『最初は私たちがそのまま戦う!
みんなは休んでいてくれ!』
オープンチャンネルから聞こえてくるのは剣戟と共に聞こえてくるラウラちゃんの声。
『え?ほんと?』
それに対して、援護に回っているシャルロットさんは、ありえない、というふうな声を出している。
『いや、この場で誰かと交代をするのは決定的な隙になる。
ならばこのまま戦い続けるほうがいいだろう』
ラウラちゃんが言っていることはもっともなことで、反対するのがおかしいと思えてしまったが、
『いや、弾薬とか大量に消耗してるからね?!
案外こっちの方がピンチなのは変わらないんだよ?!』
『なら私たちが行こうか?』
『私たちだったら実弾の系統の消耗品もないですし、少し時間はかかるかもしれませんがうまいこと変われると思いますよ』
そこで鈴ちゃんたちが話しかけてくる。
『そうそう、鈴たちに任せておけばいいでしょ?』
『あ、一ついいか?
先程紅椿が単一仕様能力《ワンオフアビリティ》を使えるようになってな。
私の近くに来ればエネルギーを最大まで補充できるようになったぞ』
その言葉に、一夏くん以外のみんなが驚く。
今箒ちゃんが言ったことが事実ならば、それは三分とは言わず、もっと時間を稼ぐ戦いがらできるということである、ということだ。
『すまん、シャルロット。
それでも私は、やりたい』
『…………ラウラ……』
それでも頑なに自分たちが戦闘を続けるという姿勢を緩めないボーデヴィッヒちゃん。
そんなボーデヴィッヒちゃんにみんなは、なにやら事情があるのだろう、ということを考える。
『私は、勝ちたいんだ。
一時的にでも最強を打ち破った、そんな相手を。
私は目指したいのだ、最強を』
『あらら…………でもそれじゃあ回復してからでもいいんじゃない?』
『それでは意味がないんだよ。
私は最強を目指しているのだ。
これくらいの逆境、乗り越えなくてどうする』
俺はその言葉に、心配が募る。
かっこいいことを言っているが、そらで相手が加減をしてくれるとは毛頭思わない。
『ラウラ!』
そんなことを俺が考えていると、一夏くんはいきなり大きい声を出して、ボーデヴィッヒちゃんのことを呼ぶ。
一秒にも満たない静寂、
そして、
『やってこい、ライバル』
『っ…………、あぁ!』
俺でもなく、ほかのみんなでもなく、たった1人の、ボーデヴィッヒちゃんが決めた
信じている、そんな言葉が隠れているセリフ。
そして、今日を終えるためのカウントダウンが始まる。
あと、3分。
『ラウラ!
大丈夫なのその作戦?!』
『あぁ、今やらなきゃ最強なんて夢になる!
ここで、私は決める!』
戦闘が始まったようだが、俺からは何も見えない。
おそらく他のみんなはISについている機能で見ることが出来るのだろうが、俺は生憎にも生身であり、遠くを見つめる便利機能なんてあるわけもないから、拳を握りしめ、
「あ、刀」
俺は自分が刀を持っていないことを思い出した。
折角束さんが俺だけのために作ってくれた刀。
「いや、てか俺あれないと戦いにならない気がするんだけど…………」
と一人ぼやいていると、
『あ、武器なくしたの?!
…………仕方が無いから、私の方で特定して箒ちゃんに預けておくね。
欲しい時は箒ちゃんに言ってね』
突然ホログラムがつき、そこに映るのはジト目の束さん。
俺はその目に対して苦笑いしつつ、
「あ、一つ、いいですか?」
『…………なに?』
「あの、なんというか頼むような身分ではないのはわかっているんですけど、お願いがあります。
一振り、刀をください」
『はぁ?!
あれ作るの結構時間がかかるんだよ?!』
束さんは、ジト目から驚きへと豊かな表情を披露しつつも、無理、ということを伝えてくる。
「あ、いや、別にあの刀と同じじゃなくていいんですよ。
その刀は、人間用の大きさで…………できるなら、俺の全力に1度だけ耐えれるものなら、それで十分ですが」
『……………今、箒ちゃんにもう一振り入れておいたから。
ちなみにそれは失敗作の中で一番耐久力他の高いものだから、さっき見たあなたの全力なら、1発だけなら耐えれるかも……』
「いや、それで十分です、ありがとうございます」
『…………ま、いいよ、信じてるし。
あと、映像見せてあげるよ』
そう言ってホログラムの映像は変わり、どこかの空中の映像が映し出される。
そこにいたのは
「ボーデヴィッヒちゃん!」
俺はいきなり大声を出したせいで、小島で休んでいる、一夏くんや箒ちゃん、それにいつの間にか来ていた鈴ちゃんたちに見られてしまった。
でも、俺はそんなのには気付かず、食い入るように映像を見る。
どうやら2人とも大きいダメージはもらっていないようだ。
3分だったら正確に測れる体内時計があと40秒、ということを教えてくれる。
「セシリア、行こっか。
早めに行っとかないと大変なことになりそうだし」
「そうですわね、行きましょうか」
どうやら次に行くふたりはもう既に戦闘の現場に行こうとしているようだ。
『鈴!セシリア!
