とりあえず、よく分かんないから走ってみることにした。
時間が無いので、刀を握りしめ、とりあえずあっちの方向、ということだけを頼りに走ってみた。
途中から海だったが、沈む前に進めばいいだけだから、力を使った俺には容易いことだ。
そうやって全力で走っていると、1分16秒かかり、箒ちゃんたちの元にたどり着いた。
そこでは、ボロボロの状態のみんなが、未だ無傷の福音と向かい合っている。
…………さっき走っていて、決めたことがある。
あのISは悪だ。
危害を加えようとしている悪。
ならば、悪即斬の心で切ってしまえばいい。
俺は、そう心に決めていた。
みんなは、そんな状況の中、微動だにしていない。
おそらく、これが最後の激突……そういう雰囲気を俺は感じ取り、俺は水面を思い切り蹴る。
一瞬にして、俺はみんなの目の前にたどり着き、
「牙突」
けたたましい音と共に感じるとてつもない衝撃波。
俺はその衝撃波の出ている中心にいるため、なんにも影響を受けないが、後ろにいるみんなは、思わず防御体制をとるほどの衝撃波を感じたようだ。
さすが俺の全力……、と自分で変なことを思いつつ、俺は刀の方にちらりと目をやる。
その刀は、傷一つついておらず、壊れる様子もない。
さすがISの生みの親。
俺は心の中で最大級の賛辞を束さんに送りながら、
「…………あな……た…………は?」
「師匠!!」
「用務員…………さん?」
「遅いのよ!」
「だ、誰ですの?」
「あの時の…………」
みんなからは色々な声が聞こえる。
俺は、そんなみんなの声に答えるように、一言、言う。
「もう、大丈夫」
刀を天に突き上げ、俺は言う。
終わった…………終わったんだ。
ぜんりょくをだしてしまったら、こんなにもはやくおわってしまった。
『福音!まだ終わってない!』
俺のブレスレットから聞こえる声。
ホログラムはでていないが、音声だけは聞こえる。
「どういうことです?」
『さっき聞いてたでしょ、あのISは、進化をする時に、莫大なエネルギーを抱え込んでいた。
それで、さっきのいっくんたちとの戦いでは、それを全然使っていないの。
それできっと、福音は、その溜め込んだエネルギーを…………』
そうブレスレットから聞こえた瞬間、空から降ってきた。
純白。
その翼は、己の体を守るように体を包み込む。
その翼の純白は、見るものを惚れさせるような美しさを持っていた。
音もなく開かれる翼。
そこから出てきたのは、限りなく人に近いIS。
まるで女性のような体躯をしていて、その体のフォルムが分かるような形をしている。
金属で出来ているはずのそれには、命が宿っているような気がした。
その純白のISは、俺らに右の手のひらを向ける。
そして、俺はここで、殺意とは違うが、明確に感じ取れたものがある。
このままじゃ、死ぬ。
「っうぉぉおぉぉぉぉぁおおぉおぉぉ!!!!」
俺はできる限り早い反応で、一夏くんのISの肩から飛び降り、空中を蹴って、牙突を放とうとする。
だがしかし、間に合わない。
倒せない。
だから俺は、牙突を
「回転連撃3連!!!!」
力を使わない状態で、この前たまたまできた小太刀の技。
千里の道も一歩から、そんな意識で初めて見たそれができた時は嬉しかった。
そして、俺はこの最強の力で、守りの技を、初めて使った。
迫る弾幕、振るう刀。
どちらが早いか?
もちろんそれは
ちょうど相殺したようで、どちらにも衝撃波はこない。
「っ!
いくぞ!」
さっきから数えている残り時間。
あと1分。
俺は空中を蹴り、いっきに肉薄し、牙突を放つ。
だがしかし、福音はその上がった能力で、ぎりぎりでかわす。
俺は、無駄なく体制を立て直し、すぐにその切っ先を福音へと向け、もう1度空中を蹴る。
かすりながらもかわされる。
体制を立て直し、空中を蹴り、もう1度。
かすりながらもかわされる。
そんな繰り返し。
残り20秒。
俺はそこで苦虫をかみ潰したような顔をする。
空中だと連続攻撃へと持ち込めない!
それに、
こいつ、俺の攻撃を
最強の攻撃を先読みする。
それはつまり、最強を超える、ということだ。
俺はそれにいらだちを覚える。
いや、覚えてしまった。
今まで力を使っていない戦いは、多少のミスは、立て直すことが出来た。
しかし、これは次元の違う戦い。
少しの感情の揺れで、刀は鈍る。
それに、頭の中のカウントも。
「なっ?!」
急に重く感じる刀。
スピードの落ちる自分。
重力に従い始める自分。
そして、気づく。
俺は、落ちる。
絶望と、やるせなさと、責任と共に。
落ちて、落ちて、落ちて、
落ちていった。