IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第5話

「まぁ今年度初めてにしてはまぁよかったかな」

 

日記を記しながら、そんな感想を述べる。

今日は例年から考えると異例の速さで行われた模擬戦。

 

そんな事態に今日1日、模擬戦が終わるまで、担当の用務員3名……俺、飯の次にアニメが大好き竹山さん、メガネの狭山さんは本当にピリピリしていた。

 

その理由は、模擬戦で一番忙しいのは、出場する生徒でも、監視する先生でもなく、俺達用務員だからだとはっきりと言えるからだ。

 

そんな模擬戦ごときで用務員が忙しいわけ……となるとは思うだろう。

現に俺だって、新人の頃は結構舐めていた。

今となってはそんな舐めるなんてことないのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあジャンケンね」

 

狭山さんが昼時に、飯を食いながらアニメ視聴している竹山さんとそうそうに飯を食い終わって漫画を読んでいる俺を呼び出して、急にジャンケンをし始めようとする。

普通なら、誰もが疑問に思うが、俺らはそのジャンケンの意味を理解しているからか、空気がぴりっとする。

 

「じゃあじゃーんけん」

 

俺の思考は加速する…………

 

「ポン」

 

わけでもなく、適当に出した俺の鉄拳は、大きく開かれた二つの手によって華々しく散ったのである。

 

そして、このジャンケンが意味することは、

 

「じゃあリーダーお前なー」

 

「あざーっす」

 

狭山さんと竹山さんのお礼が聞こえる。

 

「はぁ、新年度初っていうのをポジティブに捉えますよ」

 

ため息を思わずついてしまうが、言葉通りにポジティブに捉えようと努力する。

 

 

さきほど佐山さんが言っていた"リーダー"とは、模擬戦の時に選ばれる3名の中で仕事の役割分担をした時の一番面倒くさい役の呼称のことだ。

 

模擬戦をやる上での用務員の仕事は、主に観客席の片付け、模擬戦後の点検、などの模擬戦の後の仕事に留まらず、模擬戦前の点検、観客席の模擬戦前の清掃などかある。

まぁ、今上げたのにもとどまらず、もうちょっと仕事はあるのだ。

 

そして、模擬戦にあたる用務員は3名。

 

3名のうち2名は、ある程度決められた仕事……主に清掃系をやる。

それで、残った1名がやる仕事が様々な雑事と他の仕事の不備がないかの点検、ほかの仕事へのヘルプなどなどだ。

 

ひとつひとつの仕事は軽いものなのだが、いかんせん量が多いし、一個でも抜けると割と模擬戦の運営に支障が出たりするから、割と重要な仕事なのだ。

 

しかも、そのひとりが自動的にその模擬戦の用務員責任者となるから、仕事の手をぬこうにも、抜くことが出来ない。

 

「ま、新年度初だ、がんばんないと……」

 

教頭からの説教が飛んでくる、とは声には出さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、そんなになれていないわけでもないから、上手くいったけどねぇ……」

 

俺は日記にあの内容を書こうか悩んでいる。

いくら日記といえど、書いてはいけないことくらいあるのは俺だって流石にわかるが、これは書いたって妄言の類だし、書いていいんじゃないか、と悩む。

 

しばらく悩んだあと、

 

「いいや、書いちゃえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に模擬戦は終わり、男の子の敗退で幕を閉じたようだった。

 

俺は模擬戦の前も最中もずっといろんなところへかけていたが、今日はいろいろと面白いものが見れた。

 

「まさかあの仕事増やしがあんなことをなんてなぁ……」

 

そう、教官室のコーヒーメーカーのコーヒーが切れていないかを模擬戦の前に見に行くのを忘れていたので、模擬戦の最中にこっそりと教官室に向かった時だった。

そこには、新任のダークホースこと山田先生と、仕事増やしこと織斑先生がいたのだが、そこで俺は面白いものを見てしまった。

 

……それは、あの織斑先生が、なんでかはわからないが、自分の飲んでいるコーヒーに対して砂糖ではなく塩を入れていたからだ。

 