そこから動くな!
私たちがそこまで持っていく!』
「…………死んでもリカバリーできないけどいいの?」
『ふっ、演技でもないことを言うなチビ。
私は最強を目指しているのだぞ。
なるまで死ねないよ』
「…………あっそ」
鈴ちゃんは、空中に浮かんでいたのを降り、少し離れたところで武器の確認をしたりしている。
「り、鈴さん?!
行かなくていいんですか?!」
その様子に鈴ちゃんのパートナーの子も驚いている。
そりゃそうだ。
俺だって言ってくれ、と言いそうになるが、そこをぐっとこらえて、鈴ちゃんの言葉を待つ。
「あいつがやるっていったら、やる。
少なくとも私はそれくらいは、あの銀髪チビを信じている」
「…………分かりましたわ」
鈴ちゃんのパートナーの子はしばらく考えたあと、同意の意を示し、鈴ちゃん同様に武器の点検を始めた。
信じる。
ここまでの信頼関係を気づくために、幾重の物語を語り、紡いでいかないとこんなにも強固な信頼関係は作れない。
だが、それが今、ここにある。
たった半年も一緒にいないメンバーが、こんな死地でお互いを信頼して、戦っている。
『あなたのおかげですよ』
そこで聞こえるのは、箒ちゃんの声。
『あなたの"最強"が、一つの道へとみんなを誘い込んで、集めて、繋げた。
そんなことをあなたはしたんですよ』
俺は、その言葉に不覚にも涙が溢れそうになってしまって、
『きゃぁぁぁあぁ!!』
潤んだ視界で映像の方に急いで目を向ける。
大きな煙をあげながら、堕ちていくシャルロットさん。
どうやら福音のカウンターが炸裂したようだ。
みんながそんな光景を悲観しているが、俺は違った。
なんで、援護に回っていたシャルロットさんが近距離戦を仕掛けられた?
あの2人なら、ボーデヴィッヒちゃんの撃墜はあり得るだろうが、その後に控えているシャルロットさんが落ちることはまずない。
なら、なぜ。
そこで、俺はふと視界の端にちらりと写ったその人物の、その表情を捉える。
織斑一夏くんの、不敵な笑みを。
「いけぇぇぇぇえ!ラウラぁぁぁぁ!」
突然福音の周りの煙が晴れ、そこから現れるのはボーデヴィッヒちゃん。
その手には、白い刀が握られていた。
その刀を、俺は見たことがある。
一夏くんの、唯一の武器。
『雪片弐型ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
そして、ボーデヴィッヒちゃんは、牙突を放つ。
それは、あの時の自分の牙突ではなく、普通の、至って変化の加えられていない、牙突。
だがしかし、その牙突からは、俺にしかわからないような、鍛錬の後がくっきりと見えている。
『きぃまれぇぇぇぇ!!!!』
綺麗に、決まる。
そんな状況でも、福音は強かった。
福音は自分の持つ刀の腹で防ごうとする。
ぶつかる。
ここまで衝撃が伝わってきているのか、海に大きな波が立つ。
福音は大きく後ろに下がり、体制を立て直そうとする…………が、
『知っているさ!
お前が一時でも最強を超えているのを私は知っている!
だから、防がれると思っても放った!』
映像では遠くて確認出来ないが、おそらく、ボーデヴィッヒちゃんは、
笑っていた。
『黒兎の牙に、貫けぬものはなぁぁい!』
福音は体制を立て直せない。
なぜならボーデヴィッヒちゃんがそのまま突進してきて、離れる隙を与えていないからだ。
そして、当然だが勢いのついているボーデヴィッヒちゃんは、福音を押し出す。
それを何秒も、何秒も。
映像から途切れた2人を俺は心配していると、どこからか音が聞こえる。
鍔迫り合いのような音と、ISの音?
俺はその音の方向に目を向けると、
「ボーデヴィッヒちゃん!」
思わず叫んでしまった。
そこで、俺は気づく。
鈴ちゃんたちへの待機要請。
シャルロットさんの不自然な墜落。
一夏くんの笑み。
『私は、弱い。
けど、仲間がいれば、私は、もっと強くなれる!』
すべてが、ここまで福音を持ってくるための作戦。
そして、
『みんな、すまない。
私が倒そうと思ったのにな』
生意気なんだかわからないセリフ。
いや、本人にとっては大真面目に言ったのだろう。
だから俺は、
「よくやった。
最強へ、また一歩近づいたな」
そう、弟子に対して言っていた。