IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第49話

俺は黙々と日記にすらすらと今日の出来事を書いていく。

 

ただ黙々と。

 

ほんとに黙々と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします」

 

「「「お願いします!」」」

 

今日は、IS学園の一年生が来る日だ。

一応俺ら3人は、いつもの生活と用務員生活が影響したのか、女将さんからは俺と鈴木さんは「7.5人前くらいかね」と言ってもらったくらいだ。

…………ちなみに鷺さんは「うちで雇うけどどうかい?」と言われていたくらいだった。

 

と、今俺がやっているのは、バスに入っている生徒の荷物を運ぶのだ。

 

俺は一応掃除と仲居さんのサポート、ということになっていたのだが、今の時点で掃除も仲居さんの仕事もないので、男手が足りないという荷物運びを手伝っていた。

 

と、さっき聞こえたのは、最初に一夏くんのもので、その後に続いて大勢の人の声。

 

あー、よくあるよね、そういうの。

 

いまちょっとだけ従業員になって思う。

 

ほかの客いるんだけど………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

俺は即座に身を翻し、その声の人物に背を向ける。

今は昼過ぎ。

生徒のみんなは最初に地形把握という名目で、海に遊びに行っている。

俺はその間に、掃除を済ませておく。

なんでそんなあんまり使っていないのに掃除を?と思われるだろうが、そんな怠けた姿勢では仲居さんはやっていけないらしい。

そして、俺が廊下を手慣れた手つきで掃除していると、

 

そいつはいた。

 

「あれ?あんた……見たことある顔…………」

 

やばい。

なんでここに鈴ちゃんが?

 

あれ?遊びに行ってるはずだよね…………

 

「あの…………すいません。

 顔、見せてもらえませんか?」

 

俺は返事をしないで振り返りもせずに黙々と掃除を続ける。

それにしても、どうしようか…………。

 

ちなみに、俺の今の格好は、いつもの用務員さんの姿ではなく、ここ、旅館"飛天"の制服姿なのだ。

 

まぁいつもと違うのはこの部分だけだし、別に今見つかっても、仕事で来た、といえば伝わるだろう。

 

しかし、その部分、が会いたくない理由であった。

 

うわ………………。

これが鷺さんのリアクション。

 

なんか、こう、いいんじゃない?

これがこちらを見ないで冷や汗を流しながら言った鈴木さんのリアクション。

 

あなたは絶対お客様の前に立たないように。

これが仲居さんのリアクション。

 

なんだかよくわからんのだが、俺にはこの制服が似合わないのであるらしい。

 

…………飛天の名前のついた制服が致命的に似合わないとか、なんか、悲しくなってきた…………。

 

あ、でも俺飛天は関係ないのか、ってか似合わなくて当然なのか?と俺は自問自答して、気を紛らわせ、今回は人目に出ないようにしていたのである。

 

あれ?なんでこんなところに鈴ちゃんが?

あ、そっか、見間違いか、見間違いだよね、そうそう、と俺はなんか現実逃避かつ一縷の望みに賭ける。

 

「あ、いえ、あったことはないのではないでしょう…………か………………」

 

「あ、あんた……」

 

鈴ちゃんのこちらを見る顔は、なんとも言えない顔。

ちなみに、俺と鈴ちゃんは、昼休み前に何回か模擬戦をした後から、全然会っていない。

だから、一月ぶり?くらいに会うことにはなるのだが、それを嬉しいと思う感情が1割。

 

なんであんたが?って疑問が5分。

 

そしてなんでそんなダサい格好してんのよあんた…………って感情が8割5分。

 

つまり、

 

「ぶふぉぉっ!!」

 

「……………………」

 

無。

俺はひたすらに無になる。

そして、踵を返し、掃除を再開する。

 

「あのっ……なんかっ……ごめっ…………。

 なんか似合わなさが奇跡的で…………っ」

 

だめだ、今俺はこの旅館の従業員。

なにも考えてはいけない。

 

「あんたなんでっ…………そんな……かっぶふぉぉっ!!」

 

ペキ

 

おっといけない、癖ではないのにいつの間にか指を鳴らしてしまっていた。

おっといけないいけない。

 

「……………………っふう」

 

鈴ちゃんは、謎の笑いを終え、下を向いて深呼吸して、俺の姿を足元から見て、俺の顔を見て、

 

「やっぱむりぃぃぃぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はまだ黙々と書いていく。

 

俺に割り当てられた部屋には、ただただペンの走る音だけが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、用務員さんでは…………」

 

夜に外の砂浜で訓練でもするのだろう箒ちゃんが、夜誰も来ないであろう玄関で掃除をしている俺の姿を見て、ゴト、っと手に持った木刀を落とした。

 

「それは、コスプレ、というやつでしょうか?」

 

夜中に目を覚ましてトイレに行こうとするラウラに、ちょうど替えのシーツを洗おうとして、それを取りに行っている俺を見て一言。

 

「…………」

 

その後ろで遠い目をしてこちらを見るシャルロットさん。

 

「…………不快だ?」

 

夜遅くに、少し酒の入っている(完全記憶はなさそうだが)織斑先生から放たれた胸をえぐる言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「減給されたくはないけど、言及くらいして欲しかったな…………」

 

日記を書き終えた俺は、きっとメンタルが強くなった、そういう気がする。




福音編なのに福音してない………。
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