「あの、ちょっといいですか?」
俺は何も飲み物とかを持ってきていないという篠ノ之さんに俺がいつも持ってきているペットボトル2本のうち1本(新品のほう)を渡して、休憩していると、篠ノ之さんから声をかけられた。
「ん?なんだい?」
「どうしてそんなにお強いんですか?」
「んー、そうかなぁ?」
俺は思ったことを素直にいう。
そして、と言葉を続けて、
「いや、俺が強い、っていうのを事実としても、それはこの世界じゃ役に立たないんだよ。
こんな世界だからこそ、ね」
自分の手のひらを見て俺は言った。
「……………………」
黙り込んでしまった篠ノ之さん。
……あぁ、そういえばこの娘、ISを作ったと言われる人の家族なんだっけ。
俺はいまさらなことに気づきつつも、その様子を見て、だけど、と続け、
「こんな世界でも、君みたいに人本来の強さを追い求めてくれる人がいるってのが分かっただけで、まだまだ世も見捨てたもんじゃないな、って思ったよ」
割とジジくさいが、このくらいのことは言っておこう。
……いや、ダメだな、まだジジイなんて年じゃないもん、俺。
「…………ありがとう……ございます……」
俺は俯いた篠ノ之さんの頬に流れるキラリとしたものを見て、慌てて顔を背ける。
「ま、俺はただの趣味でここまで来ただけだから、そんな褒められたことをしてるつもりは無いよ」
静まる空気が嫌いなので独り言を言っていく俺。
ちょっと小心者なのは自分でもわかってるし、こんな時に篠ノ之さんにかけれる深い言葉なんてないんですよこちとら。
そんな自分にため息をつきたくなるが、そのため息を飲み込み、
「でもね、世の中なんてもんはあっという間に変わるもんだから、いつの間にかISよりすごい兵器が出ちゃって、男にも陽の光が当たるかもしれないしね」
と俺は立ち上がって、篠ノ之さんの顔を見ないようにしながら、小太刀二刀流の練習をする。
目標は回転剣舞六連だ。
ちなみに、5年目となった用務員生活で身につけることが出来たるろうに剣心の剣技は、まだ斎藤一のものだけだ。
今出来ている小太刀二刀流は、さっきやって見た感じ、防御がかなりいい感じに出来ているから、50%くらいしか出来ていなかったな、というのが感想だ。
でも、残りの50%がきついと思う。
その中には、ある程度の拳法の習得と、回転剣舞6連が残っている。
まぁ男としても必殺技はロマンだからなぁ。
やってみたいけど、実際にできるかは分からない。
まぁ、なんとかなるだろう、という気持ちで望んではいるけれど……
とかを考えながら、しばらく小太刀を振っていると。
「やりましょう」
篠ノ之さんが復活したようだ。
瞳の色が違うな。
物理的にではないが、なんかよくわからないけど、瞳の色が変わった、そんな気がした。
そんな瞳の色を見た俺は、
「じゃあ、お願いします」
ちょっとやばいんじゃないの?
俺死ぬんじゃないの?
と考えていた。
「ほんとにきつかった……」
あれからの10分間はほんとに地獄だった。
速くなる剣速、かわされる攻撃、重くなる斬撃。
もう途中からいつギブアップしようか考えていたくらいだ。
「でもよく耐えきったなぁ」
でも、俺は耐えきった。
ほんとに時間切れになった時は泣くかと思ったくらいだ。
最後の二分とかもう防御しかしてなかった気がする。
だから俺は篠ノ之さんのあのちょっと寂しそうな感じの、もうちょっとで勝てたのに、という風な顔なんて見ていない。
断じて…………
そんな俺は、
「もうやめよ」
明日こそはノーと言える日本人になる、そう誓い、俺は日記を書き終え、布団に入った。