IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第50話

俺は、微笑む。

いつも通りに日記を書く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲居さんの朝は早い。

朝食の準備があるし、今日のやることを確認しあったりなど、やることが結構ある。

これから旅館泊まる時感謝して泊まろう、と俺は心の中で思いながら、今日も今日とて似合わない制服を身にまとい、仲居さんの手伝いをする。

 

「いただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

向こうからは一夏くんの号令でみんなが朝ごはんを食べ始めたようだ。

 

ちなみに、ここのご飯は美味しい。

 

まかないを二三度食べさせていただいたのだが、ほんとにうまくて今度私的に泊まりに来ようと思ったくらいだ。

 

今日は、2組が合同でIS(打鉄、ラファール)を使用して、水上でのホバー、水中での移動など、特殊状況下でのIS運用をする…………と昨日会ったラウラから聞いた。

 

まぁそのあいだ俺は、朝ごはんを片付けて、各部屋の布団を回収して、洗濯、掃除……と色々やることがある。

 

ってか、慣れてきたといっても、辛いものは辛いので、

 

「はぁ」

 

俺は思わず息を吐いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なにやらIS学園の先生が旅館で何かバタバタしているようだ。

時は夕飯を食い終え、生徒達は入浴時間が終わって、就寝までの少しの自由時間でも過ごしているのだろう。

俺は疲れてきた体に鞭打って、働く。

夕飯の食器の片付け、食事会場の掃除などをやっていたが、俺はこれからも仕事はある。

おそらく今日ほとんど使われていない男子の大浴場の掃除だ。

 

とそんな時に、女将さんと織斑先生が話している。

 

そこで、俺のブレスレットが震える。

幸いにも、掃除も次の仕事に入るまでに時間はある。

俺はすっと音もなく従業員のロッカーに入る。

ここは普段は使われないので、隠れるには丁度いい。

 

この前と同じように、俺のブレスレットからホログラムが投影される。

 

「どうかしたんですか?

 急を要しますか?」

 

『あ、いや、別に急いだ用事でもないんだけど、ちょっと大変なことが起こって、もしかしたら、助けを借りるかもしれない』

 

俺は、ホログラムに投影されている束さんの姿を見て、ため息をつく。

 

「なんか、勘違いしているようだから釘を指しておきますけど、俺が手伝うのは、あくまでも箒ちゃんが危ない時。

 何でも屋じゃないんですよ、こっちは」

 

真剣な顔で、真剣な声で。

俺だって、好きでこんなことをしているわけじゃない。

たまたま、自分に力があって、条件を飲んでくれる相手がいて、義理があって、情をかける相手だったから、引き受けたのだ。

それ以外で、俺がこの力を振るうことは無い。

 

『あ、いや、箒ちゃんが危ない時って、言うのは、私がちゃんと箒ちゃん用のISを作ってあげたから、ほんとに少なくなるとは思うけど……』

 

「あ、そうですか…………」

 

いきなり告げられる事実に、俺は寂しさを覚えてしまうが、これで俺が助ける回数が減り、危なくなることはなくなった。

安堵するべきなんだ。

 

『でも、今回は、なんかうまく行き過ぎてる気がする』

 

「上手く行き過ぎてる?」

 

『そう。

 こう、まるで、箒ちゃんを試すみたいな、そんな感じが…………』

 

「今回は仕組んではいないんですか?」

 

『うん、今回はISでそんな時間なかったし、それになにより、怖いの』

 

束さんの顔に映るのは、不安の顔。

 

「何言ってんですか」

 

俺はこの人は、本当に家族思いなんだなぁ、と思い、さらに織斑先生とやっぱり悪い意味でも同類なんだろうなぁ、と思った。

 

「あの子は、努力してる。

 進んでいる。

 不条理に立ち向かっている。

 んでもって、最高のお姉さんが背中押してあげてるんでしょう?

 ほら、心配なことなんてひとつもない」

 

『でも………………』

 

「あ、あとつけ忘れてましたね。

 それに、危なくなったら、ヒーローがいますよ」

 

『………………』

 

「あの、そんなじっと見つめないでくれますか?

 恥ずかしいんですけど……」

 

束さんは、こちらをじっと見てきて、ふっと笑い、

 

『そりゃそうだよ!

 なんてったってこの天災、篠ノ之束様が作っちゃったISだもんね!!」

 

この人も、華のように笑う人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度はあなたですか」

 

「すまないな、念のためだ。

 ほかの人たちには、きちんとバレないように説明はしてある。

 ………………それと、そんなダサい服着替えてこい」

 

俺は束さんとのお話を終えてから、従業員のロッカー室を出ると、そこには織斑先生がいて、開口一番に色々と言われた。

だがしかし、この制服が似合わないのは事実であって、俺は着替えるためにロッカー室に戻る。

 

いや、あれだよ、別に制服のことがダサいとか言ってるわけじゃないからね、ほんと。

 

「で、なんで俺が必要なんですか?」

 

「直感、でいいか?」

 

織斑先生は、苦い顔をして、こちらの顔色を伺ってくる。

しかし、なんだろうな、2人の女性から言われると、なんだか俺も悪くなる予感がしてきた。

 

「杞憂でしょう?

 今回は箒ちゃんがISを使っているみたいだし」

 

この程度で揺れる直感なら、絶対に拒否しよう、と思ったが、

 

「だからこそ、ということもあろう。

 早く来て欲しい」

 

………………隠しているな。

 

「拒否権は」

 

「できれば使わないでほしい」

 

「隠していることを教えて貰ったら、いいですよ」

 

「…………仕方がない。

 すまないとは思ってはいるが、何分国家機密レベルの代物だから、安易に口にすることが出来ない」

 

「まぁ、こんな行事をやっている最中にトラブルが起きているくらいですから、大変なことなんでしょうね」

 

俺は、危うく今ここで聞かなきゃよかった、と思った。

だって今聞いちゃったら、絶対に助けなきゃいけないことになっていたから、後悔する。

 

「あ、でも今の状況でも、助けざるを得ないですよね」

 

「…………なんだ?辞退する気だったのか?」

 

「あー、いや、まぁ、あはは……」

 

俺は、苦笑いを浮かべる。

今のうちに、箒ちゃんに祈っておこう。

 

夜のあの輝いている空に、手を合わせ、俺はまだ見ぬ箒ちゃんの専用機に願いを馳せる。




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