IS学園用務員物語   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第57話

飛天御剣流。

それは、俺が目指そうとしたはじめの剣術であり、諦めることしかできなかった剣術。

 

「箒ちゃん!」

 

俺は福音の元に向かおうとする箒ちゃんを呼び止める。

 

「なんですか?」

 

箒ちゃんは、急いで向かいたいであろう気持ちを押し殺して、こちらを向く。

 

「あの剣術、俺はよく知っている。

 だから、簡単に言わせてもらうよ。

 あの剣術に、多人数で挑むのは難しい。

 あれは対多人数用の剣術だ。

 だから、2人……ツーマンセルで挑むんだ。

 お願いだ、これだけは聞いてほしい」

 

 

箒ちゃんは、俺の言葉を聞いてすぐ、

 

「分かりました」

 

即答した。

 

「え?」

 

俺が、こんなISを使ったことのない人間の言葉をすぐに信用していることに驚きを感じているのに対して、箒ちゃんは、IS同士の通信……コアネットワークによって、連絡を取っている。

 

「あぁ、ひとりは一夏を迎えに行ってくれ。

 …………ありがとう、必ず一夏を連れてこよう」

 

そして、箒ちゃんは、俺のことをじっと見つめ、

 

「信じていてください。

 私たちは、勝ってきますよ」

 

そして、箒ちゃんは、海の中へと飛び込んでいった。

 

俺は、1人小島に取ら残された。

なにもすることがない、とは、俺の人生において、なかなかないことであった。

 

みんなが戦っているのは、小島からかなり離れているところで、それも徐々に遠ざかっているようで、肉眼では詳しく見ることは出来ないようだ。

 

そこで、俺は考える。

 

みんながこの戦いを乗り切る方法を。

 

おそらく、箒ちゃん含め、みんなは勝つ気でいるのだろう。

 

だが、戦った俺ならわかる。

 

あいつには勝てない。

 

だから、俺ら(大人)は、最悪をより最善に近づけるために、考えなければいけない。

 

 

「1番なのは、討伐」

 

いつの間にか独り言を話していたが、周りには誰もいないので、気にせずに話し続ける。

 

「次点で、弱体化させてからの拘束。

 

 そして…………」

 

そこで、引っかかるものがあった

 

「応援を待つ…………」

 

なにか、引っかかるものがあった。

応援は、時間がかかるから、優先度的には、自分が死なないように、全力を尽くし、倒しにかかる。

それでいいはずだ。

いいはずだが、なにか引っかかる……。

悪いことなのかいいことなのかは分からないが、気づいておくことに損は無い。

 

そして、ふと考える。

 

今日はあと何分で終わるのか(・・・・・・・・・・・・・)

 

「束さん!

 今は何時何分ですか?!」

 

ブレスレットに大声で話しかける。

 

早く気づけ、そんな思いだけが強まっていく。

 

『何?この忙しい時に?』

 

「早く!

 知らなきゃならないことなんだ!」

 

俺は語調を荒らげて忙しそうな束さんに尋ねる。

 

『えっと、あと30秒くらいで、今日が終わるまで、3分(・・)だよ』

 

「………………束さん、みんなに通信を繋いでくれ」

 

俺は、その言葉を聞いて、明るい顔になっていくのが止まらない。

 

『だいじょうぶだよ!

 これからいうことは、みんなに伝わる』

 

そこで俺は、ある言葉を思い出す。

 

 

信じる。

 

 

その言葉を思い出し、俺は言おうと思っていた内容を、少し変えることにした。

 

「みんな、聞いてくれ」

 

「俺の力は、1日で3分しか使えない」

 

「そして、あと3分で、今日が終わる」

 

俺は、少し間を開け、つまり、と言葉を繋げ、

 

「俺はもう一度、立ち向かえる」

 

みんなが、息を呑む声が聞こえる。

 

「そんでもって」

 

「みんなには頼みがある」

 

ここからは急に変えたセリフ。

みんなを信じてしか言えないセリフ。

 

「俺は強くなろうとも空を飛べないんだ。

 だから、あいつの羽を奪ってきてほしい」

 

『ちなみに、あいつあの羽に飛行能力全部譲渡してるから、壊せば自己修復が終わるまで飛べなくなるよ!』

 

ナイス束さん。

俺はその言葉に、ニッコリと笑顔を浮かべ、

 

「だから、頼む。

 あと3分で、あいつの羽をもいで、俺の前に持ってきてくれ」

 

「あとは俺がやる」

 

『じゃあ師匠、私たちが1分半ずつ相手をすればいいんだな?』

 

『羽をもげる自信はないけど!』

 

戦闘音が混じっているボーデヴィッヒちゃんと、シャルロットさんからは、弱気だけど、やる気が伝わってきた。

 

『あたし達に任せなさい!

 1分半あれば十分よ!』

 

『見ず知らずのお強い方、おまかせください』

 

鈴ちゃんと、鈴ちゃんとツーマンセルをとっている子からは、強気でやる気に満ち溢れた返事が、

 

 

 

『いや、俺らに任せてくれ』

 

『そうだな、二分、時間を稼いでくれ。

 羽は必ず私たち(・・・)が奪う』

 

 

 

そして、そんな自信に満ち溢れた声の主は、俺の目の前の海から、上がってきて、

 

「俺らを信じてくれてありがとうございます。

 必ず、羽のない福音を、あなたの前に連れてきますから」

 

「用務員さん。

 見ててくださいね」

 

さっきまでのISとは姿を変えたISに乗っている一夏くんは、凛々しい顔で、

 

 

IS自体がぼんやり赤く光っている箒ちゃんは、笑顔をこちらに向けて、

 

 

俺に、そう言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よくあるヒーローの、典型的な復活。

 

俺がそんなものになれるとは思っていなかった。

 

だけど、ほかのヒーローと違って、俺は強くなれない。

 

だって最強なのだから。

 

でも、そのヒーローの隣には、

 

仲間がいた。

 

 

だから、今度は負けない。

 

 

 

俺は、みんなに見られたら恥ずかしいな、と思いながら、そう付け加える。

その時に思った、掛け値なしの本音。

 

俺は、ニッコリと微笑みながら、最後を書き上げていく。




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