IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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ラウラ会


第30話

俺は鈴ちゃんと箒ちゃんとの戦いが終わり、大人気も恥もなく道場の真ん中にゴロンと寝転がっていた。

 

あ?鈴ちゃん?

 

いや、模擬戦の時に箒ちゃん、って呼んでたのをしっかりと聞いていたらしくてね、なんかあっちが名前ならこっちも名前で呼んで!と言われてしまった。

 

いつの日にか思ったノーと言える日本人になろうとしたが、ちょっと名字好きじゃなくてね、なんて憂いのある顔で言われたら俺も流石に日本人なので、優しさの心というもので鈴ちゃんに呼び方を変えることにした。

 

正直、呼びやすい。

 

ふぁん、って思いづらいんだよなぁ。

 

それに漢字わかりにくいし。

日記に書く時結構苦戦している。

なので今度から鈴ちゃんで済むという果てしなくちっちゃいことに安堵していると、

 

ガンガン、ガンガン

 

道場のドアが叩かれる。

 

「あ、鍵空いてるから入っていいよ」

 

俺はその来訪者のことを思い出しながら、体を起こし、立ち上がって迎え入れようとする。

 

「失礼します」

 

そう言って入ってきたのは、ボーデヴィッヒちゃんだ。

 

「いやいや、こちらこそ」

 

といい、俺はまず招き入れようとするが、

 

「あ」

 

「?」

 

なんとボーデヴィッヒちゃんは、土足のまま入ってしまったのである。

それには俺も頭が言っていなかった。

そりゃそうだ、日本と外国とじゃ文化に差がある。

 

まずはある程度日本の文化になれるところから始めないとな。

 

「日本では室内は基本土足で入るのはダメなんだよね」

 

「あ、あぁ!

 すいませんなにぶんまだ不慣れなもので」

 

ボーデヴィッヒちゃんは急いで靴を脱ぎ、俺のスニーカーの隣に置いた。

 

あとであそこ拭いとかないとな、と俺は密かに心の中で思いながらも、

 

「いやいや、ここは基本的に外人の人にも住みやすいようになってるし、いきなり日本文化に慣れろって言うのも無理な話だよね」

 

そう、IS学園は、基本的に外人に基準を合わせている所が多い。

例えば、さっき言ったように、ここでは土足は大体どの場所でもOKだ。

寮の部屋とか、まずそもそも学校とか。

まぁ、ここみたいな日本文化してるところは土足禁止、となっているけれど。

 

「お見苦しいところをお見せしました」

 

ボーデヴィッヒちゃんは1度落ち着き、謝ってきた。

個人的にこういう礼儀正しい子は好感を持てる。

結構女尊男卑の影響で、女性が男性に対して礼儀を持たないことが多い、とかテレビでよく見るんだが、俺の周りではそういうことがないから、偶にこういう礼儀の大切さを忘れそうになるけど、

 

「はは、今度からは気をつけてくれれば問題ないですよ」

 

「それで、今日は、早速教えてくれるんでしょうか」

 

と、ボーデヴィッヒちゃんは少し、ほんの少しだけど押さえ込んでいたであろうウキウキしている雰囲気を漏らして話す。

 

そりゃそうか、こんな年齢だけどやっぱり漫画技の再現は憧れるよなぁ。

 

「まぁまぁ、ちょっと待ってね」

 

俺はそんなボーデヴィッヒちゃんに笑顔を向けながら、予め用意しておいた木刀を取り出す。

 

「これは……木刀、というものですね。

 日本の侍の方々の練習用に使用する武器だと聞きました」

 

「なかなか詳しい限りで、こちらとしても説明が省けてありがたいよ」

 

そして、ボーデヴィッヒちゃんに木刀を一本渡して、

 

「あ、それとまず確認だけど、漫画、読んでくれた?」

 

「あ、はい。

 もちろん読みました。

 あんなことが出来る人がいるのかぁ、と思っていました」

 

