IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第32話

走り出す。

俺は走り出し、ボーデヴィッヒちゃんに牙突を放とうとする。

 

ボーデヴィッヒちゃんは、後ろに退く、という選択肢はないようで、俺から見て右に避けてカウンターでも狙っているようだが、甘い。

 

今君が相手にしているのは斎藤一だぞ。

 

俺の今の牙突は、斎藤一のものである。

それはつまり、俺が普段使っている牙突とタイミングとかが違うわけであって、斎藤一の牙突は、

 

「なっ?!」

 

チョコマカと避けるような相手と相対するのならば、前方に置かれている右手で、相手の姿を捉え、

 

「はんげ……」

 

そのまま牙突を放つことによって、相手の体は崩され、こちらに引っ張られてくることになり、そして相手のこちらに向かってきて、俺の牙突と、

 

「…………はあっ」

 

まるで息を止めていたと言わんばかりの大きな呼吸。

崩れたボーデヴィッヒちゃんの眼前には、俺の持っている木刀がその切っ先をボーデヴィッヒちゃんに向けたままでいる。

 

「どうかな?斎藤一の牙突は」

 

「どうかなもなにも、一瞬で勝負がついてしまったじゃないですか」

 

「仕方が無いよ、そういう剣術なんだもの」

 

「…………そう言われてしまえば何も反論できないのですが」

 

「ま、まぁ、とりあえず、牙突を使っての戦いはわかってくれたようだけど」

 

俺はボーデヴィッヒちゃんを離し、剣を引き、

 

「まず、今見ていた上で、牙突の強さ、だと思うところを上げてみよう」

 

「牙突の強さ、ですか」

 

そうそう、と俺はボーデヴィッヒちゃんに言い、ボーデヴィッヒちゃんは俺のその言葉に、しばらく考える。

 

「おそらくですけど、漫画と今の戦闘を見る限り、牙突は攻めることしか考えられてないのかと思います。

 それと、牙突は普通とは考えられない体勢から放たれている、と思ってたけれど、その実、多分慣れれば人間が出せる一番強い威力が出せるんじゃないかな、と思いました。

 それと、右手を有効に使うことで、今みたいな回避、という選択肢をとられても、当てることができるのが利点だと思いました」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、粗方話したあたりで、俺の方を見る。

俺はうん、と頷き、

 

「今の少しの戦闘でよくわかったね。

 そう、本来の(・・・)牙突は、そのヘンテコな体勢は、最大限に体を使い、威力を出すもの」

 

俺は左を向き、右手で木刀を持ち、牙突を空に放つ。

ビュン、という耳心地のいい音とともに、俺は牙突は空を切る。

 

「そして、今ボーデヴィッヒちゃんもやられて「あ、あの!」……ん?なんだい?」

 

「師匠って……利き腕はどちらでしょうか?」

 

「ん?あぁ」

 

ボーデヴィッヒちゃんの驚いたような顔に俺は不思議に思いながらも、その質問の意味を理解する。

 

「右だけど、さっきのは、ボーデヴィッヒちゃんが言ったように、回避という選択をとった相手を嵌めるために、俺は左手で牙突をしたんだ」

 

「…………と、いいますと?」

 

「今の状況だと、威力より当たるかどうかが重要で、俺としては攻めの剣術、ということを理解して欲しかったんだ」

 

「それと左手で牙突をするのにはどんな関係が?」

 

「右手の方が相手を捕まえる上で力が出やすいし、捕まえやすい」

 

左手で捕まえようとすると、強引に振りほどかれる可能性があったからね。

それに俺は、一人で練習してたから、この方法を自分の牙突に取り入れなかったから、あんま掴むのなれてないし……。

 

「そ、それだけで利き腕じゃない方でやった、というわけじゃないんですか?」

 

「ん?いや、そうだけど……」

 

俺はそう答えた後、ボーデヴィッヒちゃんと俺のリアクションの違っている意味に気づき、補足を入れる。

 

「ちなみに、俺両方の手で牙突できるように練習してるから、どっちでも大丈夫なんだよ」

 

「あ、そうなんですか」

 

おそらくボーデヴィッヒちゃんは、俺が思いつきであんなことをやったと思っているのだろう。

そりゃそうだよね。

いきなり利き手と逆の方で箸とか使い始めたら気持ち悪いもんね。

 

「っとまぁ、ボーデヴィッヒちゃんには、牙突の意味……攻めの剣術、という意味に気づいてもらったけど、ボーデヴィッヒちゃんは、どんな剣術を使いたい?」

 

「どんな剣術、ですか?」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、不思議そうにこちらを見る。

 

「そう、ボーデヴィッヒちゃんに、この牙突を完全再現してもらおうとかはサラサラ思っていない。

 あくまで基礎とする、ってだけ。

 だから、後はボーデヴィッヒちゃんがどんな剣を振るいたいのか。

 それを決めて欲しい」

 

「私の振るいたい剣………………」

 

俺は、凡人ながらに天才共の首元に…………俺のような圧倒的な力の持ち主の首元に食らいつくために、自分なりの牙突を作るようにしてきた。

そんな思いの中できた剣術だ。

俺以外に使って欲しい人なんていない。

 

だからこそ、ボーデヴィッヒちゃんにはボーデヴィッヒちゃんなりの剣を磨いて欲しい。

 

だからこそ、こんな難しい質問をした。

 

「私は………………」

 

ボーデヴィッヒちゃんがボソリとつぶやく。

 

「私は、どんな壁も打ち払う、一撃必殺の、回避不可能の、防御不可能の、そんな、剣を振るいたいです」

 

「分かった」

 

ボーデヴィッヒちゃんは、俺が思っている以上に、俺の弟子にふさわしいのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………ふぅ」

 

俺は日記を書き終わり、一息つく。

 

こんな長い日記を書いたことがないから、手が疲れてきた。

 

俺は手をプラプラさせながら、考える。

 

実は、左手の牙突は練習していたが、あんなにうまく使えるとは思わなかった。

 

なんせ一人でしか練習してないのだ。

 

対人戦でなんて初めて使った。

 

だけど、上手くいった。

 

理由は、なんとなく予想はついている。

 

 

 

斎藤一の意思、悪即斬を心に刻んだお陰

 

 

 

寸止めしようという意志はあったが、牙突を本気で放つことに躊躇いがなかった。

つまり、右の牙突も、悪即斬の意志を持ってやれば、もっと完成度が上がるかもしれない。

 

精神が肉体を凌駕する。

 

俺にもそんな日が来るのかとウキウキしてしまった。




…………ということで!

長い長い一夜、終了です!!

ここは完全オリジナルエピソードで、結構作るのに苦戦していました。
20話からスタートし、すでに32話……。
一夜ってこんなに時間がかかるんですねぇ

…………なんてことはよして、次は学年トーナメント編です!!!!

多分長い長い一夜よりは短く済む…………かも?

ここまで見てくださったかたがた、本当にありがとうございます!!!!

これからも何卒よろしくお願い致します!!
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