ほんとうは飲んだ瞬間も見ていたかったが、試合の感じからこれはもうすぐ終わるな、と察して、次の仕事にむかった。

 

 

……ほんとに見たかった。

 

 

 

まぁ、それで模擬戦が終わったときには、俺は両選手への差し入れをまとめて、控え室に置いておくのだが、俺は男の子への差し入れの多さにうんざりしながら小分けにして運んでいたせいで、結構ギリギリに運び終えた。

 

そのせいだろう。

 

俺は控え室から次の仕事へ向かうために、近道としてハッチを通ってしまったのだ。

 

そこは、エネルギー切れで負けた男の子が、自分の機体をハッチへ納入し、帰っていたようだった。

 

誰もいないハッチ。

 

そこで俺は、あるものを見てしまった。

 

それは、使用された武器は、点検のために粒子化せずに、出しておいておくのだが、今回はなれていない1年の子だったからか、ただ武器が立てかけられてあるだけだった。

 

あれはいけない、倒れる。

 

今までの用務員の経験から、それを察する。

そしてその瞬間、思った通り、立てかけてあったIS用の巨大な刀が、倒れようとしていたのだ。

このままいけば、大きな音をたてて、その巨大な刀は倒れるだろう。

 

「あっぶね」

 

俺はそこで逃げちまえ、と思ったが、今日の試合を見て、男の子の活躍を見届けたせいか、あの子に叱られて欲しくないなぁ、と思った。

だからなのか分からないが、

 

「ふぅ」

 

俺は倒れたIS用の巨大な刀を、支えていた(・・・・・)

 

何の力も借りず、3mくらいあった距離を一瞬で詰め、刀の下に行き、刀が倒れるのを阻止した。

 

ちなみに、IS用の武器は、基本的に7m前後である。

そして、それらにはしっかりと金属が使われているわけで、重量は生身の男が10人いてやっと持てるくらいだ。

 

そんなものを支えている俺はもちろん。

 

「はぁ、なんでこんなことしちゃったんだろう」

 

怪物だと自分でも思う。

そして、そこから俺は、ゆっくりと下に刀を下ろすわけでもなく、

 

「ほっ」

 

IS用の巨大な刀を持ち上げ、本来の置き場所に置いた。

 

本来の置き場所には、しっかりとはめる部分があり、落ちないようになっているのだが、まぁ男の子は武器の置き場所も知らなかったのだろう。

それに元あった場所に返すとしても、武器は最初粒子化してあるから、余計にどこに置けばいいか悩むだろう。

カチッ、とはまったのを確認した後、俺は少しその場で黙った後、よし、と声を出し、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとになんであんなことしたんだろ……」

 

俺はそこまで書き終えたところで独り呟く。

まぁ、誰にも見つかってないといいんだけど……。

俺はそこから、今日の訓練のことについて書き始める。

 

篠ノ之さんとの訓練が始まって、10日になった。

 

え?ノーと言える日本人?いませんよそんなの。

 

俺の小太刀二刀流は、割といい線まで形になりつつある…………と思う。

 

今の戦績は、5分5分と言った感じで、勝って負けて勝って負けての繰り返しだ。

 

割と最初の頃は、防御ばっかしてて決着がつかない勝負が多かったけど、今は割と防御には磨きがかかり、攻撃にまで余裕が出来てきたから、攻めてみることにしたら、こうなったというわけだ。

 

それでも最初の攻め始めた頃よりはだいぶましになったのだ。

 

相変わらず拳法も回転剣舞6連も使えないし……

 

それでも、人とやるようになってから、確実にコツはつかめている感じはするので、割と篠ノ之さまさま、というふうになりつつある。

 

でもこの訓練はバレると確実に危ないので、しっかりと戸締りとかはしっかりしておこう。

 

…………勝って負けて勝って負けて、とか言ってるけどそれでも、高1の女の子に負けているというのは事実なので、大人の意地として、勝ち越ししていきたい……とは思う。

 

 

 

「でもなぁ……篠ノ之さんもだんだん強くなってきてるんだよなぁ……」

 

主に一撃の重みが……。

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