半身になるくらいに思いきり後ろに下げ、

 

その昆の先端を俺の方に向け、

 

左手はその先端に添える。

 

そう、この構えは、

 

「はぁあぁあぁぁあぁぁぁ!」

 

牙突、である。

 

俺は驚くと共に、ふつふつと心の底から湧き上がってくる黒いものを感じていた。

 

俺は知っている。

 

この感情を、

 

これは、

 

そう、

 

「ふざけるな!」

 

怒り、である。

 

足から腰、肩、腕、と人間の体の部位がそれぞれ出すことのできる最大限の力を出し、それ全てを、両手の小太刀に伝え、振り上げる。

 

ガァァン

 

大きな音が響き渡る。

ちょうど、硬いものに硬いものをぶつけた時の感触と同じようなものだ。

 

「な、んで?」

 

凰さんの弱々しい声。

呆然としている凰さんのその手には、昆は握られていない。

 

ではその昆は?

 

その瞬間、カーン、と耳心地のいい音とともに、昆が凰さんの後ろの地面に落ちる音がする。

 

「なんで、あんたはそんなに強いのよ」

 

「自分が強いのは棚に上げるんですね」

 

「そんなのあんたの強さの前じゃな意味が無い」

 

「なら、それより強くなればいい」

 

「ふざけないで!」

 

凰さんは俺の胸倉を掴む。

 

「強く、強くなりたいけど!

 強く、強く在りたいけど!

 私の才能ではここが限界なの…………」

 

最初は威勢よく言葉を放っていたけど、話していくうちに、言葉が弱くなっていく。

 

「突然の予想外の行動に、どうしていいかわからない。

 機転が利かない。

 1度崩してしまえば脆い。

 私は、そんな風な人間なの」

 

俯く凰さん。

 

俺は、そんな姿を見て、

 

「なら、技を汚しても構わない、そういうのか?」

 

「は?」

 

未だブチ切れていた。




大人気ないです。

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