ちなみに、牙突を教える上で、まず俺はボーデヴィッヒちゃんにマンガ本を貸すことから始め、次に来るまでに全部読んでは欲しいけど、最低でも斎藤一の出る話だけでも見てきて欲しい、と言っておいた。

 

「いや、フィクションだからねあれはあくまで」

 

「いやでも、現にやってるじゃないですか。

 牙突」

 

「あ」

 

俺は自分でやっていることの馬鹿さ加減を思い知りながらも、

 

「ま、まぁ、練習したからね」

 

俺は笑顔を浮かべ(たつもりだ)

 

「とりあえず1度でも見たなら、一個質問するよ」

 

俺は、真剣な表情になり、ボーデヴィッヒちゃんに問う。

 

「ISを扱う人間にこんなことを聞くのもあれだけど。

 君は、人を殺せる術を、身につける覚悟はあるかい?」

 

俺がボーデヴィッヒちゃんに牙突を教える時点で、俺は1つ、これだけは確認しておこうと思った。

 

牙突を再現、実用化していてつくづく思う。

この技は有り得ないくらい殺しに向いている。

 

向きすぎている。

 

2、3度だけ、俺は牙突を再現するのを辞めようかと思った時期があった。

だが俺は再現した。

中途半端に再現するのが嫌だったから。

まぁ、理由は不純だが、別に理由の綺麗さとかはどうでもいい。

 

ただ、殺せる術を身につける、という上で、なんなかの覚悟や理由がないと、意味ある強さにはならないと思ったからだ。

 

「…………………………」

 

しばらく考え込んでしまうボーデヴィッヒちゃん。

そりゃ、そうだよな、こんな変な事言われたら動揺するよな、と俺は別に気にしなくていいよ、と言おうとしたら、

 

「強くなるため、ではダメでしょうか」

 

力強い目で、俺にそう言ってきた。

 

だけど、俺はその目の中に、自分と似たようなものを見出してしまった。

 

「じゃあ、その強さは、何のためにあるんだい?」

 

「全てを超えるため」

 

即答だった。

よかった、俺と似たような人がいるのかと思ってびっくりした。

 

「じゃあ、始めようか」

 

その言葉に俺は安堵し、人生初の教師をする。

 

「まず、ボーデヴィッヒちゃん。

 漫画で牙突、っていうものを見ているよね。

 どんなに下手くそでもいいから、真似てみて」

 

その言葉に、ボーデヴィッヒちゃんは不思議そうな顔をしている。

 

「紙に書かれているものですし、真似る、というのは無理なんじゃないでしょうか?」

 

「いやいや、そこは想像でなんとか」

 

「それなら、見本を見せて欲しいです」

 

「それだと、牙突を作れないじゃないか」

 

俺のセリフに、ポカン、とボーデヴィッヒちゃんはしている。

あ、そっか、

 

「ごめん、ちょっと通じなかったよね」

 

「い、いえ、私が理解出来なかっただけだったので」

 

「そんなことを言わないでね。

 えっと、今回、ボーデヴィッヒちゃんに教える、っていうのには、少し誤解があるんだよ」

 

「じゃあ、牙突はどうするんですか?」

 

「いや、牙突は斎藤一みたいな長身と腕の長さがあってできるものだから、俺や、ましてなボーデヴィッヒちゃんには難しいんだよ」

 

そういうとボーデヴィッヒちゃんは悲しそうな顔をして、こちらを見てくる。

 

「じゃあ、私に牙突はできない、ということなのでしょうか?」

 

「いや、別に、完全再現をするって言うわけじゃないから、身長とかは関係ないんだよ。

 俺がやっている事は、あくまで再現かつ実用化(・・・)

 

だから、俺は俺の牙突を作ったし、これから教えるボーデヴィッヒちゃんにも、ボーデヴィッヒちゃんの牙突を作って欲しいと思っているんだ」

 

「私だけの……牙突…………」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、不思議そうな顔をしている。

 

そんな顔を見て、ボーデヴィッヒちゃんから見えないようにクスリ、と笑い、

 

「よし、じゃあ始めるか」




予定では練習に入るつもりだったのに……。

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