俺は、機を伺っていた。
福音っていう意味不明で危険らしいISと戦い始めて10分くらい?攻め続けて、なんとなくだが、違和感と共に苛立ちを感じている。
夏休みにやった千冬姉との地獄の特訓(比喩ではない)で、俺は千冬姉からあることを言われた。
『力、速さ、技、硬さ、それらは須らく純粋な"力"にはなるだろう。
…………だがな、それを今一夏が身につけたところで、本当の強さ……"意味ある強さ"にはならない。
……一夏には、そんな"意味ある強さ"を身につけてほしい」
千冬姉は本当に厳しかった。
だけど、そんな地獄の特訓の中でも、俺が特に覚えていることが、
『相手をまず、理解しろ。
憎しみで戦っているか、歓喜して戦っているか、悲しみなのか、怒りなのか、見極めろ。
そして、納得できなかったその時、全身全霊で、死力を尽くし、己の全てをかけて、倒せ』
俺は、そして今回の戦いではたった一つしか、理解出来たことは無かった。
しかし、そのたった一つ、はあの福音にとっての唯一の感情だったのではないのかと思う。
観察。
感情じゃない、そんな感情とはいえないような"感情"。
ISだからこそ抱けることのできる感情。
「やってやる」
だからこそ、10分もかけてやっとこさ理解して、そんな意味不明な感情…………まるで、雑魚を目の前にしたような感情を抱かれて、俺は納得いかなかった。
「ふぅ…………」
『ISの戦闘において、感情を出さないのは、感情に起伏を立たせないようにする、ではない。
感情を操るんだ。
ISは、私たちのそんな感情で進化する。
だからこそ、怒りも、悲しみも、楽しさも、全てを大切にしろ。
そしてそれを操れるようになれば、さらに、強くなれる』
深呼吸して、冷静になる。
しかし、内面は苛立ちを抱えながら。
だから、こんな感情にあっている作戦を考えた。
案外その感情に従って作戦を考えると、すごくぴったりな作戦を思いついて、俺は敢えて全力でかわすことを考えずに、いかに衝撃を殺してダメージを受けずに海の中に入れるかを考えた。
そしてその結果、俺のシールドエネルギーは、一割を削られたが、まだまだ動ける。
それで、俺が考えた作戦とは、
正面から、堂々と、ぶったたく。
観察なんかしているやつの顔面に、一発食らわせてやる。
そうとなれば、話は早かった。
「千冬姉」
『っ?!
一夏か?!
大丈夫なのか?!』
「あぁ、千冬姉、俺は大丈夫。
わざと墜ちてみた。
それで、作戦があるんだ。
聞いてほしい」
『…………ほう、一夏が作戦、とはな
話してみてくれ』
「正面から一撃入れる」
少しの静寂。
すると、千冬姉からふふふ、と小さな笑い声が聞こえ、
『あぁ、わかった。
準備はこちらがする。
お前を信じている。
…………やれ」
『おう』
俺は、覚悟を決める。
白式、頑張ってくれよ。
俺は、自分の持つたった一つの武器をそっと撫でる。
『各員に告ぐ、合図とともに、弾幕を貼れ!
前衛はこちらがサポートをするから弾幕から逃げ切れ!
…………一夏が、来る』
いやいや、そんな期待しないで欲しい……と前の俺なら言っていただろうが、今ならできる気がする。
これくらいやらなきゃ、ヒーローなんてなれやしない。
俺は、福音の真下に……ISの持つセンサーの範囲内に入らないように身長に水中の中を進んでいく。
夜の星空が海から見え、綺麗だった。
今日の昼の成果が出ていて、嬉しいような、また出来すぎなような気がしていたが、倒せるならそれもいい。
通常、俺が戦術の基本に置く瞬時加速……イグニッションブーストは、水中においてはあまり効果を示さない。
使う時の、貯めておいたエネルギーを水が邪魔して、水しぶきが盛大に上がり、その分の移動エネルギーのロスが生まれてしまうから、だそうだが、今はそちらの方が好都合だ。
『3』
全身全霊で、
『2』
死力を尽くし、
『1』
己の全てをかけて、
『全員、撃てぇえ!!』
倒す!
みんなのできる限り最大の、弾幕。
福音は360度を遠距離攻撃によって囲まれている。
そして、俺は抜刀術の構えをして、イグニッションブーストで敵に迫ろうとする。
そのせいで上がる水しぶき。
しかし、福音からしたら、周りを覆う弾幕と、大きな水しぶきのせいで、現状把握に時間がかかる。
その瞬間をついて……
水中のせいでロスした分の力を、空中で追加する。
零落白夜を発動。
自分のシールドエネルギーがガンガン削れていく。
真上には、福音。
福音は、静止したまま、動かない。
「うぉぉおぉおおおぉぉおおお!」
俺は、そんな大声を出しながら、迫る。
迫り、迫り、迫り、そして、俺の間合いに入ろうとしたその瞬間。
「♪」
福音は、待っていましたと言わんばかりにこちらを向き、その一撃をかわそうとする。
身をひねり、自分の背中の後ろを刃が通るように、
だが、
「知ってたよ、こういうのを予測するために"観察"してたんだろ」
"意味ある強さ"には、
「イグニッションブースト」
敵わない。
『これはあるマンガの技なんだが、本来抜刀術とは右足を出して切るものだが、それをあえて左足を出して行うことで、刹那……0.1秒とかそれくらいの世界だが、無駄を省くことが出来、更には左足を出すことにより、腰の捻りなどが追加される。
…………つまり、普通の抜刀術よりも、更に威力をだすことができる、私が知っている抜刀術の中で、最大威力、最速の技だ』
千冬姉から告げられた、世にある難題も優しく見えてしまうくらいの技。
「無茶苦茶すぎるよ、千冬姉は」
俺の夏の成果。
完成度は70%。
だけど、俺の知っている攻撃の中では最速。
中途半端な最速で、ここぞという時に使うような完成度ではないけど、
「"意味ある強さ"、身につけられたかな?」
0.1秒遅かったら、かわされていた。
この瞬間、俺は本能で察した。
"天翔龍閃"
零落白夜をまとった俺の刃は、皮肉にも自分と同じ色をしたISを、切り裂いた。
天翔龍閃、かっこよいです。
しかし、まだ終わりません分割です。