IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第39話

「いやぁ………面倒くさいな」

 

俺は日記と向かいあい、頭を悩ませていた。

 

まぁ、今日は昨日のこともあり、用務員の仕事はてんてこまいだった。

 

「それは書けた、けどなぁ…………」

 

俺はその次を書くべきか悩んでいた。

いや、正直書いてもいいんだが、いかんせん内容が内容だから、書いていいのかが分からない。

 

「いやぁ、ほんとどうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、しぬ」

 

俺は今日1日の仕事が一段落ついたところで、ぐったりしていた。

 

他の用務員さんたちも大変なことになっている。

 

今日やった仕事は、端的にいえば修理修理修理の修理三昧なのだが、終わらない。

 

 

「いやほんと、なんであんなボロボロになるんだよぉ……」

 

だれかのつぶやきが、俺の心に突き刺さる。

 

そう、今日の修理、全て、

 

 

俺がぶっ壊したものの修理だったのである。

 

 

ほんとに申し訳ない。

てかなんであんなに脆いわけ?と戦った後に思っていたのだが、今日修理してみてわかった。

 

あれはISでも壊せないな、と。

 

とりあえず、学校にある修理用の材料を全部使い切ったところで、今日は終わったようだが、用務員長からのお達しによると、なんと明日にちゃんと足りない分の在庫が届き、修理再開なのだそうだ。

 

しかも、

 

「書類………………」

 

そう、修理をする過程で何をしたのか、とか、ついでにどこそこも修理した方がいいとか、そういうレポートが必要で、俺も含め皆さんが書類の上に頭を乗っけて沈黙している。

 

「ほんと俺のバカ…………」

 

俺はため息をつきながら書類仕事に取り掛かるか、と思ったところ、いきなり事務室の扉に、コンコン、と軽快なリズムでノックが聞こえる。

 

皆はなにも聞こえなかったというように、無言であるが、流石に誰も出ないのはダメであるため、

 

 

みんなの右手、または左手がゆったりと上がる。

 

「じゃん……けん…………ポン」

 

伊坂さんの声がけとともに、ジャンケンが行われる。

 

それに当然俺も参加しているわけで、俺は負けないだろうと高を括っていたわけで、そんな慢心の現れなのか握るということを放棄した俺は、みんなが目を覚ませという意味なのか目潰しに負けた。

 

「うぃ」

 

ここでごねるのは暗黙のルール、というか男しかいないこの部屋でそんなことをしても、情けないヤツ、としか映らないわけで、

 

「はい」

 

疲れを感じさせない顔を作り、ゆっくりと扉を開けると、

 

「あっ」

 

後ろから誰かの声がしたかと思った。

振り向かなかった。

いや、振り向けなかった。

 

そう、そこには、

 

「すまないが…………ちょうどいい、ついてきてくれないか」

 

仕事増やしがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、いいんだ、わりとわかってたんだよ、あの時は。

 だけどさ、ものには限度っちゅうもんがあるんじゃないの?」

 

いつもと違う話し方に自分で違和感を感じながら、やっぱ書くことにした。

 

「まぁ、これは俺が死んだら燃やしてもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話、があるんだ」

 

「束さんから聞いたんですか」

 

「あぁ」

 

ちなみに今は放課後だが、俺と織斑先生は生徒が1人もいないところ……つまり職員室なのだが、そこに連れてこられている。

ちなみに、ほかの人たちはなにやら電話とかの対応に追われている。

やはり昨日のことが原因なのだろう。

ちょいちょい「トーナメント戦は……」「2年生は……」「あの騒ぎはどういうことか…………」とか聞こえてくる。

 

…………ほんとにすいません。

 

と、俺は周りの教師さんたちに内心で土下座をかましながら、織斑先生が出してくれた丸椅子に座る。

 

「最初に、私から。

 ありがとう。

 ほんとに、一夏を守ってくれてありがとう」

 

そういって目の前にいる織斑先生は立ち上がって頭を下げようとする織斑先生を、俺は静止させる。

 

「先生、あなたは頭を下げる存在じゃない。

 一個人としてそこまで思ってくれるのは嬉しいけど、あなたには、立場、というものがある。

 感謝の気持ちなら十分に伝わったから、顔を上げて欲しい」

 

「そ、そうだな…………」

 

