IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第31話

「それじゃあ、1度、私が牙突をしてみればいいんですね」

 

「そうだね。

 最初はゼロからスタートだから、まず0.1からでも、作っておいた方がやりやすい」

 

「わかりました…………」

 

ボーデヴィッヒちゃんが、声を出すのをやめ、集中している。

俺にも伝わるくらいだから、大層な集中力だ。

 

構える。

 

拙いし、力を最大限に使えそうにない構えだった。

 

しかし、俺もこんなものからのスタートだったと思うと、少し感慨深く感じてしまう。

 

だが、牙突を語る上で必要不可欠な、極端な半身と、相手に向けられた切っ先は、足りていた。

 

後は、放つだけ。

 

ビュン

 

その音とともに、剣は風を貫いた。

とりあえず思ったことが、速い。

 

俺の本気とまでは行かないが、少なくとも俺が牙突を再現し始めた頃より、速かった。

 

「……………………」

 

と、考え事をしていると、ボーデヴィッヒちゃんが不安そうな顔でこちらを見てくる。

 

「どうでしたか?」

 

「あー、うんと、とりあえず、やってみてどうだった?」

 

「体の使い方が分からないからとてもやりづらかったです」

 

「それでそれで?」

 

「…………正直、使いづらすぎて、これを使って戦っている姿が想像できませんでした。

 あー…………師匠は「師匠?!」あれを使ってどのように戦っているのですか?」

 

俺はボーデヴィッヒちゃんの謎の師匠呼びに戸惑いながら、それを辞めるように言おうとするが、ボーデヴィッヒちゃんの早く答えを知りたそうにしているその目に、俺は言い出すことが出来ず、

 

「じゃあ、1度ボーデヴィッヒちゃん、戦ってみようか?」

 

「え?いいんですか?」

 

「あぁ。

 1度でも形作ったものは、消え去ることは無い。

 それに、今回俺が使うのは、正式な牙突のほうだから」

 

「正式な牙突?」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、俺の発言に疑問を浮かべる。

 

「あぁ。

 俺が今使っているのは、この漫画に書かれているものの一部をアレンジして、使いやすくしているものだから、いまのボーデヴィッヒちゃんに見せると、ちょっと今後に支障をきたすかもしれないから、正式な方でやるよ」

 

「じゃあ今度、師匠オリジナルの牙突とも、一戦交えてみたいです」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、俺の説明を聞くなり、そんなことを言って張り切っていた。

そんな様子に俺は微笑みながら、さっきまで何回も立った道場の開始線に立ち、

 

「そこら辺の位置からスタートしよう」

 

俺はボーデヴィッヒちゃんにそちらの方の開始線を伝える。

ボーデヴィッヒちゃんは、それを理解し、開始線あたりに立つ。

 

「あー、あんまり長引かせるのも宜しくないから、寸止め急所ありの一本勝負にしようか」

 

「戦闘を生業としていないのに急所ありとは、聞いたことがありませんね」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、不思議そうにしている。

ISを扱う人は、生身での戦闘もやっておかないといけないため、武道の訓練もしているから思っているのだろうが、普通のこういう訓練で急所ありとは珍しいのだ。

ちなみに、箒ちゃんと鈴ちゃんとの模擬戦は言わずもなが、急所ありだ。

 

「そんな急所なしにしちゃったら、遠慮が出ちゃうし、もしものことがあったらまず狙うのは、急所が一番効果的だから、やっぱり訓練からそういうのは大事にしておかないと。

 もちろん寸止めだから当てちゃいけないけどさ」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、それを聞いてなにやら少し感激した様子で、

 

「そこまで考えているとは、すごいです。

 男性はどのような考えを持っているのか、あまりわからないのですけど、世の男性が師匠のような人ばかりだったら、ISが扱えるというだけで誇れないかもしれないです」

 

ハハハ、とそれはないない、という意味を含ませた笑いをしながら、俺は模擬戦を始めようとする。

 

「木刀持っている分、不慣れだから、頑張ってまずは俺の一撃をどうにかすることだけに専念してね」

 

「今度はこの前のように直ぐにやられません」

 

最初の忠告に、ボーデヴィッヒちゃんは、木刀を片手に持ち、腰を低くして、すぐ移動できる体勢を作る。

 

それに対して俺は、構える。

 

いつもしている構えとは違う、本来の構え。

 

左手左足(・・・・)を、極端な半身になるように後ろに引き、

 

左手(・・)に持っている木刀は、刃は地に水平にして、切っ先を相手に向ける。

 

右手は切っ先に添え、

 

腰を低くする。

 

「じゃあ、俺が3カウントしたら始めるから」

 

その言葉に、いつもの開始線の位置より後ろにいるボーデヴィッヒちゃんの集中力が高まるのを感じる。

 

「3」

 

俺は息を整え、斎藤一を思い出す。

悪即斬。

その思いを、無礼ながらもその胸に抱いて、

 

「2」

 

ボーデヴィッヒちゃんから、痛いほど集中しているのが伝わる。

 

「1」

 

静かな、音の聞こえない世界が、辺り一体に広がった。

 

「始め!」

 

ほんとに、ボーデヴィッヒちゃん、直ぐにやられないでよ?




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