IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第44話

「しかし、なんでこんなに持ってきたんだか………….」

 

私は軽くため息をつき、自分の隣においてある水着の山を片付けるのに試行錯誤している。

 

「着てみる…………のもなぁ」

 

私はその水着の山と反対側にかけている水着を見る。

どんな種類なのか、というのは分からないが、黒一色で作られているこの水着に私はなにやらビビッときたものを感じてしまい、買おうと思っているのだが、

 

「さっき電話で言われてしまったしなぁ」

 

そう、先ほどあまりにも候補となる服が多かったので、講義の電話をかけたのだが、その返答は「着てみないとわからない」の一点張りで、私は困ってしまった。

 

「……………………」

 

しばらく考えて、私は諦める。

 

「着たという体でいいか……」

 

友人に嘘をつくのは少し気が引けるが、ここで私が無駄に時間を費やしてしまうより、私の好みのものを買った方が、シャルロットにも、私にも有益だろう。

 

私はそうやって自分に言い訳をし、その水着の山と、買おうとしている水着を別に持ち、試着室を出る。

 

「あ、これ、お願いできますか?」

 

私は、近くに店員がいたのを発見したので、近づいてみると、店員は、水着の山越しでは見えないが、嫌そうな顔をしたのを私は察した。

 

「は、はぁ…………。

 わかりました…………」

 

その店員さんは、私の水着を受け取り、お会計はあちらです、と言ってその場を去る。

 

私は心の中で謝っておき、水着を購入することにした。

 

「ありがとうございました」

 

この国の店員の礼儀正しさに、最初は驚いたものの、いつの間にかなれてしまった私は、こっそりだが自分のISのハイパーセンサーをつけて、シャルロットを探す。

 

「見つけた」

 

そこで、私は異変に気づく。

シャルロットと誰かが話している?

私は不思議に思いながら、もしや、知り合いに遭遇したのか、と私は考えて、シャルロットの元に会いに行く。

 

「シャルロット、買っ…………」

 

私は、水着売り場から見えるシャルロットに向かって、自分の買ったものを見せながら歩いたが、どうやらあちらが気づいていないようなので、早足にシャルロットの元に行く。

 

正直、IS学園の生徒には会いたくなかったが、シャルロットがここに来る前に行っていたように、"ここにはIS学園の生徒はなかなか来ないよぉ"というセリフを思い出した。

 

まぁ結果から言うと、予想通り、IS学園の生徒はいなかった。

 

そう、生徒は、だ。

 

 

そこにいたのは、

 

「師匠?」

 

そう、IS学園の用務員がいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャルロット、なぜ私たちはクレープを奢られているのですか?」

 

「優しい人だからってのが1番しっくりくる回答なんだけど……私的には失礼な勘違いをした人をクレープだけで許すのはちょっとね……」

 

私は先ほどシャルロットと師匠が言い合って?(ほとんどシャルロットがガンガン言っているように見えた)いたのを見つけ、理由を聞いてみると、なにやらシャルロットのことを男と勘違いしていて、私たちのことを恋人同士と勘違いしていたらしく、

 

「シャルロットさんのことは口外禁止されていたんでしょ?

 俺らこのごろ忙しかったから、そういう学園の噂知らなくてさ」

 

この前の私たちの戦闘のせいで色々と師匠には迷惑をかけたらしい。

私はその話を聞いた時に素直に謝ると、シャルロットは苦い顔をして、師匠は苦笑いを浮かべながら、これが俺らの仕事だし、謝らなくていいよ、と言ってくれた後、何故か私たちは師匠からクレープを買って貰っていた。

 

私たちは今、このショッピングモールにあるフードコートにいる。

ここには様々な店のチェーン店があって、私たちは師匠が持ってきたクレープを、受け取る。

四人座れる四角いテーブルに、私とシャルロットは隣合って座り、その向かい側に師匠が座る形だ。

「いやいや、ただの好意として受け取ってもらえばいいよ」

 

「師匠、本当にもらっていいんですか?」

 

「あぁ、特に武術やってるわけじゃないけど、弟子だからね、ボーデヴィッヒちゃんは。

 その弟子と仲良くしてもらってるってのは、充分クレープを奢るに値する理由だよ」

 

そのまま師匠はシャルロットに目配せをしていた。

その視線を受け、シャルロットはしばらく苦い顔をした後に、

 

「仕方が無いですね。

 これが美味しいから言いふらすとかはしないであげましょう」

 

と、早速クレープを食べ始めていた。

私はシャルロットの食べている姿を見て、自分の手元にあるクレープをまじまじとみる。

 

「いや、毒とか入ってるわけじゃないからね」

 

「いや、わかってはいますが、どうしても食べたことのない食べ物を食べるのは……」

 

生まれてこの方、クレープというこのクリームや果物を薄い生地で巻いたものが美味しいようには感じられなくて、

 

「うーーーーむ」

 

「まぁ、好き嫌いは人それぞれだからね。

 無理して食べなくてもいいよ」

 

む、師匠に気を使われるのはわたしとしては不本意なので。思い切って一口食べてみる。

 

すると、甘いクリームの味が最初に感じられ、その後に感じるバナナの風味。

中に入っているチョコチップが甘ったるいだけじゃなく、様々な甘さを引き出すため、飽きずに食べることが出来る。

それにこの薄い生地も、持ちやすいだけでなく、食感にバリエーションが出ることによって、食べている、という感じを大きく感じることが出来る…………。

 

「美味しくなかったかな?」

 

「残ったら私が食べてあげるよ、ラウラ!」

 

私がクレープの美味しさについて考えていると、師匠とシャルロットが私の顔をそれぞれ苦笑いとキラキラした笑顔を浮かべながらこちらを見てくる。

 

「い、いや、私は全然、美味しいと思いましたよ?!」

 

「そ、そう?

 私も美味しいと思うよ!ほんと」

 

「よかった買ってあげたかいってものがあったよ」

 

シャルロットは残念そうに笑顔を浮かべるという器用なことをして、師匠は安堵の息を吐き出していた。

 

「ところで、用務員さん、これってなんでこんなに美味しいんですか?」

 

「あぁ、この前にここら辺で食べ歩きをしてた時に知り合いの佐古田さんがさ……」

 

「え?その佐古田さんって人どんな人なんですか?……」

 

「いや、佐古田さんの作るお菓子はすごいよ…………」

 

私が少しクレープの方に集中すると、私の目の前では、仲が良さそうにシャルロットと師匠は話をしていた。

 

私はそんな姿を見て、頭にある光景がよぎった。

 

 

最強の、師匠の、姿が…………。

 

 

 

あの師匠が、こんな普通に過ごしている。

私はそんな日常が、とてもとても不自然に思えて、でも、こんな光景が、私の胸を暖かくさせるのは事実で、

 

「ラウラ、どう思う?これより美味しいクレープ食べれるんだって」

 

「ん?あぁ、聞いていなかった、すまんな。

 もう一度言ってくれないか?」

 

私はよぎった光景をいつの間にか忘れ、日常に溶け込んでいく。

 

 

 

こんな光景に自分が混ざれるなんて、ほんとに思っていなかった。

 

 

私の瞳は、師匠と、友人と、ライバルのいる日常をしっかりと移していた。




あ、そういえば題名つけてましたね、外伝。
"夏休みのとある日・境界"ってところです。
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