織斑先生は、複雑そうな顔をして、頭を下げるのをやめる。

 

「それと、束から、ほんとうにありがとう。

 こっちもやる事はしっかりやっておいたから、だそうだ」

 

俺はその言葉に安堵を覚え、ふぅ、と息を吐く。

 

「一応聞いておくが、直接感謝の気持ちを伝えに来て欲しかったか?」

 

「うーん……それを感謝される本人に言うのはどうかと思うけど、本心から、来ないで欲しいと思いますね」

 

「……よかった。

 あいつ、すごい来たがっていてな、私が1時間かけて説得したのが無駄になるところだった」

 

「むしろ説得してもらって本当にありがたいですよ」

 

俺はもし束さんが来ていたら、ということを考えて、やめた。

確実に一騒ぎ起こる事は確定しているので、これ以上今日は疲労を積み重ねたくない。

 

「そして、今度は事務的な話になっていくのだが」

 

と、織斑先生も苦笑いから真剣な表情に変わり、

 

「私と束は今はもう消去したが、昨日の戦いを見ている」

 

「………………ノーコメントですよ」

 

俺は少なからずこの人たちには、能力のことは何か言われるだろうかと思っていたので、釘を刺しておく。

 

「あぁ、こちらとしても、君の強さがわかって驚いたとともによかった、ほんとうに君に頼んでよかったと、心の底から思っている」

 

「それで、事務的な話、はどうしたんです?」

 

「あ、あぁ、すまんな。

 そんな釘を刺さなくても、なにも突っ込まないつもりだが、ことの顛末くらい、知っていなきゃいけないだろ?

 当事者として」

 

俺はなにやらまずい予感を感じたが、自分が乗り回した挙句半壊させた船を降りるのもなんだか申し訳なく思い、

 

「お願いします」

 

「まず、今回のこの騒ぎがなんで起こったのか、から」

 

「まず、ボーデヴィッヒは、IS用に体を弄った人間だ」

 

「………………」

 

最初からすごい気まずい爆弾を持ってきた織斑先生にさすがにリアクションを取れなくなっている。

 

「そして、それによって高いIS操作能力と専用機という力を手にしたボーデヴィッヒだったが、そのISには、VTシステム……ヴァルキリー・トレース・システム、というものが搭載されていた」

 

「確か、束さんは戦闘データをもとにして、ISの解明されていない領域に刺激を与え、更なるISの進化を求めるもの、でしたっけ」

 

「…………あぁ、そうだ」

 

今一瞬の間があったが、気にしないでおこう。

なんか最初にデカすぎる爆弾を持ってこられて、これ以上面倒なことを増やされると頭がパニックになってくる。

 

「まぁそれが今回は暴走した、という感じだな」

 

「原因とかはあまり俺にとって重要じゃないから、その結果を教えてくれませんか?」

 

「急ぐな急ぐな。

 別に急いだところで何にもならないのだからな」

 

織斑先生は、俺が自分の身元がバレてないかとかいろいろ心配なのを知らないのか、落ち着けと言ってくる。

 

「はぁ、わかりましたよ」

 

と思っても、織斑先生の言っていることが正しいのも事実だ。

俺は1回軽く深呼吸をし、落ち着きを取り戻す。

 

「それで、そのVTシステムが暴走したのは、どう処理されたんですか?」

 

「あぁ、まずはボーデヴィッヒ自体のことだが、ボーデヴィッヒは病院で今も寝ている」

 

「えっ?だ、大丈夫なんですか?」

 

俺はボーデヴィッヒちゃんが入院しているのを知り、焦る、

もしかして、最後の一撃で…………

 

「命に別状はない。

 というか、別に外傷はないのだが、なにぶんあんな暴走したものを無理矢理にいうことを聞かせ、挙句の果てには本来出せるはずのないところまで力を絞り切れば、疲労困憊にもなるよ」

 

「あ、命に別状はないんですかぁ……。

 よかったぁ…………」

 

俺がホッとしているのも束の間、

 

「それで、周りへの被害とか、後処理の話なんだが」

 

「詳しくお願いします」

 

「まず、今回の事件の言及は、ドイツに向かうことになった。

 ボーデヴィッヒはドイツの軍人だからな。

 それに、あれを自分の意思でいれるには、ボーデヴィッヒには無理だ。

 そして、最初に言ったとおり、倫理観を無視した行為が知れ渡ってな、各国から非難の声が上がっている。

 ということで、ドイツが今回の全責任を取り、国の所有しているISコアの3分の1の寄付だ」

 

「あー、それは痛いですね」

 

ISのコアとは、今の時代では国力を指し示す指数なのだ。

国力が強い、または強いIS乗りがいる国には当然だが、ISを大量に使うことが出来る。

 

それがいきなり3分の1とは…………。

 

「本当は10分の9だっただが、ほかの国がIS学園が大量にコアを持つのに反対してな」

 

「え?10分の9?

