IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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短いです。


第56話

落ちる。

 

落ちる。

 

落ちていく最中、俺は上から福音が止めを刺そうと急降下してくるのがわかった。

 

これはいわゆるあれだろう、死に際は時間がゆっくり感じてしまう、というやつだろう。

 

俺はそこで、諦める。

 

もう、だめだ。

 

来る、福音が。

 

来る、(福音)が。

 

俺は、受け入れようとした。

 

だが、存外俺にも人望というか、希望はあったようで、

 

「うおぉぉぉおおおぉぉぉお!」

 

「間に合えぇぇぇぇえ!!」

 

「あともう少しぃ!」

 

「あんたに死なれちゃ困るのよぉ!」

 

 

 

一夏くんは、福音に立ち向かい、

 

鈴ちゃんも、福音に立ち向かい、

 

箒ちゃんは、俺が落ちるのを救おうとして、

 

ボーデヴィッヒちゃんは、俺に対して慣性操作をして、落ちないようにしている。

 

 

 

急に落ちるのをやめる俺の体。

 

それを拾いにくる箒ちゃん。

 

目の前では、一夏くんと鈴ちゃんが、代わる代わるに、押されながらも、福音に立ち向かっている。

 

「だいじょうぶですか?!」

 

箒ちゃんは、そのISの大きな手のひらに俺をそっと乗せ、聞いてくる。

 

「うん。

 ありがとうね」

 

俺は、感謝の気持ちを伝えるが、その心の中には、感謝とは別の、まるで心臓を握りつぶすような、そんな感情があった。

 

きっとそれが表情に出ていたのだろう。

 

箒ちゃんは、俺の方を優しい表情で見て、

 

「大丈夫ですよ」

 

そう、一言告げた。

 

 

 

途端、俺の心の奥底からせき止めることの出来ない感情が、涙と共に溢れ出してくる。

 

腕で目元を隠しながら、自分の口から、言葉が溢れ出る。

 

「ごめんっ……」

 

罪悪感。

 

「最強なのにっ……」

 

責任感。

 

「俺は何も出来なかったっ……」

 

無力感。

 

「ほんとうにっ…………ごめんっ……」

 

そして止まらない、謝罪の言葉。

 

 

「いいえ」

 

 

そこで聞こえる、箒ちゃんの否定の声。

周りは戦闘の音でうるさいはずなのに、俺にはその声だけしか聞こえなかった。

 

「あなたは、最強です」

 

優しく、

 

「だってあなたはその背中で、みんなを突き動かした」

 

優しく、

 

「その背中は、希望を教えてくれた」

 

優しく、

 

「だからこそ、あなたがどう思おうが」

 

優しく、

 

「あなたは最強です」

 

いやじゃない厳しさを、俺は教えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで待っていてください」

 

戦闘に参加出来ない俺は、小島に連れていかれ、そう言葉を受けた。

そこで、ここからでも十分に見える福音に、変化があった。

 

「~~~~~~♪」

 

叫び。

至極簡単に表現できるそれは、俺らが思っている叫びというものを、超越したナニカであり、

 

「♪」

 

その叫びと共に、福音の手には、真っ白で、どこからが柄で、どこからが刃なのかわからない刀のような何かを持っていた。

 

「っ?!

 武器を持ったところで、俺らは倒されないよ!」

 

一夏くんが、叫びに似たナニカに警戒した直後、隙を見つけて攻撃を行う。

 

それに続く鈴ちゃん。

 

ほかのみんなも、援護をするために射撃を行っていた。

 

 

そこで、俺はその後の光景に言葉を失った。

 

 

福音は、みんなの攻撃を先読み(・・・)しているかのような振る舞いで、一夏くんの袈裟斬りをかわし、

 

後ろから死角のはずの鈴ちゃんからの攻撃をも避け、

 

 

刀とともに、体を回す。

 

その直撃を受けた2人は、衝撃で後ろに下がってしまう。

 

そして、まるで示し合わせていたかのように、その2人に援護するはずの射撃が降り注ぐ。

 

フレンドリーファイアを意図的に行わせた福音は、すぐさま一夏くんに近づき、刀を下から上がるギロチンのように振り上げる。

 

突然の下からの攻撃に何も出来ない一夏くん。

 

そこから福音は、振り上がった刀を振り下ろし、一夏くんを海へと叩きつけた。

 

速かった。

 

肉眼で捕えられたのは奇跡に近いと思う。

 

だが、そんな奇跡を感じるよりも、俺はもっと別な、大きな感情を抱いていた。

 

驚き。

 

そんな感情が、俺の中を支配していた。

それは、福音の強さとか、速さとかに驚いたわけではなく、

 

「龍巻閃、龍翔閃、龍追閃…………」

 

 

あの先読みに長けた動き、そしてかわしてから放たれる技、剣閃。

 

それら全て、緋村剣心……飛天御剣流のものであった。




最強は、前に進むだけじゃない。
後ろに道も作るのが、最強である。
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