IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第55話

とりあえず、よく分かんないから走ってみることにした。

時間が無いので、刀を握りしめ、とりあえずあっちの方向、ということだけを頼りに走ってみた。

 

途中から海だったが、沈む前に進めばいいだけだから、力を使った俺には容易いことだ。

 

そうやって全力で走っていると、1分16秒かかり、箒ちゃんたちの元にたどり着いた。

 

そこでは、ボロボロの状態のみんなが、未だ無傷の福音と向かい合っている。

 

 

…………さっき走っていて、決めたことがある。

あのISは悪だ。

危害を加えようとしている悪。

 

ならば、悪即斬の心で切ってしまえばいい。

 

俺は、そう心に決めていた。

 

 

 

みんなは、そんな状況の中、微動だにしていない。

おそらく、これが最後の激突……そういう雰囲気を俺は感じ取り、俺は水面を思い切り蹴る。

 

一瞬にして、俺はみんなの目の前にたどり着き、

 

「牙突」

 

全力で(・・・)牙突を下から放った。

けたたましい音と共に感じるとてつもない衝撃波。

俺はその衝撃波の出ている中心にいるため、なんにも影響を受けないが、後ろにいるみんなは、思わず防御体制をとるほどの衝撃波を感じたようだ。

 

さすが俺の全力……、と自分で変なことを思いつつ、俺は刀の方にちらりと目をやる。

 

その刀は、傷一つついておらず、壊れる様子もない。

 

さすがISの生みの親。

 

俺は心の中で最大級の賛辞を束さんに送りながら、空中を蹴り(・・・・・)先頭にいた一夏くんのISの肩の上に乗る。

 

「…………あな……た…………は?」

 

「師匠!!」

 

「用務員…………さん?」

 

「遅いのよ!」

 

「だ、誰ですの?」

 

「あの時の…………」

 

みんなからは色々な声が聞こえる。

俺は、そんなみんなの声に答えるように、一言、言う。

 

「もう、大丈夫」

 

刀を天に突き上げ、俺は言う。

 

終わった…………終わったんだ。

 

 

 

ぜんりょくをだしてしまったら、こんなにもはやくおわってしまった。

 

 

 

『福音!まだ終わってない!』

 

俺のブレスレットから聞こえる声。

ホログラムはでていないが、音声だけは聞こえる。

 

「どういうことです?」

 

『さっき聞いてたでしょ、あのISは、進化をする時に、莫大なエネルギーを抱え込んでいた。

 それで、さっきのいっくんたちとの戦いでは、それを全然使っていないの。

 それできっと、福音は、その溜め込んだエネルギーを…………』

 

そうブレスレットから聞こえた瞬間、空から降ってきた。

 

純白。

 

その翼は、己の体を守るように体を包み込む。

その翼の純白は、見るものを惚れさせるような美しさを持っていた。

 

音もなく開かれる翼。

 

そこから出てきたのは、限りなく人に近いIS。

 

まるで女性のような体躯をしていて、その体のフォルムが分かるような形をしている。

 

金属で出来ているはずのそれには、命が宿っているような気がした。

 

その純白のISは、俺らに右の手のひらを向ける。

 

そして、俺はここで、殺意とは違うが、明確に感じ取れたものがある。

 

 

このままじゃ、死ぬ。

 

 

「っうぉぉおぉぉぉぉぁおおぉおぉぉ!!!!」

 

俺はできる限り早い反応で、一夏くんのISの肩から飛び降り、空中を蹴って、牙突を放とうとする。

 

 

だがしかし、間に合わない。

 

 

倒せない。

 

 

だから俺は、牙突を捨てた(・・・)

 

 

「回転連撃3連!!!!」

 

力を使わない状態で、この前たまたまできた小太刀の技。

千里の道も一歩から、そんな意識で初めて見たそれができた時は嬉しかった。

 

そして、俺はこの最強の力で、守りの技を、初めて使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迫る弾幕、振るう刀。

どちらが早いか?

 

もちろんそれは最強()だよ。

 

少し早く(・・・・)振るわれた俺の刀は、空を切り裂き、弾幕を消し去る。

 

ちょうど相殺したようで、どちらにも衝撃波はこない。

 

「っ!

 いくぞ!」

 

さっきから数えている残り時間。

あと1分。

 

俺は空中を蹴り、いっきに肉薄し、牙突を放つ。

 

だがしかし、福音はその上がった能力で、ぎりぎりでかわす。

 

俺は、無駄なく体制を立て直し、すぐにその切っ先を福音へと向け、もう1度空中を蹴る。

 

かすりながらもかわされる。

 

体制を立て直し、空中を蹴り、もう1度。

 

かすりながらもかわされる。

 

そんな繰り返し。

 

残り20秒。

 

俺はそこで苦虫をかみ潰したような顔をする。

空中だと連続攻撃へと持ち込めない!

それに、

 

こいつ、俺の攻撃を先読み(・・・)してる!

 

 

最強の攻撃を先読みする。

 

それはつまり、最強を超える、ということだ。

 

俺はそれにいらだちを覚える。

 

いや、覚えてしまった。

 

今まで力を使っていない戦いは、多少のミスは、立て直すことが出来た。

しかし、これは次元の違う戦い。

 

少しの感情の揺れで、刀は鈍る。

 

それに、頭の中のカウントも。

 

 

「なっ?!」

 

急に重く感じる刀。

スピードの落ちる自分。

重力に従い始める自分。

そして、気づく。

 

 

 

最強(3分)が、終わった。

 

 

俺は、落ちる。

 

絶望と、やるせなさと、責任と共に。

 

落ちて、落ちて、落ちて、

 

 

 

 

落ちていった。

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