IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第38話

だがしかし、そんなのは俺の前には通じない。

 

「そこだ」

 

俺は一瞬だけ見失ったが、よく見ることで視認することが出来た、こちらにまっすぐ向かってくるボーデヴィッヒちゃんの、振るってくる日本刀の腹を右の拳で殴ろうとする。

 

それに気づいたのか、ボーデヴィッヒちゃんは振るう直前で、少しスピードを緩め、右へと動く。

 

俺は目を離さないようにじっと見つめ、攻撃してくるのを狙う。

 

黒い水によるワイヤーの射出。

 

視界が黒で埋め尽くされる。

 

俺はいつもより力を入れて、左手でそれを払う。

 

ワイヤーの束は俺の視界から消滅したのだが、ボーデヴィッヒちゃんを見失う。

 

俺はその瞬間、首筋にチリっとした感じを感じ取る。

 

間に合わないな。

 

間に合うように速く振り向く。

 

すると、首に剣がたどり着く前に俺は振り返り終え、さらにはその振るわれた剣を首に到達する前にボーデヴィッヒちゃんを右の裏拳で殴ろうとしている。

 

俺の方が間に合わない…………ように見えるが、

 

少しだけ大人気ないが、早めに拳を降るようにする。

 

「はぁっ!!」

 

その声とともに、ボーデヴィッヒちゃんはその腹を裏拳で殴られるが、ボーデヴィッヒちゃんも、左手を腹に添え、黒い水を集めることで、会場の壁に叩きつけられるだけで済む。

 

「まだ…………まだ!!!!」

 

ボーデヴィッヒちゃんから、ピチョン、と声がした。

 

そしてその音のあとに出てくるボーデヴィッヒちゃん。

先程より早くなっている。

 

「速い、な」

 

俺は少々本気でスピードについて行きながらも、ボーデヴィッヒちゃんの武器破壊を狙う。

 

対するボーデヴィッヒちゃんは、俺に少しでも攻撃を加えようとするが、ことごくと俺に叩きつぶされる。

 

その度に、ボーデヴィッヒちゃんのスピードは上がり、

 

 

 

ボーデヴィッヒちゃんに付いている黒い水がポタ、ポタ、と落ちていっている。

 

 

攻撃は止んだ。

 

「師匠、強いんですね、ほんと」

 

「あぁ、最強だからな」

 

「私は、考えました」

 

「なんだ?」

 

「私だけの牙突」

 

「おぉ、いいねぇ」

 

「見ててください、これで師匠に、勝ちます」

 

「やられる気はサラサラないよ」

 

「知ってますよ」

 

あと20秒。

逃げる時間を除外した上で、俺が自由に動ける時間。

 

ボーデヴィッヒちゃんは構える。

 

その構えは、牙突、なのだが違う。

 

 

その構えは、低く、低く、地を這うように低い。

 

腰を思い切り下げ、左手は地に手を着いている。

 

だがしかし、右手にある日本刀は、たしかに俺の方に切っ先を向けている。

 

 

「黒兎の牙に貫けぬものなし」

 

 

その言葉とともに、ボーデヴィッヒちゃんは

駆ける。

 

低く低く、地を這うように俺に向かう。

 

左手も使い、かけてくるその姿は、正に兎。

 

俺は拳を構え、足元への警戒を強める。

 

牙突の間合いに入った。

 

来る。

 

右拳を下に向けた瞬間、

 

「はあぁぁぁぁぁぁあぁ!」

 

跳ねた。

 

嘘偽りなく、跳ねた。

 

地を這っていたボーデヴィッヒちゃんは、俺の首に切っ先を向け、向かってくる。

 

そうか、だから黒兎、ね。

 

妙に納得しながらも、俺は呑気に考えていた。

 

あぁ、発想は素晴らしい。

 

俺も現に危ない目にあっている。

 

地を警戒すれば、首を貫かれ、

 

首を警戒すれば、文字通りに足元をすくわれる。

 

初見なら確かに、相手の思うがままにされる。

 

素晴らしい。

 

 

だからこそ、惜しいと思う。

 

この技を使うには、練習が足りない、早すぎる。

 

そして、

 

「俺が速すぎるから、効かないよ」

 

俺の本気は、ちょいと速すぎた。

 

俺は首にその刃が触れる前に、

 

左の拳を、ボーデヴィッヒちゃんに当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

俺は日記を書き終わり、一息つく。

あの後、俺は壁に埋まってしまった(・・・・・・・・)ボーデヴィッヒちゃんを助け出し、適当に寝かせておいた後、平気な顔をして、仕事を再開した。

 

「決して語られることのない、戦い」

 

本気を出した。

その事実が、高揚が、まだ胸の中で熱く、色づいている。

 

最強の本気。

 

俺は、そんな余韻を楽しみながら、消化していき、忘れ去る。

 

この力には、意味がない。

 

積み上げることができない。

 

最強だから。

 

こうやって他人の意味を得て、意味ある力にしなければならない。

 

 

だから、俺は高揚を忘れる。

 

力に飲まれないように。

 

自分の持つ力が、意味あるものだと、胸を張って言えるように。




あと1話でトーナメント戦編は、終了です。

今回は、P&Aさんの感想でのセリフを使わせていただきました、この場を借りて、ありがとうございます!!
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