 なんでそんなに多かったんですか?」

 

「あぁ、説明していなかったな。

 今回の騒ぎ、しっかりとカメラの記録から、なにからなにまで、電子データは消させてもらった。

 だがしかし、これを束にされたとなると、当然怪しまれるのは必然だから、ちょうどいいと束がドイツのサーバーを経由してIS学園をハッキングしたんだ。

 

 当然そんなことがわかれば制裁も大きくなる、ということだ」

 

空いた口が塞がらなかった。

もしや俺はドイツという国を潰してしてしまうのではないか、と。

そうなったら俺ほんとドイツに足向けて寝れなくなる。

そういうのは勘弁して欲しいが、

 

「ありがとうございます」

 

「ん?いきなりなんだ?礼を言うのはこちらの……」

 

「いや、俺みたいな一介の人間を信じてくれて、ありがとうと言ったんですよ」

 

なんか、嬉しかった。

こんな俺のために頑張っている人がいて、っていうのが。

 

「いやいや、頼んだのに信じないとか……」

 

「正直、あなたたちは今回、俺がわざわざボーデヴィッヒちゃんの相手をした途端に、契約不履行だといって、さらし首にされるのかと思いました」

 

俺はほんとに安心した。

それと同時に、この人たちを俺も少しでも信頼しようと、そう、思えた。

 

「な、さらし首だなんて……弟の命のおんじ「ストップストップ!」…………すまない」

 

いまこの職員室なんて場で唯一のISを操作できる男子の命の恩人、なんて言ってみろ、俺は明日からみんなからジロジロ見られるに決まっている。

 

「あぁいや、でも、わかりました」

 

「…………?なにがだ?」

 

「少なくとも、これからも頼られるんだなぁ、と」

 

「………………否定出来ないから何も言えんな」

 

織斑先生はいたって真面目な顔でそんなことを言うので、俺はクスリと笑う。

 

「それで、途中までだから聞きますけど、もうちょっとありますよね、ドイツへの制裁」

 

「まぁ当然だが、さっき話したのは主な内容だけで、後のものはもしかしてISコアの寄付の方が良かったかもしれんと思えるくらいの内容だ。

 とりあえず二つほどあげるのなら、修理代諸々の請求と、ドイツにいる優秀なIS乗りを各国に指導者として2年間派遣する、というものだ」

 

金をむしり取られ、他国に力を貸してあげつつも、自国はまとまって訓練などができないせいでIS乗りのレベルアップが難しくなる。

 

「うわ、申し訳なくなってきますよ」

 

「まぁ、半分が自分のしたことだからな。

 ………………今度はものを壊さないように頼むぞ」

 

「いやいや死にますって」

 

俺が手を横に全力で振り、否定すると、

 

 

 

 

 

「本当にありがとう」

 

 

 

 

いきなりだった。

それは、華の様な笑顔だった。

あの厳格さから遠く離れた、華。

そんな華の笑顔を前にして、俺は笑みがこぼれる。

 

「ま、今度は一夏くんはついでじゃないかもしれないですけどね」

 

「なっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとに冗談が通じない人だったな」

 

俺はあの時の説教が始まりそうなのを冗談と言って理解してもらうのに、だいぶ時間がかかった。

 

「ま、とりあえず書き終えたけど…………」

 

扱いに困る代物になってしまった。

 

俺は明日でも鍵でも机につけようかと考えながら、その疲れのせいか、いつの間にか寝てしまっていた。




まず最初に、今までありがとうございました!!!!

これで終わりではないんですけど、一応、一区切りとしての挨拶をします。


今回で、トーナメント戦編、終了でございます!!

この小説も中盤を終えました!
あと残すは終盤だけです!

これからもよろしくお願いします!!
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